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OCDコラム

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OCDの患者さんの日常~こんなこともあるよね!


強迫症状を抱えていると、ほかの人には理解されにくい、患者さんならではの悩みがあるものです。今回は、買い物と入浴の場面で体験した困ったことについて、OCDお話会*1やそのほかの体験者の方にうかがいましたので、ご紹介します。
強迫症状を抱えている人が読むと、「あっ、私と同じだ」とか「自分だけじゃなかったんだ」という思いがする部分もあるのではないでしょうか。また、ご自身の症状とは違っていても、どこか共感できるものがあるかもしれません。
強迫性障害をもつ他の人に会う機会がないという人も少なくないでしょうし、いま、まさに孤軍奮闘している人もいるだろうと思います。しかし、全国には案外、同じような苦労を経験している人がいます。あなただけではないんですよ。


目次
§1 買い物で困った!
§2 お風呂も、つらい!
§3 あとがき


§1 買い物で困った!

買い物の場面で強迫症状が出て困ったという人は、案外、多いようです。

① 財布やお金を扱う場面
ある人は、キャッシュカードやクレジットカードのような貴重品をうっかり落としていないか心配になり、財布のなかを何度ものぞきこむなどの確認の強迫行為を行ってしまうそうです。そして、レジの付近を何度も行ったり来たりして確認するために、店員さんに、にらみつけられたり、嫌な顔をされることもあるそうです。

また、不潔が気になる人では、同じような場面でも、違ったところが気になります。ある人は、汚れたお金をおつりで渡されると、取り替えてほしくなるそうです。実際に、店員さんに、「きれいなお金に取り替えてほしい」といった人もいます。しかし、毎回そうすることもできず、交換ができないときは、コンビニのようにレジの近くに置いてある募金箱に、おつりが小銭ならば募金することで、自分の財布には入れないように対処したという人もいます。

なかには強迫症状のために、財布を使うことができないという人もいます。それから、一枚一枚硬貨を拭いたり、紙幣を洗濯したという話も聞きます。


② 商品の確認に時間がかかる
買い物の場面では、店頭の商品を細かいところまでチェックしないと気が済まないという人も多くいます。チェックする内容に関しては人それぞれで、不良品でないか気になるという人もいますし、わずかなほこりや細かいシミが付いていてもダメなので、表裏を何度も見てチェックするという人もいます。

また、同じ商品が複数置いてあれば、必ず奥のものを選ぶという人もいれば、商品をすべてチェックして、一番きれいなものを選ぶという人もいました。デパートなどで高額な商品を買うときなら、じっくり時間をかけて商品を見てもいいという安心感があるのですが、100円ショップなどで日用品を買うときまで、同じようにチェックしてしまうので、自分でも嫌になるそうです。

また、加害の強迫観念がある人では、少しでも、外箱にへこみやしわがあると、自分の扱い方が悪いせいでそうなってしまったのではないかと、罪悪感を抱いてしまいます。そのため、商品に触れる場合は非常に慎重になります。たとえば、手に取った商品を買わないで元の場所に戻すときに、きちんと戻せたかどうか気になって、何度も出し入れしてしまうこともあるそうです。

せっかく買った商品でも、家に帰ったら、先ほど述べたようなちょっとした欠陥が気になって返品したくなったり、同じ物をまた買いたくなったり、買ってきたものを使わずに自宅にそのままに置いてあったりと、皆さん、さまざまな経験をしています。


③ お店の人に怪しい人だと思われる
強迫症状のために、長い時間、同じ場所を行ったり来たりしたり、何度も商品を隅から隅まで見ていたため、お店の人に、万引きのようなよくない行為をしているのではないかと怪しまれた体験も複数の人がしていました。

そのような経験をしたり、不審に思われているのではないかと考えてしまうと、よけいにお店の人の視線が気になって、緊張が高まり、かえって強迫行為に時間がかかってしまうこともあります。

また、お店や銀行のATMなどのように防犯カメラがあるところで、強迫行為をしたくなったとき、「不審者と思われて、警察に通報されたらどうしよう」と不安になることもあります。しかし、OCDになる人は、万引きのような犯罪をするどころか、通常より道徳的である人が多く、むしろ加害不安のように他人に迷惑をかけてしまわないか気にし過ぎて、確認などで時間がかかってしまう人も少なくありません。

また、商品以外の確認になりますが、床に黒いシミのようなものが目に入ると、自分の苦手な虫や汚れではないか確認のために凝視している姿を怪しまれたという人もいました。


④ 買い物をしすぎる
買い物をしすぎて、お金が非常にかかり、困っているという人もいます。ただ、買い物をしすぎるからといって、必ずしもそれが強迫症状というわけではありません。他の精神症状を抱えている人でも、買い物が過剰になって困っている人がいるためです。

たとえば、強迫行為のために必要な除菌用品やトイレットペーパーを大量に買うというのなら、OCDの患者さんではよくある話です。しかし、自分が好きな服や趣味の物を、自分の収入以上に大量に買ってしまい、その支払いに困るとなると、OCDかどうかの判断が難しい問題です。つまり、その人が、元々、どのような精神疾患を抱えているか、どのような動機で買い物をしすぎているかなど原因が異なるためです。



§2 お風呂も、つらい!

体を洗う、食器を洗う、着ていた服を洗う、自分が触った物を洗うというように、強迫行為のために、何かを過剰に洗うという人は比較的多くいます。このような行為に関しては、一般の人が想像する以上につらい悩みが、いっぱいあるそうです。

① 入浴・シャワーに時間がかかる
強迫症状によって、1時間以上、人によっては何時間も浴室にいることがあるのも珍しくありません。お風呂が好きで何時間も入るという人はいますが、それは楽しみであって、強迫症状によって長時間入浴するのとはわけが違います。強迫症状を抱えている人にとっては、入浴はリラックスするどころか、過酷で苦痛な時間になってしまうのです。

たとえば、指と指の間を洗うときは30回を数えるというように、洗い方にも細かい手順を決めている人がいます。また、ボディソープのボトルは何回押して、シャンプーのボトルは何回押すというように、使う量を決めている人も多く、ちょっとでもうまくいかないようなら、たちまち不安になり、また始めからやり直しになるので、一時たりとも気を抜けません。

入浴に時間がかかると、その間ほかの人は入浴できませんので、家族からも文句をいわれるそうです。しかし、雑音や他人の声が聞こえて集中力が途切れた結果、強迫行為が中断してしまうと、また最初からやり直しになってしまうので大変だという声もよく聞きます。



② この量でないと洗った気がしない
多いときは一回の入浴で、ボディソープをまるまるボトル一本使ってしまったことがあると話してくれた人がいました。


③ 体もつらい!
入浴の時間が長くなり過ぎて、体力を消耗し、もうろうとしてしまったことがあるという人もいました。その人は、あまりに疲れるので、一回の入浴の間で、学校の休み時間のように休憩をはさむようにしました。その人にとって入浴は精神的にも肉体的にも負担が大きくなったため、はじめは毎日入っていたお風呂も、次第に入る回数が減り、3、4日に1回になってしまったと話してくれました。 そして、皮膚もアカギレができて、痛くて仕方ないときがあるそうです。

また、トイレの後の洗浄行為に時間がかかってつらいという人のなかには、トイレに行く回数をなるべく減らしている方もいます。特に、寝ているときや、外出中は、なるべくトイレに行かないよう我慢をするという人も少なくありません。



§3 あとがき

強迫症状について知らない人からすれば、1回の入浴にお湯や石けんを大量に使うことは、お金の面でも資源の面でも無駄遣いしていると思われるのではないでしょうか。OCDの患者さんにも、個人差はあるのですが、自分の行為は無駄であるとある程度わかっていることも多く、なかには罪悪感を抱いている人もいます。

しかし、ある程度理解していても、強迫行為をコントロールすることが難しいのが、病気の特徴の一つです。家族としては文句の一つもいいたくなるでしょうが、文句をいったからといって、本人たちはそう簡単に改善できるものではありません。だからこそ、つらい思いをしているのです。


*注釈
*1 OCDお話会――強迫性障害の患者と家族のための会。東京都三鷹市で、会合を開催しています。くわしくは、下記のホームページをご覧ください。
http://kyou89.fc2web.com/ohanashi.htm