家族ができること
強迫症状に苦しむ家族がいると、そんな姿を見ていられなくて、強迫症状につい手を貸してしまったり、「病気を改善させるためだ」と心を鬼にして強い態度で接してみたり、無視してしまうことなどがあります。このような接し方は、いずれの場合でも患者さんにストレスを与え、症状を悪化させることにもなりかねません。
患者さんのために家族ができることを考えていきましょう。
病気を理解する
まずは、OCDという病気を正しく理解しましょう。
家族も心理教育によって、OCDという病気を正しく理解することが、適切な判断をするためには役立ちます。
手洗いをやめられない患者さんの手が、洗い過ぎで荒れていたとします。ご家族は、その手を見てつらい気持ちを共有することでしょう。患者さんの気持ちに寄り添うことは支援への第一歩ですが、共感だけでは病気への正しい理解につながりません。

強迫行為に巻き込まれない
家族が患者さんの強迫行為に巻き込まれて、知らず知らずのうちに協力しているということが少なくありません。ガスの元栓が締まっているか、本人だけの確認では安心できないため、家族にも確認の質問をする、外出から戻ったときは、家族にもシャワーを浴びることを強制するなどした場合、患者さんの気持ちを和らげようと、要求を受け入れてしまうことがあります。
本人のためを思っての手助けであっても、病状の悪化につながることがあります。このことを患者さん本人と家族がともに理解することが大切です。家族が巻き込まれて強迫行為の手伝いをして、それが習慣になってしまうと、やめることが難しくなっていきます。そのような場合、専門家に相談しながら改善につなげていくようにしましょう。
干渉しすぎない
患者さんに対して干渉しすぎないということも大切です。
患者さんを思うあまりに家族が本人に代わってやってあげる、本人の意見を過剰に否定したりと、干渉がすぎると、患者さんは自分の考えや行動に自信がなくなり、症状を悪化させることもあります。
家族は患者さんと適度な距離を保てると理想的です。
学校・職場への対応
OCDの患者さんのなかには、病気を周囲に知られたくないと考えている人もいます。学校・職場への対応については、患者さんの承諾を得てから行うことが基本です。
OCDという病気を知らない人にとっては、患者さんが行う強迫行為が理解できません。過剰な手洗いなど、最初は不思議に思っていたことが、次第に不審につながり、批判の対象になる場合もあります。そのような場合、患者さんは学校や職場で居心地の悪い思いをし、居場所を失うことにもなりかねません。
OCDという病気に対する正しい知識をもってもらい、OCDという病気を抱えていることのつらさを理解してもらえるとよいでしょう。学校の場合には、担任教師だけではなく、養護教諭、スクールカウンセラーなどにも相談することで、適切な支援や配慮を得ることが可能です。
学校や職場へ病状について説明するときは、医師の協力も得て、診断書や文書での説明を書いてもらうとよいでしょう。
受診の勧め
強迫症状に苦しんでいても、病院へ行きたがらないことも珍しくありません。
受診したがらない理由はいくつか考えられますが、「病院へ行ったって治らない」「精神科の病院へは行きたくない」など、悲観的な考えや恐れによるものが多いようです。このような不安を一つひとつ取り除くことで、病院へ行ってみよう、と決心してくれることがあります。
病気や病院に対しての情報をあまりもっていなかったり、情報が偏っていたりすると、不安を増長させてしまうことがあります。家族は正しい知識を患者さんへ伝え、無理強いはせずに受診の機会を待ちましょう。
家族の方のストレスケア
患者さん中心の生活を長く送っていると、家族の方の負担も大きくなり、ストレスが生じてきます。患者さんの生活があるように、家族の方にもそれぞれの生活があります。余裕をもって患者さんと接するためにも、家族があまり無理をしないことが大切です。ときには、自分だけの趣味の時間や楽しみをもち、リフレッシュできるといいですね。