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心理士、カウンセラーに相談するには


強迫性障害の患者さんの治療を支えているのは、主に精神科の医師ですが、なかには、心理士やカウンセラーによる相談、支援を利用している方もいます。
症状に関連するさまざまな悩みを解決したいとき、心理士によるカウンセリングが解決への糸口を見つけてくれる場合があります。
また、強迫症状そのものに対しても、認知行動療法を行う技術を持つ心理士が、少しずつ増えてきています。
今回は、心理士への相談やカウンセリングの利用の仕方についてまとめました。


目次
§1 心理士の種類と資格
§2 心理士に相談する目的、メリット
§3 心理士の探し方 ~治療中の人は主治医に相談して
§4 心理相談機関を利用する場合に注意したいこと


§1 心理士の種類と資格

心理士は、悩みを持つ相談者への相談、支援を心理学に基づいて行う専門家です。最近では、心理士が常駐している精神科・心療内科の病院やクリニックも増えてきました。その他に、心理士は、学校でのスクールカウンセリングや、職場でのメンタルヘルス相談、さまざまな心理関係の相談センターなどで活躍しています。

心理士や心理カウンセラーは、国家資格ではありません。いくつかの民間団体による認定資格となります。しかし、強迫性障害のような精神疾患では、「臨床心理士」(⇒第46回コラム 適切な専門家に相談して長い治療生活を乗り切ろう)という資格を持った専門家が対応することが多いようです。

臨床心理士の受験資格は、修了した大学院の違いや医師免許取得者かどうかによって異なりますが、いずれにせよ、心理士の活動する現場での実習や、臨床での経験が必要とされます。

臨床心理士の他にも、心理カウンセラーの資格はいろいろありますが、強迫性障害のような精神疾患に対応するには、精神科系の医療機関での臨床経験がある専門家のほうが望ましいといえます。


§2 心理士に相談する目的、メリット

強迫性障害の場合、心理士に相談するメリットとして、次のようなものが考えられます。

① 広く心の悩みを相談できる

一人の患者さんが抱える精神の問題は、幅広く、さまざまなことが影響します。症状のために生活がうまくいかなくなったり、家族や親しい人との関係で悩んだり、将来が不安になったり、過去のつらい思いが今も影響していることがあります。そんな場合、患者さんが自分の悩みをじっくり話して、相談したいと思うのは自然なことです。

特にお子さんの場合、症状に関係することを隠したがったり、自分なりの思いがあったりしますので、それを聞いてあげることが大事な場合もあります。

しかし、今の医療の仕組みでは、クリニックや病院の外来で、医師が一人の患者さんにかけられる時間は、そんなに多くはありません。初診の場合や、症状に大きな変化があった場合などを除けば、医師が患者さん一人ひとりに対して、充分な時間をかけて精神療法を行うのは、なかなか難しいことでしょう。

そうした現状を補うため、心理士による相談、カウンセリングを取り入れている医療機関が増えています。相談、カウンセリングをするなか、心理学の専門家という立場から気づいたことを主治医に連絡することにより、患者さんの抱える問題に対してより多くの面で支援することが可能になります。

カウンセリングは、1回30分~60分というように、あらかじめ時間を区切って行うのが普通です。なお、心理士は、病名を診断したり、薬を処方することはできません。

②  認知行動療法が受けられる場合もある

強迫性障害の患者さんにとっては、治療の目的に強迫症状を解消するなどを掲げているので、それがうまく行かない場合、すべての相談や治療をあきらめてしまう人もいます。

強迫症状の治療では、薬の他に、認知行動療法のような精神(心理)療法(*1)が有効ですが、医師だけでなく、心理士のなかにも、そのような療法を行う技術を持つ人がいます。ただし、強迫性障害のような病気では、まず医師によって診断を受ける必要があります。

また、日本では、強迫性障害について、適切な精神療法(認知行動療法など)ができる心理士はまだとても少ないことをご承知おきください。しかし、薬だけでは効果が見られず、専門療法を受けたいと思っている人が、それらを行っている医療機関や心理機関を探す場合、医師だけでなく心理士も考慮に入れると、選択肢がいくらか広がります。

そして、認知行動療法では、患者さんがあれこれ悩みを話す場面もありますが、その中から、心理士とともに、問題に対処するための具体的な目標を立てて取り組んでいきます。

③  家族からの相談にも応じてもらえる

家族が、本人のことについて主治医に相談したいと思ったときに、医療機関では、基本的に電話などで対応する場合が多いのですが、本人が来られずに、家族のみが医療機関を訪れて相談したい場合や病気以外の問題の相談には、保険が使えないこともあって、十分な時間を取ってもらえない場合が多いでしょう。

心理相談やカウンセリングでは、このような家庭・夫婦の問題や、学校や職場の人間関係、子どもの発達、不登校や問題行動にも対応できるところもあります。心理士によって、得意とする専門領域を持っているので、強迫症状以外に、このような問題が大きい場合は、期待できるかもしれません。

④  心理テスト(検査)を受けられる

心理テストとは、患者さんの性格の特性、行動やストレスへの対応のパターン、感情・気分の状態などを調べるものです。質問用紙を用いたものや、ロールシャッハテストのように画像を用いた検査など、いろいろな種類があります。

発達期の児童に対しては、発達検査や知能検査が必要な場合、心理士がそれを行うこともあります。検査の結果は、相談、支援に役立てられます。


§3 心理士の探し方 ~治療中の人は主治医に相談して

医療機関での精神療法は、心理士が行う場合でも、医師の診断に基づいて行われます。この場合、保険が使える場合と、保険が使えない場合があります。

すでに精神科に受診している人が、心理相談機関を利用する場合、医療機関によって紹介されるか、患者さんから医師に相談して、紹介状を書いてもらうことも多いです。紹介状は、心理士が医師から患者さんの病気に関する情報を得て、医療機関と連携しながら支援を行うためには有効です。

自分で探す場合に、参考になるのが、日本臨床心理士会が運営する「臨床心理士に出会うには」というサイトです。

http://www.jsccp2.jp/

このサイトでは、都道府県や、その他の条件によって、臨床心理士がいる相談機関を検索できます。検索条件のなかで「Ⅱ.その他の検索条件」の、「c)こころの課題の領域」の項目では、強迫性障害は神経症の一種ですので、「神経症」のボックスにチェックを入れて検索しましょう。すると、条件に合う相談機関が表示されます。

もし都合がよければ、その機関に、あらかじめ相談したいことを伝え、強迫性障害にも対応できるかどうかを問い合わせてから検討してみるとよいでしょう。

また、行動療法の資格として、日本行動療法学会が認定している「行動療法士」という資格があります。この資格を掲示している医師や心理士も少ないですし、その資格をもつすべての人が強迫性障害に対応できるとは限りませんが、見かけた場合は参考になると思います。


§4 心理相談機関を利用する場合に注意したいこと

●心理士によって技量は大きく異なる

ひと口に心理士といっても、専門に学んだ領域も違えば、経験の深さにも違いがあるため、対応できる問題や、行える技法にはとてもばらつきがあります。そして、技法によっては強迫性障害の症状自体を改善させることが難しいものもあります

たとえば、「心理士は話をよく聞いてくれるけれど、具体的な助言はあまりない」という話をよく聞きます。これは「来談者中心療法」と言われる心理療法で、話を聞くことによって、来談者本人が考えを整理したり、問題に気づいていくのを促すという理論に基づいたものです。しかし、そのような心理療法だけでは、強迫症状そのものを根本的に改善させることは難しいことが多いのです。

ただ、強迫性障害の場合でも、患者さんによっては、§2に書いたようなさまざまな心理的な問題が影響している場合があるので、ある一面には効果が感じられたという話は聞きます。

●費用がかかる

医療保険が使えない場合、心理相談にかかる費用はまちまちです。特に、民間のカウンセリングオフィスの場合、1回につき数千円から1万円前後かかるところが多いようです。さらに、初回はインテークといい、別料金になっているところもあります。心理療法のような施術を行うには、何回も通わなくてはならないので、合計すると、費用はかなりの金額となってしまいます。

また、強迫性障害の場合、この病気ならではの問題も出てきます。心理相談は予約制のところがほとんどですが、強迫性障害の患者さんの中には、症状のために、時間に間に合うように行けない人もいるので、当日遅刻したり、キャンセルをすると、そのために別途料金がかかってしまうことがあるかもしれません。

●心理士がいるさまざまな機関

心理学科のある大学では、一般の人が利用できる臨床心理センターなどを開設しているところもあります。この場合、比較的安価なところが多いのですが、強迫性障害に対応できるところは、多くはないと思われます。ただ、地域に心理の相談ができる機関があまりない場合、このようセンターに問い合わせる方法も考えられます。

その他に、心理士は、学校でのスクールカウンセリングや、児童相談所や発達障害者支援センターにもいます。また、精神保健福祉センター(都道府県ごとに設置されている)、保健所、役所での精神・心理相談を、心理士が行っているところがあります。

このような公共の機関では、相談が無料のところも多いようです。ただし、このような場所に何回も通って、認知行動療法のような心理療法を受けられるというものではありません。しかし、そこで対応しきれない問題に対しては、そこから地域の専門機関を紹介してもらえる可能性があります。

いずれにせよ、利用の際には、必ず、どのような内容か、料金はいくらかなどを聞くことが大切です。


●注釈
*1 精神(心理)療法――「精神療法」と「心理療法」は、ほぼ同じ意味です。精神科の医療機関で、医師が治療として行う場合は「精神療法」という言葉が使われることが多く、心理士が行う場合は「心理療法」と呼ばれることが多いです。認知行動療法、来談者中心療法、精神分析的心理療法、家族療法など、さまざまな療法があります。