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OCDコラム

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治療のお金がないとき、生活に不安があるときは、
どこに相談すればいい?


強迫性障害のため、生活で困っている人は大変多いです。治療を続けるには診療費や薬代、病院に通う交通費も必要ですが、仕事ができないため、収入がないという人もいるでしょう。家族の援助を受けられる人もいることでしょうが、治療が長期間にわたれば、家族の生活にも影響が出ます。今回は、そのような問題に対して活用できる制度、そしてそれらの相談先や、相談相手となりうる専門家へのアクセス方法などを紹介します。


■生活の不安が、症状を悪化させることも

OCDになって日常生活に支障を来す度合いは人によって違いますが、中には仕事先や学校に通えなくなってしまっている人も少なくありません。実は、私も17年ほど前はそうだったのです。一時、働けなくなりました。収入も途絶え、貯金を少しずつやりくりしていました。

私の場合、確認がひどかったのですが、収入が途絶えたことは、それに拍車をかけていました。もし1万円、千円でも落とそうものなら、ますます生活がつらいものになるだろうし、他にも何か落とせば、収入がないので、買い直すこともできないかもしれない。車など誰かの物を傷つけたとしても、弁償できるお金もない……

そんな心配がひどくなり、よけいに確認するようになり、加害恐怖まで増していきました。そうなると、よけいに仕事への復帰も遠ざかり、次の収入がいつになるかわからないから、お金の不安も増すという、悪循環にはまっていたのです。

ですので、お金は大事です。私のサイトの掲示板に、「医療機関に受診したり、入院したくても、お金がないからできない」という書き込みがあったことがあります。でも、精神科の医療費というのは、他の病気に比べ困っている人の割合が多いため、支援してくれる制度があるのです。また、今回紹介する相談機関も、お金はあまりかからないところが多いはずです。

この分野の相談内容は、大きく分けると次のようなものが考えられます。

  • 医療費について
  • 収入について
  • 日常生活の不便について
  • 就職、社会復帰について

これらを順に説明していきます。


■医療費の負担を軽減してくれる制度

1  自立支援医療

①内容――精神の病気で通院している人に対し、通院医療費の補助となる制度です。原則として、
医療費(薬局での薬代も含む)の自己負担は1割になります。ただし、所得に応じて負担の上限額が異なります。所得の低い人ほど、負担の上限額も低く、生活保護の受給者は無料です。

②対象者・対象範囲――精神疾患があり、通院している人。精神障害および精神障害に付随する軽度な疾病に対して。

③問合せ先――受診している医療機関。または地元の市区市町村の役所での精神障害者の健康・福祉担当。

④申請に必要なもの――申請書、医師の診断書(意見書)、世帯の範囲・世帯の所得が確認できる書類、印鑑が必要。精神科の外来、クリニックを利用する人では、実に多くの人が利用していますので、お気軽に問い合わせてください。

⑤有効期限――1年。必要に応じて、毎年更新の手続きができます。

2  限度額適用認定証・高額療養費制度

①内容――健康保険に加入している人が対象ですが、入院などで医療費が高額になったときの制度があります。

入院の場合、限度額適用認定証を提示することにより、医療機関での支払いを高額療養費の自己負担限度額までにすることができます。そのためには、70歳未満の人は、健康保険組合より限度額適用認定証の交付を受け、医療機関に提示する必要があります(70歳以上の人は住民税非課税世帯の場合)。

入院に限らず医療費が1か月で一定の金額(自己負担限度額)を超えたとき、健康保険組合から、自己負担額を超えた金額が払い戻される制度が高額療養費制度です。
申請は、いずれも健康保険組合に対し行います。

高額療養費は請求してから支給されるまでに約3か月程度かかります。医療費が高額な場合、一時的であっても、個人で用意するのは大変です。そこで、医療費の支払い用の資金を無利子で融資する「高額医療費等貸付」や、国民健康保険の場合、患者さんが直接払わないで済む「委任払い」の制度もあります。

②対象者・対象範囲――健康保険に加入している人が対象です。

③問合せ先――受診している医療機関に問い合わせることをお勧めします。健康保険の保険者(国民健康保険なら市区町村というように、保険証に書いてあります)に問い合わせてもいいです。

④申請に必要なもの――限度額認定制度:  保険証・高齢受給者証(70歳以上の人)・納付通知書・印鑑です。
高額療養費制度:  病院などの領収書・印鑑・保険証・預金通帳です。


■収入や日常生活の不安は、専門家に相談

このような相談に対応しうる資格として、精神保健福祉士(PSW)があります。福祉の制度は複雑で、一般の人にはわかりにくい面もあるのですが、そのような相談全般の窓口となってくれる存在です。地域の役所、医療、施設などと連携をしているので、必要に応じて、それぞれの機関に橋渡しをしてくれるはずです。

精神保健福祉士は、医療、保健、福祉の精神障害関係の職場にいます。このうち、強迫性障害の患者さんに関係がありそうな職場は、次の3つだろうと思います。

1  精神障害者地域活動支援センター

従来は「地域生活支援センター」と呼ばれていましたが、平成18年度より制度が変わり、「地域活動支援センター」という名称に移行中です。市区町村に1か所くらいの割合で設置されていて、精神保健福祉士がいます。

地域活動支援センターは、身体障害者・知的障害者向けのものもありますが、精神障害を対象としたものを利用してください。センターと言っても、こぢんまりしていて、職員は数名程度のところがほとんどです。行っている業務は、日常生活の支援、相談のほかに、集い、憩いの場として食事会やお茶会、リクリエーション、趣味の活動、ゲームなどをしている所が多いです。

2  地域の精神保健福祉相談

これは精神保健福祉センター、市区町村、社会福祉協議会、保健所などが行っているもので、地域によっては精神保健福祉士を配置している場合があります。地域活動支援センターがない地域では、これらを利用する方法も考えられます。

3  病院、クリニックの相談室など

相談室は設置されている所とない所があります。総合病院の場合、相談員は社会福祉士という資格を持った人が医療ソーシャルワーカー(MSW)として働いているケースが多いです。MSWはいろいろな病気の患者さんを相手にするのですが、PSWと同じように、お金や生活のことについての相談に対応してくれます。

地域によって施設の状況は様々ですので、これらの連絡先は、住んでいる地域の役所に問い合わせることをおすすめします。連絡先がわかる場合でも、出向く前に、まずは電話で問い合わせてみてください。


■福祉制度を利用したいときも、精神保健福祉士に相談

年金や生活保護などの申請先や管轄は、市役所、福祉事務所、社会保険事務所ですが、それらの相談や支援も精神保健福祉士がしてくれます。

1  障害年金

これについてはOCDコラム第8回に掲載されています。

2  生活保護

世帯単位で、収入が減ったときに、国が生活の最低保障をする制度です。世帯単位ですので、同一世帯に基準以上の収入のある人がいる場合は、申請できません。

3  精神障害者保健福祉手帳

OCDコラム第7回に掲載されています。精神障害の場合、身体障害や知的障害に比べて、手帳のメリットは少ないです。コラムに付け足すと、

  • 携帯電話の割引制度が利用できます。
  • 2006年から手帳が写真付きになりました。それにより、地域によっては公共交通の料金が割引になる場合があります。
  • 雇用保険加入者が失業給付を受ける場合、障害者として給付期間が最大1年まで(150日~360日)延びます。


■精神保健福祉士にはいろいろな相談ができる

生活に関する相談は、何でもOKです。「こんなこと聞いて恥ずかしいかな」などと思わず、遠慮なくたずねてみてください。たとえば、強迫観念のために、買い物や手続きに行けない場所がある、家族や友人との関係で悩んでいる、物やゴミを溜め込みすぎて自分ではどうしようもなくなってしまった、豪雪地帯のため冬は遠くの病院に一人で受診できない……など、生活上困っていることなら、どんな小さなことでもかまいません。

社会復帰や就労支援についても、相談の対象となります。場合によっては、ハローワークなどと連携してくれることもあります。また、ハローワークにも、精神障害専門の相談員がいるところがあります。精神保健福祉士は、いろいろな行政機関や社会復帰支援施設とも連携を取って、相談に応じてくれます。


■遠慮しないで相談を

強迫性障害の人の中には、障害者向けの福祉の制度を利用することに抵抗がある人も多いと思います。でも、精神障害に対する福祉制度は、障害が一生涯続くのではなく、一時的な人が利用することも想定して作られています。

また、「障害者福祉の制度を利用すると、治ってから再就職する場合、不利になるのでは」と心配して敬遠するという声も聞いたことがあります。でも、今、症状と共に抱えている心配事を減らし、少しでも安心して医療を受けることは、それ以上に大切だと思うのです。

そして、これらの相談業務に関わる人には、守秘義務(職務上知った個人情報などの秘密を守る義務)があります。たとえば、「年金や保険のことを相談したら、会社にばれて首にならないかな」などと心配する必要はありません。

ただ、精神保健福祉士は、強迫性障害に対する一般的な知識はあっても、それほど多くの対応経験はない人が多いと思います。そのため、質問によってはちょっと期待はずれなこともあるかもしれませんが、対応はやさしい感じの場合が多いと思います。ですので、安心して相談してみてください。




●参考:厚生労働省ホームページより
社会・援護局障害保健福祉部「障害者自立支援法による改革」 自立支援医療について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushienhou02/6.html