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OCDコラム

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OCDお話会主宰・有園正俊さんレポート
最近のOCD当事者団体の動きから



● はじめに

2006年1月のOCDコラムで紹介していただいた「強迫性障害の案内板」というwebサイトの管理人です(⇒OCDコラム第23回)。今回は、OCDの当事者(患者、家族)による3つの会について最近の様子を報告します。

3つというのは、「OCDの会」(熊本県:⇒OCDコラム第10回第11回第12回第24回に掲載)と「子どもの強迫(OCD)友の会」(京都府、大阪府:⇒OCDコラム第21回に掲載)、それと昨年から私が始めた「OCDお話会」(東京都)です。

今年3月にOCDの会主催による市民フォーラムと、治療者向けの研修会が名古屋で開かれました。私も参加させていただき、そこで初めてOCDの会の方々とお会いしました。また、市民フォーラム会場で運良く、子どもの強迫(OCD)友の会で世話人をされているきんもくせいさん(⇒OCDコラム第30回に掲載)にもお目にかかれたので、そのお話も書きたいと思います。

 

● 私の活動――OCDお話会(東京)

会を立ち上げた目的

私は、これまで主にインターネットを通じて、強迫性障害の方とメッセージのやり取りをしてきました。その間に、精神保健福祉士の資格を取り、精神疾患や他の障害を抱える方への福祉の仕事もしてきました。しかし、仕事でOCDの方とお会いする機会は、ほとんどありません。統合失調症など他の疾患の方が多いです。そこで、OCDの患者さんと直接やり取りができる機会があればと思っていました。

「強迫性障害の案内板」の掲示板では、新しい方が毎週のように訪れる状況で、困っている方は非常に多いと感じていましたが、ネットというバーチャルで実態がない活動でできることは非常に限られていると感じていたためでもあります。そこで、昨年7月より、東京都三鷹市で公共施設の会議室を借りて「お話会」を始めてみました。会の目的で、想定していたのは次のようなことです。

1. このような苦しみを抱えているのは一人ではないと思えること。

2. 体験などの情報交換。

約2カ月おきに行い、初めの3回は十数名の方が参加されました。お話が苦手な人は、聞き役に回っていただいてもOKです。ただ、そのような方でも、何回か参加しているうちに、発言が平気になっていくケースもあります。こういうことは行動療法(⇒OCDの治療法/行動療法)の原理と共通していますよね。「会への参加は、初めての人にとってエクスポージャー(暴露)と同じくらい不安が伴い、勇気がいることかもしれないけれど、それをやってみると次第に平気になっていく」ようです。

私の病気がひどかった頃は、ろくに外にも出られなかったし、外に出られるようになった頃でも、このような会に出席したら大変緊張していたでしょうから、ご本人が来られるというのは、それだけで敬意を感じてしまいます。

とはいえ、初めの3回は、患者さん本人の参加は少数で、それよりも家族の割合が多かったです。参加には予約をいただくのですが、その段階で驚いたのは、東京やその近隣だけではなく、遠い県からも新幹線や高速道路を利用して来られる方がいるということ。私としては、お話会の内容が、果たしてそれに応えられるものになるだろうかと思ったりもしました。

遠くから参加してくれた方も

実際に来られた方に伺うと、なかなか改善できない方、本人が受診したがらないので家族としてはどうしたらいいかと心配されている方もいました。開催後にいただいた感想の中には、医師などOCDの専門家の参加を望む声や、医療の具体的な情報がほしいという声もありました。でも、多かった声は、「このような体験をしたのは、初めて」ということ。同じような悩みを抱える者同士、直接話せる機会は、初めてだということでした。これだけでも、会を開いてよかったと思いました。

あと、やってみて思ったのは、会がどのような方式が良いか、しばらくは試行錯誤してみようということです。そのため、団体化もすぐにはしないことにしました。できるだけ関わる者の負担が少なく、しかし参加者の求めているものに近いもの……そんな都合のいい形式があるかわかりませんが、なるべくそうありたいと思っています。

この形式で3回行った後、当事者のみ(家族の方は不参加)のお話会を1回、開いてみました。そのときは私を含め3人でしたが、少人数だけに、じっくり話ができ、経験した者同士、違う面もあるけれど、共感できる面もあり、有意義な時間になったと思います。今後は当事者のみの会と、家族も参加できる会を交互に行っていこうかと、今のところ考えています。その他、個別相談も1件だけ行ってみました。私の資格(精神保健福祉士)は、医療につなげる相談や、生活に関する相談は対応が可能なためです。

このように、今はOCDを抱える当事者にどのような支援ができるか試行錯誤している段階なのですが、そんなときに、名古屋で既に活動をされている団体のお話が聞けるというわけで、グッドタイミングと思い、OCDの会主催の市民フォーラムに出かけたのでした。

 

● OCDの会(熊本)の活動から

第3回市民フォーラムを名古屋で開催

OCDの会第3回市民フォーラムは3月16日(金)の夕方、名古屋の国際センターのホールにて開催されました。立派なホールですし、参加者の数も多く、座席はかなり埋まっていました。今回のOCDの会主催による市民フォーラムと治療者向け研修は、熊本、愛知、岐阜などのOCDの会会員や専門家のスタッフの方々による協力があって実現できたものだそうです。熊本からも、何人ものスタッフの方々が来られていました。菊池病院の医師や心理士である職員の方、それと会員である当事者、家族の方。遠くから来られて運営するというのは大変だなぁと思っていたら、聴衆の皆さんの中にも遠くから来られている方がいて、驚きました。

京都のきんもくせいさんにお目にかかれたのも驚きでしたが、他に挨拶してくれた方がいたので、この会場に顔見知りはいるはずないのに誰だろう? と思ったら、東京でお話会に参加してくださっている親御さんではありませんか。「仕事が終わったら新幹線に飛び乗ってしまって……」とおっしゃっていましたが、東京から仕事帰りに寄るには遠いよなぁ……。その他にも、遠い所から来られた方はおられたようでした。

OCDは、菊池病院のように専門的な治療ができる医療機関には、全国の患者、家族の方から問い合わせがあり、実際にそこに移って治療を受ける方も少なからずいるのが現状です。そして、当事者向けのOCDに関する講演会や、専門医や患者さんのお話が伺える機会も、なかなかありません。改善できずに困っている当事者のため、少しでも解決の糸口を求めて、遠路はるばる多大な交通費やエネルギーをかけてでも来られる方がいる状況を、今回も改めて感じました。

当事者は、内科や外科の難病で治療がなかなか見つからない方と似たような苦難を味わっているわけです。OCDは、人口の約2%に発症すると言われているほど、ありふれた病気なのにですよ。適切な治療を受ければ、改善の可能性が少なくない病気のはずなのにですよ。約15年前に、すっかり治ってしまった私から見ると、未だにこのような状況に患者さんの多くがおかれていること自体、何とかしてほしいと切に思うのでした。

そのような思いはOCDの会の皆さんが、市民フォーラムや治療者向け研修を立ち上げた目的とも、共通しているようです。OCDの会代表世話人である児玉さんによる研修会の案内文から一部、引用します。

「当会を立ち上げてから3年の間には多くの患者・家族の皆様からの相談を受けて参りました。中には、患者や家族が病気の克服を目指して医療機関を訪れても、強迫性障害や行動療法に関する情報の普及が十分とはいえないという相談を受けることがございました。自宅から遠方の医療機関への通院を余儀なくされている方のご苦労をうかがうたびに、偶然身近に専門の治療機関があった私どもは何と幸運であったかと思いました。そして、他の苦労している仲間のために私たちに出来ることはないだろうかと考え、私たちを治してくださる治療者のための研修会の立案に至りました。」

すばらしい。この案内文をネット越しに目にして、来られた方も多かったのではと思います。

菊池病院・原井宏明先生による講演

プログラムは、次のようでした。

開会挨拶   医療法人明萌会高井クリニック  高井昭裕院長先生
招待講演   独立行政法人国立病院機構菊池病院  臨床研究部長  原井宏明先生
        『症状に対する治療と人生の価値  OCDを乗り越える力になるもの』
パネルディスカッション   『誰のための治療?』  OCDの会の親・子ども

菊池病院は、強迫性障害に対し行動療法を行っていることで有名な病院です。会場の参加者に尋ねると、挙手により、OCDを知っている方がほとんどで、行動療法を知っている方も半数ほどであることがわかりました。そこで、原井先生の講演も、それらの基本的な説明は省き、治療にまつわる患者さんや家族が抱える問題に対し、学識を踏まえた話になったように思います。

人間の判断は、とかく感情的になりがちですが、治療には合理的な判断が必要だそうです。それには、ACT、すなわち

Accept――受け入れること(自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを)
Choose――選ぶ(変えられないものと変えられるものを見分ける賢さを)
Take action――行動する(変えられるものは変えていく勇気を)


が大切だそうです。行動療法は、患者さんが受け身の治療ではなく、自分から関わっていく姿勢が求められます。ある程度、踏み切る勇気も必要ですし、時間もかかります。それを乗り切るには、患者さんが孤立しているよりも、OCDの会のように、グループに参加して取り組んだ方がうまくいきやすいそうです。

菊池病院での症状の改善(寛解)の数値なども紹介されました。寛解は約半数、部分寛解が約1/4、それ以外が約1/4と、一般的な医療機関での薬のみの治療に比べて高い値です。OCDの会に参加している方は、さらに改善率が高い値でした。

行動療法でのエクスポージャー(暴露)は、患者さん本人にとっては怖く、自分にはそんなことできないように感じたり、そんな治療ではたして治るのか心配に思えます。そんな怖い思いをするくらいなら、今のままでいいと思う人もいるかもしれません。しかし、それをグループの他の仲間がしているのを見たり、お互いに語り合ったりすることで乗り越えやすくなるそうです。私が治った経過も、本質的には行動療法と同じことをしていたのですが、本当に孤独だったので、仲間がいるというのは心強いだろうなと想像できます。

また、家族との関係も重要だそうです。家族が本人に代わって強迫行為をしてしまう代理儀式は、本人の苦痛を減らすことには役立たないということを、行動経済学の理論を応用して説明されていました。

家族によるパネルディスカッション

その後、OCDのご家族(親3名、子ども1名)がパネラーとなってのパネルディスカッションがありました。4名の方のお話は、それぞれ大変な状況を経験されてきたことが伝わりました。ある親御さんが「(本人だけではなく)家族全部が病気を抱えているような状況になっていた」とおしゃっていました。また、親が手を貸すのはいけないとわかってはいたが、代理儀式を行ってしまっていたというケースもありました。

それから、パネラーの一人で、お母さんがOCDだという、現在、高校生の娘さんのお話も印象的でした。小学生のころから、お母さんのおかしな行動に気がつかれていました。お母さんが菊池病院を受診するようになってからも、お母さんが苦手なものを避けて逃げていることが、娘さんにはわかっていました。お母さんにはうつ症状もあるので、厳しく言うと、うつがひどくなってしまうのではと考え、治療について話しあうのをためらっていたそうです。しかし、ある日娘さんが勇気を出して、お母さんに治療に向き合うよう、逃げないようにと、娘さんの気持ちをそのまま語ったそうです。それがきっかけとなり、お母さんは真剣に病気に向き合うようになったとのことでした。

また、何年も前から地元の医療機関で治療を受けてきたがよくならず、たまたま熊本の新聞で菊池病院の記事を目にして、息子さんが熊本まで行き受診し、よくなったという方もいました。

OCDの特徴として、発症後、受診ができないでいたり、改善がうまくいかなくて、そのまま何年もたってしまうケースが多いということがあります。不潔を気にするあまり、布団で眠れずに床で寝ていたとか、入浴や手洗いに一日の大半をかけていたというような辛い状況でも、そのまま何年もたってしまうのです。一緒に暮らす家族としても辛いですよね。

今回、パネラーは家族だけの予定だったのですが、途中で、会場にいた患者本人であるパネラーの息子さんが発言してくださいました。その勇気が会場に伝わったと同時に、彼のスーツ姿からも、困難な状況を脱した様子が伝わりました。この方も、パネラーのご家族の方も、多くの人の前でこのような体験を話すのは、すごく勇気がいったかもしれません。でも、会場の多くの方にとって、伝わるものがとても多く、貴重な体験になったのではないかと思います。

治療者向けの研修会

3月17、18日は、治療者向け研修でした。こちらも参加者は多く、全国から医師、心理士などの専門職の方が参加されていました。私は直接の治療者ではありませんが、OCDは患者さんが医療につながること自体に困難が多い病気ですので、精神保健福祉士としてその仲介ができないかと考えていて、参加させていただいたわけです。

研修会も、前日のフォーラム同様、スタッフの方の配慮があちこちに行き届いている感じがしました。菊池病院での治療風景を写したビデオを見たり、エクスポージャーのデモンストレーションを見学しました。これらのおかげで、言葉だけの講義では伝わりにくい部分が、とてもよく理解できました。

またデモンストレーションでは、OCDの会会員の方が菊池病院の治療者と共に、多くの受講生の前で、汚いと思う靴にさわったり、部屋の点検のエクスポージャーに挑戦してくれました。私が病気だった頃は、強迫行為は人前だとよけい緊張していたので、挑戦してくれたこと自体、えらいなぁと思いました。エクスポージャーをし、徐々に不安が減り、SUD(主観的不安尺度)の値が減ってきて、終了したときには、拍手!でした。

これだけの人数の治療者の方が、OCDについて治療ノウハウを増やして帰ってくれれば、OCDの会が今回の研修を企画した目的に沿ったものになるのではと感じました。ただ、受講者からの質問で時おりあったのが、「それを外来で行うときにはどうしているのですか?」というものです。行動療法は1回の治療に時間がかかるので、短時間診療が日常的な病院の外来では、無理な点もあるためです。

ましてや、患者さん宅を訪問したり、電話やメールでのアフターケアも対応するとなると、それの効果があるのはわかるけれど、採算的にはどうなのだろうかという思いも生じます。国立の菊池病院だからこそ、このようなことができるという面もあるのです。でも、行動療法が必要な人には誰でも受けられるような世の中になってほしいですし、そのための一歩として、今回の研修は大きな意義があったと思います。

 

● 子どもの強迫(OCD)友の会(京都)の活動から

OCDの会は、菊池病院で治療を受ける人たちや、その家族が中心となってできた会です。東京のOCDお話会には、いろいろな医療機関を利用されている方や、未受診の方も参加されるので、その点は事情が違います。その点は、子どもの強迫(OCD)友の会と立場が似ています。ですので、同会のきんもくせいさんにお話を伺えたことも参考になりました。

子どもの強迫(OCD)友の会は、京都と大阪で毎月、交流会を開いているそうです。「それが私達の生命線」とおっしゃっていました。会に参加する方の動機はOCDお話会の場合とほぼ同じでした。個人で悩んでいて、動きが取れない方が多いので、このように集えて、情報交換できる場所があるということ自体、意義があるそうです。子どもが直接来られなくても、親が会で聞いてきた話を子どもに聞かせたり、子どもと接するのにどうしていいかわからないといった悩みを話し合ったり。また、患者さん本人の参加もあるそうで、家族と本人の参加者の割合も、東京のお話会と似たような状況でした。

OCDの会の方で、「菊池病院の医師や心理士などの専門家が会についているので安心できる」と話してくれた方がいました。OCD以外の精神疾患、たとえばうつ病の患者会でも、そのような専門家が毎回参加するものがあります。しかし、子どもの強迫(OCD)友の会や、お話会の現状はそうではないので、その点も考えさせられたポイントでした。

また、会の形式は家族向けと患者本人向けと分けた方がいいのかどうか、私はちょうど考えていた時期だったのですが、子どもの強迫(OCD)友の会では、同じ例会の中で、テーマに応じてグループ分けしたりすることもあるというので、それもなるほどと思いました。行動療法で、グループに参加した方が乗り越えやすいように、会の活動も、他の会の活動を知ることで、私だけじゃないのだと思えることがあるように感じました。



● まとめ

市民フォーラムのパネルディスカッションのテーマにあった「誰のための治療?」という言葉がずっと頭に残っていました。患者さんや家族が、改善できる望みを求めて全国を飛び回る現状はよくないと思います。そのようなことをしたくてもできない当事者の方も多いですし、OCDはうつ症状を併発する人も多いのですが、どちらかでも大変なのに、両方ともひどいと本当に辛く、死にたくなるほど辛いというケースもまれではない病気だからです。

今回の研修中、薬の治療による寛解率もある程度あり、有効な選択肢であることがデータにより示されました。しかし、残念ながら薬だけでは改善ができずに苦しむ人もいて、その人たちには、だからといって改善をあきらめるのではなく、(認知)行動療法が選択肢として手の届く範囲にあるようになるといいと思うのです。

私は、以前、地元で市民会議の医療・福祉の分科会に参加していたことがあります。そこで、学識経験者で医師でもある某教授の方が、「患者や家族が、治療や空きベッドを探して困窮するのはおかしい、そういうことは医療の側で配慮できるシステムでないといけない」というような主旨のことを言っておられました。OCDの治療もそうあってほしいと思います。そのためにできることを、今後も考えていきたいと思いました。

今回、市民フォーラムと研修でお世話になったOCDの会の皆さん、お話を聞かせていただいたきんもくせいさん、この文を書く機会を与えてくれた「小さなことが気になるあなたへ」運営事務局の方々に感謝いたします。

<各グループへのリンク>

● 強迫性障害の案内板  http://kyou89.fc2web.com

● OCDの会  http://ocd-2004.hp.infoseek.co.jp/

● 子どもの強迫(OCD)友の会  http://homepage3.nifty.com/reno/