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OCDコラム

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OCDの本棚――(2)
認知行動療法・子どものOCDを知るには


患者さんや家族が読める、一般向けに書かれたOCD(強迫性障害)の本を、3回に分けて紹介しています。
病気治療について書かれた本を選ぶとき、もっとも大事なことは、書かれていることの根拠が「科学的である」ことです。
今回、目的3、4で紹介する本は、いずれも臨床での経験が豊かな専門家によって書かれたものです。
それぞれ精神医学、心理学という学問的・科学的な根拠に基づいて書かれており、さらに、専門家としての実際の治療経験を踏まえた内容になっています。


それぞれの本の内容を、次の目的別に紹介します。

目的1 OCDの基本的なことを知るには

目的2 OCDをより詳しく知るには

目的3 認知行動療法について知るには

目的4 子どものOCDについて知るには

目的5 ほかの人の体験を知るには

目的6 ほかの病気が併存している人には

今回は、目的3目的4から4冊を紹介します。


目的3 認知行動療法について知るには
―― 行動療法や認知行動療法とは、どんな治療法で、どんなことをするのでしょうか。また、どんな仕組みで症状が軽減されるのでしょうか。それを知るためには、次の本がおすすめです。

『強迫性障害の治療ガイド』
⑦ 『強迫性障害の治療ガイド』
丸数字は、前回(OCDコラム第60回)
からの通し番号です。

飯倉康郎/著 
二瓶社(1999年) 840円  注……値段はすべて税込み価格です。 

行動療法を知るための最初の本

全32ページと少ないページ数で、強迫性障害と行動療法について、簡潔にわかりやすく解説した本です。強迫性障害の症状と、行動療法のあらましを知るのに便利です。

症状の説明のところでは、強迫観念と強迫行為の関係がチャート図で示されており、自分の強迫症状が悪循環になっている仕組みを、目で見て知ることができます。そして、その悪循環が、行動療法の技法である「曝露反応妨害法」によって改善されていく仕組みもわかりやすく解説しています。(⇒OCDの治療法 行動療法に同じ図があります)

また、実践編では、行動療法の流れや、治療中に陥りやすい考えを、わかりやすく説明しています。

医療機関で行動療法を行うときは、患者さんに対して治療のプロセスなどを説明する「心理教育」というものを行いますが、この本は、もともとその心理教育で使うことを目的に書かれました。1999年に出版された本ですが、今でも行動療法を行う医療機関では、これが心理教育に使われているところが多いと聞きます。

ちなみに、本では著者を「国立肥前療養所 飯倉康郎先生」と紹介していますが、肥前療養所は、現在、独立行政法人国立病院機構 肥前精神医療センターと名称を変え、強迫性障害の行動療法は行っていません。飯倉先生も、そこにはおられません。

次に紹介する2冊は、ページ数が多く、全体の内容を読み切れない人も多いと思いますので、まずこの本で行動療法のあらましを知り、もっと深く知りたいときに、⑧、⑨を参考にするとよいのではないかと思います。


『強迫性障害からの脱出』
⑧ 『強迫性障害からの脱出』
リー・ベアー/著 越野好文、五十嵐透子、中谷秀夫/訳
晶文社 (2000年) 2,310円

標準的な行動療法の教科書

標準的な行動療法を中心に、強迫性障害とその治療について広く書かれた本です。リー・ベアーは、米国ハーバード大学精神科の心理学准教授であり、OCDとその関連した病気についての国際的な権威です。訳者の一人である越野好文先生は、元・金沢大学医学部神経精神医学教授(現・名誉教授)です。

351ページとボリュームがありますが、各項目の説明が丁寧です。また、臨床経験に基づいているので、医師が患者さんや家族からよく質問されるポイントや、患者さんに誤解されやすいポイントを押さえています。ですから、根気よく読んでいける人で、行動療法についてもっとくわしく知りたいという人にはおすすめの1冊です。

原書は1990年代に書かれましたが、日本では、今ようやくこの本に書かれている内容の行動療法が普及しつつあるところです。たとえば、症状の評価に使うエール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)の説明が書かれていますが、日本でも強迫性障害に詳しい専門家が、この尺度を用いることが増えてきました。また、行動療法の説明も、日本の医療機関でこのとおりに行われるわけではありませんが、標準的な内容なので、参考になると思います。

『強迫性障害を自宅で治そう!』
⑨ 『強迫性障害を自宅で治そう!』
エドナ・B・フォア、リード・ウィルソン/著 片山奈緒美/訳
ヴォイス(2002年) 2,940円

行動療法のノウハウを詳しく知りたい人向け

この本も381ページとボリュームがあり、行動療法について、より詳しく知りたい人向けの本です。この本では、強迫症状を、洗浄・清掃、確認、繰り返し、整理整頓、溜めこみ・収集、想像型儀式、心配症や軽い強迫にタイプ分けをし、タイプごとに解説しています。ですから、自分の症状に合ったタイプのページのみを読んでいくのもよいかと思います。

行動療法の曝露反応妨害法では、その人の苦手度の軽いものから段階的に行う方法と、フラディング(flooding)といって、苦手度の強い段階にあえて直面する方法との2つの技法がありますが、著者の一人エドナ・B・フォア博士は、臨床心理学の権威で、不安障害の治療に長く従事し、フラディングの技法を使うことで有名な先生です。

フラディングは、経験豊かな先生の指導のもとで行うと効果的といわれていますが、日本では、その専門家はいまだ少ないのが現状です。また、一般向けにやさしく書かれてはいますが、特に洗浄・清掃強迫では、ところどころに、「尿や便のしみに触れる」など、フラディング的な表現があります。OCDの人の中には、言葉どおりに受けとめ過ぎて、「ここまでやらないと治らないのか」と思ってしまったり、これらの言葉自体に不潔感や抵抗を感じたりする人もいるかと思います。

また、「自宅で治そう!」という邦題がついていますが、この題は日本独自のもので、原題は「Stop Obsessing(強迫を止めよう)」です。ここに書かれている内容を、患者さんが一人で読んで実行するのは困難なことと思います。本にも、「このようなプログラムを実践するには、最初からしっかりとした決意と取り組みの姿勢が必要」と書かれていますし、実に忍耐のいる作業です。

また、本で紹介されているような短期集中プログラムを行っている所は、日本ではわずかしかありません。次回(OCDの本棚(3))、ご紹介するOCDの会の冊子『とらわれからの自由』には、日本での短期集中プログラムの体験談が載っています。


目的4 子どものOCDについて知るには
―― 子どものOCDは、大人とは違った面もあります。しかし、それらを一般向けに書いた本はほとんどないのが現状です。子どものOCDについて、一般の人でも読めるように書かれた雑誌の特集がありますので紹介します。

妄想に取り憑かれる人々
⑩『こころのりんしょうa・la・carte
Vol. 27No.1子どものチックとこだわり』
金生由紀子、宍倉久里江/編
星和書店(2008年3月) 1,680円 

子どものOCDに特化した貴重な内容

『こころのりんしょうa・la・carte(ア・ラ・カルト)』は、精神科領域で働く専門家のための季刊誌です。この号は、子どもの強迫性障害と発達障害(ADHD、自閉症、アスペルガー障害)の特集で、チックと「こだわり」についてもページを割いています。

特集の前半(第1部)はQ&A集で、一般の読者にもわかりやすく書かれています。50の質問に対し、14人の専門家が回答を寄せていて、それを読めば、これらの病気や障害についての基本的な知識を得ることができます。強迫性障害の治療薬や行動療法についても、簡単に説明されています。

子どもの場合、同じ「こだわり」症状でも、強迫性障害によるものなのか発達障害によるものなのか、判断が難しい場合もありますが、そのようなテーマにも触れています。

雑誌の後半(第2部)は、主に専門家向けの内容となっていますが、座談会の記事は、一般の方が読んでも参考となる部分が多いと思います。この分野の専門家である医師、心理士などの女性5人に編集者2人が加わり、それぞれの臨床現場での体験を踏まえた内容を語っています。専門用語が出てくるものの、このような問題を抱えるご家族にとっては、情報が少ないだけに、貴重なものだと思います。

このような症状を持った子どもがいる家庭では、子ども本人がつらいのはもちろんですが、親もどうしたらいいのか深く悩みます。子どもの精神的な問題は、早期に発見し、速やかに適切な対応がされることが理想なのですが、日本では、医療や心理の支援体制はまだまだ十分とはいえません。本などを通して得られる情報も含め、支援体制の充実が切望されます。