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強迫性障害かも……
病院・クリニックの探し方とかかり方


自分や家族が「強迫性障害かもしれない」と悩んだときに、まず必要なことは、専門医による診断です。
強迫のような症状が見られていても、他の病気であったりと、一般の人にはわからない面もあるからです。

強迫性障害は、治療によって改善が期待できる病気です。
とはいえ、強迫性障害は、本人がなかなか受診する気になれず、受診するまでが大変なことも確かです。
また、精神科の病気では、どの病院に、どのようにしてかかったらいいかわからず、それ自体が悩みの種になってしまうこともあります。
そこで今回は、精神科の病院・クリニックを受診するときに持っているとよい知識と、患者さんやご家族が感じるであろう不安などの心理についてもまとめてみました。



目次
§1 どの科に受診すればいい?
§2 病院・クリニック選びのポイント
§3 家族が同行した方がいい場合
§4 本人が受診したがらない場合には
§5 受診ではうまく話せなくても気にしない


§1 どの科に受診すればいい?

強迫性障害のような症状を診療してくれるのは、主に「精神科」です。「神経科」「精神神経科」「メンタルヘルス科」などの診療科名も、多くは精神科と同様の診療内容になります。
一方、名前は似ていますが、「神経内科」や「神経外科」は、精神疾患を対象としていません。これらは脳卒中やパーキンソン病などのように、脳、脊髄、末梢神経などに生じた病気に対応する診療科です。

最近増えている「心療内科」は、本来は、心身症という心理的な原因によって身体に症状が現れる病気(たとえば過敏性腸症候群、ストレスによる消化器や循環器の疾患、頭痛など)を対象とするところです。ただし、現状では「精神科」と「心療内科」の両方の看板を出しているクリニックも多いようです。

ある程度大きな病院では、小児・思春期の子どもを対象にした「小児精神科」や、「小児・思春期専門外来」などを設けているところがあります。また、クリニックでも、小児・思春期の患者さんを得意としている医師がいるところもあります。

強迫性障害とともに発達障害もある患者さんに対しては、発達障害を専門としている医師が対応する場合もあり、発達障害の専門外来もあります。しかし、日本全体でみると、これらの疾患の専門医はそれほど多くはありません。その中で、強迫性障害にも対応できる専門家となると、さらに数が限られてしまいます。

また、精神医療全般に言えることですが、残念ながら、地域格差がとても大きいようです。地方によっては、精神科の医療機関がとても少なく、昔からある精神科病院以外に選択肢がほとんどないような地域もあります。


§2 病院・クリニック選びのポイント

医療機関の看板には、「精神科」、「心療内科」などの診療科名や診療時間、休診日など基本的な情報しか書かれていませんが、その病院がホームページを開設していたら、ホームページをからさまざまな情報を得ることができます。

また、事前に電話をして、強迫性障害を診療してもらえるかどうかを問い合わせてみるのもよいでしょう。問い合わせをする際のポイントは、次の3点です。

①ホームページをチェックする

ホームページに、医師が得意とする症状や病気の名前が書かれている場合があります。そこに、「強迫性障害」とか、「何度も手を洗ったり、確認をしたりしてしまう人」などと書かれていれば、比較的受診しやすいと思います。

ただし、ホームページの情報が古く、担当医が転勤している場合もあります。ホームページがあまり更新されていないようでしたら、電話で問い合わせてみるのが確実でしょう。

精神療法(認知行動療法、行動療法)、カウンセリングを取り入れている医療機関が、徐々に増えています。強迫性障害への精神療法は、専門的な技術が必要なので、どの医療機関でも行っているわけではありません。その点についても、ホームページに書かれていれば参考になります。

ホームページでは強迫性障害の患者さんにも精神療法を行っているのかどうかわからない場合は、やはり電話で直接問い合わせてはいかがでしょうか。

ただし、精神療法に限らず治療というものは、医師が診察の上、その人に向いていると判断した場合に行うものなので、患者さんが希望すれば、必ず受けられるわけではありません。また、その病院では行っていなくても、連携している病院・クリニックや心理相談機関を紹介してくれる場合もあります。

②有名なところがよいとは限らない

大きな病院や、強迫性障害の治療で有名な先生がいる医療機関には、患者さんが全国から集ってくる可能性があります。もちろん、それだけの治療実績があるからでしょうが、そのために、外来が非常に混んでいて、待ち時間の割に診療時間が短いということもあります。

また、医師と患者さんの相性もありますので、世間で評判の先生の治療が、必ずしも自分に合うとは限りません。また、高度な医療を行う特定機能病院に指定されている大学病院などでは、紹介状を持たずに受診すると、初診のときに追加料金が請求されます。

③よく説明してくれるところがベスト

それでは、患者さんにとってよい病院とはどのようなところなのでしょう。1つには、説明すべきことをしっかり説明してくれるところが理想的です。精神科では、初診のときにある程度の時間をかけて、医師はいろいろな質問をしながら患者さんの状況を診ていきます。しかし、その後、薬物療法が中心となれば、定期的に行う診療では、初診ほど時間をかけないのが普通です。

強迫性障害の場合、薬の効果がぼんやりとでも現れるまでには、ある程度の期間がかかります。事前に治療についての説明がしっかり行われていれば、改善が実感できない患者さんも、安心して治療に取り組むことができます。(⇒第55回コラム 薬(SSRI)を効果的に利用するコツ)

なお、各都道府県には精神保健福祉センターというものがあり、精神保健福祉に関する相談を受けつけています。そこでその地域の専門家についての情報や患者会・自助グループなどの情報を得られる場合もあります。ただし情報が必ず得られるわけではないということも承知しておいてください。

当サイトには、「お近くの病院検索」があり、以前、OCD研究会が行ったアンケートに対し、「強迫性障害の相談が可能」と回答された医療機関を掲載していますので、参考にしてください。


§3 家族が同行した方がいい場合

強迫性障害は、一緒に暮らす家族にとっても、かかわりの深い病気です。ですから、初診のときや、病気についての説明があるときには、家族も診察に立ち会い、病気に対する正しい知識や対応の仕方を知っておくとよいでしょう。

家族が同席することは、医師にとってもメリットがあります。それは患者さんの状況を家族からも聞きとることができ、それを治療の役立てることができるからです。次のような場合では、家族も一緒に病院へ行かれるとよいでしょう。家族の協力がとても大切になります。

①患者さんが子どもの場合、症状や障害のために話すことが不自由な場合
精神科の診察では、患者さんやご家族からの言葉によって情報を得る部分がとても多いのです。

②強迫性障害の症状に、家族を巻き込んでいる場合
たとえば、家族にも過剰に手洗いをさせたり、自分の代わりに確認や点検をさせるなど、強迫行為への巻き込みがある場合は、一緒に病院へ行くことをお勧めします。

③家族との関係が、症状に影響していると思われる場合
患者さんと家族の関係、家族間の関係が、患者さんに強いストレスをもたらすと、それが症状に影響を与えることがあります。

④患者さんだけではスムーズな移動が困難な場合
症状のために、1人では予約時間に間に合うように行けなかったり、公共交通機関の利用が困難な場合は安全面からも同行をお勧めします。


§4 本人が受診したがらない場合には

強迫性障害の患者さんの中には、何か決断をすることに対して不安が強く、自信が持てず、現在の状況が変わることを嫌がり、行動に踏み切れない人も多くいます。そのため、病院へ行くという行動を起こすまでに何年もかかることも珍しくありません。だからといって、家族が受診を無理強いすると、かえって反発したりして、よい結果に結びつかないことがあります。
そのような場合、まず家族だけでも医師に相談に行くなどして、病気に対する正しい情報を得るようにしてはいかがでしょうか。また、インターネットや本からも、知識が得ることできます(⇒第60回・61回・62回コラム OCDの本棚)

精神医療に対する過剰な心配や病気への間違った認識がある場合、本やインターネットの現実的な情報が役に立つはずです。そして、家族は本人が病院へ行くのをためらう気持ちに耳を傾けつつ、病気への理解を深め、受診への障壁を取り除いていくのが理想的です。

ただし、本人が聞く耳すら持たないというように、受診が難しいこともあるでしょう。本人と家族の関係が膠着してしまうと、そのまま何年も事態が変わらないことが珍しくありません。そのような場合、できるだけ強迫性障害にくわしい医師を家族が見つけて相談し、本人に「この先生ならわかってくれるかもしれない」と思わせるようにつなげられるとよいと思います。

過去に精神科などを受診したけれどもうまくいかず、その後は受診していないという方もいらっしゃると思います。しかし、OCDの治療は、ここ10年の間に大きく変わりました(⇒第59回コラム OCD研究会10年の歩みを振り返る)。OCDの治療について、専門的な知識と経験を持った医師に出会うことができれば、症状改善も考えられます。

もちろん、患者さんやご家族にとって、そのような専門家を探す難しさは承知しています。自宅から遠い他県まで通って、治療を受けている方もいらっしゃいますね。このような患者さんの負担が、少しでも減っていくことを願っています。


§5 受診ではうまく話せなくても気にしない

精神科を初めて受診する人のほとんどが、不安をもったり、緊張したりしているものです。ドキドキして、うまく話せるかどうか心配になってしまう人もいるでしょう。しかし、別にうまく話す必要はないのです。自分の症状について、日ごろ感じていることについてありのまま話してみましょう。話のうまい、へたにかかわらず医師は患者さんの言葉に耳を傾けてくれるでしょう。

受診する前から「ここの病院なら絶対大丈夫」と、確信できるものでもないと思います。「この病院でいいんだろうか?」「いい先生に担当してもらえるだろうか?」と、不安になるのが普通でしょう。しかし、そのような不安があったとしても、「少しでもよくなりたい、受診してみよう」という気持ちがもう一方にあれば、その気持ちを大事にしてくださいね。