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OCDコラム

OCDコラム

OCDの症状にはいろいろなものがあります


OCDの症状の現れは、人によってさまざまです。そこで今回は、一言では言い切れないOCDのさまざまな症状について、おさらいをしてみたいと思います。主なOCDの症状については、このサイトの「OCDとは?」の頁に基本的なことが書かれていますので、まずはそちらを参考にしてください。

強迫性障害の症状の多くは、強迫観念と、それに対する強迫行為から成り立っています。

 

強迫観念

望んでいるわけではないのに次から次に心に浮かぶ、嫌な言葉や考え、イメージ

病気の中には、目に見えない細菌やウイルスが原因となるものがあります。学校の授業で初めてそんな知識を学んだとき、細菌が体の中に入ってくるような気がして、思わず口をふさいでしまいたくなったという人はいないでしょうか? おそらく、「一瞬、そんなふうに思ったことがある」という人は、きっとたくさんいると思います。けれどもほとんどの人は、日常生活を続けるうちに、細菌に対する怖れや不安を忘れてしまいます。

実は、人間の体には免疫機構が備わっており、多少の細菌が体内に入っても病気にならないですむようにできています。それどころか、大腸の中や皮膚の表面には何種類もの菌が住み着いており、人間はそれらと共存しているからこそ、悪い細菌に負けないで元気に生きていられるのです。でも、仮にそんな知識を知っていたとしても、「細菌が自分の体を蝕むかもしれない」という考えがどんどん心に浮かんできて、打ち消すことができなくなってしまったら……?

本人が「そんなはずはない」とわかっていても、どうしても打ち消すことができない、そんな心の働きがOCDの強迫観念です。本人が望んでいるわけではないのに、どうしても取り除くことができない不安やこだわり。心の中に、あたかも自動的に、あるいは強制的に湧いてきて、消し去ることができない考えや言葉や、イメージ。それは人によってさまざまです。

これまで事務局に寄せられた悩みの具体例や、OCD研究会で発表された症例などを参考に、強迫観念のいろいろな例を挙げてみましょう。

<不潔恐怖・汚染恐怖>

  • 何か汚いものが自分につくのではないかと不安で動くことができない。洗濯物を干せない。
  • 服や下着、椅子などに便がついていないかと気になる。
  • 尿、便、血液、洗剤などに汚されるようで不安。
  • 不潔が怖くて、自宅以外のトイレが使えない。
  • 子供が皮膚の傷から病気に感染するのではないかと不安。
  • ケチャップ、ワインなど赤い食物に菌が入っているように思う。
  • 誰かが家に入って食べ物に毒を入れているのではないかと思う。
  • 家族のうちの誰かや、その家族が触ったと思われるところが、すべて汚く感じる。
  • 自分の体から汚れが出ているように思う。
  • ホコリが汚く感じられる。
  • 虫が不潔と感じられる。
<加害恐怖>
  • 人とすれ違うと、その人を傷つけたのではないかと気になる。
  • 自分が家族を傷つけてしまうのではないかという考えが拭い去れない。
  • 車が振動すると、人を轢いてしまったのではないかと不安。
  • 人を轢くのではないかと不安で、車に乗ることができない。
  • 自分が炊事をすると、火事を起こすのではないかと不安。
  • 自分が持っている菌のおかげで、親族や知人が病気になるのではないかと不安。
<死や不吉なものへの恐怖>
  • 死や不吉なことについての言葉が勝手に心に浮かんでくる。
  • 4や9の数字が怖い。何度も頭に浮かんでくる。
  • 日付、通帳番号、服の色、ものの形などに不吉な意味があり、それによって不吉なことが起こるような気がする。
  • 知人が事故で他界したとき、悲しいのに「ざまあみろ」など逆の言葉が思い浮かび、罰が当たるのではないかと不安。
  • 神を冒涜したのではないかと不安。
  • 白いものすべてが怖い。
<性的なことへの強迫>
  • 性的な言葉や冒涜的な言葉が勝手に思い浮かぶ。
  • 真剣にならなければいけないときに性的なイメージが頭に浮かぶのではないかと不安。
<自分への不安・自己漏洩感>
  • 自分についての大事な情報が他人にもれたのではないかと不安。
  • 大事な情報が書いてあるような気がして、ごみを捨てることができない。
  • 会社内で書類を落としたのではないかと不安。手に書類がついて、それがどこかに紛れ込んでいるような気がする。
  • 物を捨てたり人に渡したりするとき、それに自分のクレジットカード番号など重要な情報を書いてしまったのではないかと不安になる。
  • 何かに触れると、触れたものに自分の重要な情報を転写してしまったような気がする。
  • インターネットの通販サイトの画面を見ていると、自分の個人情報をもらしてしまったのではないかと不安。
  • ズボンをちゃんとはけているか気になる。
<数へのこだわり・計算強迫>
  • 日常生活の動作をするとき、同じ言葉を6回ずつ反復して思い起こさないと行動に移れない。
  • ある言葉が浮かんだら、別の言葉を加えて、必ず5文字にしなければいけない。
  • 数字を見ると足して4や13を作ってしまう(計算強迫)。
<場所や配置へのこだわり>
  • 物の位置、数字、色が気になり、部屋に物を置けない。
  • なんでも正確に左右対称になっていないと気がすまない。
  • 部屋の隅や物の角が気になる。
  • 尖っているものが怖い(先端恐怖)。
<その他>
  • 口角を上げると対人関係がよくなるという記事を読んでから、手で自分の口角を押し上げていないと落ち着かない。唇の両端がただれても、やめることができない。
  • 昨日の何時何分に何をしていたか思い出さないと気がすまない。

 

強迫行為

嫌な考えを打ち消すために行うが、何度やっても完全に打ち消した気がしない

駆り立てるように湧き起こる不安や、嫌なイメージを打ち消すために行わなければならないと感じられて、実際に行われる行為が「強迫行為」です。その手順ややり方を決めて行われる場合、「強迫儀式」とも言います。強迫行為は強迫観念とセットになっています。強迫観念を追い払うために行うのですが、その行為をしても、安心できるのは一瞬だけで、また強迫観念が沸き起こるので、何度でも繰り返し、同じ行為を行ってしまうことになります。

強迫行為が何十分も何時間も続くと、学校や会社に行けなくなったり、外出することが難しくなり、日常生活に支障が出ます。

<洗浄強迫>

  • 汚いと感じるものを見ただけで、手を洗わないではいられない。
  • 殺虫剤、芳香剤を見てしまったら手洗い、肉に触ったり、洗剤を使ったら手洗い。
  • 自分の体から出てくる汗やつば、鼻汁などが汚く感じられ、触ったら必ず手を洗う。
  • なんでもティッシュで触るので、1日に数箱もティッシュを使ってしまう。
  • 汚いものに触りたくないので、手袋をして過ごす。
  • 家に帰ったら外で着ていた服を玄関で全部着替え、入浴して全身をきれいにする。
  • 外から帰る家族をきれいにするために玄関に風呂を設け、全身を洗ってから入室させる。
  • 外からばい菌などが入らないように、部屋の隙間を目張りする。
<強迫儀式>
  • 嫌なイメージが浮かんだときにやっていた動作を、そのイメージが消えるまで繰り返す。
  • 入浴の順序が決まっており、間違えたら初めからやり直す。
  • 電気を消す順番を決めて、それを守る。
  • 電気を消す、テレビのチャンネルを変える、ドアの開閉、箸の上げ下ろしなどの行動を繰り返し、その回数を数える。
  • テレビで見た嫌なニュースや言葉、暴力場面が頭から去らず、それを打ち消すために、ある言葉を唱え、そのときやっていた行為を繰り返す。
  • 物に首を振って謝る。
  • テレビで見た人のものの言い方が思い出され、同じ言い方をしてしまう。
<確認強迫>
  • 鍵がかけられたか不安で、何度もかけなおす。
  • 本の文字がきちんと読めているかどうか不安で、何度も同じところを読み直す。
  • 試験で少しでも間違えると、全部消して書き直す。
  • 物が左右対称など、ある規則に従って並んでいないといけないが、それがきちんと並んでいるか不安で、何度も確認する。
  • 運転中に人を轢いていないか気になり、気になった場所まで戻って、何度も確認する。
  • 服のタグがついていないか、3回、7回と確認する。
  • 体重計に1日何回も乗る。
  • 肺に病気があるのではないかと不安で、何か所も病院を変え、何枚もレントゲンを撮る。


ほかにもさまざまな強迫観念や強迫行為があることでしょう。共通しているのは、それが本人にもコントロールできないような作用で行われ、逃れられないもののように感じられるということです。だからOCDの当事者は苦しいのです。強迫行為を好きでやっているわけではなく、その不合理性を自覚しており、自分では馬鹿らしいと思いながらやめたいのにやめられないので、医療による助けが必要になるのです。

人間の心になぜこうした作用が出現するのかについては、近年の脳科学の進歩により、少しずつわかってきました。またとえば、脳内神経伝達物質のひとつであるセロトニンが不足していたり、うまく伝達されないことと関係しているとする「セロトニン仮説」(⇒OCDとは?/OCDの原因)があります。また、強迫症状が出現しているときは、脳のある部分の神経回路が不適切に活動していると見られることから、OCDは脳神経回路の機能障害によるものではないかという説も出てきました(⇒第4回コラム 画像研究でここまでわかった! OCD発症のメカニズム)

そうした基礎的な研究と並行しながら、薬物療法や行動療法などの治療法が開発されています。今は症状に苦しんでいる人も、現時点で最良と思われる治療法に出合い、また、その人に合った治療を受けることができたなら、OCDの症状を軽減させ、その人らしい生活をしていけるようになるのです。

●参考文献
OCD研究会・編 『強迫性障害の研究 1~6』(星和書店)
成田善弘・著 『強迫性障害 病態と治療』(医学書院)