トップOCDコラム > 第45回
OCDコラム

OCDコラム

OCD体験者座談会
第5回 一人じゃないから


5回にわたりお送りしてきた座談会も、今回が最終回です。
座談会は、参加者の皆さんにとっても新鮮な出会いだったようです。
これまで、OCDについての情報が本当に少ないなかで、
葛藤しながらやってこられた皆さんです。
それぞれの方の言葉や発想、体験談が、
あなたの"明るいOCD生活"のヒントになりますように。
勇気を出してご登場いただきました体験者の皆さん、本当にありがとうございました。



司会 ●有園正俊さん(46歳・東京都 OCDお話会主宰、精神保健福祉士)
OCDコラム第23回に登場
 
参加者 高橋さん(25歳・東京都)
優さん(仮名・学生)
南雲明彦さん(22歳・石川県 インターネット高校職員)
OCDコラム第32回に登場

OCDコラム第35回に登場


 
!注意
  • お話の中に出てくる出来事は、それぞれの方の実体験に基づいたものです。
  • 症状への対処法につきましては、それぞれの方で条件が違いますので、誰にでも応用ができるものではありません。決して自己流の判断を推奨するものでもありません。その点にご留意の上、お読みください。

 
 
■身近な人によるサポート

  有園  この座談会もそろそろ終わりに近づきましたので、お互いに聞きたいことなどありましたらどうぞ。

  南雲  ちなみにご結婚はされているんですか。

  高橋  していないです。

  南雲  恋愛も一つのサポートだと思うんです、パートナーの理解というのが。

  高橋  コラムに書いたんですけど、協力者としては大切ですし、やはり、いるといないとでは全然変わりますね。

  南雲  それでだいぶ症状が改善されたとか。僕はそういう経験はないんです。一緒にいても症状はあくまで隠し続けてきたので。いま、お互いどういうふうにサポートし合っているのですか。

  高橋  あくまで気軽に、です。向こうは普通なので。ただ、自分にはこういうのがある、とは言ってあります。映画*1も一緒に見ましたし。だいたいこういうときにこうなるということを、向こうも把握しています。出かけるときは、僕の持ち物はほとんど持ってもらっています。見ると確認してしまうので、財布も管理してもらって。僕は携帯だけ持って、あとのものは全部持ってもらいます。

  南雲  財布の中にカードが何枚入っているか気になるということでしたね。

高橋さん

  高橋  はい。長財布には、小銭はまったく入れていないんです。小銭と分けて持っていたほうが楽なので。家に帰ってきたら荷物を置いて、で、お札を数える。数えるときにも儀式*2があるので、彼女に本当に表面だけ簡単に確認してもらって「あるよね、あるよね」と。一人のときだと、他のことが気になって集中できなくなるときがあって、そういうときに一番確認が長くなってしまうんですよ。一人で部屋に入って、財布をしまおうとするときに、しまう所定の位置があるんです。すべてのものに対して。そこに置く前に、たとえば隣の部屋のテレビが鳴っていると、もうダメなんです、気が散ってしまって。そういうのを彼女は理解してくれていて。家族には言っていないんですけど、パートナーという意味ではだいぶ救われています。

  有園  OCDは人になかなか理解してもらえない病気ですが、そういう点に対してどうですか。たとえば家族の理解とか、身の回りの人の理解については。

  南雲  ほとんどなかったですね。でも、周りの人達は、強迫についての理解はなくても、すごく暖かい目で見てくれたので、それが助かったと言えば助かったかなと思います。

  有園  コーチの方はけっこう理解してくれたんですね。

  南雲  そうですね。コーチはとことん話してくれますね。周りには、どんなにやさしく接してくれても、細かいところは言わなかったんです。「手を何回も洗ってしまうことがある」くらいで。実際、自分自身にそこまで問い詰めたということもありませんでしたし。どこで症状が出るんだろう、とか、けっこうしんどい作業だったんです。でも、それを支えてくれたコーチには、今となっては感謝しています。ただ問い詰めるだけじゃなくて、今後どうすればいいのかのアドバイスもしてくれて。

  有園  優さんは、周りの人の理解はどうでしたか。

    優   姉や母がとても理解してくれているので、僕がこうしたらたぶんこう思っているだろうとか、いまこういうことを思っているだろう、というのはよくわかってくれているんです。姉は「私は病気じゃないし、お前の気持ちはわからないけど、でも、そういうことがあるということはわかっているから」と言ってくれますね。

事務局  優さんはブログでOCDのことも書いていますが、反応はどうですか。

    優   ほのぼのとした雰囲気、コミュニケーションをとても大切にしています。

事務局  この座談会も、何かそういう方々の役に立てるといいですね。

    優   そうですね。何よりも、経験した方が一番味方じゃないですか。お医者さんはOCDというわけじゃないし、OCDの先生がいるとしても、探すのはとても難しいことだと思うし、やはり、ちゃんと意見を交わしあえる人がいるといい。

  有園  私の知っている精神科医の人がいて、その人はおもに女性や小児精神科が得意だったんですけど、その人が言っていたのは、医者というのは、知識はいっぱいあるんだけど、やはり何年たっても患者さんの言っていることに対して実感がなかなかつかめない。体験したことがないから、実感がわかないと言いますね。知識では聞いたことはあるけれど、自分個人の体験ではそういうことを経験したことがないので、それが限界なんです、と言っていましたね、その人は。

  一同  へえ。

 
 
■当事者だからわかること

南雲明彦さん

  南雲  当事者同士って、なにか言葉がなくても分かりあえるというか、すごく安心感があるような気がしますね。

  有園  私が開いているOCDお話会*3でも、当事者だけで、親抜きでやったことがあるんです。最初、親抜きで話をしたときは、本当に親密さというか、こんなにわかってくれる人に会うのは私としても初めてだし、向こうも初めてだという感じで。それぞれ立場や抱えているものは違うんですけど、それでもやはり通じるものがありました。

  南雲  OCDでベッカム*4とかいますけど、けっきょくベッカムでは遠いんですよね。スーパースターでは、ちょっと遠すぎる。発達障害のなかではトム・クルーズがいますけど、あまりリアリティがないなって思うんです。

事務局  テレビの福祉ネットワークには発達障害の当事者の方がたくさん出ていましたね。

  南雲  出ていましたね。発達障害でもそうですけど、身近でこうやって、OCDでもそれを乗り越えて社会で活躍されている人がいる。別に目立った活躍でなくても、自分のなかからやりたいことをやっている人がいるというのは、いいモデルになると思うし、それを示せていけたら。また自分もやりたいことができるかもしれないという光になりますから。

事務局  このサイトの読者でも、一人で抱え込んでいて、友達にも家族にも誰にも言えないで悩んでいる人も多いのではないかと思います。

  有園  私なんて、家族は全然理解してくれなかったですよ。最初は家族との関係はすごく悪かったです。いま、スクールカウンセラー*5もいますけど、スクールカウンセラーといっても、OCDのことをそれほど知らない人も多いんです。当事者の方から「相談しても全然ダメだと思った」という声を聞くこともあります。だから南雲さんなど、これからいろいろとそういう方のお役に立てることが多いんじゃないでしょうか。

  南雲  けっきょく、僕はやりたいことをやって、もし過去にOCDでも、それは黙っていればずっと黙っていられるわけですよね。そこでカミングアウトをするのは、すごく勇気がいることなんですよ。でも、誰かが声を出さないと。サイトに来た人たちも、ただこれを見てOCDの当事者たちは「いいよなぁ」って、健常者という言い方はおかしいかもしれないですけど、たぶん、僕らが健常者を見ているのと同じような目で僕らを見ることになってしまうと何もならない。それでは何か今までの体験が生きないというか。使ってほしいですよね、僕らが体験したことを。それが心を閉じてしまった人たちのために本当に必要だと思うし、だからこそ声を出していかなきゃいけないのかなと思います。ホームページなら家にいても見られるわけですし、すごくいいですよね。写真で見られればまた具体的にわかりやすいし。

事務局  自分だけじゃない、現実にこういう人もいるんだということですね。

  南雲  今まで顔を出さなかった方々が出してくれたとか、そういうことが増えてくると、すごく勇気を持てるもとになるし、「じゃあ私も頑張ってみよう」というふうになってくれたら。「外に出てみよう」とか、そういうふうになればいい。強迫性障害は、かっこ悪いことではないんですから。

事務局  事務局にも、南雲さんに会いたいという親御さんからの問い合わせがありました。

  南雲  発達障害関連で、インターネットラジオを使っていろいろとやっていこうかなと思っています。この座談会みたいに、OCDの当事者たちが「あんなこと、あるよね」と言うと「あ、わかる、わかる」みたいな感じで。

    優   今はインターネットを使って、みんなと電話とかできますよね。

事務局  そういう発展形もありますね。

  高橋  けっこう話していても、共感という意味で落ち着くというか、よかったりしますもんね。家で一人で悩んでいるよりは。

  南雲  長期的に何か必要ですよね。有園さんの「OCDお話会」は、1カ月に1回やっているのですか。

  有園  1カ月か2カ月に1回ぐらいです。私のところはクローズでやっています。最初からオープンにしてしまうと、来られない人たちがいっぱいいますから。

 
 
■読者の皆さんへ

  有園  では簡単にそれぞれ感想を言っていただきます。南雲さんからどうぞ。

  南雲  本日はありがとうございました。こういう当事者の方からの声を聞くことってあまりないので、本当にここにいて僕もホッとするし、やはり皆さんが一人ひとり一生懸命やってこられた。ここに集まっている方たちは、一生懸命考えてこられてやって来て、本当に前向きに、どんなことがあっても常に前向きにやってきた。で、いまこういうふうに、自分のことをカミングアウトしたりもしているわけですが、こういう話し合いというのもやるべきですよね。そしてそれをホームページで読んで、本当に声を出せない子たちが「ああ、実は」って、どんどんメールを送ってくれることを本当に期待します。

  有園  では、優さん。

    優   こういう心の病気って、やはり生きているからあるもので、自分たちもそうですけど、やはり今苦しんでいる人たちが楽になれるようなときが、早く来るといいなと、本当に思います。自分だけじゃなくて、家族も、みんなすごくつらいと思うからです。

  有園  高橋さん。

  高橋  変な言い方になりますけど、病気の期間が長いと、自分自身忘れていることがけっこうあるんです。こういう会でいろんな話を聞くと、「ああ、あの時そうだったな」と思うと同時に、原点に戻っていろいろ考え直せたりしますね。こういうのは定期的にやったらいいなと思います。今ここにいる自分たちは出席可能ですけど、他の人たちにももっと輪を広げていけたらいいですね。

  南雲  そうですね、どんどんね。

  有園  では私から。みなさん思ったよりうまく発言していただいて、すごくよかったと、ちょっとホッとしています。私も、昔だったら「うまくやらなきゃ」と思うと、たぶんパニックになったりしたと思うんですけど、病気を経験した後はだんだん「別に下手でもいいんだ」とか「まとまらなくてもいいんだ」と思うようになりました。OCDもそういうふうに、自分自身に求める理想像が低くなっていくと、しのぎやすくなるのではないかなと思うこともあります。無理して結論を出すような会でもないので、これはこれで、いい機会を持てたかなと思います。



 
●今回のコメント――――(有園正俊)

司会の有園正俊さん
OCDって、なかなか当事者同士会う機会がない病気です。病気が重いときには、どこかに行くことすら困難なこともあります。「病院に予約しようにも、予約時間どおりに行けるかどうか心配だ」という声もしばしば聞くくらいです。
私だって、病気がひどい頃は、このような企画、絶対に参加は無理でしたね。ですので、まず参加していただいたことが、3人ともすごいなと思いました。

座談会全体をとおして、そのような同じ病気で悩んでいる方に、何か伝わってほしいという思いがあったように思います。読んでいる方々は、それぞれの事情を抱えているとは思いますが、何かの参考にしていただければうれしいです。
このような機会を作っていただき、関係者の皆様ありがとうございました。





●注釈

注)――以下の注釈は、座談会でのお話の内容をわかりやすくするために作成されたものです。参考にとどめてください。


*1 映画――アメリカ映画『恋愛小説家』(1997年公開)のこと。OCDでさまざまな強迫行為を持つ主人公の作家をジャック・ニコルソンが演じてアカデミー賞主演男優賞を受賞した。
⇒  OCDコラム第15回
高橋さんは恋人に自分のことをわかってもらうために、この映画を一緒に鑑賞した。
⇒  OCDコラム第32回

*2 儀式――強迫観念を追い払うために行う強迫行為のうちで、ある決まった型にはまっていて反復するものを言う。
⇒  OCDとは?/OCDの症状

*3 OCDお話会――OCDの患者さん、ご家族による患者会。東京都三鷹市で、司会の有園正俊氏が主宰している。
⇒  強迫性障害の案内板

*4 ベッカム――いわずと知れたプロサッカー選手。2006年、イギリスのテレビに出演した際、「自分はOCDに悩まされている」と告白した。
⇒  OCDコラム第26回

*5 スクールカウンセラー――学校で児童生徒の心理的な相談にのる専門家で、文部科学省によって小中高校への配置がすすめられている。いじめや不登校などの心の悩みについて、本人へのカウンセリングや、教師や父母に助言、援助をすることができる。臨床心理士や精神科医が兼務することが多い。



●参考文献:
『DSM-IV-TR  精神疾患の分類と診断の手引  新訂版』  医学書院  2005
『強迫性障害  病態と治療』  成田善弘/著  医学書院  2005
『強迫性障害の行動療法』  飯倉康郎/著  金剛出版  2006
『強迫性障害治療ハンドブック』  原田誠一/著  金剛出版  2006