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OCDコラム

OCDコラム

OCD患者にとって、
インターネットの中での<つながり> その可能性は?


病気を治療中の人にとって、同じ病気の患者さんや経験者、支援グループによるウェブサイトは頼りになるもの。もちろん、病気に関する正しい情報を得ることが目的なら病院や医師によるサイトが役に立ちますが、経験者が立ち上げたサイトには、情報とは違う“大切な何か”があるようです。心の病気の体験者のサイトにも、うつ、パニック障害、摂食障害などいろいろあるなかで、比較的数が少ないといわれるOCD関連のサイトは、どんな状況なのでしょうか? ということで、今回は、代表的なOCDサイトの運営者の方々に、サイトを運営する上での苦労話や喜びを語っていただきました。


●サイトを立ち上げた理由、そしてよかったこと

最初にご登場願うのは、5年前にOCDとうつ病のサイトを立ち上げた@Hiro.comさん(男性・20代)。略称で、ヒロさんと呼ばせていただきます。ヒロさんは、「<ネットなら匿名なので話せる>という人がいることを知って」サイトを立ち上げたそうです。それから5年間、ヒロさんは治療を続けながらサイトを運営してきました。

ヒロさんのサイトは、グループで日記を書く形式になっているのが特徴です。
「日記を書いているので、その日にあったことをみんなで共有できるため、サイト内ではみんなが<良き理解者>になってくれています」
そして、サイトを開いて一番よかったことは。
「一番うれしかったことは、自分は引きこもり気味で社会と広く接点を持たないのに、このサイトのおかげでたくさんの人と知り合えたことです」

匿名同士の関係ではあっても、そこで得られる人とのつながりは、時には大きな力になってくれるようです。

このコラムでも何度かご登場いただいた熊本市のサポートグループ「OCDの会」代表の児玉政美さん(30代)の場合も、やはりOCDの仲間が集える場づくりを目指していました。

「自分がOCDになり、<どうして自分だけが……>と一人悩み苦しみました。また、同じように悩み苦しんでいる人がたくさんいることも知りました。私自身、自分の気持ちを伝え、思いをわかってくれる、安心できる場所をいつも探していました。同じ思いをもつ人たちと分かち合える、お互いの情報交換ができる、そんな場所が欲しい、そんな思いで開設しました」

サイトを開設して、よかったことは。
「顔も名前もわからないもの同士ですが、お互いの気持ちがわかりあえること」
「たくさんの仲間に出会えたこと」

また、グループの活動を広く知らせるという目的がありますので、「不特定多数の人にいろんな情報が発信できること」がメリットと感じています。
同会ではすでに2回の市民フォーラムを開催し、毎月のニューズレター発行や本の発行など、その活動の様子は、同サイトで報告されています。

5年前にOCDの専門サイトを開いた有園正俊さん(40代)については、このコラムでもとりあげさせていただきました(第23回OCDコラム)。有園さんの場合は、すでに10年前にOCDが完治していましたが、有園さん掲示板で過去の自分と同じような悩みを持つ人たちとやりとりをするなかで、「自分が経験したような症状で悩んでいる人が多く、毎回、似たようなレスを書くより、自分のHPにまとめておいて、それを紹介した方が効率がよくなったため」サイトを開設したそうです。

有園さんはその後、精神保健福祉士の資格をとり、自らの体験から本を書くなど、今ではOCDや引きこもりなどで悩む人たちをサポートする立場になったため、そのコンテンツは、お役立ち情報が満載です。
「自分のサイトの利用者の方は、マナーがよい人が多い。人に気遣いをする、やさしい人が多い」こと、そして、「たまに感謝していただける」ことがよかったといいます。


●サイトによるコミュニケーションの限界

サイトを開くとありがちな問題は、迷惑メールをはじめ、いわゆる「アラシ」などの迷惑行為。これまで紹介した3人の方は、アラシなどの問題はあまりないということです。OCDの人は、比較的人に気を遣う性格の人が多いからでしょうか。むしろ、悩んでしまうのは、真剣な相談を受けるときのようです。「困ることはありますか」という質問に、こんな答えが返ってきました。

「よくあることですが、学生・未成年などで通院に関して家族の了解を得られない人が多く、そのような相談を受けると、“文字だけで介入できる限界”を感じてしまい、こちらまで悩むことがあります」
「自傷的な面がある方と出会うと、対応に苦慮することがあります」
「どうしても教えて欲しい、助けてください、といった内容のメールなどが来ると困ってしまうことがあります。誰かに教えるという場所ではないので、自分の体験などを伝えることにしています。お互い同じ立場同士なのですから」
「時々、<○にたい>というメールをもらうことです。他人のこととはいえ私まで不安になってしまいます(涙)」


同じ患者・体験者同士として、悩みについて話し合い、意見を交換したり、励ましあうことはできても、個々人の運命を左右しかねないことまでアドバイスできるかというと難しいものがあります。たとえば、治療法の選択がその後の運命を左右しかねない、がんなどの病気のサポートサイトでは、「病気に関する相談は受け付けません」などの一文を、あえて掲げているところもあります。これは一見、冷たい言葉のようですが、別に冷たいわけではありません。もともと患者同士、参考意見は言えても、医療や福祉の相談にのれる立場ではないこと。また、メールでの限られた情報から、憶測でアドバイスをすることは、かえって無責任なことになってしまうからなのです。

サイトを運営する皆さんが困ってしまうのは、<なんとかしてあげたい気持ちはいっぱいなのだけれど、現実問題として、できないから>なのですね。掲示板やチャットは、ある種、カウンセリング的な効果を上げる場合はあることでしょうが、自分自身の今後を左右するような大きな問題に関しては、できれば対面して、きちんと時間をとって相談できる相手を近場に見つけるほうがよいようです。

でも、身近に相談できる人がいないとしたら……そういうときこそ掲示板などで、「○○県でOCD治療に熱心な、いいお医者さん(病院)を知りませんか」「いい社会福祉士さんを知りませんか」「誰でもいいから話を聞いてくれる人を知りませんか」などという発信をしてみてはいかがでしょうか。その問題が治療上のことなのか、家庭環境の問題なのか、心の中の問題なのか、それによって相談先は違ってくるはずですから。


●それでも大きい、ネットの中のつながりの可能性

掲示板でたくさんの人たちと語り合ってきた有園さんは、「ネット経由でも交流があること自体で、救われるように感じる例もしばしばあるので、うまく利用していただければなって思っています」といいます。

そしてヒロさんの言葉。
「開設当初の大きな目標の<一人はみんなのために>はまだ未達成ですけど、いつかは叶えたいと思っています」

患者さんたちのサイトは、「自分がそうしたいから」という以上に、どこかに仲間を思う気持ち(ボランティア精神)がないと、長続きはしないものかもしれません。サイトを更新するのも、掲示板に返信を書くのも手間はかかることですが、とりわけ、悩んでいる相手に答えるために言葉を選ぶとき、きっと書く人は、これまでの経験や知識や、その人の感性や知性まで総動員して書いてくれているはず。そう思うと、一回ごとのやりとりを、大事にしたいですね。

最後に、3人からOCDで悩む人に向けて、貴重なメッセージをいただきました。


 ヒロさんより

「精神科、心療内科に行くかどうか迷っている人へ!
迷っているのなら、一歩勇気を出して行ってみるべきです。
あと、長期間通っている場合にありがちな、体調が悪くなったときに、医師に相談せずに許容範囲を大幅に超えてお薬を自分で勝手に変更しないことも大事です。(医者は現状を見て処方するので面倒でも、先生に会って変更の要望を伝えるほうがいいと思います)」


ヒロさんのサイト
http://www.atto-hiro.com/

 児玉政美さんより

「今は治療法も薬も確立されています。きちんとした治療を受け、そしてその治療を受け入れて、治そうと思う強い意志があれば治る病気であることを忘れないでください。
誰かに治して欲しい、ではなく、自分で治そうと努力すれば治る病気なのです」


OCDの会のサイト
http://ocd-2004.hp.infoseek.co.jp/PCindex.htm

 有園正俊さんより

「いろいろな状況の方がおられると思いますが、改善の可能性をあきらめてほしくないと思います。また、医療を利用するユーザーとしての皆さんの声を募集していますので、何か思い当たることがあれば、メッセージをお願いします」

有園正俊さんのサイト「強迫性障害の案内板」
http://kyou89.fc2web.com/index.htm


★サイト運営者の皆様、ご協力ありがとうございました。(事務局)