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【私のOCD体験記】 第8回 木野夏美さん(仮名)
私は本当に強迫性障害?



前回のコラムでもご紹介したように、強迫観念は人によってさまざまです。
共通しているのは、強迫観念と強迫行為がループになって、繰り返しを強いられてしまうことです。
その背後には、「これでいいのだろうか」という不安があります。
「何か悪いことが起こるのでは」という不安を持つ人もいます。
木野夏美さんの体験に、共感をもつ人はたくさんいることでしょう。


目次
§1 やり方がわからない
§2 親指以外の爪が見られない
§3 確認する癖の始まり
§4 母の心配
§5 初めて自分で病院へ
§6 確認に時間がとられて
§7 苦手な色、言葉、数字など
§8 アスペルガー症候群の疑い


§1 やり方がわからない

私は、20代の女性です。お医者さんに行って、強迫性障害と診断されて、薬物療法と、隔週のカウンセリングを受けて、現在治療中です。少しよくなったように感じたり、ほとんど変化なしと感じたりもしています。

お医者さんは、私は小学校1年生ごろから強迫性障害だっただろうとおっしゃいました。 でも、自分では、本当に強迫性障害なのかどうか、いろいろなホームページや本などを見て、疑問に思ったりします。ホームページや本には、「本当は、ばかげているとわかっていてもやめられずにいる病気です」とか、「いやな考えが浮かんできて離れない」というふうに説明されているからです。

私は、「本当はばかげているとわかっていてもやめられない」ということはないし、いやな考えは少しの間だけ浮かんできたりしますが、「ずっと浮かんできて離れない」というようなことは、特にないように思います。でも、お医者さんに相談すると、「症状は人それぞれだから、強迫性障害です」とおっしゃいます。

私は、幼稚園から専門学校までは、風邪などで体調でも悪くない限りは毎日登校していたのですが、そのときも今も家に引きこもりがちで、同じぐらいの年齢の人より、経験もかなり少ないほうです。不安になってしまうのは、知らないことが多すぎるからで、そういう状況なら、誰でも不安になってもおかしくはないのではないかと思うのです。

私はトイレ(大便も小便も両方、特に大便)や、入浴や 、歯磨きや、洗顔などのやり方があまりよくわかっていなくて、だから不安になって、そういうことに時間がかかってしまうのだと思います。だから、病気ではないのかもしれません。お医者さんの診断は、愚かな私を病気と間違えただけなのかもしれないな、などと思うのです。



§2 親指以外の爪が見られない

小学校1年生のときから今までの、症状かもしれないことの例を、いくつかお話しします。 小学校1年生では、ランドセルには、上下に2つ閉めるところがありました。私は、どんなに持っていくものが多くても、できる限り上のほうで閉めないと気がすまないというか、怖いという感じがありました。それで、無理やり上のほうで閉めていたので、1年生の3学期ごろにはランドセルにひびが入って、ぼろぼろに近い状態になりました。

私は、無理やり上のほうでばかり閉めると、こんなことになるとは、全然知りませんでした。もし知っていたとすれば、「絶対に上!」とまでは思わなかったかもしれません。

小学3年生か4年生の頃から、自分の手の親指以外の爪を、まともに見られない時期がありました。あるクラスメイトの子が言っていた「無理」とか、「無駄」という言葉と、親指以外の爪を見ることとを結び付けてしまって、見られなくなってしまいました。見られない時期のときは、もし親指以外の爪を見ると、不思議な力が働いて、悪いことが起こるかもしれないと、本気で考えていました。

3年生か4年生になるまでは、どちらかといえば、親指の爪よりも、それ以外の爪をまともに見たいと思い、まともに見られていましたし、 どちらかといえば親指の爪を隠していたほどです。その後、中学1年のときまでは、 クラスメイトの子が言っていた言葉を時々忘れることができたりして、まともに見られる時期もかなりありました。

中1になってから、最初はまともに他の爪も見られていたのですが、見られなくなる時期が来て、それ以降、現在も、親指以外の爪をまともに見られる時期はなく、ずっと見られなくなってしまいました。さすがに爪を切るときだけは、見ないと切れないので、見るようにしてはいますが、テレビや話し声などでいやなイメージの言葉が聞こえてくるかもしれないので、なるべくそういう音が聞こえない、自分一人だけのときに切るようにしています。



§3 確認する癖の始まり

中1から中2の頃まで、学習塾に行っていました。そこで、問題を飛び抜かしていることや、最後までやっていなかったことを先生に指摘され、また、たくさん間違えて、家に帰るのが遅くなったということがあってから、問題の答えが合っているかどうか何回も確かめたり、やり残している問題がないか、何回も確かめてしまうようになりました。

少なくともこの頃から、ものをパッと見てすぐに認識できなくなってしまったり、目に焼きつけて記憶するぐらい、じーっと見てないと認識できていないという感じがしてきたのだと思います。というより、自分の見たものに自信がなかったというほうが正しいのかも知れません。

中3のときに、『ロジャーラビット』という映画を見てからは、「指」という言葉が苦手になりました。映画には、キャラクターの一人が指を一本一本はずされて、高いところから落とされる場面があり、私にとってはとても衝撃的でした。今でも「指」という字は平仮名では絶対に見たくないし、発音も絶対に聞きたくないけれど、漢字は別に抵抗なく見られます。

そのころは、他に不吉な数字として「4」というのがありました。修学旅行の係を決めるくじを引くときに、「4」と「7」しか残っていず、不吉な数字とそのこととは関係ないだろうと思って4番を選ぶと、いやな係になってしまいました。それで、やっぱり不思議な力があって、日本人が気にする不吉な数字や、自分独自に不吉だと思う数字に関わると、悪いことが起こるかもしれないと、ますます思うようになりました。

入浴時間は中学校のときから長くなっていましたが、1時間もかかってはいなかったと思います。高校のときは、中学校のときよりも入浴に長くかかるようになってしまいました。それから、忘れ物がないか、シャープペンシルの芯をちゃんとシャープペンシルの本体に入れたかどうか、じーっと見て確認してしまったり、ノートをちゃんと写せたか確認してしまったり(このことに関しては中学のときにもあったような気はします)。他にもなにかあったかもしれませんが、高校のときは、そんなに大きな変化はなかったと思います。



§4 母の心配

実は、中3の冬に、母に連れられて病院に行きました。私は知らなかったのですが、そのとき、私は医師に強迫性障害と診断されていたようです。最初の受診のときだけ、お薬を出され、半分に切って飲むように言われました。でも、医師から「手を長い時間洗うということはないですか」と聞かれて、母が「ないです」と言ったことは覚えています。

そのときから予備校時代までに、時々カウンセリングだけを母と一緒に受けていました。そのカウンセラーは、母が私を育てるにあたって、悩みを相談していたカウンセラーで、私が中3のときに、母が私のことを連れて行ってもいいかと、そのカウンセラーに聞いて、いいということで、私も一緒にカウンセリングを受けるようになったのです。

私は、そのカウンセラーのことを最初からあまり好きではなかったし、予備校に行ってからカウンセリングを受けたとき、そのカウンセラーにすごく否定されたので、それからは、そのカウンセラーにはカウンセリングを受けていません。

高校を卒業して専門学校に入ってからも、特に大きな変化はなく、洗顔の時間が長くなったぐらいでした。その専門学校は、介護福祉士の資格を取るための学校だったのですが、私には合っていなくて、大変だったので、1年でやめました。その専門学校をやめてから、症状は一気に悪くなった感じでした。手洗いには2分から3分ぐらいかかるようになり、洗面台についている父のひげや、化粧の汚れや、剃った毛を、ティッシュで何回もつかなくなるまで拭いてしまったり、洗顔の時間も長くかかるようになってしまいました。

その後、大学に行くために勉強をしようと思い、1年目は学習塾で、2年目はO市にある予備校に入って、受験勉強のようなことをしていました。そうしている間に、入浴にも時間がかかるようになり、あまり入浴をしなくなりました。ただでさえ文章を読むのに時間がかかるのに、そういうことでものすごく時間をとられてしまって、実際には受験勉強がほとんどできず、親にも叱られるし、自分もやろうと思っているのに思うようにできなくて、つらかったものです。

トイレの時間が生活に支障のあるほど長くなってしまったのは、この頃からだと思います。受験勉強もはかどらず、結局はその後、別の専門学校に行くことになってしまいました。



§5 初めて自分で病院へ

この頃、母に、「あなた、もしかすると強迫神経症(事務局注:強迫性障害のこと)なんじゃない?」と言われて、自分はそうなのかもしれないと思うようになりました。中学生の頃からのいろいろな癖も、そう言われて見ればそうかもしれない、と。それまでは、そういう病気があることも知りませんでしたし、そんなこと考えてもみませんでした。

母に、「もし病気なら、病院に行って治してきてちょうだい」と言われて、一人で病院に行くことにしました。病院に行くことには抵抗はありませんでしたが、自分で行こうという意志が弱すぎたのだと思います。

そのとき、先生には、「手洗いに2、3分、トイレ、入浴に時間がかかるが、がんばってもどうしようもない」としか言いませんでした。先生のアドバイスは、「体をよく動かすこと、よく行動すること」というものでしたが、私はそれを実行できず、寝てばかりいました。今でもそれは変わらず、もちろん起きているときはありますが、ほとんど寝ているといっていいほどです。

治療は、薬物療法と、隔週でカウンセリングを受けました。その結果、歯磨きは、1週間に1回ぐらいしか磨けず、20分ぐらいかかっていた時期もあったのが、現在は毎日磨いていて、時間も半分以下になりました。でも、父や母に言われてからでないと、歯磨きや洗顔を実行できなくて、そんな自分に情けない気分になります。

母はその後、私のカウンセリングについてきて一緒に受けてくれるようになり、とても協力をしてもらいました。歯磨きや入浴なども、母にやり方を教えてもらって、「そのやり方で不都合あれば、助けてあげるからね」と言ってくれたり、いろいろと叱られたりしながら、なんとかできたこともありました。



§6 確認に時間がとられて

自分で選んだ2つめの専門学校は、レベルの低い学校のようでした。卒業した年は何回か面接を受けに行ったのですが、採用されませんでした。その次の年には、事務のアルバイトに雇ってもらえたのですが、「職種的に向いていないのでは」とか、「またいい仕事があると思いますよ」などと言われて、1週間で辞めさせられてしまいました。

その会社は自分の嫌いな環境だったので、まだ我慢ができますが、辞めさせられたこと自体は、かなりショックでした。理由はわからないのですが、仕事をなかなか覚えられなくて、他の人に何回も聞いてしまったり、 トイレに長くかかってしまったからかもしれません。数え切れないぐらい理由はあると思います。

その年の終わり頃から、歯磨きや洗面にすごく時間をとられるようになってしまいました。最初の頃は1日置きにはなんとか洗えていたのですが、いつからか、1週間に1回になってしまいました。歯磨きとか、洗顔とか、トイレとか、入浴など、普通の人ならなにも負担に感じないことを負担に感じてしまって、休憩してからとか、親に無理やり促されて、やっと行動に移すという感じです。特に、トイレはギリギリまで我慢してしまう傾向にあります。

そのほかに、財布や封筒にお金をしまうことに時間をとられてしまい、忘れ物がないか何回もチェックしてしまうし、トイレも長いので、一人で出掛けることや、物を買うことにも、ものすごく負担を感じてしまいます。

それから、冷蔵庫から物を出し入れするときに、落ちてこないか、不安定にならないかと気になって、何回も開け閉めをしてしまいます。窓もちゃんと閉められたかどうか、何回も引っ張って確認してしまいます。炊飯器も、ご飯が平らになっているか、しゃもじにご飯粒がついていないか、じーっと確認して、ふたを閉めるときも、ちゃんと閉めなければならないと思って意識して閉めるので、勢いよく閉めてしまいます。

冷蔵庫のことも、窓のことも、炊飯器のことも、母に「悪くなるからやめてちょうだい」と言われます。私も、何回も開け閉めすれば傷んでしまうから、そうすべきではないと思っているのですが、それ以上に不安な気持ちのほうが大きくなってしまって、どうしてもそうしてしまうのです。



§7 苦手な色、言葉、数字など

それから私は、赤や、黄色や、薄い青や、薄い緑は苦手な色です。苦手な数字は、3、4(場合によっては気にする)、8、9、18、19、21、45、52、62、88、152などです。色や数字は、状況によって気にならないときもけっこうありますが、本当の意味で全然気にならない数字は少ないと思います。

苦手な色や苦手な数字に関わると、不思議な力で何か悪いことが起こるかもしれないと、不安でたまりません。父も母も、弟も、「そんなことは関係ない、不思議な力なんてない」と言ってくれるのですが、私はどうしても確信を持てなくて、とても怖いのです。

苦手な単語や、助詞もあります。中3のときから苦手になった「指」、助詞の「が」、「~したら」の「たら」、(特に~「したら」というのは苦手)、「オムツ」(カタカナではまあまあ抵抗なく書けますが、平仮名で書くことや、発音すること、発音されることもすごく苦手)、などです。こういうことなどが、私の強迫性障害の症状なのかもしれません。

治療を受けてから、現在、冷蔵庫や炊飯器や、歯磨きについての症状は、多少改善されてはきましたが、他のいろいろなことについては、目に見えた変化は起こっていない状態です。



§8 アスペルガー症候群の疑い

でも、私は、本当に強迫性障害なのでしょうか? 私には「アスペルガー症候群」の疑いもあるということで、今、発達障害に詳しい別の病院にも行っています。アスペルガー症候群にも「こだわりが強い」という特徴があるとのことです。アスペルガー症候群の診断は非常に難しいそうで、時間をかけて診断してもらっているところです。

私以外にも、「強迫性障害」で悩んでいらっしゃる方は、もしかするとアスペルガー症候群などの「発達障害」かもしれません。そういう可能性もあるのです。今回、体験記に応募をしましたが、もし私と似たようなことで悩んでいる方がいれば、お互いにできるだけ悲観しないようにして、一緒にがんばっていきましょう。