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OCDコラム

OCDコラム

スクールカウンセラーに相談するには

浦野さやか
(洗足カウンセリングセンター所属スクールカウンセラー、臨床心理士、精神保健福祉士)


「スクールカウンセラー」という言葉を聞いたことがある人は多いことと思います。
実際のスクールカウンセラーって、どんな人で、どんなときに助けてもらえるのでしょう。
今回は、教育現場でさまざまな精神的サポートをしてくれるスクールカウンセラーについて紹介します。


目次
§1 スクールカウンセラーが登場した背景
§2 どんな資格を持ち、どこにいる人?
§3 スクールカウンセラーの果たす役割
§4 医療現場にいる臨床心理士との違い
§5 学校生活のなかでのOCD
§6 学校生活を送っているOCDの方へのアドバイス


§1 スクールカウンセラーが登場した背景

平成7年から、文部省(現在の文部科学省)により、学校臨床心理士によるスクールカウンセラー事業が始まりました。当初はいじめ問題への対策として、スクールカウンセラーを活用するための調査研究費が、文部省の予算に計上されました。以降、全国の公立学校にスクールカウンセラーが派遣され、主に公立中学校を中心に、派遣対象校が拡充されてきました。最近では、公立小学校や高校でもスクールカウンセラーが配置されている学校が増えてきています。

現在ではいじめ問題だけではなく、不登校、非行、無気力、人間関係の問題、怒りのコントロールができない、リストカット、発達障害などさまざまな悩みの相談に応じています。また、ニュースなどで目にしたこともあるかもしれませんが、災害や犯罪の被害に遭った被害児童生徒への心のケアなど、緊急事態への対応も行っています。

心理的な問題を背景としたこれらの問題には、学校の先生や保護者だけで対応していくことは難しく、サポートする大人が疲れ切ってしまうことも多々あります。スクールカウンセラーは、生徒、保護者、先生と一緒に、専門家の視点で問題について分析し、背景にどのような悩みがあるのか、悩みに対してどのようなサポートが必要かを考え、アプローチのし方を提案していきます。



§2 どんな資格を持ち、どこにいる人?

スクールカウンセラーの配置は国と地方自治体の事業です。ですから、スクールカウンセラーの資格や勤務形態は、自治体によって異なります。ここではっきりと、「どんな資格を持っていて、週に何日学校にいて、学校のどこにいます」とお伝えすることができないのが現状です。しかし、大枠では次のような資格を持った人がスクールカウンセラーとして配置されています。

①資格
  • 財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士
  • 精神科医
  • 心理学系の大学教授、助教授、講師
  • スクールカウンセラーに準ずる者(心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務について一定の経験を有するもの)

  • また、自治体によっては、学校にスクールカウンセラーだけではなく、相談員などの立場で生徒のサポートをするスタッフを配置しているところもあります。

    ②勤務形態
    公立の学校に派遣されているスクールカウンセラーは、ほぼ非常勤です。だいたい週に1日または2日、勤務校に出勤します。1校に1人のスクールカウンセラーが配属されていることが多いのですが、地域によっては、1人のスクールカウンセラーが複数校をかけもちし、巡回して対応している場合もあるようです。1日の勤務時間も地域によって異なります。

    ③学校のどこにいる?
    職員室や通常の教室以外に、相談室を設置している学校もかなり増えてきました。相談室には学校によって、「教育相談室」「こころの教室」などさまざまな名前が付いているようです。相談室があれば相談室で相談業務などをしていたり、それ以外の時間は、教室の様子を見に行ったり、職員室で先生方と話をしたりしています。生徒が不登校の状態にあり、相談室で会うことができない場合は、家庭訪問に出かけることもあります。



    §3 スクールカウンセラーの果たす役割

    スクールカウンセラーの具体的な職務内容は、大きく次の4つになります。

    (1)児童生徒へのカウンセリング

    心の悩みを抱える児童生徒と面接し、相談に乗ります。いつから、どんなことに困っていて、どうしたいと思っているのか、話を聞きながら一緒に問題を整理して、今後何ができるかを話し合います。

    特に思春期の生徒の場合、自分の気持ちを人に知られることを恐れたり、恥ずかしいと感じたりしがちです。カウンセリングでは、そういった本人の気持ちを大切にしますので、面接での相談内容を、スクールカウンセラーが必要以上に学校関係者や保護者に話すことはありません。

    ただ、学校生活をサポートする上で、サポートチームを組むことは非常に有効です。本人の承諾を得た上で、必要に応じて、担任の先生や養護教諭など、キーパーソンとなる人たちにお話しして、協力してもらうこともあります。


    (2)教職員、保護者に対する助言、援助

    悩みを抱えた生徒を見守る教員、また保護者に対する助言や援助をします。学童期や思春期の子どもは、自分自身の悩みをうまく言葉にして伝えることが苦手な場合が多いものです。そのため、生徒の行動や言葉について、理解に苦しむ保護者や教員もたくさんいます。本人の気持ちや症状のメカニズム、環境の中にある問題点や、改善可能な点などをアドバイスし、解決を目指すとともに、支える大人の心理的負担の低減も心がけます。

    また、生徒が不登校となった場合、保護者の方が相談に来ていただけるだけでも本人の様子が学校に伝わりますし、家庭での関わり方について一緒に考えていくこともできます。


    (3)児童生徒へのカウンセリング等に関する情報収集・提供

    スクールカウンセラーのよい点は、さまざまな人から本人に関する情報を集めることができることです。保護者の方は、学校での本人の様子は把握するのが難しいことがあると思います。逆に、学校の教員は、家庭での様子がよく見えないことがあります。スクールカウンセラーは、両者からさまざまな情報を収集し、本人にとって必要なことを総合的に考えます。


    (4)専門教育機関等の紹介

    本人や保護者からの相談を聞いた上で、必要な専門機関を紹介します。家庭でさまざまな問題を抱えている場合は、子どもと家庭のあらゆる相談に応じてくれる地域の支援センター(子ども家庭支援センター、子ども家庭相談センター、子ども支援センターなど)、学校以外での継続的なカウンセリングが必要な場合は教育相談所、医療が必要な場合は地域の医療機関、身近な地域の人の支えが必要な場合は民生委員、などです。

    スクールカウンセラーは、教員ではありませんので、相談内容は成績の評価などには影響しません。全くの「第三者」であり、「心の専門家」として学校にいます。相談には料金もかかりません。そのため、生徒は気兼ねなく相談することができます。

    生徒自らが悩みを聞いてほしいと言って、スクールカウンセラーのところに来てくれることもありますし、担任の先生が生徒にスクールカウンセラーを紹介するという形でつなげてくれることもあります。給食の時間や休み時間、放課後などで顔見知りになり、そっと手紙で悩みを打ち明けてくれたり、何気ない雑談から悩みを偶然耳にすることもあります。出会い方は本当にさまざまです。

    保護者からの相談もさまざまです。直接スクールカウンセラーにお電話をくださる方もいれば、三者面談などで、保護者が抱えている悩みを担任が知り、スクールカウンセラーを紹介してくれる場合もあります。



    §4 医療現場にいる臨床心理士との違い

    スクールカウンセラーの資格は§2で述べたようにさまざまですが、医療現場で心理療法を行っている臨床心理士と同じく、臨床心理士の資格を持ったスクールカウンセラーはたくさんいます。しかし、同じ臨床心理士でも、その役割は大きく異なっています。

    スクールカウンセラーは、医療現場のカウンセラーのように、症状そのものに対してアプローチすることはできません。医師のように診断をすることができないのはどちらも同じですが、スクールカウンセラーは医療現場の臨床心理士のように、心理療法による治療は行いません。また、心理検査を実施することもできません。

    スクールカウンセラーは、生徒の悩みを聞き、どうやったら解決していけるかを一緒に考えていきます。学校の先生や養護の先生とも相談して、生徒の心理的な背景について理解を深め、共通理解を得た上で、必要であれば医療機関を紹介し、みんなで学校生活をサポートしていきます。

    生徒が1人で心の悩みに向き合うのは、とても大変なことです。保護者の方も、常に生徒に付き添うわけにはいきません。生徒にとって、心の悩みを理解して見守ってくれる大人が学校にもいるということは、とても大きな支えになると思います。このように、本人を支える環境を整えることが、問題の改善や解決に向けた大きなステップとなります。

    本人や保護者の悩みを理解した上で、そのようなサポート環境を整えることや、関係機関との連携を図ること、サポートする大人に助言し、支えること、これがスクールカウンセラーのアプローチです。



    §5 学校生活のなかでのOCD

    OCDの症状を抱えながら、他の生徒と同じペースで学校生活をおくることは、とても大変なことです。学童期や思春期では、OCDを発症していても、本人はOCDに関する知識が全くなく、一人で症状に悩んでいるケースが多いように思います。担任の先生や養護教諭が、先に症状に気がつくこともあります。

    たとえば、「給食の時間に、何度も勝手に教室を出ていく生徒がいるのですが……。どうも、手で直接食べ物に触れると、そのたびに教室を出て手を洗いに行っているようです。あまりにも頻繁に洗っているのか、手がひどく荒れていて。ちょっと気になっていたんですけど」というような感じです。

    また、「自分の机の上を頻繁に水ぶきしないと気が済まない」「カッとなりやすく、すぐに友だちとケンカをするので困っていたが、本人にはどうも物の配置にこだわりがあって、それを友だちが知らずに動かしたりするのがケンカの原因のようだ」といった形で話があります。

    小学校や中学校では、OCDの可能性と同時に、発達障害の可能性など、さまざまな可能性を考慮した上で対応を考えます。本人に会って話を聞く機会があれば、「もしかして今、とても困っているんじゃないかな?」という形で、症状について話し合いができるように働きかけます。また、保護者とお話することが可能な場合、家庭での様子を聞きながら、必要に応じて地域の医療機関や相談機関を紹介します。このように、どういった原因で上記のような行動が起こってしまうのかを、他機関と連携しながら明らかにしていきます。

    医療機関で診断が下りて治療が始まった場合、OCDについて、本人、保護者、教員など本人の周辺の人々で病気の知識を共有し、学校生活を支えるための対策を考えます。服薬の必要がある場合、薬の管理について養護教諭が協力したり、症状が強くなった場合は、担任やスクールカウンセラーにすぐに話ができるような体制を整えるなど、本人の希望を聞きつつ、学校現場でできることを工夫します。

    また、症状に苦しむ生徒は、不登校になることがよくあります。学校生活を送ること自体がとても苦痛になり、学校に行かなくてはいけないという気持ちはあるのに、どうしても行けなくなってしまう、または、「自分が周囲に不快な思いをさせているに違いない」という強迫観念のため、登校が難しくなる生徒もいます。

    不登校となった場合、保護者の方が学校に相談に来たり、担任やスクールカウンセラーが家庭訪問したりと、本人と関わる機会を作り、サポートすることも可能です。


    ●中学校でのOCDの生徒の相談事例

    (プライバシー保護のため、内容には修正を加えてあります)

    廊下ですれちがった中学3年生のA君は、いつもと様子が明らかに違いました。1人で廊下を歩いていたのですが、視線が天井を向いていたり、次の瞬間には床を見ていたりと落ち着きません。通常の視線の高さで歩くことが難しいようです。担任にそのときの様子を話したところ、教室でもずっと机にふせており、欠席が目立つようになったので気になっていたということでした。

    担任に伴われて、A君が相談室に来ました。そこで短く話をする機会ができました。「なんだか廊下を歩くとき、気持ちが落ち着かないみたいね。どうしたのかな?」と尋ねると、A君は「僕が見ると、みんなが嫌な思いをするから、見ないようにしてる」と答えました。

    「もう少し詳しく説明してくれるかな? 嫌な思いって?」と聞くと、「僕と目が合うと、相手の人はすごく嫌な気持ちになるから、目を合わせちゃいけない」と答えました。「そう感じていたんだね、そういう気持ちを抱えながら、学校に来るのは大変でしょう」と今までの学校生活の労をねぎらうと、「すごくしんどい」とつぶやきます。

    その後、A君のお母さんにお会いすることもできました。お母さんは、欠席が増えたことについては心配していましたが、本人が何も話さないので、視線に関する悩みについては全く気がつかなかったとのことでした。そこで、地域の医療機関を紹介し、A君のために受診することを勧めました。A君は、初めは少しためらいましたが、とても困っていることも事実でしたので、受診を承諾してくれました。

    受診の結果、OCDとの診断があり、薬物療法が始まりました。A君とお母さんの了承を得て、スクールカウンセラーから担任にOCDについて説明し、理解を求めました。学校生活と治療を継続する上で、さまざまな問題を抱えたこともありましたが(薬への不信感、一生治らないのでは? といった絶望感、友人関係の悩みなど)、そのつどカウンセリングの中で話し合い、治療が中断しないように配慮しました。A君は、症状が悪化すると休みがちにはなりましたが、進学先も決まり、不登校となることなくその中学校を卒業しました。




    §6 学校生活を送っているOCDの方へのアドバイス

    OCDの症状を抱えながら学校生活を送ることは、とても大変なことです。でも、もし今、症状について「誰も理解してくれない」といった絶望感や孤立感を抱いているのであれば、スクールカウンセラーに相談してみるのはいかがでしょうか? 前へ踏み出すためのファーストステップになるかもしれません。

    すべての人々に性格や個性があるように、小学校も中学校も高校も、すべての学校に個性があります。その学校の個性と生徒本人の個性の両方を生かしながら、本人が学校生活を少しでも安心して、楽しく過ごせるようになるといいなあと思っています。

    <困った時に、気楽に相談できるスクールカウンセラーが学校にいる>ということを、心のどこかに留めておいていただけるとうれしいです。




    *補足
    私立の小学校・中学校・高校でも、心理的な相談を受け付ける相談員を置く学校が増えてきました。大学では、スクールカウンセラーとは機能が違いますが、学生相談室などに相談員がいることがあります。

    スクールカウンセラーの勤務形態・相談状況は、各学校によって異なります。学校に問い合わせていただけると、より詳しい情報が聞けるかと思います。また、学校によっては、スクールカウンセラーがお便りを発行していることもあります。そういった印刷物に目を通していただくと、スクールカウンセラーの様子がわかるかもしれません。