OCDの会市民フォーラム、行動療法研修会~聴講レポート
|
|
|
目次 §1 OCDの会と当日のプログラム OCDの会は、OCDの患者さんと家族が主体で活動を始めた団体です。最初は、熊本で会が立ち上げられましたが、名古屋、東京と、徐々に月例会としてミーティングを開催するところが増えてきました。広島では、家族の方が中心となり、不定期ではありますが、ミーティングを開いてきました。今年2月からは静岡でも活動が始まるそうです。 これらの活動のほか、OCDの会として、年に1回、市民フォーラムと行動療法研修会を開催しています。 第8回市民フォーラム、第7回行動療法研修会プログラム 1月28日(土) ●市民フォーラム 1.講演:『家族の対応について考える~ケアと愛情をめぐって~』 講師:信田 さよ子先生(原宿カウンセリングセンター所長) 2.対談:『人を変えるためには環境を変える~家族も環境のひとつ~』 パネリスト:信田 さよ子先生(原宿カウンセリングセンター所長) 原井 宏明先生(なごやメンタルクリニック院長) ●オープンミーティング 患者と家族の方とのグループに分かれ、自分の思いや考えを話し合い、 互いの理解や治療への意欲・ヒントを得ようという趣旨で行われます。 ●OCDの会研修会 ○対人援助職向けワークショップ(大学院生、対人援助者のみ) 「実際の生活や臨床にいかせる動機づけ面接」 講師:岡嶋美代先生(なごやメンタルクリニック) 「強迫性障害に対する認知行動療法~基礎からちょっとしたコツまで~」 講師:西川公平先生(CBTセンター) 1月29日(日) ○一般向けワークショップ 「ついつい繰り返してしまう困りごとを自分で何とかするために ~強迫性障害への認知行動療法」 講師:西川公平先生(CBTセンター) 「家族が学ぼう、動機づけ面接」 講師:原井宏明先生・岡嶋美代先生(なごやメンタルクリニック) §2 本人と家族の問題とを分ける~市民フォーラム①
原宿カウンセリングセンター所長 信田さよ子先生 アディクションは、アルコールやギャンブルなどへの依存症が代表的で、「わかっていても止められず繰り返し、家族を巻き込む」こともあり、アディクションとOCDは共通する面も多いと考えられます。アディクションの治療は、患者さん本人が受診しないと治療できないという考えが一般的でしたが、近年では、家族の問題としてとらえ、カウンセリングなどを通して家族を援助することもあるそうです。 しかし、アディクションの当事者が、治療への意欲も動機もなく、家族が困り果てている場合、その問題は当事者の問題なのか家族の問題なのかという領域が不明瞭になることがあります。そのため、信田先生のセンターでは、家族から問い合わせがあったときに、「お困りの方はどなたですか」と聞くこともあるそうです。 家族の方がアディクションの問題を語るときに、「誰の問題」なのかを表す主語がなく、当事者と家族の間に境界がなくなっているように見られたら、主語をはっきりさせて、あえて境界を設けるようにします。そして、相手を変えようとしたり、相手の行動を止めさせようとすることを、止めてもらうようにし、まずは、当事者よりも家族が変わるようにお話します。 また、当事者に治療を受ける意思がなく、そのことに対し家族も困っているのに、お互い離れられずにいる関係を共依存といいます。本人への愛情からよかれと思って行うことが、アディクションを助長し、本人の回復を妨げてしまうのです。このような依存の協力者ともいえる人をイネイブラー*2といいます。イネイブラーは、親や配偶者のように、当事者にとって一番愛情を注いでいる人がなりがちです。家族の愛情が、その障害の快復にプラスなのかマイナスなのかを疑い、厳密に考えないといけないそうです。 これらの考え方は、OCDの患者さんと家族との問題でも役立つことでしょう。 §3 信田先生と原井先生との対談~市民フォーラム② 『人を変えるためには環境を変える~家族も環境のひとつ~』と題した対談では、なごやメンタルクリニック院長の原井宏明先生と先ほどの信田先生が対談しました。原井先生自身はアルコールを受け付けない体質だそうですが、ハワイでアルコール依存症の方の自助グループに参加した経験があるそうです。その自助グループのあり方を参考に、OCDの会でも、「当事者主体、言いっぱなし、聞きっぱなし」というルールを取り入れてもらったそうです。また、信田先生からは、アディクションの自助グループは、専門家によるカウンセリングよりも有効な場合もあるという意見がありました。
会場からの質問に答える信田先生と原井先生 OCDの患者さんの母親からの、「薬を飲みたがらない」という発言に対しては、信田先生は「誰が?」と、先ほどの講演のように主語を問い直していきました。 患者さんからの質問では、「家族が病気に関心がないので、わかってもらうのはどうしたらいいか」など、OCDの多くの人が体験したことがらが話題に上りました。 §4 オープンミーティング 市民フォーラムの後に行われたオープンミーティングは、「言いっぱなし、聞きっぱなしで、アドバイスや質問はしない」というOCDの会のミーティングのルールのもと行われました。本人グループと家族グループに分かれて行われましたが、司会は熊本のOCDの会などで月例会を経験してきた当事者の方がしました。 このようなミーティングに参加するのは初めてで緊張しているという人、ここで初めて自分以外のOCDの患者さんに会ったという人もおり、なかには涙ぐむ人もいらっしゃいました。 広島でのミーティングは、今までは家族によるものだったのですが、今後は、患者さん本人が参加するミーティングも行いたいという声が出ていました。 §5 OCDへの認知行動療法~一般向けの研修会①
CBTセンター所長 西川公平先生 また、会場から患者さんが参加して、認知行動療法を簡単に体験してもらうという実践的な試みもありました。まず、西川先生が症状のしくみを記入する用紙を用いて、患者さんの症状について質問をしていきました。 認知行動療法では、このように症状の状況を患者さんに聞いて、治療者も患者さんとともに症状を観察していく部分も大事だそうです。ある患者さんは、電車から降りるときなど、ひとつの場所から立ち去るときに忘れ物がないか確認の症状が現れるそうです。そこで、当日の会場で、実際に自分の持ち物を片付けて、確認を繰り返さずに席を離れ、別の席に移動していくということを連続して行うエクスポージャー*3のデモンストレーションが行われました。 第92回コラムに、西川先生の認知行動療法についての解説が掲載されています。(第92回コラム) §6 動機づけ面接~一般向けの研修会②
患者役(岡嶋先生)の巻き込みに応じない親役(原井先生)によるロールプレイ お互いに手を引っ張りあっているときなど、片方が力を入れ続けると、もう片方もさらに力を入れて抵抗するものです。OCDの問題でも、相手を一方的に変えようとしても、なかなか変わってはくれず、かえって抵抗を強めてしまうことがあります。そのような状態にならないためには、こちらは力をより強めるのではなく、まるで電柱になったかのように反応しないことで、相手はあきらめて力をゆるめることがあるそうです。ただし、家族の反応に関係なく、当事者が暴力をふるったりするなど難しいことも実際にはあるとのことでした。 相手とコミュニケーションをうまくとるための会話のポイントには、次のようなものがあります。 ・表現をより具体的にする (例:今ここでやっていることに的を絞る、いつのことかをはっきりさせる) ・ポジティブな表現を用いる (できない、ねばならないなどの否定的な表現は避ける) ・相手を感情的に刺激するための表現や、相手にわざと否定させるような言葉づかい、 わざと答えられない質問(反語表現)は止める。 §7 広島OCDの会について 市民フォーラム、研修会に参加した後、広島OCDの会の吉見さんに感想を聞きました。 「広島にはOCDに対する行動療法をされる先生がほとんどおられないので、広島でこのような会をやってもらえれば、行動療法がどんなものかわかってもらえていいと思っていました。そして、たくさんの人が来られて、非常に参考になったという意見を多くいただきました。そして、私たちが広島で活動をしていることが知られたので、今後、仲間が増えて、活動がさらに活性化するといいと思っています」とのことでした。 *注釈
*リンク OCDの会(熊本)http://ocdnokai.web.fc2.com/index.htm 名古屋OCDの会http://758ocdf.web.fc2.com/ 静岡OCDの会http://shizuokaocd.web.fc2.com/index.html 東京OCDの会http://109ocdf.web.fc2.com/index.html 広島OCDの会連絡先Eメール iori0105@ksh.biglobe.ne.jp 注)広島OCDの会は、現在、ホームページを作成中のため、問い合わせは上記にお願いします。 |




