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OCDとの併存が多い発達障害


発達障害には、広汎性発達障害、注意欠如・多動症、学習障害、知的障害(精神遅滞)などがあり、そのなかには、高機能といって知的能力に問題がない人も少なくありません。そのようなタイプの発達障害の人が、OCDを2次的に発症することは珍しくありません。
また、発達障害の特性のなかには、元々、OCDと似ているものもあります。そのため、症状によっては、その判別が難しい場合があります。
今回のコラムでは、OCDと関連する発達障害について、わかりやすくまとめました。


目次
§1 発達障害とは
§2 主な発達障害の特性
§3 OCDと似ている特性
§4 原因と対応


§1 発達障害とは[1]

発達障害とは、精神医学では、脳機能の何らかの発達の遅れにより現れてくる心理的発達障害をいいます。

世の中に、完璧な人などいませんし、人はそれぞれ違う個性をもっているのですが、あまりにも人とは違った特性のために、日常生活に支障をきたしたり、社会に適応できないとなると、障害といえるレベルになり、支援が必要になってきます。また、発達障害であると本人や周囲の人が気づく年齢もさまざまです。特に、高機能の発達障害(概ねIQ70以上)の人は、見過ごされやすく実際に学校生活で問題が生じてわかることも多いのです。

高機能の発達障害が知られるようになったのは、近年のことなので、成人の発達障害の人のなかには、自分の抱えている問題が発達障害によるものと、いまだに気づかないでいる場合が少なくありません。また、逆に、最近では、高機能の発達障害に関する情報があふれ、対人関係がうまくいかなかったりすると、「空気が読めないからアスペルガーではないか」と、相談機関を訪れる人も多いそうです。しかし、専門医が、発達障害と診断する人の割合は、それ程は多くありません。



§2 主な発達障害の特性[2][3]

OCDとの関連で問題となる主な発達障害を3つ紹介します。ただし、これらの3つの障害にも関連性があり、一人で複数の障害の特性をあわせもつ人もいます。
そして、発達障害では、その特性が、通常の得意・不得意の範囲を超えて、非常に極端に現れます。

●広汎性発達障害(PDD)
広汎性発達障害には自閉症アスペルガー障害などが含まれ、自閉症スペクトラムと呼ばれることもあります。広汎性とは、障害の特性が幅広いという意味です。自閉症は、一般的には知的障害の自閉症の意味で使われることが多いのですが、高機能自閉症といって、知的能力に問題がない人もいます。

特性には次のようなものが主にあります。これらのうち、一人でいくつか(一つではない)を抱えています。


(1) 興味・行動・感覚の面
  • あることには過剰に興味を示し、とことん熱中するが、それ以外のことにはまったく興味を示さない。興味の対象が極端である。
  • 合理的ではない独自の方法・儀式に非常にこだわり、それを守ることで安心する。
  • 繰り返しの行動が多い。
  • 特定の感覚に対して敏感。把握するのが苦手、嫌がる。


  • (2) 対人・社会性
  • 相手の目を見て、話すことができない。
  • 集団での活動が苦手(例えば、野球、サッカーなどの球技)。
  • 相手の気持ちを察したり、他人と興味を分かち合うことが苦手。
  • 年齢に応じた友人関係が作れずに、孤立しやすい。


  • (3) 意思伝達の面
  • 会話が一方通行。意味のない独特な繰り返しが多い。
  • 言葉を字面通りに理解する。普通なら通じるような省略した言い回しが理解しにくい。
  • 1度に多くの人が話すと、混乱する。



  • ●注意欠如・多動症(ADHD)
    注意欠如の人では、本人が努力していても不注意からさまざまな問題が頻繁に生じます。多動の人は、じっとしていたり、じっくり物事を行うことが苦手です。子どもは、大人に比べて、元々じっとしていることが苦手で、不注意な点もあるものですが、同年齢の子どもと比べても、極端にその傾向が強ければADHDが考えられます。手足をバタバタ動かしたり、授業中席を離れてどこかに行きたくなったり、何かが終わるのを待てずにほかのことをしたくなる人もいます。


    ●学習障害(LD)
    学習障害とは、知的能力には問題がないのに、読むことや書くこと、計算することなど特定のことだけが極端にできないことをいいます。読むことが苦手な例では、漢字がにじんだように見えて判別が難しかったり、単語を覚えることは優れていても、文章の内容を理解することは困難、耳で聞くと理解できるのに、文字による理解は苦手という人がいます。また、算数が極端に苦手な人もいます。



    §3 OCDと似ている特性

    発達障害は、人によって、どのようなことが苦手かは千差万別です。そのなかには、次のように幼少の頃からOCDに似た特性をもつ人もいます。[4]

  • 濡れたり汚れたりすることにとても敏感で、少しでも服が濡れると、すぐ着替えたがる。
  • 粘土や濡れた砂など、ベタベタ、どろどろする感触が嫌いで、そのような行為に取り組もうとしない。
  • 大きな音が苦手で、動物や鳥の大きな鳴き声をとても嫌がる。
  • 授業中、黒板の文字をノートに写すのに、とても時間がかかる。


  • このような特性の現れ方は、年齢とともに、変化することがあります。例えば、10代になれば、普通は、粘土や砂場遊びはしなくなります。その一方で、自分が他人にどう思われるかという意識が目覚め、対人関係に変化が生じます。そのため、汚れが服についた場合も、本人の不快感以上に、ほかの人に見られたら、バカにされるかもしれないと考えるようになります。あまりにも警戒するようになると、強迫症状に近づいていきます。

    また、発達に問題がある場合、学年が進むにつれ、ほかの生徒たちのペースについていくことが難しくなる人が多いようです。ほかの生徒が、簡単そうにしていることが、自分にはとても難しいことのように思え、実際に困難であることが多くあります。また、周囲の人とかみ合わず、どちらかの何気ない言葉によって、もう一方の人は傷つけられたと感じ、トラブルになることもよく見られます。そのため、いじめや孤立のようなつらい経験をしてしまう人も多いのです。ストレスや生きにくさを感じやすく、二次的に強迫症状や抑うつ症状のような精神症状が現れる人もいます。

    児童期、思春期に強迫的な症状を訴える人は、発達障害も抱えている割合が多いという報告もあります。また、児童期、思春期では、症状が、発達障害によるものか、OCDであるか、それ以外の病気によるものか、見分けが難しいことも多いのです。

    発達障害の人のなかには、元々、むしょうに何かをしたくなるといった衝動が強い人がいます。また、自分が夢中になっているものを中断されたり、物事がうまくいかなかったりすると、感情が混乱して収拾がつかなくなったり、易怒性といって、非常に激しい怒りがわき、長時間収まらなくなる人もいます。特に思春期にはそのような傾向が強まります。このような特性が、周囲の人には強迫的に見えることもあり、OCDの症状と混同されやすい点の一つといえます。

    また、このような衝動が強い人が、強迫症状を併発していると、一般的なOCDの家庭以上に家族の巻き込まれ方が激しく、本人の症状も悪化している場合があります。そして、家族の精神的な負担も大きく、疲労しきって精神的に不安定になっていることも珍しくありません。


    §4 原因と対応

    発達障害の原因は、まだよくわかっていないことが多いのですが、脳の一部の機能がうまくはたらいていない障害であるといわれています。

    例えば、じっとしていられない多動の人は、周囲がいくら注意しても、本人はそれをコントロールすることができません。本人も非常に困っているのです。このようなケースでは、育て方にいけないところがあったのではと悩み、自分を責めてしまう親もいます。親の育て方やしつけが悪いからと誤解されることもありますが、発達障害の原因は育て方とは別問題です。発達障害は、専門家でも判断や対応が難しいことも多いので、一般の人がどう対応したらよいかわからないのも無理はありません。

    ◆発達障害の対応と診療
    発達障害の診療は精神科の対象です。ただし、発達障害は比較的最近知られるようになった障害のため、ある程度以上の年齢の精神科医だと、知的障害を伴う自閉症については教育を受けているものの、それ以外の障害については、専門の教育を受けた経験がないということが多いのです。ただし、医師になって臨床経験のなかで学んでいたり、留学などをしている先生もいますので、発達障害の問題を得意としている医師、もしくは子どもの場合、児童・思春期の精神疾患の経験が豊かな専門家に出会えると理想的と思われます。各都道府県の公的な病院や小児病院で、発達障害の専門外来を設けているところもあります。

    発達障害に関する治療や支援には、さまざまなものがあります。ただし、その多くが児童向けに行われているもので、成人向けに行われているものはあまりありません。

    応用行動分析(ABA)*1社会生活技能訓練(SST)*2は、心理学を利用し、問題となる行動への対処を訓練するものです。また、発見が早く、幼少や児童期であれば、感覚統合療法*3などの訓練を行う場合もあります。[4][5]ほかには、親が障害の特性とその対処法を学ぶペアレント・トレーニングという方法もあります。症状によっては、薬物療法が行われることがあります。

    発達障害は、見方によってはその人の個性です。そのような個性を、本人も周囲の人も理解して、うまく付き合っていけるようになれると理想的です。とはいっても、「障害」というと、心理的に受け入れることに抵抗を覚える人もおり、特に保護者にその傾向があります。また、発達障害と診断されても、それが何らかの改善の可能性につながらなければ、希望が見えず、抵抗があるのも無理はありません。その一方で、適切な診断に出会うことによって、長年、自分が抱えていた問題の原因がわかってよかったという人もいます。

    発達障害に関する相談先に、発達障害者支援センター*4があります。発達障害情報センターのホームページ(参考サイト参照)から探すことができます。また、心理士のなかには発達障害にくわしい人もいるので、そのような相談機関を利用する方法や学校に在籍している人なら、スクールカウンセラーに相談する方法も考えられます。ただ、知的障害とは異なり、高機能の発達障害の人に対しては、公的な支援が少なく困っている人が多いのが現状です。


    ◆発達障害の対応と診療
    強迫症状を併発した発達障害の場合、OCDの標準的な治療である薬物療法や認知行動療法に、適応する人と、そうでない人がいます。

    また、発達障害を抱える人が二次的にOCDを発症することはよく知られているのですが、その両方に対応できる専門家を探すのは、非常に大変なことです。しかし、できるだけ正しい診断をしてもらうことが必要で、そのためには根気よく、専門家を探す必要があると思われます。



    *注釈
    *1 応用行動分析(ABA)――人間の行動とその変化を観察、分析することで、問題の解決方法を見つけ支援します。人間が行動したくなる好ましい要因を好子、嫌になる要因を嫌子とし、そのような要因によって、行動が増えれば強化、減れば弱化と考えます。例えば、スポーツでほめられることは好子で、それによってもっと練習するようになれば強化です。このような心理学の考えを応用して、問題の改善方法を探します。

    *2 社会生活技能訓練(SST)――認知行動療法の一つで、日常生活でのさまざまな場面を想定して、そういうときはどう対処したらいいかを、参加者がロールプレイなどの体験学習を通して訓練していきます。例えば、苦手な人に質問をしなくてはならないとき、何か断わりたいときに、どう話せばいいかというような問題を扱います。そのような課題に対処することによって、日常生活でストレスを過剰に抱えず、うまく適応できるようになることを目指します。

    *3 感覚統合療法――障害が、脳での感覚の統合がうまくいっていないことによると考えられる場合、その機能を訓練することによって、生活上起こる問題を和らげていきます。主に作業療法士によって行われています。一般的なものは、子どもが対象で、トランポリン、ボール、粘土などの遊具を使うなどして、身体のいろいろな感覚を使って運動やゲームを行います。療法といっても楽しく取り組むのが特徴です。

    *4 発達障害者支援センター――発達障害の人や家族への相談やサポートを行う機関です。医療、保健、福祉、教育、就労などの関係機関と連携し、地域での発達障害への理解を深めてもらうための活動をします。平成17年の発達障害者支援法によって、位置づけられ、各都道府県、政令指定都市にあります。


    *参考サイト
    発達障害情報センター(国立障害者リハビリテーションセンター)


    *参考書籍
    [1] 松本英夫『発達の障害から考えるこころと脳』こころの科学150日本評論社(2010年)p49-54
    [2] American Psychiatric Association『DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引』医学書院(2003年)
    [3] 齊藤万比古[編著]『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』学研(2009年)
    [4] 佐藤剛[監修]『感覚統合Q&A』協同医書出版社(1998年)
    [5] S.オゾノフ、J.ドーソン、J.マックパートランド[著]、田中康雄、佐藤美奈子[訳]『みんなで学ぶアスペルガー症候群と高機能自閉症』星和書店(2004年)