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OCDコラム

OCDコラム

OCD(強迫性障害)と依存にまつわる話
お酒・買い物・巻き込み


OCDやうつ病などを抱えていると、つらい気分をお酒でまぎらわしたくなることがありますね。そのような気持ちもわからなくはないのですが、ただ、一部の人で、そのような飲み方が習慣となり、ときに限度を超えて、アルコール関連精神障害になってしまうことがあります。
お酒に依存することとOCDによる強迫症状は、よくないとわかっているのに繰り返してしまう点など、似ているところもあるのです。お酒のほかに、買い物、家族に対する強迫行為への巻き込み、依存性パーソナリティ障害など、今月のコラムでは、広い意味での依存とOCDに関連する話をまとめました。


目次
§1 お酒とOCD
§2 依存症とOCDの共通点と違う点
§3 買い物のし過ぎは依存症か?
§4 依存症とOCDの巻き込みによる家族との関係は似ている
§5 依存的な人間関係にはこのようなものもある


§1 お酒とOCD

OCDの症状によって、毎日、つらい思いをしている時間が長いと、少しくらいは自分の好きなことに時間を使いたいと思う人も多いのではないでしょうか。そこでつい深夜まで起きて、テレビやインターネットを見たり、お酒を飲んだりする人がいます。

精神的に余裕があり身体的にも健康な人ならば、お酒を適度に飲むことでストレスを発散させることもできます。しかし、OCDやうつ病の人のように精神症状からくるつらい気分を晴らしたい、つらい気分をいっときでも忘れたい、ストレスを解消したいなどの動機で飲むと、かえって逆効果となることがあります。飲酒がもたらす悪影響には次のことが考えられます。


アルコールには脳、神経を麻痺させる性質があるために、このような作用が生じます。これらは悪化すると、アルコール関連精神障害であるアルコール依存*2、アルコール中毒*3になってしまうこともあります。アルコール依存になると、治療をしても完治は難しく、再び飲めば、症状が再発してしまうので禁酒を続けるしかありません。そのため、お酒を自分でコントロールできるうちに、このような習慣にならないようにすることが大切です。


§2 依存症とOCDの共通点と違う点

現在の診断基準*4,[1,2]では、依存症というと、アルコールや薬物という物質に依存する精神疾患をさします。カフェイン、タバコのニコチンでも依存になることがあります。
また、催眠薬や抗不安薬の場合、ちょっとでも不調になりそうだと感じたときに必要以上に服薬することが習慣になると、依存性が生じ、止めることが難しくなることがあります。ただ、このような物質関連の障害は、精神的に依存する面と、体の生理的なしくみによる面とがあり、精神疾患の診断基準の一つで、アメリカ精神医学会が定めたDSM(精神疾患の分類と診断の手引き)では、次回の改定の際には「依存」に代えて、「使用障害」という言葉を使うことが提案されています。[3]

これらの特徴は、OCDの強迫行為と似ていますが、違う点もあります。依存症では、行為をしているときに一時的な快感、満足感が得られますが、OCDの強迫行為ではそのような快楽のあるものは対象となりません。むしろ、強迫症状は、不安や精神的な苦痛をもたらすものです。[2]


§3 買い物のし過ぎは依存症か?

OCDの人のなかには、強迫的溜めこみ(⇒第74回コラム)のように物を集め過ぎてしまう、買い物をしすぎてしまうといった行為に悩む人がいます。

もちろん、過剰に買い物をする人が、すべてOCDというわけではなく、双極性障害(そううつ病)や統合失調症などほかの精神疾患を抱えている人にも、このような症状はみられます。また、「買い物依存」という言葉がありますが、これは正式な病名ではありません。

過剰な買い物が強迫症状である場合、買い物によって快感や満足感を求める気持ちよりも、むしろ、「今、買わないと、二度と買えずに後々とても後悔するのではないか」「後で物がなくて困って大変な思いをするのではないか」という不安や恐怖にかられて行われます。これは、強迫的買い物(Compulsive Buying)と呼ばれますが、これも診断基準に載っている病名ではありません。そして、買い物という強迫行為をした後は、ほかの強迫行為で悩んでいる人と同様に、一時的な安心は得られることはあっても、やがて経済的な問題が顕在化し、家族を困らせることになったり、買い過ぎてしまったことへの罪悪感や自己嫌悪にさいなまれたりすることになります。

また、外出をすることが強迫症状のために非常に困難という人は、たまに外出したときに、生活に必要なものなど、ついあれこれ、いっぱい買ってしまうことがあります。たとえば、食品や洗剤を過剰に買いだめしたり、すぐには着ないような服まで買ってしまったり、といったものですが、これは依存ではなく、OCDによるものです。

しかし、強迫症状を抱えている人でも、好きなファッションや趣味の物を大量に買うといった、快楽を伴う買い物にはまってしまう人もいます。このようなケースは、支払いが困難になるほどの過剰な買い物であっても、強迫症状には該当しません。OCD以外の問題を併存している場合が考えられるので、主治医と相談してはいかがでしょうか。

買い物以外に依存性のある行動には、ギャンブル、ゲーム、インターネットなどがあります。いずれもひどくなると、本業に支障をきたし、生活を破たんさせ、借金が増え続けるなど深刻な状態になる人もいます。これらは現在の診断基準では、依存症ではなく衝動コントロールの障害として診断されたり、診断名がつくことが難しいことがあります。


§4 依存症とOCDの巻き込みによる家族との関係は似ている

強迫行為のために周囲の人を巻き込み、その人の手助けがなくてはいられない関係も依存症に似ています。アルコール依存での飲酒を、OCDでの巻き込みに置き換えてみるとわかりやすいでしょう。

いずれも、行為をしたいという衝動が激しいときには、どのような手段を使ってでも、それを成し遂げようとします。そのため、家族に強い感情をぶつけて、トラブルになる人もいます。症状が悪化すると、本業がおろそかになり、経済的にもひっ迫するようになり、周囲との人間関係や生活自体も破たんしていきます。否認といって、病気であることを認めない、医療機関への受診を拒否するということは、アルコール関連精神障害ではよくありますが、OCDでもみられます。

そして、飲酒や強迫行為をして、その衝動が治まると、本人は自分が起こしたトラブルに罪悪感を抱き、反省することもあります。家族が「反省しているのならば、これから気をつければいいよ」と許しても、依存症やOCDの強迫行為では、しばらくするとまた同じことを繰り返すという悪循環になっていきます。そのようなところが病気であり、適切な治療が必要となるのです。

依存症もOCDの強迫症状も本人にはコントロールが困難であり、家族だけでこのような関係を改善しようとしても非常に難しいものです。できれば専門家の支援によって、依存の関係を改善していけると理想的です。


§5 依存的な人間関係にはこのようなものもある

他人に対して依存的な性格が極端に強い場合、パーソナリティ障害の一つである依存性パーソナリティ障害と診断されることがあります。ただ、依存性パーソナリティ障害は、極端に本人の主体性がなく、自分では日常生活のささいなことも決められず、人に頼ります。それがうまく行かないと、強い不安に襲われます。周囲の人を、暴力で支配しようとする関係ではありませんし、日本でこのような診断名がつくことはそう多くはありません。

依存性パーソナリティ障害の人が強迫症状を併発すると、「こんなことして大丈夫?」とすべての行為に対し、人に安心の保証を求めるような強迫行為がみられます。たとえば、着替えがきちんとできているか、テーブルの上の物を少し動かすにも、家族に確認を求めてくることがあります。家族に頼って自分からは何も行動が起こせないといった状態になっていきます。

また、恋愛の場面、性的な関係、人間関係などで、精神的に苦痛が伴う行動が繰り返されても、相手から離れらないというように、依存症に似た関係になることもあります。世間的に使われる「恋愛依存」「セックス依存」「共依存」のような言葉がありますが、今のところ、これらは正式な病名ではありません。ただ、DSMという診断基準では、セックス依存や、先ほど述べたギャンブルやインターネットの依存性については、将来における検討課題とされています。[3]

このような人間関係は、本人の精神症状にも影響を与えることがあります。しかし、アルコールや薬物への依存のように正式な診断名がつく病気ならば、保険診療の対象になり、対応できる医療機関も比較的多いのですが、当事者が非常に困っていたとしても、買い物依存やセックス依存のような症状の場合、治療施設が非常に少ないのが現状です。

元々、OCDや双極性障害という病気を抱えている人ならば、そちらの病気の治療をしっかりと行うことが大切になります。

アルコール関連精神障害については、AA(アルコホーリックス アノニマス)や断酒会という自助グループが全国にあります。ギャンブルや買い物に対する依存などの自助グループもあるにはありますが、全国的には非常に少数です。



*注釈
*1 離脱症状――アルコールや薬物を長期間、依存的に摂取していたものを止めるときに、心身に不調や苦痛として現れるもの。依存していた物質によって症状が異なる。アルコールの場合、手や指の震え、発汗、嘔吐、不眠、一過性の幻覚、精神的な興奮や不安などを引き起こすことがある。

*2 アルコール依存――アルコールを飲む量が著しく増え、長時間になる。また、離脱症状が起こるなど、飲酒の習慣を止めることが困難となる。そのため、職業、学業、生活にも支障をきたす。このような行為が繰り返され、少なくとも1ヶ月以上続いていることが必要である。

*3 アルコール中毒――アルコールを飲んだときや、その直後に現れる症状。歩行がふらふらする、ろれつが回らないなど身体に現れる症状と、問題行動を起こす、記憶がなくなる、気分が不安定になるという精神面に現れる症状とがある。急性アルコール中毒で重篤な場合、脳の中枢まで麻痺し、呼吸や心臓の働きにまで影響がでて、生命に危険が及ぶことがある。

*4 診断基準――病気を症状によって診断する基準を分類して示したもの。現在、精神疾患のための診断基準としては、アメリカ精神医学会(APA)によるDSM-IV-TRと、世界保健機構(WHO)によるICD-10が広く使われている。


*引用・参考
[1] American Psychiatric Association(APA)[編]、高橋三郎、大野裕、染矢俊幸「DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引 新訂版」医学書院2003年
[2] World Health Organization(WHO)[編]、融道男、小見山実、大久保善朗、中根允文、岡崎祐士[監訳]「ICD‐10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン新訂版」医学書院2005年
[3] 松本俊彦「DSM-5ドラフトにおける物質関連障害」精神科治療学、Vol.25 No.8 Aug.2010 星和書店 p1077-1082
[4] 磯村毅[著]「図解でわかる依存症のカラクリ」秀和システム2011年