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OCDコラム

OCDコラム

強迫性障害(OCD)の自助グループとの付き合い方
~参加者の感想に耳を傾けて

有園正俊  OCDお話会主宰・精神保健福祉士


OCDの自助グループや患者・家族の会は、全国にいくつかあります。
このような会は、実際にはどのようなことをするのでしょうか。今回は、OCDの患者さんだけを対象とした市民団体のうち、東京OCDの会と、OCDお話会に参加している皆さんに協力していただき、会に参加した感想をうかがいながら、自助グループとの付き合い方を考えていきたいと思います。


目次
§1 自助グループといわれる会はどのようなことをしているの?
§2 同じ悩みを抱えた人に会える
§3 先入観と現実との違い
§4 家族の参加
§5 OCDのことをもっと社会の人に知ってほしい


§1 自助グループといわれる会はどのようなことをしているの?

OCDだけを対象に活動している市民団体は、現状では少ないため、それぞれの会には遠くから電車を乗り継ぎ、なかには新幹線などを利用して参加する方も少なくありません。徐々に、これらの団体は医療機関でも知られてきたので、病院や精神関連の施設から紹介されて参加する人もいます。

活動内容やルールは、会によって異なりますが、どの団体も、会合、ミーティングを定期的に開催しています。そこで、参加者は自分の体験や思いを話します。

一般に、このような会では、参加者同士が自由に話したり、アドバイスし合うというのではなく、「参加者の発言に受け答えをしない(言いっぱなし、聞きっぱなし)」というルールを設けていたり、「専門家を交えて話す」などの工夫をしています。それは次のような理由からです。

OCDは、症状の細かい部分や併発疾患の有無など患者さん一人ひとりの状況が異なるため、実際にはその人にあった専門的な治療法が必要になります。一言二言のアドバイスで、症状が劇的に改善するということは期待できない病気なのです。また、参加者が受診している医療機関もさまざまで、治療の詳細は担当医と患者さんの状況によって異なる場合もあります。そのため、Aさんにうまく行った治療が、Bさんにも当てはまるかといえば、そうとは限らないのです。
精神科の病気では、アドバイスが精神症状に影響を与えてしまうおそれがあります。そのため、専門家以外が適切なアドバイスをすることは難しいのです。



§2 同じ悩みを抱えた人に会える

OCDは症状が重くなると生活の多くの場面で支障をきたすため、家族以外の人との交流が減り、孤独な思いをしがちです。また、グループ療法などを行う施設も限られているため、治療を通して同じ病気の人と知り合えることは非常に少なく、ほとんどの人が、会に参加して、初めて自分以外のOCDの患者さんに出会うことになります。

東京OCDの会とOCDお話会に参加された皆さんから、次のような声を寄せていただきました。

「自分の周りにはOCDの人がいなかったので、ずっともんもんと過ごしてきた」

「会に参加するまでは本しか頼るものがなかった」

「いろいろな人の治療法を聞いてみたかったし、1人寂しく悩みを抱え込むより、自分の話を聞いてくれる人にいてほしかった」

「実際に同じ悩みをもつ人と会えて、安心感があり、気持ちが楽になった」

それでは、自分以外のOCDの患者さんに出会うメリットには、どのようなものがあるでしょう。

「自分が苦しんでいることを発言できてよかった」

「病状は違っても同じOCDとして共感できるし、よく気持ちがわかる」

「同感と思える人々の意見を聞けてよかったです」

「○○さんの言葉が、とても心に響きました。『うんうん、そうだね』って、思いました」

「会に参加するまでは自分のような悩みをもつ人と出会うことはなかったのですが、自分と同じような苦しみ、ともすれば自分以上に強い症状に家族も含めて苛まれている方々が多くいることを会に参加することで知ることが出来、「なぜ僕ばかり」という悔しさが以前より和らいだことがメリットだったと思っています。またそういう同志たちと知り合いになれたことも嬉しかったです」

OCDは、ほかの人に理解してもらうのが難しい病気で、それぞれが抱える悩みや思いを話しても、通じる場がなかなかありません。ですから、実際に自助グループなどに参加して、自分の思いを声にしてみたり、ほかの人の声を聞いたりするだけでも、すこし心が軽くなるなどのメリットがあるのです。

「私は、医者にも通っているし薬も飲んでいます。でも、なかなかよくなりません。入院も何回かしました。入院当初はいいのですが、また元に戻ってしまいます。病気になってからもう19年になります。苦しいです」

このように治療がうまく行かずに悩んでいる人が、何とか改善の糸口を見つけたくて、参加することがある一方、治療によって症状が改善できた人が会に参加することもあります。

「現に治った人(生活に支障をきたさない程度まで症状が改善した人)が目の前にいることが嬉しい」

「希望をもって生きて行くパワーをもらえる」

会そのものは治療の場ではないので、参加し続けたからといって、直接、改善効果があるというものではありません。しかし、百聞は一見にしかずで、改善した人に実際に会ってみることで何か感じることがあるでしょう。さらに、改善した人の話を聞くなかで、改善のヒントがみつかったり、治療へのモチベーションがあがったりといったメリットがあります。

ただし、これらの会の集まりは、参加者の状況や状態は人によってさまざまですので、改善をせかしたり、未受診の人に受診を強要したりすることはありません。OCDのほかに併存疾患がある場合など、さまざまな理由によって、改善の見込みがすぐには立たない人もいます。そのような人たちも、気兼ねなく通い続けられる居場所であることも大事だと思います。

どの会も、会合は月1回前後のペースですが、それでも外出し、家族以外の人とのコミュニケーションの機会があるということは大切です。なかには、そこで知り合った仲間とメール交換をするようになったり、友だちづきあいをする人たちもいます。

「外に出るきっかけとなった」

「何回か参加するうちに、気持ちが通じ合う友人ができた」

症状がある程度改善した人にとっては、仕事や学業に復帰していくことが当面の目標になります。今まで症状のためにできなかった活動ができるようになって、それに費やす時間も増えていきます。このような状況の人では、会に参加する場合の意味が少し異なってきます。自らの症状改善のためというよりも、ほかの参加者のお手伝いをするといったボランティア的な面が強くなります。自らの経験を話すことで同じ悩みを抱える人たちの支援をするのです。しかし、症状が改善した後も会に参加してくれる人は少なく、そのような人たちは貴重な存在です。


§3 先入観と現実との違い

会に参加する前に、あれこれ想像して心配してしまう人がいます。しかし、実際に参加してみたら、自分が心配していたようなことはなかったという声も多く聞かれました。

「もっと子どもの参加者が多いのかと思っていたら、そうではなかった」

「もっと暗くて重苦しい雰囲気かと思っていたら、そうでもなかった」

「講義を聞く勉強会のような感じで、最後、質疑応答の時間を設けて、当事者同士の話はなく聞いているだけだと思っていましたが、違いました」

OCDの患者さんは、頭の中の考え(観念)にとらわれやすいのですが、頭だけで考えていることと現実とは、必ずしも一致しません。先入観と現実とを区別して、なるべく行動に移してみることが大事です。
また、OCDという病気は、症状のくわしい状況はさまざまであるため、ほかの人と共通している部分もあれば、異なる部分もあります。ほかの人にとっては汚いと思え、強迫症状が生じるものでも、その人にとっては平気なものもあります。このようなことも、会に参加して、ほかの人の体験を聞いていくうちに、気づき、自分の症状に対する見方も変わっていくことがあります。

それから、OCDの患者さんは、緊張しやすい人が多く、

「初めての体験でドキドキです」

という声もよく聞きますが、初めてのときは誰もが緊張します。何度参加しても緊張するという人もいるので、「緊張して当たり前」くらいに思ってください。


§4 家族の参加

このような会には、家族が参加することもよくあります。家族と本人が一緒に来るというケースも少なくないのですが、家族だけで参加することもあり、そのような場合、本人の症状が重い、通院や外出がうまく行かないなど、本人が参加できないケースが大半です。そこで家族の人が、何とか改善につながる情報はないかと参加しているようです。

このような会は相談会ではないので、直接の解決は困難です。また、本人が、受診に抵抗している段階で、家族が治療の話を持ち帰っても、素直に聞くとは限りません。むしろ親が会への参加や受診を促す態度を示すと、反発を強めることもあります。

家族はOCDに苦しんでいるお子さんや兄弟姉妹、配偶者などのために参加を決意されますが、まず自分のために参加してほしいのです。
OCDの患者さんがいる家庭では、症状に家族が巻き込まれたりして、同居の家族もストレスを溜めることが多いので、そのような悩みやストレスを吐き出すことも大切です。

治療については、家族よりも本人が困らないと、医療機関への受診に結びつかないようです。本人が困って、何とか症状を改善したいと思ったときがチャンスです。これまでに会で聞いてきた情報を本人に伝えてあげてください。


§5 OCDのことをもっと社会の人に知ってほしい

お住まいの地域に自助グループがない場合、インターネットの掲示板やブログで交流する方法も考えられますが、インターネットの情報は、玉石混淆ですし、直接出会う関係ではないので、交流が難しい面があります。

アメリカには、OCDの患者さんを支援する民間団体は多数あり、直接参加が困難な人のために、インターネットや電話を利用したオンラインのサポートグループも存在します。(*1)残念ながら日本では、まだアメリカほど環境が整っていません。

精神の病気を抱えた人のためにサービスを提供する施設(地域活動支援センター、デイケアなど)は、全国にありますが、そのような施設で、OCDの利用者さんに出会うことはあまりありません。だからといって、OCDの患者さんが生活に支障をきたしている度合いが、統合失調症などの患者さんに比べ、軽いとは限りません。むしろ、会に参加されるOCDの患者さんやその家族を見ていると、非常に困った経験をされています。会に参加した人の声に、次のようなものがありました。

「テレビでもっとOCDを取り上げて、OCDへの認知度が広まるようになるとよいのに」

日本のどこに住んでいでも、OCDで困っている人が利用できるサービスや施設、民間の自助グループの輪が広がってほしいと思います。そのためには支援する人材の確保も課題になっていきます。
同時に、OCDという病気を多くの方に知っていただき、広く社会でも受け入れてほしいと願います。



*主な強迫性障害関係の団体
OCDの会(熊本) http://ocdnokai.web.fc2.com/index.htm
東京OCDの会 http://109ocdf.web.fc2.com/index.html
名古屋OCDの会 http://758ocdf.web.fc2.com/
OCDお話会(東京) http://kyou89.fc2web.com/index.htm
子どもの強迫友の会(京都、大阪) http://homepage3.nifty.com/reno/

*参考文献
*1 International OCD Foundation(アメリカの国際的なOCD団体)ホームページ
http://www.ocfoundation.org/