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OCDコラム

OCDコラム

うつ病」にならないために
2―うつ病の治療と予防



OCDと併存する心の病気のなかで、最も多い「うつ病」について、基礎知識を紹介します。
第2回は、治療と予防についてです。
心の持ち方を変えることによっても、うつ病は予防できるそうです。


目次
§1 うつ病の治療法
§2 家族や周囲はどうすればいいか
§3 うつ病を予防する心の持ち方


§1 うつ病の治療法

うつ病は適切な治療によって治る病気です。治療は、休養と、薬物療法精神療法が三本柱です。

●休養
休養は最も効果的なうつ病の治療法です。うつ病の人は心身共に疲れきっているので、まず、心と体に負担のかからない状態にする必要があります。たとえば主婦で、家にいるとあれこれやらなくてはいけないことが目について休めないという人は、軽いうつ病でも入院することが勧められます。真面目すぎて、家にいてもパソコンで仕事のメールをしてしまい、休むことができないという人も同じです。

●薬物療法
抗うつ薬を中心に服用します。薬によって神経伝達物質の量を正常に近い状態に戻し、回復に向かわせます。症状によっては睡眠薬や抗不安薬が使われることもあります。抗うつ薬の処方は個人によって違い、服薬期間も、半年間ぐらいで回復する場合もあれば、何年か続ける場合もあります。副作用が出る場合もありますが、自分で勝手に中断したりせず、医師の指示に従って服薬し、減量していくことが大切です。

●精神療法
薬と組み合わせて行うことで効果が上がるとされています。病気について説明して、治療法や経過などを本人によく理解してもらい、相談や助言によって不安を軽減させます。また、最近よく行われているものに、「認知行動療法」または「認知療法」があります。これは、医師や臨床心理士の働きかけにより、うつ病に特有の否定的なものの見方や考え方のパターンを自覚して、自ら克服できるようにしていくものです。


うつ病では、精神療法だけで治療するケースはあまりありません。ただし、薬物療法だけでも、6~7割の人にしか効果がないというデータもあります。残りの3~4割の人には、薬物療法と精神療法とを組み合わせての治療が重要になります。

精神療法のひとつの「心理カウンセリング」は、軽いうつ状態で、心の問題が大きなウエイトを占めている場合には効果があります。不安や悲しみ、怒りなどの、本人も気づかずに抱えている心理的な問題や心の傷を、カウンセラーにじっくりと話を聞いてもらうことで自覚し、自ら解決法を探っていけるようにしていきます。

しかし、うつ病の場合、神経伝達物質がうまく働かないことが原因になっていることが多いので、話を聞いてもらうだけで回復することはあまり考えられません。逆に言えば、カウンセリングを受けても状態がよくならない場合は、うつ病が疑われるので、精神科医の診断を受けることが勧められます。


●その他の治療や療法
リラックスするために、ウォーキングをしたり、呼吸法や、マッサージ、アロマセラピーを受けるなど、身体的な刺激を与えるさまざまな方法があります。これらの方法は、リラックスして自律神経の緊張状態を緩和するという意味では効果がありますが、うつ病自体の治療というわけではなく、治療をしやすい状態にしたり、再発予防には効果があると言えるでしょう。



§2 家族や周囲はどうすればいいか

OCDでは家族や周囲の人の理解が治療の大きな支えになりますが、うつ病でも、家族や周囲の人の役割は大変重要です。うつ病の場合、家族や周囲の人の接し方が症状に影響を及ぼす割合は、OCDよりも大きいと言えます。本人のためによかれと思ってした言動も、本人をさらに追いつめてしまう場合もあるので、うつ病についての正しい知識を持ち、理解を深めることが大事です。以下に、家族が気をつけたいことを挙げます。


●病院に一緒に行
病院へは家族も一緒に行くことが効果的です。家族がついていく目的は、ひとつは家族もうつ病という病気について理解しておくことが大切だからです。もうひとつは、本人が自分の状態を正確に医師に伝えられないことがあるため、家族が代わりに伝えてあげるためです。いつ頃から、どのような症状が現れるようになったのかなどを正確に伝えることが、正しい診断に役立ちます。

●病気であることを本人に気づかせる
うつ病の人は、悲観的な思い込みのために、ある意味で頑固になり、聞き分けが悪くなっていますから、「思うようにいかないのはうつ病のせいなのだから、まずはゆっくり治そうね」と、病気であることを自覚させるようにします。

●励ましは逆効果
がんばりたくてもがんばれない、またがんばりすぎたためにうつ病になってしまった人に、これ以上の励ましは、よけいに本人を追い詰めることになってしまいます。「わかっているよ」「見守っているからね」という態度だけでも、充分に励ましになります。また、頭ごなしに批判したり、自分の考えを押し付けることも、本人の負担になりますので気をつけましょう。

●適度な距離を置く
励ましがいけないからといって、まったく声もかけなくなったり、放っておいては、本人が孤独になります。「がんばれ」などの単純な励ましがいけないのであって、「必ずよくなる病気なのだから、だんだんよくなっていくから、焦らないでゆっくりいこうね」というぐらいのことは言ってあげたほうがいいのです。「心配はしているけれど、干渉はしない」という、ちょうどよい距離感の思いやりが、なによりの励ましになります。

●日常生活の負担を減らす
たとえば主婦がうつ病になった場合、夕食の献立を考えることも負担になるため、夫が買い物をするなど、できるだけ本人の負担を減らしてあげるように、家族も協力することです。治療をして回復へ向かってきたら、本人がやれることから少しずつやってもらうようにします。

●重大な決断をさせない
うつ病になるとなかなか決断ができにくくなり、また健康なときとは違った決断をしてしまう場合があります。本人に決断を迫ることはなるべく避け、小さなことは「今日は白い服にしたら」などと、できるだけ具体的に提案するようにします。逆に、人生や生活を左右するような重大な問題には、決断を急がず、できるだけ先延ばしにしましょう。

●本人が望まないことは無理強いしない
気晴らしに外出や運動をするのがよいのではないかと思いがちですが、本人が本当に望んでいない限り、家族に勧められることも負担になってしまうことがあります。たとえ病気になる前には好きだったスポーツや旅行であっても、無理に勧めないようにしましょう。まずは休養することを第一にして、本人の気分が向いたら近所を散歩するなど、ごく軽い程度の外出や運動をしてもらい、心身の疲れをとってあげるようにします。

●薬を管理してきちんと飲ませる
副作用への不安があったり、症状が少しよくなったからといって、自分の判断で薬をやめてしまうと、症状が悪化したり、再発する場合があります。医師の指示どおりに服薬ができるように、注意して見守ってあげてください。自殺を考える傾向がある場合は、薬を一度に大量に飲んでしまうおそれがあるので、家族か周囲の人が薬を手元で管理しておき、1回分や1日分ずつ渡してあげてください。飲み忘れがちな人の場合も同じです。



§3 うつ病を予防する心の持ち方

心の持ちようを意識的に変えることによって、うつ病の予防につなげることができます。

1 がんばりすぎない
すべてに完璧を目指すのではなく、「何事も八分目ぐらいがちょうどいい」と考えるようにしましょう。いい意味で適当な加減を覚えることも必要です。がんばることは大切ですが、がんばりすぎはよくありません。常に一定のゆとりを持ち、限界までがんばらないで、その手前で休むことです。

2 一度にたくさんのことを片付けようとしない
物事に優先順位をつけ、大切なものから1つずつ片付けるようにしましょう。そして、すべてをきっちり完璧にこなそうとしないことです。終わらなかったときは「明日やればいい」というぐらいに考えましょう。仕事や家事が溜まってきたら、同僚や家族に頼んで分担してもらうようにします。1人ですべてのことをこなそうとすると、自分の能力以上のことを抱え込むことになり、こなしきれずにストレスが溜まることになります。

3 悩みを溜め込まない
何か心に気にかかることがあったら、友人や家族など、信頼できる人に話しを聞いてもらうようにしましょう。人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になる場合も多いのです。自分の限界が来てしまう前に、ちょっとした話をして、心を休めることです。また、自分が深刻な状態であることを知ってもらうためにも、人に話をするのです。誰かが必ず話を聞いてくれるものです。「相手の迷惑になる」などと考えず、話してみましょう。

4 他人の目を気にしない
誰しも人によく見られたいものです。しかし、自分が気にしているほど、他人は自分のことを気に留めていないものです。他人にどう思われているかなどと、あまり考えすぎないようにしましょう。また、すべての人によく思われたいとか、自分を理解してもらおう、などと思わないことです。マイペースで、リラックスした生活を心がけましょう。

5 ストレスはあって当たり前
避けることのできるストレスはもちろん避けたほうがよいのですが、避けられないストレスとは、「上手につきあっていく」ぐらいの姿勢でいきましょう。仕事や家事、育児にしても、多くの人と社会生活を営む上で、ストレスがない状態はないと言ってもいいでしょう。ですからまず、自分がストレスを受けていることを自覚することです。その上で、ストレスを当たり前のこととしてとらえることです。

誰しも他人のことはよく見えるもので、一見ストレスがないように振舞っている人でも、必ず何らかのストレスを抱えているものです。また、仕事上の失敗からくるストレスは、次の成功へのエネルギーになることもあります。こういったストレスは、あってもいいものです。「みんなストレスはあるんだ、あって当たり前なんだ」と開き直って考えることです。

6 何事もほどほどがちょうどいい
人生を生きていく上で、すべてが順風満帆という人は、なかなかいないでしょう。誰しもつらい時期があり、それを乗り越えてきています。人生には100点の時もあれば、60点の時もあって当然です。完璧な人生を描こうとするのでなく、何事もほどほどがちょうどいい、自分なりの生き方でいいのだと考えるようにしましょう。


……いかがでしたか。2回に分けてお送りした<うつ病の基礎知識>は、参考になりましたでしょうか?

うつ病とOCDの共通点は、どちらも脳内の神経伝達物質がうまく働かないことが原因のひとつになっていることです。しかし、その症状も違えば、生活上起こってくる悩みも、家族の注意すべき点も、大きく違います。もし両者が併存したときには、早めに主治医に相談したいものです。

そして、OCDだからといって、「他人の目を気にしない」こと、一日も早く治そうと焦って「がんばりすぎない」ことなどは、参考になりますね。毎日のつらい症状に、強いストレスを感じている人も多いことでしょうが、それも「病気なんだから当たり前」と考えを切り換えて、ゆっくり治療を進めていきましょう。



*参考文献

上島国利(本サイト監修者)・著 『うつ病かな?と思ったときに読む本』 小学館文庫 2005年