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OCDコラム

OCDコラム

OCD体験者座談会
第2回 適切な医療を求めて


OCDを体験した4人の方による座談会の第2回です。

第1回にもあったように、OCDの症状が現れはじめたとき、多くの人は「いったい自分に何が起こったのだろう?」と悩んでしまいます。
これは病気のひとつなのだとわかるまでの葛藤が、OCDの人にとっての第一の
関門と言えるかもしれません。

そして治療を始めようとしたときに、第二の関門が立ちはだかります。
適切な医療にたどりつけるかどうかという問題です。
特に、家から通えるところに適切な医療機関がない場合、問題はいっそう深刻です。

今回はちょっとショッキングな描写も出てきますが、OCDへの正しい理解を広めていくために、読んでいただければうれしいです。

司会 ●有園正俊さん(46歳・東京都 OCDお話会主宰、精神保健福祉士)
OCDコラム第23回に登場
 
参加者 高橋さん(25歳・東京都)
優さん(仮名・学生)
南雲明彦さん(22歳・石川県 インターネット高校職員)
OCDコラム第32回に登場

OCDコラム第35回に登場


 
!注意
  • お話の中に出てくる出来事は、それぞれの方の実体験に基づいたものです。
  • 医療の現状につきましては、時代や地域の違いにより、状況が異なる場合があります。
  • 症状への対処法につきましては、それぞれの方で条件が違いますので、誰にでも応用ができるものではありませんし、決して自己流の判断を推奨するものでもありません。その点にご留意の上、お読みください。

 
 
■初めての受診

高橋  南雲さんは、今病院に行っているんですか。

南雲  いいえ、現在は行っていません。19歳の頃から行っていないです。薬物療法に頼るのではなくて、カウンセリングやコーチング*1などで、徹底的に自分の内面を見つめようと思ったんです。

有園  高橋さんの場合は自分から心療内科に行ったわけですが、南雲さんも最初は自分から病院に行ったんですね。

南雲  行きました。僕のいた県では、精神科の病院があまりないんです。限られたところしかなくて。ある病院に行ったのですが、近場でも往復2時間ぐらいかかるんです。県内なら何とか行けたので。本当に病院がない。

有園  県によっては本当に病院がないですね。初めて精神科のお医者さんにかかるまでにすごく月日がかかる人が多いのですが、お2人の場合は自分から、わりとすぐに行ったという感じですね。優さんはどちらかというと最初、精神科に行くのに抵抗があったということですね。

優     そうです。すごく探したんですよ。そうしたら内科と神経科があって、神経科という名目でやっている心療内科に通いました。もちろん、最初に症状を言うときは、めちゃめちゃ恥ずかしかったです。「頭に不安な言葉が浮かぶんです」と、それを言うまでに5分以上かかりました。でも、よく考えてみたら、薬で強迫観念は消えたとは思いますね。ただ、不潔恐怖は、やはり薬ではなく自分次第かなと、今は思っています。

有園  南雲さん、最初に精神科に行ったときはどうでしたか。

南雲  初めて行ったときは強迫性障害の症状はなかったですし、何とも言われなかったんですけど、とにかくしんどい。家から出られない、人と目も合わせられない。でも、その時のお医者さんにはあまりよい印象はなくて。「たぶん、今だけのことでしょう。とりあえず薬を出しておくから、様子を見ましょう」みたいな感じで。3分間診療が多かったですね。「ああ、こんなものか」と思いました。

優     わりと話を聞いてくれるのは最初だけですよね、病院は。あとは薬を出すだけみたいな感じで。

南雲  それで、行くたびに、短い時間の割には薬ばかり増えていったので、これじゃあどうしようもないと。薬の副作用でずっと寝て、起きてはフラフラして、ご飯を食べて、また寝て。何もよくなっていないと感じたんです。

有園  高橋さんは、最初にお医者さんに行ったときの印象は。

高橋さん

高橋  全く抵抗なかったですね。最初は過敏性腸症候群だったので、トイレに行きたくなるということを話すのはちょっと恥ずかしいかな、と思ったのですが、実際に言ったら全然そういうことはなくて、素直に話せました。「学校の教科書にこういうのが載っていたので来ました」というふうに話したら、不安神経症*2と過敏性腸症候群と言われて、薬をもらって。結局、薬を飲んでも思い込みが出てしまうじゃないですか。それを少しは抑えられるのかな、という感覚で飲んでいました。
その最初のお医者さんが、4年ぐらいしたら亡くなったんです。違う医者に行くと、今まで話したことをまた最初から話さなくてはならなくなりますよね。それが、もし南雲さんが言ったような対応が変な医者だったら嫌なので、なるべくいい医者を紹介してもらいました。ちょっと場所が遠くはなりましたが、そこへ行って、最初は普通に話を聞いてもらって。
やはり、流れ作業的ですよね。「あ、そう。じゃ薬出しとくね」という。最近、自分の症状でひどくなったのが、自分はもともと専門学校が映像科で、映像を撮る時には集中したりタイミングを合わせるために息を止めたりすると教えられたこともあって、そういう癖がついていて、最近は、確認をする時に呼吸を合わせるんです。数えるタイミングに合わせて。それで一日中息苦しくて、本当に酸素吸入器が欲しいぐらい息苦しくなって。
それを医者に、「最近、たぶん自分の過去のそういう体験もあって、息苦しいんです」と話したら、「あ、そう」と言われて。「薬はある?」と聞かれて、「はい、あります」と言ったら「今までの薬、出しとくね」と、そんな感じで終わってしまいました。他の医者も行ってみようかなと思うんですけど、どうなのか。

有園  薬を出すだけのお医者さんの話ですが、どうしても、初診だけはどの医者も少し時間をかけていろいろ質問したりすると思いますが、あとはけっこう短時間診療みたいなところが多いですね。本当はもう少しお話を聞いたりすればいいのでしょうが、なかなか患者さんも多いですし、そうなってしまうことが多いようですね。

 
 
■地方と都市の医療格差

南雲  何よりも、僕が病院に行かなかった要因というのは、そこにいるだけでよけい病んでしまうんですね。待ち時間に待っているだけでも、周りがすごく暗い顔をしていたりするので、「ああ、ここに毎週来ていたら絶対に治らない」と思いました。

有園  それはあるかもしれませんね。他の重い病気の患者さんもいるような病院だったのですか。

南雲  突然叫び出したり。基本的に、そういう方達に対応しているところだったんですね。田舎なので、精神科というと、もうありとあらゆる人に対応している。そういうようなところだったんです。おじいちゃん、おばあちゃんもいたし、若い人のほうが珍しかった。だから、周りの人が僕を見るわけですね。話しかけてきたり。暗い顔をして、「なんで君、ここにいるの」と。

優     いますよね、話しかけてくる方は。

南雲  「君みたいな人が来るところじゃない」と言われたり、「君は元気じゃないか」と叱責されたりして、その当時はどこにいても嫌だった気がします。

優     僕の担当医の先生は、クリニックに呼ばれて来ている形なんです。実際はある病院の先生なんですけど、そっちのほうが週に4回で、クリニックには週に1回しかいないんです。それだと、お薬がなくなったりした時に困りますよね。今は週2回になったので楽になりましたけど、週1回だった時に「先生のいる病院に行こうかな」と言ったら、「君みたいな子が来るところじゃないから、来なくていい」と言われました。それは悪い意味ではなくて、もし来たら、階段とかに向かってしゃべっている人がいたりするから、そういうのを見ると、影響を受けたりするというので。

南雲  そんな気がしますよね。

優     「よくないから来ないほうがいいよ」って。「多少長い時間待つかもしれないけど、我慢して、今みたいなところのほうがいいと思うよ」と言われました。わりと話は聞いてくれる先生なんです。一番人気の先生です。

有園  地方の病院だと、どうしても病状の重い人から順に受け入れざるを得ないですから。東京だといろいろなクリニックがあって、予約制のところもあります。他の患者さんと顔を合わせないですむところもあるわけです。最近、心の病気になるのは十代とか二十代、三十代ぐらいの人達もすごく多いですし、女性もうつや神経症の方が多くなっています。うつの場合は、女性のほうが倍ぐらい多いので、特に若い女性などは、南雲さんが言ったような病院だと抵抗がある人が多いと思いますね。ましてや入院ということになると。

南雲  僕が行った病院の場合、本当に重い人のほうに長い時間を割いていました。だから、僕みたいなのは軽くあしらわれました。でも、僕は家にいても、本当に限界だったんです。それで、強制入院という形をとってもらって入院したんです。本当に最終手段として。初めは、このままだと自殺してしまうと思ったので、何とかして病院に行った。それでも相手にしてもらえない。それで考えて、これはもうそういう形をとるしかないと。
でも結局、1カ月程度で退院しました。その精神病棟は6人部屋だったのですが、認知症のおばあちゃんなどが立ったまま汚物をたらしているかと思えば、どのくらいお風呂に入っていないのかわからないような、すごい悪臭の方もいらっしゃる。「長くここにいてはいけない」と思いました。でも、それが地方では現実ですから。逆に自分は、病院に入れてもらえたというだけでもラッキーでした。入れてすらもらえない人もいるわけですし。そういう人はどうしているんだろうって思うと、悲しくなります。
県内にはいい心療内科もあったのですが、すごく遠いんですよ。電車で1時間、そこからバスで30分のところにあって。話は1時間とか1時間半とか、ゆっくり聞いてくれたんですけど、まず切符を買う時点で、後ろとかが怖くなってしまって。誰も居ないんですけどね。その心療内科がある所の駅は、すごく人が多いところで、それこそ後ろから何か飛んで来るんじゃないかとか、とにかく恐怖で。切符に触るのも恐怖でしたね。ありとあらゆるところで。それで、家に帰ってからあらゆるものを拭くんです。拭いたり洗ったり。それはしんどかった。

 
 
■どんな病院を選べばいいか

高橋  心療内科って、カウンセラー*3がいるところが多いんですか。

司会の有園正俊さん

有園  いないところも多いですが、いるところも増えているようですね。特に心療内科は、パニック障害*4やストレス性の病気を診るので、女性のカウンセラーさんを置いているところも多いです。ストレスの対処法を知ることが大事なので、そのためにカウンセラーさんを置いているようです。カウンセラーが行うカウンセリング*5は、それだけでは保険が利かないので、保険外の料金を取るところもあります。
よく、カウンセリングに期待して行っても期待はずれになるとも聞きますが、それは、日本では来談者中心療法*6のように、もっぱら聞くタイプのカウンセラーが多いのです。そうすると、お話を聞いてもらったけれど、聞くばかりで全然よくなっていかないとか、聞くだけだから回数がかかるわけですね。それで、お金と回数がかかるのに、いつまでたってもよくならないと言われることがあるようです。特に強迫性障害の人は、聞いてもらうだけの心理療法では合わない人が多いですね。
強迫性障害の認知行動療法も、医師かカウンセラーが行うのですが、基本的なモデルにそってセッション(心理療法1回の単位)の回数が考えられていて、そんなに回数はかかりません。たとえば、最初に宿題を出して、表みたいなものを使って「次回までに1週間、自分の状況を客観的に調べてくださいね」と言って、調べてきてもらい、じゃあ次回はここから始めましょう、というようにしていきます。計画を立てて、カウンセラーと患者がお互い納得した上で、「じゃあ最初はここにしましょうね」というように進めていきます。宿題ではなく、病院内で行動療法をやっているところもありますが。ですから、10回前後のセッションで一段落という例が多いようですね。
高橋さんは、カウンセリングは一度も受けたことがないのですか。

高橋  ないですね。話だけ聞いて適当に受け流す医者って、けっきょく薬をもらうだけですよね。そういうのだったら、まだカウンセラーがいたほうがいいのかなと思いますけど。そうすると、薬なんて薬局に行けばいいことじゃないですか。薬だけしかもらえないような先生だったら。

有園  高橋さんのお医者さんでも南雲さんのお医者さんでも、一般論のようなことは話ししてくれるのですが、それぐらいだったら、1週間の間に薬をとりに行くだけの場合と大差ない、という感じなわけですね。

南雲  一番嫌だったのは、医者に、こんなに自分は切羽詰って病院に来ているのに、「いい加減に甘えるのはやめなさいよ、君」と言われて。本当に。それで僕、ちょっと病院の壁とかを壊しちゃって。

有園  それはお医者さんが悪いように思います。壁を壊したのはともかくとして……。精神科医は、基本的に患者さんを批判するようなことは言ってはいけないことになっています。

南雲明彦さん

南雲  そのお医者さんの人間性の問題なんだろうと思うんですけど。でも、そういう状況で、かえって自分でとことん自分と向き合ってきたので、逆に言うと、いい時間だったのかなと思います。いろいろな経験をさせてもらってきたからこそ、今の僕がここにいるわけですから。だから、「引きこもったらいけない」と言う方もいますけど、場合によっては引きこもってもいいんじゃないかな。大事なことは、それをどういうふうに受け入れるかで、それによって未来はいくらでも変わってくると思います。ここにいる方々は、まさにそれを活かして、今こうして一生懸命生きているわけですしね。

(次回に続きます)

 
●今回のコメント――――(有園正俊)

3人が医療に受診した経緯は、それぞれ状況が異なり、あまり一般的なケースではないかもしれません。しかし、3人とも、とにかく踏み出すことで、次のステップに近づけたように思います。

また、強迫の症状は、他の疾患や障害を抱える人が発症することも少なくありません。たとえば、南雲さんが抱えておられるディスクレシアは、比較的近年になって知られるようになった障害です。そのようなタイプの発達障害の方が強迫の症状もある場合、対応できる医師は、通常の精神科医以上に専門性が要求されるのではないかと思います。

しかし、南雲さんが行かれた病院は、地域のいろいろな年代の方の精神の病気に対応しなくてはいけない所でした。そこで働く医師も、強迫性障害や発達障害の専門家ではなく、精神科の病気全般に幅広く対応できる方が求められるはずです。つまり、患者さん側と、地域の医療とのミスマッチがあったように思います。

現状では、どの地域でも専門的な医療が受けられるとは限りません。本などには認知行動療法が紹介されていても、自分の住む地域には、それに対応できる医療機関はない所も多いのです。患者さん側が専門医を苦労して探さなくてはならなかったという話も、よく聞きます。

しかし、理想の治療法を求めて、頭だけで考えて悶々としていても、改善にはなかなか近づけません。ですから、今回の3人の行動に移した体験は、結果はどうあれ、それ自体が本人にとっての貴重な歩みですし、他の多くのOCDの方もつきあたりかねない現実の一端を伝えるものと思います。




●注釈

注)――以下の注釈は、座談会でのお話の内容をわかりやすくするために作成されたものです。参考にとどめてください。


*1 コーチング――個人の能力を引き出し、その個人が目標を達成できるように支援するコミュニケーションの技術。主にビジネスの世界で、個人を対象にした人材開発の一手法として行われている。カウンセリングが心の問題の解決をはかるのに対して、コーチングは本人が未来の目標達成に向かって行動できるようになるよう支援する。

*2 不安神経症――不安を主症状とする神経症。不安は誰でも持つ感情だが、はっきりした原因がないのに不安が起こり、あるいは原因があったとしても、それと不釣り合いな強さで不安が起こり、いつまでも続くのが病的な不安。不安神経症では、この病的な不安と、それに伴う身体症状が主症状となる。国際疾病分類などでは「神経症」という用語は正式な診断名としては使われなくなっており、従来の不安神経症にあたる診断名は、現在では「パニック障害」か「全般性不安障害」となっている。全般性不安障害は、慢性の不安と、それに伴う身体症状が長く続くのが特徴。

*3 カウンセラー――心理士。民間資格で、医療機関で患者の相談を受けるのは臨床心理士が多いが、そうではない資格の人もいる。臨床心理士になるには(財)日本臨床心理士資格認定協会指定の大学院の修士課程を修了し、認定試験に合格する必要がある。他に産業カウンセラーなど、分野に応じたさまざまな資格がある。
→日本臨床心理士資格認定協会  http://www4.ocn.ne.jp/~jcbcp/

*4 パニック障害――予期しない時に突然、激しい不安とともに、めまい、動悸、呼吸困難といった自律神経系のパニック発作が繰り返し起こる病気。発作自体は短時間で治まり、検査をしても身体的な異常は見つからない。発作への不安のために外出ができなくなったり、電車に乗れなくなってしまう場合がある。

*5 カウンセリング――医療で言う精神療法とほぼ同じ意味。専門的な訓練を受けたカウンセラーが、患者の抱える問題に対し、心理学に基づいて解決への糸口をつかめるように援助を行う。病気を抱えた人だけではなく、学校や職場で一般の方を対象に、「何らかの問題を抱えたときに行われる心理的な援助」の方法としても用いられる。

*6 来談者中心療法――アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズらによって始められた精神療法。治療者(カウンセラー)は、来談者の話を聞き、無条件の肯定的関心と共感的理解を示し、来談者自らが自己の内面や起こっている事態を理解し、自ら決定していくことを助ける。



●参考文献:
『DSM-IV-TR  精神疾患の分類と診断の手引  新訂版』  医学書院  2005
『強迫性障害』  スチュアート・モンゴメリー、ジョゼフ・ゾハー/著  OCD研究会/訳
『強迫性障害の治療ガイド』  飯倉康郎/著  二瓶社  2002
『強迫性障害  病態と治療』  成田善弘/著  医学書院  2005
『好きになる精神医学』  越野好文、志野靖史/著  講談社  2005