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OCDコラム

OCDコラム

もしかして強迫性障害(OCD)
~OCDと潔癖症、神経質との違い


「外出先でトイレを使うとき、洋式便座に、直接座れますか?」
OCDではなくても、抵抗のある人はたくさんいることでしょう。除菌シートなどで便座を念入りに拭いてからでないと使えないという人もいらっしゃいます。ですが、このような行為をするからといって、その人たちがみんなOCDとは限りません。
汚れに限らず、細かいことがとても気になるので、「自分はもしかしたらOCDでは?」と思った経験がある人もいるかもしれません。
どのような場合がOCDという病気といえるのか、性格と病気との区別はどこにあるのか、 潔癖症、神経質、発達障害とOCDとの違いについて、今回のコラムではQ&A方式で考えていきたいと思います。


目次
§1 入浴や戸締りで時間がかかるとOCD?
§2 性格か病気か? 潔癖症とOCDとの違い
§3 困るのは本人よりも周囲の人なら
§4 発達障害とOCDとの違いと関連
§5 実際の判断には受診が必要


§1 入浴や戸締りで時間がかかるとOCD?
高校生の娘ですが、お風呂やシャワーにとても時間がかかっています。OCDでしょうか?
OCDと診断されるためには、医学的な診断基準[1]*1)に当てはまっている必要があり、以下は、それに基づいて書きます。

まず、“入浴時間が長ければOCD”というわけではありません。単なる風呂好きであったり、おしゃれのために入浴に時間がかかっているようでしたら、OCDとはいえません。
「あなたの入浴時間が長いために、ほかの家族が困っている」と、本人に話して改善できるようでしたら、OCDの可能性は低いかもしれません。
というのも、OCDで洗浄強迫がある人は、自分で洗い方をコントロールするのが難しいからです。

風呂好きやおしゃれのために長湯をしている人でしたら、入浴後、心身の疲れがとれてリラックスしているのが普通でしょう。しかし、OCDで入浴やその前後の時間に強迫行為を行っている人は、自分で決めた通りの手順で入浴しているかなど警戒し続けているため、リラックスとは逆の状態にいます。

そのため、自分が好きでやっているのではなく、症状によってやらされていると感じ、入浴後は、非常に疲れてぐったりします。このような状態が高じると、次第に入浴を避けるようになり、何日も、何週間も入浴をしないこともあります。

うちの母は、戸締りに時間がかかります。外出するときは、家中の窓をチェックし、ガスの元栓を閉め、仏壇のお線香の火もしっかり確かめます。特に、旅行に行くときは、家中の電源などをチェックするので、20分くらいかかります。OCDでしょうか?
戸締りの確認は、誰でもするものです。ただ、OCDの強迫行為では、自分が望まない繰り返しや、過剰な確認行為があります。そして、個人差はありますが、自分でも、過剰だ、どこかおかしいと感じているのに、止められなくなります。

戸締りを忘れて外出したら、誰しも「泥棒に入られてしまったら、どうしよう」と、とても不安になるでしょう。しかし、OCDの強迫観念からくる確認は、このような現実生活における心配が募ったものではないといいます。

OCDの人が繰り返し戸締りの確認をする場合、何度確認をしても、“閉まっている”という確信がもてずに、確認を繰り返したくなる衝動(強迫観念)が生じます。そのために、強迫行為を止めるのが難しくなるのです。これはOCDの人と心配性の人と異なる点です。

また、OCDであるかどうかは、強迫症状にとらわれて、日常生活にどの程度、支障をきたしているかによって判断します。日常生活に支障をきたしている時間の合計が概ね1日1時間以上ならOCDと診断されます。これは、戸締りに限らず、その人がとらわれているすべての強迫観念、強迫行為を合計した時間です。しかし、実際に医師が診断する場合は、時間だけではなく、ほかの診断基準も合わせて、総合的に判断します。

子どもの場合、親と同居しているので、戸締りに確認の症状が現れにくいのですが、忘れ物がないか、文字を正しく読み書きできているかといった場面で、確認を繰り返すことがあります。ただし、子どもの場合は、必ずしもそれらの確認行為を過剰であるとか、病気かもしれないという自覚があるとは限りません。困った癖がついてしまったなどと思っていることがあります。


§2 性格か病気か? 潔癖症とOCDとの違い
夫が、服のしわやほこり、靴の細かい汚れを気にします。タオルやシャツもすぐに替えるので、洗濯物も多く、クリーニング代もかかって困ります。洋服などはそれぞれにたたみ方が決まっています。満員電車で、ほかの人が服に強く触れると、ムッとすることもあるそうです。OCDなのでしょうか?
細かい汚れにこだわったり、衛生的なことを強く意識したり、他人が触ったものに対して抵抗があったり、手洗いや掃除がひんぱんである人を、潔癖症と呼ぶことがあります。しかし、“潔癖症”は医学的な用語ではありません。

自分の行為は当然で、他の人が鈍感でだらしないのだと思っているようでしたら、性格や癖によるものである可能性が考えられます。OCDであるかどうかは、このような行為に対して、過剰である、自分でもおかしい(不合理)と感じ、精神的な苦痛を感じているかによります。ご本人がこれらの行為によって自分の仕事や生活に支障をきたしていないと思っているのでしたらOCDとは考えにくいですね。

性格は、成長の過程で徐々に形成されていくものです。しかし、OCDは、発症後、精神的な苦痛が強くなり自分ではコントロールできなくなっていきます。それは発症の前と後とで大きく異なります。このように、OCDという病気と性格とは、区別して考えなくてはなりません。

完璧主義、几帳面、考え方に柔軟性がない性格のことを強迫性格と呼ぶことがあります。 [2]また、現代では、強迫性パーソナリティ*2)という言葉も使われています。神経質という言葉は、外からの刺激に過敏に反応し、細かいことを気にして、不安を感じやすく、新しい環境に適応が難しいような性質傾向を表すものです。

パーソナリティの研究で有名な心理学者のハンス・アイゼンク(*3)は、このような神経質傾向を、パーソナリティの主要な尺度の一つと考えました。[3]

古くは、このような強迫的、神経質なパーソナリティが、何らかの条件によって、病的な神経症(*4)に発展すると考えられてきました。その神経症の一つのタイプが、OCD(当時は強迫神経症)です。

しかし、近年の研究では、必ずしも強迫的で神経質なパーソナリティがOCDに発展するわけではないことがわかってきました。現代では、このようなパーソナリティとOCDとは区別され、むしろOCDの強迫観念は、本人の性格と調和せずに、自分が望まないのに繰り返し意識に侵入し、苦痛を感じさせるものだと考えられるようになりました。[4]

つまり、単に強迫性格や強迫性パーソナリティであるのでしたら、病気ではありません。OCDは、適切な治療によって症状がかなり改善されることがあり、それに伴って考え方や日常の様子も変わることがありますが、その根本となる性格は、比較的、変わりにくいものです。


§3 困るのは本人よりも周囲の人なら
私の上司は、部下に過剰な確認を求めます。お客様に伝える連絡に漏れがなかったか、さ細なことまできちんとできていたか、退社後に携帯電話にかけて聞いてくることもあります。とても気になるそうで、しつこく聞かれますし、納得がいかないときは、ほかの職員にも電話をかけまくります。
業務にそれほど支障がないミスでも、ひどく怒られます。そのため、私たちの課は、全体に仕事内容が細かくなり、残業時間が増える一方です。皆、ストレスを抱えて困っているのですが、上司がミスや確認にこんなに細かいのはOCDだからでしょうか?
あなたの上司が、ご自身の状況をどのように考えているのかわからないので、これだけでOCDかどうかの判断は困難です。周囲の人が困り果てるほど確認に細かいというのは、OCDであることも考えられます。しかし、本人が、その状況に何ら違和感を抱かずに、むしろ当然だと考えているのでしたら、パーソナリティの問題なのかもしれません。

パーソナリティによる問題がはなはだしく、周囲の人とのトラブルが絶えず、社会生活に支障をきたしている場合、パーソナリティ障害という診断が当てはまる場合があります。パーソナリティ障害には、いくつか種類があり、そのうちの一つに強迫性パーソナリティ障害があります。

強迫性パーソナリティ障害かどうか判断するには、まずパーソナリティ障害全般の診断基準に照らし合わせる必要があります。その基準では、考え方の偏り、感情的、衝動的な激しさ、対人関係のトラブル、社会生活への支障などの項目で、かなり極端な場合が想定されています。専門医によって、判断に多少の違いがありますが、Q4の上司の方のように、通常の社会生活を送っている人が、このように診断されることはあまりないように思われます。また、医療的な治療ではなく、社内で話し合って対応したほうが有効な場合も考えられます。

そもそも、強迫性パーソナリティ障害の人は、自分のこのような面が病気だと思っていることは少なく、自分から精神科を受診しない傾向があります。物事がうまく行かずに不完全であったり、リスクへの保証がなかったりすると不安になることについては、自分自身が繊細で不安になりやすいからだと感じています。そのため、周囲の人の方が困惑し、精神の専門家に相談したほうがいいのではないかと思うことがあるようです。


§4 発達障害とOCDとの違いと関連
息子が中学生になってから、シャワーの時間が増えたり、着替えがひんぱんになったために洗濯物の量が増えました。小さい頃から、水遊びやシャワーが好きで、感覚的に敏感なところがあり、衣服が濡れたままでいるとすぐに脱ぎたがり、ねばねばしたものに触れるとすぐに手を洗いたがるところがありました。ほかにも、こだわりが強く、友だちも少なく、小学校5、6年のときにいじめられたこともありました。感じやすい子なので、OCD、もしくは発達障害ではないか心配です。
この内容だけで、OCDか発達障害かの判断は困難です。発達障害の人のなかには、保育園や幼稚園の頃から、感覚に対する鋭さと鈍さの差が極端で、物事へのこだわりが強い人がいます。⇒参考:第82回OCDコラム OCDとの併存が多い発達障害

発達障害といっても、その特性は多様で、程度もさまざまです。発達障害の特性がみられても、日常生活にそれほど支障がなければ、障害ではなく、その人の個性です。
しかし、進級や進学など、生活環境が変わる時期に、ストレスを感じやすく、その影響で、2次的にOCDになってしまう人も少なくありません。

思春期になれば誰しも、それまでとは違って、自分と他人との違いや、人にどう思われているかを気にするようになり、おしゃれへの興味が増します。そのような意識から入浴や着替えの回数が増えているのなら、年齢に応じた自然な出来事です。⇒参考:第81回OCDコラム 思春期の子どものOCD ―臨床心理士からのアドバイス―

ここでは、入浴や着替えの回数が増えるといった、見てわかる変化より、本人がどのような動機から、そのような行為をたびたび行うのかという精神的な面が、OCDの判断には重要です。とはいえ、思春期は自己が確立されつつある時期なので、以前ほど、どのような気持ちからそのような行為に及ぶのかなど、親には話してくれないかもしれません。そのような場合、スクールカウンセラーなど、親以外で、本人が話しやすそうな人に関わってもらう方法も考えられます。


§5 実際の判断には受診が必要

上記の質問:Q1~5は、いずれもよくある例として挙げたもので、特定の人を想定したものではありません。

通常、専門家がOCDかどうか判断するときは、本人に直接会い、ある程度時間をかけてくわしく質問をしていきます。Q1~5に書かれたような数行の質問で、判断するには情報不足です。そのため、「これだけでは判断ができない」という回答になってしまいました。

似たような行為でも、それを行う人の年齢や状況によって、意味合いが大きく異なることもあります。上記の質問とその回答はあくまで参考と考え、OCDかどうかの判断が必要なときは、専門医を受診してください。⇒お近くの病院検索

OCDや発達障害など病名をはっきりさせることは大事なことです。しかし、そうすることによって、その人や周囲の人が抱える問題が解消する方向に向かわなくては意味がありません。症状を悪化させずに、よりストレスの少ない健康的な生活を送れることに結びついてほしいと思います。そのための参考になれば幸いです。


*注釈

*1
診断基準――精神疾患を診断するための基準を、国際的に専門家によって、まとめられたもの。WHO(世界保健機構)によるICDと、APA(アメリカ精神医学会)によるDSMとがある。このコラムでは、主にDSMの最新版であるIV-TRに従っている。[1]DSMは、2013年に改定され、DSM-5が発表される予定で、現在、その草稿案(ドラフト)が発表されていている。
*2
パーソナリティ――人格。その人の行動や考え方を特徴づけ、その人ならではの独自性、一貫性を与えるもの。性格(キャラクター)と意味が似ていて、定義の違いも明確ではない。しかし、日本語の人格は、人格者という言葉があるように、その人の性格に加え、自分以外のものへの適応、社会から見た価値観の要素が伴う。[3]そのため、パーソナリティ障害を人格障害と訳すと、誤解を招きやすいなどの理由で、パーソナリティと呼ばれるようになった。
*3
ハンス・アイゼンク――心理学者。パーソナリティの研究で、アイゼンク性格検査を考案した。また、不適切な学習によって神経症が生じるとして、その治療法として行動療法を開発した。
*4
神経症――心因性の障害・疾患で、現代の不安障害(OCD、パニック障害、社交不安障害、恐怖症、PTSDなど)の疾患を総称した呼び方である。基本的には、人格は保たれているが、強い不安を抱え、症状にとらわれた状態である。[3]神経症は、かつてはノイローゼとも呼ばれていたが、神経自体の病気とは区別されるため、現代の診断基準ではあまり用いられなくなった。



*参考文献

[1]
American Psychiatric Association[著]、高橋三郎、大野裕、染矢俊幸[訳]「DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版」医学書院(2003年)
[2]
成田善弘「強迫性障害 病態と治療」医学書院(2002年)
[3]
中島義明、子安増生、繁桝算男、箱田裕司、安藤清志、坂野雄二、立花政夫[編著]「心理学辞典」有斐閣 (1999年)
[4]
原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006年)