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OCDコラム

OCDコラム

適切な専門家に相談して
長い治療生活を乗り切ろう



OCDは経過の長い病気です。治療を続ける間に起こるさまざまな悩みを、どこに行って、誰に相談すればよいのでしょうか。
悩みの中には、医師に相談したほうがいいこと、医師に相談すべきこともあれば、 他の専門職の方に相談したほうがいいこともあります。
今回は、そのあたりを整理してみましょう。


目次
§1 相談相手は医師だけとは限らない
§2 症状のことは医師に相談
§3 経済や生活上の悩みは精神保健福祉士(PSW)に相談
§4 心の悩みを整理したいときは心理の専門家に相談~できれば医師の紹介で


§1 相談相手は医師だけとは限らない

確認に時間がかかる、順番を守らないと次の行動ができない、不潔が怖くて物に触ることができない……などの症状で日常生活に支障を来すようになったら、精神科か精神神経科の病院・診療所に受診しましょう。その医療機関によっても違いますが、初めての受診(初診)の際は、30分程度かけて問診や検査を行ってくれる医師が多いようです。OCDと診断が下ったら、治療が始まります。

OCDの治療は、薬物療法と行動療法が中心です。⇒(OCDの治療法―OCDを治療するには)重症の場合や、緊急に対処が必要な症状がある場合は入院治療も行われますが、初診の後、そのまま通院治療が始まる人のほうが多いことでしょう。通院治療では、定期的に医師と面接して、薬を処方してもらうことになります。OCDの薬物療法では、薬が効果を出し始めるのに2~3週間かかり、人によっては軽い副作用もありますので、医師はその人の状態を診ながら薬の量を調節していきます。⇒(OCDの治療法―OCDの薬物療法)

こうした長期間にわたる薬物治療を続ける場合、医師との面接時間は15~20分ぐらいのことが多いようです。そこで患者さんからときどき聞かれるのが、「お医者さんにもっと相談したいけれど、面接時間が短いので話しにくい」「通院しても薬を出してもらうだけで終わってしまう」という声です。症状に特に変化がなかったり、少しずつ改善している場合は、面接で話す内容が少なくなってくるので、なおさらそういう印象を持ちがちなのかもしれません。

そこで確認しておきたいのは、相談したいことの内容です。もしかしたら、医師だけでなく、他の専門家に相談したほうがよいこともあるかもしれないからです。



§2 症状のことは医師に相談

もし、相談したいことがこんなことだったら、必ず医師に相談しましょう。

<心の状態の変化>
  • 前よりも手洗いの時間が長くかかるようになった。
  • 1日に何度も嫌なことを思い出し、思い出すたびに何も行動できなくなる。
  • 外出すると強い不安に襲われるので、外出できない。
  • エレベーターに乗ると胸がつまって、うまく呼吸ができなくなる。
  • 人前に出ると上がってしまうので、仕事に就くことができない。
  • 朝起きても何もやる気がしない。落ち込みがひどい。
  • こんな自分が生きていたって家族に迷惑をかけるだけだ、死んだほうがいいのではないかと思うようになった。


<体の状態の変化>
  • 夜、床についてもなかなか眠ることができない。
  • 起き上がるときにめまいがする。
  • 急に食欲がなくなった。
  • ものを食べようとすると吐き気がする。
  • おなかの調子が悪い。
  • 全身がだるい。

定期的な面接の間、心や体の状態に大きな変化があったときは、隠さず医師に相談しましょう。ほかの心の病気が合併していないかどうか、また、その症状が薬の副作用による一時的なものなのか、他の病気の症状なのかを診断してもらう必要があるからです。言うまでもなく、病気の診断と治療、薬の処方は、法律に定められた医師免許を持つ医師にしか行うことができません。



§3 経済や生活上の悩みは精神保健福祉士(PSW)に相談

もし相談したいことが、経済的なことや、生活を成り立たせるために必要なことならば、精神保健福祉士(略称 PSW)に相談しましょう。精神保健福祉士は、こころの病気をもつ人が福祉制度を利用する際の窓口となってくれる専門家です。さまざまな福祉制度を利用する方法を教えてくれるほか、地域の役所や精神保健福祉関連の施設、医療機関と連携して、適切な機関につないでくれます。これについては、別のコラムで現役のPSWが紹介していますので、詳しくはそちらをお読みください。⇒(OCDコラム第40回)

たとえばこんなことも相談できます。

  • 病院に行きたいけれど、外出ができない。
  • 収入がなく、治療費が払えない。
  • 治療を続けなければならないのに、国民健康保険料を滞納してしまった。
  • 役所に行って医療費を補助してもらう手続きをしたいが、外出ができない。
  • 外出はできるようになったが、仕事に就く自信がもてない。
  • 1日数時間だけでも働いてみたい。

精神保健福祉士(PSW)に相談するには、下記の機関に問い合わせます。

● 地域の生活支援センター
● 地域の精神保健福祉センター
● 保健所
● 市区町村役所の精神保健福祉関係の窓口




§4 心の悩みを整理したいときは心理の専門家に相談~できれば医師の紹介で

相談したいことが症状そのものや経済生活上の悩みではなく、もっと漠然とした、あるいは深い心の悩みである場合はどうしたらいいでしょうか。たとえばこんな悩みです。

  • 子どもの頃、親に虐待を受けたことが忘れられない。
  • 学校でいじめを受けた経験があり、自分に自信を持てない。
  • 同居する家族に対する憎しみが抑えられない。
  • 自分はこれからいったいどうやって生きていけばいいのかわからない。
  • 生きていること自体がつらい。
  • 何を見ても腹が立ち、つい身近な人に暴言を吐いてしまう。

いろいろな思いや感情が心に渦巻いて、とにかく誰かに話を聞いてもらいたい、という場合もあるでしょう。こうした心の悩みは、症状と関係している場合もありますので、主治医に相談してもよいのですが、現状では、医師はたくさんの患者の診療に追われ、十分な相談時間がとれない場合もあります。そんなときに心の悩みの相談にのってくれる専門家として、心理士あるいは心理カウンセラーがいます。

カウンセラーといわれる専門職の中でも、臨床心理士は、文部科学省が認可した協会が認める厳しい資格で、指定大学院の修士課程で学び、試験に合格した人だけがなることができます。資格は5年ごとに研修を行って更新しなければなりません。精神科医の中にも臨床心理士資格を持つ医師がいます。臨床心理士は、さまざまな心理テストを行って相談者のもつ問題をつきとめ、心理カウンセリングを行って、相談者が自分の心の問題に向き合い、自分で悩みや問題を整理していくプロセスを援助します。

臨床心理士の他に、さまざまな民間の学会や協会が認定する心理士の資格があります。また、音楽療法や絵画療法、ダンスセラピーなど、さまざまな療法(セラピー)によって相談者を援助するセラピストといわれる専門家もいます。

精神科の病院や診療所には、これらの専門家が常駐しているところや、連携しているところもあります。その場合、カウンセリングによって明らかにされた問題が医師に正しく伝えられて、治療に役立てられたり、合併症の早期発見につながる可能性もあります。ですから、カウンセラーやセラピストに相談をしたい場合は、できれば主治医の紹介を受けて、主治医と連携している専門家に相談するほうが安心と言えます。

カウンセリングには、保険診療の範囲内で受けられるものとそうでないものがあり、保険診療でない場合は高額な費用がかかります。お金を無駄にしないためにも、確かな専門的技量を持った心理カウンセラーに、信頼できる人間関係の中で出会うことが肝心です。全国の保健所や精神保健福祉センターでも、「心の相談」などの窓口で、専門家が相談を受け付けているところがあります。