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OCDコラム

OCDコラム

生活リズムを整える日中の活動


OCDの患者さんにとって、生活のリズムが乱れないようにすることは大切です。
そのためには睡眠も大事ですが、日中の活動に目を向けることも大切です。
仕事や学校といった毎日のように通う場所がある人でも、症状を抱えながらだと、生活リズムに影響してしまうことがあります。
一方、出かける予定がないことで、強迫症状に取られる時間がよけいに増えてしまう場合もあります。今回は、生活のリズムと日中の活動について、患者さんの体験を含めて紹介します。


目次
§1 OCDと生活のリズム
§2 精神科デイケア・ナイトケア
§3 地域の福祉施設や民間の集いの場
§4 患者さんに聞いた、他の外出先
§5 まとめ


§1 OCDと生活のリズム

OCDでは、生活リズムの乱れが強迫症状に影響を与える場合があります。ある人の体験では、確認や準備の行為にかかる時間が増えていくにつれ、食事の時間も不規則になるなど、生活のリズムが乱れていったそうです。そのため心身ともに疲労して、遅刻や欠席が増え学校生活にも影響がでてくるようになりました。同時に焦燥感や抑うつ、怒りなどの感情も現れるようになりました。そして、ますます確認などの行為に費やす時間が増えるという悪循環に陥ったそうです(*1 参考文献)

休学・休職中だったり、専業主婦だったりと、家にいる時間が長い人は、1日のうち、自分のペースで過ごせる時間も多くなります。そのため、家の中で強迫症状が出る人では、症状へのとらわれに対する<歯止め>がきかなくなり、生活のリズムが乱れてしまうことがあります。

また、症状によっては、<家の中という同じ環境>にずっといることで、症状へのとらわれから離れにくくなります。それは強迫観念をもたらす状況(トリガー)は変わらず、手洗いやシャワーなどの強迫行為をしようと思えば、いつでもできる環境にいるためです。

家族以外の人と接する機会がほとんどない場合、<人間関係>が問題となることがあります。本人が強迫行為に長時間とらわれている姿を目にすることは、家族にとってもストレスになりますし、本人としても、何かと負い目を感じながら生活することになります。そして、そのような状況への理解が少ないと、本人と家族との間に軋轢(あつれき)が生じる場合もあります。一方、本人が成人しても、家族と互いに干渉しあったり、家族に依存し過ぎたりしている場合、自立への妨げや症状への悪影響にもなります。

そのような固定した環境からいったん離れて、別の環境に身を置くためにも、1日のうち、外に出る機会があるということは非常に大切なのです。自分で日課を決めて生活のリズムを保てる人はいいのですが、それが困難な場合に考えられるのが、次のような施設の利用です。



§2 精神科デイケア、ナイトケア

デイケア、ナイトケアというのは、精神疾患の回復を目指している人のリハビリテーションのための事業です。精神科に通院していて、社会復帰がすぐには難しい人などが利用します。実施しているのは主に医療機関ですが、地域によっては保健施設(保健所・精神保健福祉センター)でも行っています。1日のうちの何時間かを家以外のところを居場所として過ごし、さまざまな活動をすることで体調や生活リズムを保つことができますし、仲間と一緒に活動することは、孤独の解消にも役立ちます。

ここで行う活動は、美術、工芸、音楽などの文化活動、スポーツ、パソコン、園芸、外出やレクリエーション、就労準備トレーニングなど、施設によってさまざまなプログラムが用意されています。通常、デイケアなら昼食、ナイトケアなら夕食が出ます。職員は、施設によって違いがありますが、精神科医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士、栄養士などによって構成されます。医師の診断後、担当職員とともに治療(リハビリテーション)の計画を立てて参加し、困ったときには医療スタッフに相談もできます。

基本的に、プログラムへの参加は自由です。うつ病など精神疾患によっては活発な活動が向かない人もいますので、無理に参加を求められることはありません。朝、家を出て、施設に行き、毎日決まった時間にきちんとした食事をとるだけでも、生活リズムを整えることに役立ちます。

ナイトケアは、主に、単身生活者で、昼間、社会復帰施設や作業所で過ごしている人が利用します。デイケアとナイトケアが一緒になった、デイ・ナイトケアを行っている施設もあります。

ただ、このような施設の参加者はOCD以外の患者さんがほとんどで、OCDの患者さんがまったくいない施設も少なくありません。したがって、OCDの患者さんからは、「デイケアに行ってみたけれど、自分には合わなかった」という話も聞きます。

デイケア、ナイトケアは、強迫性障害のための専門療法を行う場ではないので、強迫症状の改善に直接役に立つというものでもありません。ただ、OCDの患者さんのなかには、「初めから生活のリズムの改善に目標を絞っていたので、行ってよかった」という人もいました。

費用は、医療機関の場合は医療費がかかりますが、健康保険や自立支援医療制度が使えるため、自己負担額は通常、少なくて済みます。スポーツや文化活動を低料金で体験できる点もメリットといえるでしょう。

また、施設によっては、SST(Social Skills Training: 社会生活技能訓練)を行っているところもあります。これは認知行動療法の理論を応用したものですが、強迫性障害の治療で行われる認知行動療法とはまったく違います。日常生活のなかで生じる問題やストレスを招きそうな場面を想定して、その場合の対処方法を実際にトレーニングします。そうすることでストレスによる症状の悪化を防ぎます。

たとえば、コミュニケーションに問題を感じている場合では、他の人に声をかけづらい状況でもかけてみるとか、訪問セールスの断り方などを、モデル役の人とともに練習します。その他、日常生活での基本的な過ごし方や服薬習慣を含めて、自分の生活リズムが大きく崩れないような訓練をSSTで行うこともあります。



§3 地域の福祉施設や民間の集いの場

精神障害者向けの福祉施設を利用できる場合もあります。福祉施設といってもさまざまで、就労支援や福祉的就労を目的としたものもあれば、地域活動支援センター(*2)のように、精神障害者だけではなく、知的障害や身体障害がある人も対象に幅広い活動を行っているところや、スタッフによる相談・支援を行っている施設もあります。福祉施設には、障害者自立支援法に基づいた施設と、それ以外の無認可の作業所などがあります。

また、民間の団体で、精神障害の患者さんや引きこもりの人向けに集いの場やフリースペースを運営しているところがあります。これらは、常勤の職員がいる団体もあれば、ボランティアスタッフが地域の公的な施設や教会の部屋を借りて、月1回程度、食事会やイベントを行っているようなものもあります(*3)

このようなサービスを探すには、お住まいになっている市区町村の役所の福祉担当の窓口、保健所の精神保健担当の窓口、社会福祉協議会、地域活動支援センターに問い合わせてみてください。また、インターネットで探しても情報が得られる場合があります。

ただ、このような場所への参加者も、OCD以外の精神疾患の患者さんが多いようです。そして、スタッフ側にも、OCDの方に出会った経験がないという場合もありえます。このような団体は公立でも民間でも、少ない予算で行っているところが多いですし、就労支援のような事業は、日本では始まってから時間が浅く、まだ内容がそれほど充実していないこともあると承知しておきましょう。



§4 患者さんに聞いた、他の外出先

これまで述べてきた施設などのほかに、外出先としてどのような場所があるのかを、OCDの患者さんの何人かに聞いてみました。皆さん、健康維持と生活リズムを整えるために、いろいろな工夫をしていました。

●散歩をする

近隣を散歩する人のなかには、一人でのんびりする人もいれば、犬の散歩を兼ねてするという人もいました。また、散歩の際には公園に行くという人もいました。なかには、本来散歩は好きではなく、嫌々やっているという人もいましたが、それでも散歩を終えるとちょっとした達成感があるそうです。また、散歩など運動をした日は、比較的よく眠れたり、うつ状態が和らぐという人もいました。近隣での散歩が高じてハイキングが趣味という人もいました。

●図書館に行

図書館に行くという人もいました。しかしOCDの場合、症状によっては、多くの人が触れている公共の物に触ることに対して抵抗がある人も少なくなく、本の閲覧はできても、借りることはできないという人もいるでしょう。しかし、図書館には本だけでなく、雑誌や画集、写真集、図鑑、絵本、新聞などもあり、CDやDVDの視聴もできます。自分のできる範囲で、利用されることをお勧めします。そして、自分の興味を満たす何かが見つけられると理想的に思われます。

●車の運転をする

車の運転をするのがよいという回答もありました。運転中は強迫症状にとらわれているわけにはいかないので、かえって症状が安定するという人が何人かいました。

●買い物に行く

買い物をするために外出する場合も多いようです。なかには、夜遅い時間に行く人もいるようです。人に会いたくないとか、症状にとらわれている時間が長く、遅い時間帯のほうが都合がいいという理由からでしょう。しかし、とくに女性では深夜の外出は物騒です。また、深夜の活動は生活リズムを乱すことにもなりかねません。完全に引きこもってしまうよりはいいかと思いますが、できれば遅い時間は避けたいものです。

また、強迫性ためこみや買い物衝動が強いという症状を抱えている人は、生活リズムを整えるためであれば、買い物目的以外の外出を考えてはいかがでしょうか。

●趣味の活動をする

絵を習いに行くなど、趣味の活動で外出するという人もいました。



§5 まとめ

家族としては、家にばかりいるより、少しでも症状の改善のきっかけになれば、と外出を勧めるのは当然と思われます。その気持ちはわかるのですが、本人がその気にならないと、外出による生活リズムの改善はうまくいかないと思われます。また、外出によって生活のリズムが整うというメリットがあるとはいえ、強迫症状そのものを減らせるわけではありません。

外出のような活動がよいからといって、家族が無理強いするのはよくありません。とくに、うつ状態、うつ病の症状がある場合には注意が必要です。判断に困る場合には、主治医に相談してください。

OCDの症状は、改善に時間がかかることが多いものです。なかには症状を抱えていて、仕事を続けにくくなり収入が思うように得られなかったりと、病気の症状以外にも経済的な困難、社会的な困難がある人もいると思います。それでも、少しでも日常生活に楽しみを見いだすことができ、症状に関係なく活動できる時間があれば、散歩をすることで「ちょっとした達成感がある」という人がいたように、気持ちにもよい変化が現れると思います。そうした時間を大切にしてほしいと思います。




*注釈

*1参考文献――飯倉康郎 「強迫性障害の行動療法における生活リズムの観点の必要性」 『強迫性障害の研究(1)』 OCD研究会編 p67-73 星和書店 2000年


*2地域活動支援センター――2006年から施行された障害者自立支援法に基づいて、市区町村により設置されている施設。ただし、現在でも、旧法による「地域生活支援センター」という名称のものもある。集いの場、相談、食事会を主にしたものや、デイケアに近い日中の活動のプログラムを提供し、作業や就労の訓練を取り入れているところもある。精神障害だけでなく、知的障害や身体障害の成人・児童を対象にしているところも多いので、詳しくは市区町村の福祉窓口に問い合わせを。


*3民間の集いの場やフリースペース――フリースペースに、正規の基準があるわけではないが、決まったプログラムで参加者を管理するようなことはあまりせず、個人の自主性によって自由に過ごせる場であることが多い。不登校、引きこもりのような所属団体のない人向けにこのような名称の活動を行っているところがある。また、本サイトやメルマガで時々紹介している下記のような会も、OCDを専門に対象とした民間団体による自主的な集いの場といえる。
○患者と家族のサポートグループ「OCDの会」
○「OCDお話会」
○「子どもの強迫(OCD)友の会」