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OCDコラム

OCDコラム

最近のOCD当事者団体の動きから/2008→2009

有園正俊 (OCDお話会主宰、精神保健福祉士)


全国に数は少ないのですが、OCDの患者や家族による自助グループ、患者会があります。
2008年11月に「子どもの強迫(OCD)友の会」が京都市で講座を開催し、12月に「OCDの会」が東京で市民フォーラムと行動療法研修会を開催しました。
今回は、それらに加え、筆者らが東京で行っている「OCDお話会」の活動を紹介し、OCDコラム第37回で取り上げた団体の、その後の活動をレポートします。
自助グループや患者会って、どのような活動をしているのでしょうか。
参加すると、どんないいことがあるのでしょうか。ぜひ参考にしてください。


目次
§1 「子どもの強迫(OCD)友の会」の講座
§2 「OCDの会」による市民フォーラム、行動療法研修会
§3 患者同士、家族同士が語るオープンミーティング
§4 会を運営してよかったこと、難しいこと
§5 「OCDお話会」の活動


§1 「子どもの強迫(OCD)友の会」の講座

「子どもの強迫(OCD)友の会」は京都で始まりました。現在は毎月京都と大阪で交流会を開催しています。11月22日(土)、京都市のひとまち交流館において、同会主催の講座とオープンミーティングが行われました。


講演する南雲明彦さん。発達障害・OCDの当事者として、啓発活動や子どもの学習支援に取り組んでいる

講演する南雲明彦さん。発達障害・OCDの当事者として、啓発活動や子どもの学習支援に取り組んでいる


講座の講師は、OCDコラムでもたびたび登場していただいている南雲明彦さんでした。南雲さんとは、OCDコラムの座談会 ⇒(OCDコラム第41~45回)以来のご対面ですが、相変わらずさわやかな好青年という印象でした。演題は「ディスレクシア(読み書き困難)・OCD= 贈りもの」。南雲さんが強迫性障害という問題に悩み、格闘し、さらに自分の抱えていた症状が、学習障害の一つであるディスレクシア(読み書き困難)であったことがわかった経緯が語られました。

主な参加者は、OCDや発達障害の方やその家族、支援に関わる人たちでした。症状と格闘している時期の家族との関係も語られ、参加者からも、それについての質問がありました。南雲さんが「一番の被害者は親だと思っている」と言っていたのが心に残りました。

南雲さんの講演は90分だったのですが、それだけの時間、人前で話すことは大変だと感じる人が多いはずです。しかし、南雲さんの話はうまく、病気と格闘した当時の状況がよく伝わってきました。そんな南雲さんが、読み書きが困難であるとは、知らされない限り、外見からはわかりません。そのように、周囲の人にはわかりにくいことが、かえって本人にはつらい面もあります。

南雲さんの場合、「文字が小さいと、にじんだように見えて、複雑な字ほど判別できなくなる」そうです。でも、それがディスレクシアという障害であると知ったのは21歳の時で、それまでは、自分の努力が足りないと、自分を責めたこともあったそうです。南雲さんは、「もっと早く専門的な支援があれば、そこまで苦しむこともなかっただろうから、このような活動を通じて、障害や病気の理解につなげていきたい」とのことでした。

講座のアンケート結果が同会のホームページで報告されていますが、「このような体験を当事者の方から聞くことで、その経緯がよくわかった」、「有意義な時間であった」という感想が多くありました。
http://homepage3.nifty.com/reno/nagumo01.html



§2 「OCDの会」による市民フォーラム、行動療法研修会

OCDの会は熊本で始まりました。現在は月例会のほか、年に一度、市民フォーラムと行動療法研修会を開催しています。今年度の市民フォーラムと研修会は東京で12月13日(土)~14日(日)、日本教育会館を会場に行われました。13日の夕方6時半から行われた市民フォーラムは、原田メンタルクリニック(東京都千代田区)院長の原田誠一先生と、なごやメンタルクリニック院長の原井宏明先生による講演でした。

原田先生の講演は、「強迫性障害の治療の実際 ~首都圏の現状を踏まえた対処法を一緒に考えよう」という演題で、薬物療法、認知行動療法(CBT)について、症例を交えての解説がありました。また、「強迫性障害は、強迫性障害についての正しい診断ができて、病態に合った専門療法が行われないと十分な改善は難しいのですが、首都圏でもそのような医療機関は少なく、医学部の教育体制もまだ十分ではない」とのことでした。


国立精神・神経センター武蔵病院を経て2006年に開院した原田誠一先生。認知行動療法の専門家であり、『強迫性障害治療ハンドブック』の編者

国立精神・神経センター武蔵病院を経て2006年に開院した原田誠一先生。認知行動療法の専門家であり、『強迫性障害治療ハンドブック』の編者


原井先生の演題は、「私の大事な人がOCDに対処しない。私に何ができるだろうか ~強迫性障害と回復回避」というものでした。患者自身が受診したがらない場合、家族としては何とか受診してほしいと思うものですが、家族が熱心になればなるほどうまくいかないことも多いそうです。


国立菊池病院に在籍当時、「OCDの会」の誕生を支えた原井宏明先生。名古屋ではグループ行動療法カウンセリングに力を入れている

国立菊池病院に在籍当時、「OCDの会」の誕生を支えた原井宏明先生。名古屋ではグループ行動療法カウンセリングに力を入れている



そのようなときに大事な点は、本人との距離をとることと、受容することで、「愛情をもちながら手を出さず、見守りながら本人が苦しむにまかせる」ほうがよいそうです。そして、その中で本人が「自分がどうなりたいか」を考え、自ら何らかの行動に移すように導き、実行できたことに対して報酬を与えるような方法を考えているとのことでした。

行動療法研修会は、12月13日に患者家族のための基礎講座と臨床家のための症例検討会、14日には、主に医療従事者向け(患者・家族の見学あり)のエクスポージャーと儀式妨害の実践編が行われました。

実践編は、なごやメンタルクリニックで行われている2日間のグループ集中的行動療法カウンセリングを元にしたデモンストレーションで、2名の患者さんが行動療法に挑戦してくれました。代表の南さんによると、「全国のいろんな所に、強迫性障害への行動療法ができる専門家がいて、早めに治療を受けられるようになってほしい」との思いから、同会ではこのような研修会を開催しています。



§3 患者同士、家族同士が語るオープンミーティング(*1)

子どもの強迫(OCD)友の会の講座、OCDの会の市民フォーラムでは、患者、家族向けにオープンミーティングも行われました。いずれも当事者のグループと家族のグループはそれぞれ別室で、ほぼ同様の形式で行われました。

いずれのオープンミーティングも「言いっぱなし、聞きっぱなしで、他人の話に対して意見や批判はしない」というルールでした。参加者はいくつかのグループに分かれ、いすに座って輪になり、話します。

オープンミーティングは治療の場ではありません。子どもの強迫(OCD)友の会の参加者が、「ここに来たからといって、病気がよくなるというわけではない。ただ、普通の人なら通じない症状についての話も、ここの人なら通じる」と言っていました。

患者さんも家族も、このような会に来るまで、長い間、孤軍奮闘していた人がほとんどです。また、受診すれば患者と治療者という人間関係ができますが、このような会では、それとは別の当事者同士、家族同士という横のつながりができることが長所であると、改めて気付かされました。

子どもの強迫(OCD)友の会では、このようなおしゃべり交流会を毎月、京都と大阪で開催しています。また、OCDの会では、月例会として熊本、名古屋、広島で行っています。広島での月例会は2008年5月にスタートし、現在はOCDの子どもをもつ家族のみが集まっているそうです。



§4 会を運営してよかったこと、難しいこと

それぞれの会の方にインタビューしました。

●子どもの強迫(OCD)友の会 代表 きんもくせいさん
⇒(第30回コラム そのままで生きてほしい! 我が子の強迫性障害)

よかったこと: 「一言で言うと、永遠の希望。会があることで、孤立せず、自分一人ではないと思える。そして、皆で見守り合うなかで、希望をもち続けることができる」

難しいこと: 「参加者同士は自由に交流していただくようにしている。個性がわかるまでに時間がかかり、強迫症状があるなかで、刺激し合うこともあるけれど、それも社会生活の一面として大事なので、ありのままでいいんだよ、というように皆で受け止めていきたい」


●OCDの会 代表(熊本) 南さん

よかったこと: 「月例会で自分の症状を話すことによって自分のためになる。家族の方も苦しみや辛さを分かり合える。そんなつながりを大切にしたいと思っている」

難しいこと: 「OCDの会の活動はボランティアとして行っている。仕事とのスケジュール調整が難しい」


●OCDの会(名古屋) みうらさん

よかったこと: 「どうしたらいいかわからなかった人が月例会に来て、行動療法を行って、翌月にはよくなっていることがあるので、会の活動は症状の改善にも役立っていると思う。気持ちのはけ口、支えとなる。当事者や家族同士、また先生方からも具体的なヒントをもらえる」

難しいこと: 「月例会が木曜の夜なので、遠くから来る人の帰る時間を考えて、月例会の曜日や時間帯をどうしようかという話がときどき出る」


●OCDの会(広島) 吉見さん

よかったこと: 「悩みなどを気軽に話し合うことにより、共鳴できること、参考になること、反省することなどがあり、気が楽になってきます。OCDの子どもへの対応に困っているときに、他の人からよい対応方法などを教えてもらったとき。去年、病院で行動療法を受け、アルバイトが出来るまで元気になった方が参加してくれますので、頑張って治療をすれば、このように元気になれるというお手本がいるのが強みです」

難しいこと: 「現在のように集まって話し合うだけの活動では、マンネリになると思います。何らかの対応が必要になってくると思います。各地にある会と情報交換を行いたいと思っています。また、情報交換を密に行うことにより、OCDの会の活動の活性化につながるのではないかと思います」



§5 「OCDお話会」の活動

OCDお話会は、東京都三鷹市で、1か月ごとに、本人のみの回と家族も参加できる回とを交互に行ってきました。参加者は東京近県の方が多いのですが、茨城県、山梨県から来られる方もいます。また、受診されている医療機関はそれぞれ異なります。

他の団体では講座や市民フォーラムなどを行っていますので、ここに並べて書くのは気が引けるのですが、当会が実施したイベントといえば、昨年初めて、年末にクリスマス会をしたことでしょうか。クリスマス会といっても手が込んだものではありません。普段のお話会が終わった後にも、参加者同士が誘いあってお茶会をされているのですが、いつもはお店に予約せずに行っているのに対し、今回は予約して行ったという程度のものです。

ある患者さんの旦那様から、「妻がこの会に参加するようになってから、明るくなった」と言われて、よかったと思ったのですが、その原因は、むしろこのように、参加者同士が自主的に始めていらっしゃるお話会後の交流のおかげのような気がします。やはり、横のつながりができるのが理想的だと思いました。

また、家族の方では、「本人がなかなか受診したがらない」とか、「今までの治療ではうまくいっていないので、ここに来れば何か情報が得られるのでは」という思いの方も多くいます。そのような方から見れば、患者さん自身が参加していること自体、「うちの家族もこうなってくれれば」と感じられるようです。



おわりに

精神科のデイケアや福祉施設のミーティングでは、スタッフが立ち会って、参加者同士、双方向のやり取りをしている所が多いと思うのですが、お話会もそれに近い方法で行ってきました。しかし、今回、取材させていただいた団体の方法にもメリットを感じ、とても参考になりました。

どの団体も、初めて参加される方を歓迎してくれると思います。参加してみたい方は、次のリンクから気軽に問い合わせてみてください。



*各グループへのリンク

● 子どもの強迫(OCD)友の会

● OCDの会

● 名古屋OCDの会

● OCDお話会(強迫性障害の案内板)



*注釈

*1オープンミーティング――自助グループの会合で、当事者や会員以外の人も参加できる形式。当時者のみ、会員のみの例会は、クローズドミーティングと呼ぶ。