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OCDの治療法

OCDの治療法

OCDの心理教育

自分の病気を知ることの大切さ

OCDの治療では、専門家から病気のしくみや治療について説明してもらい、それを本人、家族が理解することが役立ちます。これを「心理教育」といいます。

認知行動療法を行う場合は、通常、療法の初めに心理教育が行われます。

薬による治療だけを行う場合でも、心理教育を行うことで治療へのモチベーションを保つことができます。OCDは、薬を飲んで安静にしていれば治るというタイプの病気ではありませんから、心理教育を通してOCDをよく知ることで、病気との付き合い方がわかり、治療への後押しにもなり再発防止にも役立ちます。

家族に対する心理教育としては、このページとともに、「家族ができること」のページも参考にしてください。(OCDの治療法>家族ができること

自分の症状を知る

OCDの症状は、強迫観念と強迫行為です。(OCDとは?>OCDの症状

まず、普段、頭のなかをよぎる考えや、日常行っている行為のうち、どれがOCDによる症状なのかを知ることが必要です。長年、強迫症状を抱えていると、本人にとっては、それが当たり前になってきて、どれが症状でどれが通常の行為なのかわからなくなっている部分もあります。また、強迫症状にとらわれている最中は、これらの区別はわかりにくくても、強迫行為が終わり冷静さを取り戻したときならわかるという人もいます。

たとえば、「汚染/洗浄」のとらわれがある人では、次のようなことも強迫観念と強迫行為になります。

自宅のドアノブやリモコンに、自分以外の家族がつけた目に見えない汚れがついていると思う(強迫観念)

ドアノブやリモコンを手で直接触らないで、ティッシュなどを介在して、間接的に触っている(強迫行為)
ズボンのすそが地面に触れて汚れがついている、その汚れを家の中に持ち込むと大変なことになる(強迫観念)

どのようなズボンでも地面の汚れがつかないようにすそをめくりあげないではいられない(強迫行為)
入浴するたび、徹底的に何度も洗ってしまうため、時間がかかり、非常に疲れるので、入浴する回数を減らしている(強迫行為)
このように1人の人間のなかには、強迫観念も、それに反応して起こる強迫行為も、いくつもあります。強迫観念と強迫行為の悪循環にはまってしまうと、強迫症状は強化されます。

性格と症状との区別

OCDの症状と性格とは区別して考えることが大切です。
たしかにOCDになりやすい性格というのはあり、真面目で、細かいことが気になったり、完璧主義で、頑固な性格などが挙げられます。しかし、近年の研究では、それらの性格が高じてOCDになるとは限らないと、わかってきました。

OCDの患者さんにとって、強迫観念は自分の意思ではなく、望みもしないのにしつこく頭から離れないというものです。一方、強迫行為は、行為そのものに対して、むしろ嫌悪感を覚えていて、行為の最中も早く止めたいと思っているようです。

つまり、OCDという病気は性格が高じたものではなく、望まざる客が、勝手に上がりこみ、居座ってしまったように患者さんは感じ、とまどっているのです。そして、OCDは悪化すると、患者さんが症状に抗うことも、コントロールすることも難しくなっていきます。

周囲の人にとっては、このような患者さんの心のうちは外見からはわかりにくいので、なぜ繰り返しの行為を止められないのか理解できずに、「好きでそのような行為を続けているのではないか」と誤解されてしまうこともあります。

しかし、周囲の人が理解できない強迫行為は、患者さん本人ではなくOCDという病気がさせているものなのです。

OCDの特性

いったん強迫症状と強迫行為の悪循環に陥ってしまうと、頭でわかっても、すぐに強迫行為を止めることは難しいものです。それは、OCDに次のような特性があるためです。

① OCDは人をだますのがとてもうまい

OCDは、脳の中で何らかの誤作動が生じて起こる病気です(OCDとは?>OCDの原因)。実際には、危険ではないのに、「今、強迫行為をしておかないと大変なことになる」と、本人の不安をかきたてるような考えや、衝動が繰り返し襲ってきます。火事でもないのに、火災報知機が鳴り止まらないようなものです。

そして、OCDを抱えていると、不安や恐怖といった嫌な感情も伴いますし、日常的に、いつも何かに警戒している時間が長いため、身体の感覚も敏感になってきます。そのため、汚れたものや、危険なものに実際に触れたわけではないのに、「触ってしまったのでは?」という疑いが頭をよぎることがあります。

このような感覚や感情によって、「もしかしたら」という疑いはもっともらしく感じられ、「今のうちに何とかしておかないと」と、強迫行為へとかり立てられます。

しかし、これらは、本人が不安や恐怖を感じているだけで、実際に危機が迫っているわけではありません。「オレオレ詐欺」の電話を受けた人が、「私がお金を振り込まないと、息子が大変なことになる!」と不安を感じ、お金を振り込みたいという衝動を感じてしまうのと似ています。

不安や恐怖といった感覚や感情が起こると、精神的にはとても苦痛ですが、実際には危険なことは起こりえないので、あまり真に受けないでいられるとよいでしょう。たとえば、戸締りなどOCDの人にとっては症状が出やすい場面でも、ほかの人たちは、特に問題なく過ごしているのですから。

② OCDは、「もっともっと」を求めてくる
強迫症状が起こると、念のために、もう一度手を洗っておいたほうがいいのでは? もう一度閉め直したほうがいいのでは? などと疑いが広がり、強迫行為を繰り返したくなります。

そのような場面を見た第三者は、十分すぎるほど手は洗えているし、カギもしっかりと閉まっているのに、と不思議に思います。

しかし、OCDになると、「(物事が)済んだ」「問題がなくなった」という判断や「ほどほど」という感じが、わからなくなるため、このように行為が繰り返されてしまうのです。

そのようなOCDの特性を理解して、「徹底的にやらなくてもいいや」と思えるようになるといいのです。

③ 強迫 症状は習慣になると厄介
排泄によって汚染されたように感じる人ならばトイレに行くたびに、刃物を見ると誰かを傷つけてしまうのではないかと考えてしまう人ならば刃物が近くにあるたびに、症状が繰り返し引き起こされます。

そのような行為がいったん習慣になってしまうと、さらに強迫行為を止めるのが難しくなります。強迫症状を引き起こす場面や物が増えれば増えるほど、日常生活により支障をきたすようになります。

新たに気になるものができ、1、2度は強迫行為をしてしまったとしても、なるべくそれを習慣にしないようにしていけるといいのです。

これら①~③の特性について、本質的に対処するには、薬物療法や認知行動療法のような治療を行う必要があります。

しかし、OCDの特性を知っておくことで、どれが強迫症状なのか自分で気がつきやすくなります。また、新たに苦手なものを増やさないように、何回か強迫行為をしてしまっても、定着させないように心がけることは大切です。

このような考え方を知ることは、治療によって症状がある程度改善できた人にとっても、再発防止に役立ちます。


参考:ドーン・ヒュブナー[著]「だいじょうぶ 自分でできるこだわり頭[強迫性障害]のほぐし方ワークブック」明石書店(2009年)