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OCDコラム

OCDコラム

OCDのために不登校になったら
―スクールカウンセラーからのアドバイス―

浦野さやか (洗足カウンセリングセンター所属、臨床心理士、精神保健福祉士)

子どもの頃にOCDを発症すると、学校生活に支障が出ることがあります。
給食や掃除などの場面で強迫行為が出てつらかったり、授業中にノートをとることがスムーズにできなくなって困ってしまったり。そのため学校に行くのがいやになり、不登校になることも考えられます。そのようなとき、どうしたらよいのでしょうか。
学校で子どもたちの悩みの相談にのってくれるスクールカウンセラーの先生から、不登校になった場合の対処の仕方について教えていただきました。


目次
はじめに
§1 OCDを抱えながら学校に行くことの難しさ
§2 不登校の子どもの心理
§3 家族の不安といらだち
§4 本人と家族へのサポート
§5 利用できる支援機関
§6 中学卒業後の進路
おわりに


はじめに

多くの保護者の方は、子どもが毎日学校に通うことを当然のように感じていると思います。子どもの生活は、朝、家を出て学校に行き、夕方、家に帰ってきてから宿題をしたり、次の日の登校の準備をしたりと、学校と家庭を中心に進んでいきます。子どもは学校生活の中で、勉強だけでなく、集団生活のルールや人間関係のスキルなど、多くのことを学んでいきます。

でも、もし、子どもがある日突然に「もう学校には行かない」と言ったら、保護者の皆さんはどうしますか? 学校に通うことが難しくなると、「明日は学校に行けるのだろうか?」「家でどのように過ごすのか?」という毎日の不安とともに、「これからどうなってしまうんだろう」という将来への不安も出てきます。先の見えない毎日を送るということは、本人にとっても保護者にとっても、非常につらいことです。

不登校となる理由は子どもによってさまざまですが、背景に、OCDのような心の病気を抱えている場合もあります。これから、不登校の子どもの気持ちと、そんな子どもを抱える家族の気持ち、そしてサポート機関と進路について、一緒に考えていきたいと思います。



§1 OCDを抱えながら学校に行くことの難しさ

児童期や思春期にOCDを発病した場合、症状を抱えながらの学校生活となります。多くの場合、初めはさまざまな症状を、心の病気だとは気がつかず、一人で症状と闘いながら頑張っていることが多いようです。

学校は非常に刺激の多いところです。たくさんの生徒や先生がいて、人間関係も複雑です。学校生活は、授業の場面だけではなく、着替え、食事、清掃など活動の種類も多く、OCDの症状を抱えながら、サポートなしに過ごすことは大変です。

たとえば不潔恐怖のある子どもは、給食の時間中に、何度も手を洗うために教室を出ることを繰り返したり、休み時間のたびに机を何度も拭いたりすることがあります。学校では日常生活のルールがあるため、何度も教室を勝手に出入りしたりしていると、他の生徒に不審に思われたり、勝手な行動をとっているとして、教師から叱責されることもあります。

対称性などにこだわる子どもは、机の上に筆箱やノートを置く際に、その位置にこだわります。子ども同士がふざけ合って机に触れてしまい、物の位置がずれたりすると、とても不安になったり、相手の子どもに対して怒りを感じたりすることもあります。このように、OCDの症状によって引き起こされるストレスや困難が重なると、学校に行くことそのものが難しくなってきます。

また、OCDの子どもに限らず、不登校に陥りやすい性格傾向として、完璧主義があります。勉強や人間関係を完璧にこなすことは不可能です。完璧にできないことがどうしても許せず、「きちんとできないなら学校には行けない」と、極端な対処方法をとった結果、不登校になる子どももいます。

不登校となった場合、まずは保健室登校や相談室登校など、部分的にでも学校に関わることを促すことが多いのですが、完璧主義の子どもは、このような部分的な関わりを自分で認めることができません。そのことが、不登校の状態から、できる範囲で一歩踏み出すことを困難にする場合があります。



§2 不登校の子どもの心理

不登校になる原因は、子どもによってさまざまです。学校で、人間関係のトラブルや成績不振など、具体的に嫌なことがあり、それをきっかけに不登校になる場合もあれば、OCDのような心の病気を発病したために登校が難しくなる場合もあり、特にきっかけはないが学校に行きたくない場合(学校に行く理由がわからない、自分自身に関心が持てないなど)もあります。また、不登校に至るプロセスもさまざまです。ある日突然、学校に行けなくなる子どももいれば、体調不良を訴えて時々休むようになり、そこから徐々に学校から離れていく子どももいます。

不登校になると、家庭では睡眠のリズムが不規則になったり、テレビやゲーム、マンガに夢中になったり、インターネットを見ていたりと、家族から見ると、本人は好き放題に暮らしているように見えることもあります。好きなことをして過ごしていると思っていたら、些細なことでイライラしたり、落ち込んだりと、気分の変化が激しくなることもあります。心の病気がある場合、状態によっては、症状が悪化したりすることもあります。

不登校の子どもの話をよく聞いてみると、心の底から「学校のことなんてどうでもいい」と思っている子どもは、案外少ないように感じます。多くの子どもは、毎日家で過ごしながら、「学校に行かなければいけないのに行っていない」という事実と闘っています。

この状態は、「他の子どもと比べて自分はダメな子どもだ」と感じられて、自己評価が低下したり、保護者に対して申し訳ないという罪悪感となったり、将来に悲観して自暴自棄になったりと、さまざまなつらい気持ちを引き起こします。

これらの否定的な気持ちが強くなると、「すれ違う人ににらまれているような気がする」「後ろにいる人たちが自分のことを笑っている」など、ものの感じ方や考え方が被害的になったりすることがあります。生活態度だけを見ていると、楽なほうに流れているように見えますが、本人の心の中では、不安とあせりが強くなり、苦しんでいるケースが多いのです。



§3 家族の不安といらだち

不登校の子どもを抱える家族も、多くの戸惑いや不安、いらだちを経験します。まず、毎朝、布団から出てこない子どもに対して、「無理矢理でも起こしたほうがいいのか? 本人にまかせたほうがいいのか?」という問題があります。また、保護者として子どもに言いたくなる質問、「どうして学校に行けないの?」「何が嫌なの?」「明日はどうするの?」を聞いてもいいのか、ということがあります。

きょうだいがいる家庭の場合、きょうだいの中の一人が不登校になると、他のきょうだいにどう説明したらいいのか、また、他のきょうだいが「ずるい! じゃあ僕も学校行かない!」と言い出したら、どう対処したらいいのかという問題も起こります。不登校になった子どもを心配するあまり、普通に登校しているきょうだいへの配慮が行き届かず、不公平感を訴えることも多いようです。

日々、これらの戸惑いや葛藤を抱えながら、保護者は子どもに関わるのですが、不登校が長引いてくると、子どもに対するいらだちも強くなります。不登校は、家族だけで抱えていてはいけない問題です。解決するためには、さまざまな専門家と連携することをおすすめします。



§4 本人と家族へのサポート


不登校の子どもや保護者に対して、どのようなサポートが有効なのでしょうか。それぞれの子どもや家庭によって状況が違うので、一貫したよい対処法があるというわけではなく、子どもの心の状態の変化に応じて、そのつど、関わり方も少しずつ変化させていくことが大切です。そのような細かな配慮や関わり方は、専門家と相談の上で進めていくのがよいでしょう。

●本人の心のサポート

①休養をとらせる
まずは、少し休養させてあげましょう。それまでの学校生活でたまったストレスは、身体的な不調や、精神的な不調となって現れていると思います。家庭が、本人にとって安心して過ごせる場所になることが大切です。本人が家庭の中で、家族から充分なサポートを得られていると実感し始めると、気持ちは自然に家庭の外に向いていきます。登校を促す働きかけばかりしていると、家庭の中でもなかなか安心して休むことができず、状況の改善が難しくなりますので気をつけましょう。

②生活面を支える
どうしても睡眠などの生活リズムが崩れがちになったり、食事も偏ったり、不規則になったりしがちです。不登校の間、それらをきちんと維持することは難しいのですが、気にかけてあげることが大切です。

③ゆっくり話を聞く
もし、本人が少し心理的に落ち着いてきて、毎日の生活のこと、学校生活のこと、人間関係のこと、自分の症状のことなどの話をするようになってきたら、ひとつずつ、ゆっくり聞いてみましょう。ただし、あまり先走って質問しすぎたりしないように注意してください。あくまでも、本人が口にするようになったら、その言葉をひとつずつ拾っていくというスタンスがいいと思います。本人の心の変化の速度を超えて保護者が動いてしまうと、本人が怯えてしまい、心理的に身動きが取れなくなってしまいます。

④相談に備える
もし、本人が部分的にでも、家族以外の大人に会ってもいいと思えるようになったら、学校の先生や養護教諭、スクールカウンセラー、医療機関の医師や臨床心理士、相談機関のカウンセラーなどに会えるように調整していきましょう。


●家族の心のサポート

①学校との関係を維持する
学校との連携は、とても大切です。不登校の子どもは、「学校に見捨てられるのではないか」という不安も抱えています。学校には担任の先生をはじめ、学年主任や養護教諭、スクールカウンセラーなどさまざまなスタッフがいます。学校のスタッフに子どもの様子を伝えることと同時に、登校ができるようになるための支援を一緒に考えたり、学校の様子を教えてもらったりすることで、学校とのつながりを維持しましょう。不登校となっても学校との関係を維持することは、その後の教室復帰の土台になります。
(学校での詳しいサポートについては ⇒第66回コラムを参照

②さまざまな専門家につながる
子どもや家族の状況に応じて、必要な専門家に相談に行きましょう。§5で、不登校に関するさまざまなサポート機関をご紹介します。医療的なサポート、ご本人やご家族の心のサポート、進路に関するサポート、卒業後の継続的な社会的支援など、さまざまな種類のサポートを、必要に応じて組み合わせていくことが大切です。また、学校のスタッフは、地域の連携機関についての情報を持っています。地域にどのような支援機関があるのか、相談してみましょう。

③家族がリラックスできる時間を作る
不登校が長期化してくると、本人を支える家族も、精神的に追い詰められたり、苦しくなってきたりします。気持ちが煮詰まってくると、本人に対するいらだちやあせりも強くなりがちです。そのような家族の精神状態は、本人をさらに不安にさせます。本人に対して安定した関わりをするためにも、家族がなるべく息抜きをしたり、リラックスしたりする機会を作りましょう。



§5 利用できる支援機関

不登校に関してさまざまな角度から支援してくれる機関を紹介します。

●医療機関

不登校の背景に精神的な症状を抱えている場合、精神科の治療が必要です。お薬によって症状が緩和されることもあります。受診の際に、症状や薬のことだけではなく、学校のことも相談してみるといいでしょう。その際、得られた精神科医からのアドバイスを、家族だけにとどめず、学校スタッフにも伝えて、足並みを揃えた支援をすることが大切です。

必要に応じて、心理検査やカウンセリングを勧められることもあると思います。検査結果やカウンセリングを通して、本人がどのようなつらさを抱えながら暮らしているのか、理解を深めることも大切です。
(さまざまなカウンセリング機関については ⇒第64回コラムを参照


●公的な支援機関

地域には、子どもに関わるさまざまな相談を受け付ける機関があります。公的な機関なので、相談料は無料です。学校の先生やスクールカウンセラーから紹介されることもあるかもしれません。こうした機関では、子どもや家族へのカウンセリング、他の支援機関の紹介、学校との連絡などを行いながら、子どもと家族をサポートします。最近は、電話やメールでの相談を受け付けるところも増えてきました。
地域の相談機関を利用すると、家庭内の情報が地域の人たちに漏れてしまうのではないかと心配する保護者の方もいますが、相談機関には守秘義務がありますので、担当者が相談者に関する情報を、本人の承諾なく外に漏らすことはありません。自分が住んでいる地域に頼れる人がいるということは、とても心強いことです。安心して相談してください。公的機関には、下記のようなものがあります。自治体によって名称が違っていたり、役割に多少の違いがあったりしますが、まずは学校の先生に聞いたり、役所のホームページや電話帳を確認して連絡をし、相談してみるといいでしょう。


◆教育相談所(教育相談センター)
幼児期から高校生相当の年齢までの子どもに関するさまざまな相談を受け付けています。本人・保護者、学校の教師からの相談に対応します。教師や臨床心理士が相談を受け付けますので、家庭内での関わりと同時に、学校との連携や、学校での支援などにも幅広く対応しています。また、地域の相談学級や適応指導教室(下記)とも連携しており、必要に応じて紹介してくれます。

◆相談学級、適応指導教室
教育委員会が、不登校の小中学生を対象に開いている教室です。相談学級や適応指導教室に参加した日は、在籍している学校の出席日数にカウントされます。地域によってその様子はさまざまですが、スタッフは小中学校の教師や退職した教師、臨床心理士などで、学習の援助以外にも、スポーツ、料理、創作活動などさまざまな活動を通して、生活リズムや人間関係をサポートします。少人数のグループなので、通いやすいと感じる子どもも多いようです。在籍している学校を通して申し込むのが一般的です。

◆児童相談所、子ども家庭支援センター
18歳未満の子どもに関するさまざまな相談に応じています。児童相談所や家庭支援センターというと、虐待への支援を連想するかもしれませんが、不登校の相談にも応じています。

◆保健所、精神保健福祉センター
心の問題や心の病気で困っている本人や家族および関係者の方からの相談を受けています。年齢の制限はありません。思春期・青年期における精神医学的問題についても相談を受け付けています。



§6 中学卒業後の進路

不登校が長期化してくると、将来が不安になります。「出席日数が少ないと、受験できる学校がなくなるのではないか」「定期テストを受けていないと内申点がつかず、受験できないのではないか」などの質問を多く受けます。しかし現在では、いろいろな進路の選択が可能になっています。ここではおもに、義務教育が終わる中学卒業後の進路について、全日制高校以外の選択肢を紹介します。


◆定時制高校
定時制高校には昼間部と夜間部があります。1日4時限、1週間に20時限を学ぶのが基本です。卒業まで4年かかりますが、授業の履修の仕方によっては3年間で卒業することもできます。仕事をしながら勉強をする人など、さまざまな人が通っています。高校卒業の資格が取得できます。

◆通信制高校
自宅で行う学習が中心です。レポート提出と、1年間の中で数日間の授業(スクーリング)があります。以前は4年かけて卒業というタイプが多かったのですが、最近は3年間で卒業できる学校が増えてきました。勉強をしたいけれど、毎日学校に通うのは負担が大きいという人には向いている場合もあります。不登校の生徒を積極的に受け入れている学校もあります。高校卒業の資格が取得できます。

◆通信制高校サポート校
通信制高校に在籍する生徒の勉強や生活などを、日常的にサポートしてくれる学校です。週に5日通う5日制の他に、3日制や2日制もあります。一般的な高校に近い雰囲気のサポート校もあり、文化祭や修学旅行などの行事を実施しているところもあります。不登校の間に修得できなかった中学校での勉強や、人間関係の作り方など、生徒の個別の事情に合わせたサポートをしています。

◆高等専修学校
仕事に直接結びつく専門的な知識・技能を学ぶ学校です。工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養の8つの分野に分かれています。専門的な科目を学ぶので、これらの分野に関心があり、将来の仕事として考えている子どもに向いています。資格の習得にも力を入れています。不登校の生徒の受け入れに力を入れている学校もあるようです。専門的な科目が多いため、高校卒業に必要な科目を履修できないのですが、「技能連携制度」により、高校卒業資格を取得できます。これは、高等専修学校に在籍しながら通信制高校にも入学し、3年間で2つの学校の卒業資格を得られるもので、高等専修学校で履修した科目の一部が、そのまま通信制高校の単位として認められます。

◆高等学校卒業程度認定試験
以前の大学入学資格検定(大検)が、廃止され、平成17年より新しく始まった制度です。文部科学省が実施する試験で、合格すると高校卒業と同程度の学力を持つと認定され、大学や専門学校の入学試験を受けることができます。しかし、高校卒業を認定するものではありませんので、注意してください。

以上、簡単に紹介しましたが、これ以外にも、アルバイトを始めてみる、フリースペースに行ってみる、などの方法もあります。どんな進路を選ぶにせよ、そこで信頼できる友だちや先生との出会いがあるかどうかが、大きなポイントになってきます。

進路の選択について大切なのは、本人に合った、無理のない進路を選択することです。「この学校に行けば、大学に進学しやすいから」「知り合いがこの学校がよいと言っていたから」など、周囲の情報や目先のメリットに振り回されて選んだ進路は、のちのち本人がつらくなります。本人が無理せず、そして本人のよいところが自然に発揮できるような環境を、本人の気持ちを大切にしながら選ぶことが重要です。



おわりに

不登校となると、どうしても、「学校に行けるか、行けないのか」ということに気持ちがとらわれがちですが、不登校の背景には、本人が抱えてきた「心の悩み」や「生きにくさ」があります。不登校は、本人がずっと一人で抱えてきたそれらの悩みに周囲が気づき、一緒に向き合うよい機会でもあります。

私は、スクールカウンセラーとして、不登校に悩む多くの子どもたちの相談を受けてきましたが、不登校となり、つらい思いをしても、たくさん悩み苦しんだ末に、再び動き出した子どもたちは、不登校となる前よりも生き生きしていると思うことが、よくあります。不登校は、どこか無理をして生きてきたそれまでの自分のあり方から一度離れて、自分らしい生き方を取り戻すプロセスとなることもあります。けっしてあせったりあきらめたりせず、さまざまな専門家と一緒に、ゆっくりと向き合っていきましょう。