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OCDコラム

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OCDのグレートたち
OCD体験を語ったデイヴィッド・ベッカム選手


6月9日から開催されるサッカーのワールドカップ2006ドイツ大会。4年前に日本と韓国の共催で行われたときは、全国で大変な盛り上がりでした。今年も大勢の人が時差にも負けず、テレビの前に釘付けになると予想されます。この大会を目前にして、イングランド代表チームのキャプテンであり、レアル・マドリッドのスタープレイヤーであるデイヴィッド・ベッカム選手が、「自分はOCDに悩まされている」と告白したというのです。


●テレビのインタビューで本人が語る

このニュースが世界に配信されたのは4月2日。その日、イギリスのITV1が放映したテレビ番組のインタビューで、ベッカム本人が自らの強迫症状について語りました。番組について報じた新聞などの記事から、本人の発言を拾ってみましょう。

「僕は強迫性障害で、なんでもまっすぐに並んでいないと気がすまないし、なんでもペアになっていないと気がすまない」
「コーラの缶を冷蔵庫に入れるときも、もし1つ多くてペアにならないときは、それを出して、どこか別の棚に入れなくてはいけない。それが問題なんだ」
「ホテルの部屋に入ったら、まず全部のパンフレットや本を並べなおして、引き出しにしまわないとリラックスできない。すべてがパーフェクトでないといけないから」
「家の家具をまっすぐに並べ直したり、冷蔵庫に入れたものが完璧な形で並んでいるかどうかを気にして、何時間も過ごすことがある」

「ユナイテッド(イングランドのチーム、マンチェスター・ユナイテッド)にいたときは、チーム仲間はそれを知っていた。よく僕が自分の部屋にいるとき、ドアをノックして仲間が入ってきた。ただしゃべりに来たんだろうと思っていると、彼らがいなくなったあと、何かがおかしい。気づいたら、雑誌が全部、きちんと並んでいないんだ。仲間が僕のワードローブに入っていって、ズボンや靴をめちゃめちゃにしていったこともあった。それが彼らのジョークだったのさ」

ベッカムは2003年からスペインのレアル・マドリッドに移籍しましたが、現在のチームメイトはベッカム選手のOCDを「まだ知らないので助かるよ」とも語りました。


●天才プレイヤーとOCD

ベッカム選手は1975年生まれの30歳。子供のころからサッカーで頭角を現し、16歳でマンチェスター・ユナイテッドの研修生に。18歳で同チームに正式に所属しプロとなりました。ワールドカップには1998年のフランス大会から出場。天才的なミッドフィールダーとして、正確無比の右足シュートを誇っていますが、甘い笑顔と穏やかな物腰は、女性の間でも人気絶大です。

私生活では、1999年に人気アイドルグループ出身のヴィクトリア夫人と結婚し、子供が3人。ロンドン郊外にある豪華な私邸は「ベッキンガム宮殿」と称され、イギリスきってのセレブリティであることは今さら言うまでもありません。2002年の日韓ワールドカップの際は、日本で「ベッカムヘア」が大ブームになったのも記憶に新しいところです。

問題のテレビインタビューの続報で、イギリスの大衆紙『サンデーミラー』(4月2日付)は、<ベッカムがOCDではないかという噂はかねがねあったものの、公の場で語ったのはこれが初めてだ>と書いていました。ベッカムは過去にも、「すべて白で統一された家具に合わせて、家では白い服を着ている」と語ったことがあるそうなのです。

ヴィクトリア夫人は、変わった癖をもつ彼のことを「ヘンな人(weirdo)」と言い、「コーラの缶が3つあると、彼は1つを捨ててしまうの。数が合わないからよ」と語ったことがあるそうです。


●OCD告白の波紋はあった?

サッカーの世界的なスター選手がOCDを告白したことは、どんな影響をもたらしたのでしょうか。ベッカム選手は、テレビでのOCD告白から1か月もたたない5月8日に、イングランド代表チームのキャプテンに選ばれたことが発表されました。これまでのところ、OCDであることは、彼のサッカー選手としての価値に対して何のマイナス要因にもなっていないようです。

日本では、このことは一部の夕刊紙などが小さなコラムで触れたものの、メディアで特に話題にはなりませんでした。海外のメディアのサイトをのぞいてみると、テレビでの告白を引用しながら、OCDとはどんな病気かを解説したり、OCDに苦しんだほかの有名人や偉人を挙げるなどのフォローが見られます。こんなフォロー記事を読むと、イギリスやアメリカでも、OCDはまだまだ説明の必要な病気なのだということがうかがわれます。

特徴的なのは、多くの記事が、「英国人の約2%がこの病気で苦しんでいる」としていることです。「英国人の60人に1人が悩んでいる症状」としているものもあります。ベッカムのOCD告白は、こんなふうに、冷静に報じられています。一方、OCDサポート団体のサイトなどでは、ベッカムの告白は、OCDに悩む多くの人を勇気づけるものとして、好意的に受け止められているようです。

ちなみに、OCDに苦しんだほかの有名人として、よく挙げられているのが、同じサッカー選手で元イングランド代表のポール・ガスコイン。彼は、不潔恐怖や、ドアの鍵やガス栓を何度も確認する確認強迫の症状で苦しんだことを、自ら告白しているそうです。そのほか、俳優で映画監督のウッディ・アレンやハリソン・フォード、文豪のチャールズ・ディケンズやマルセル・プルーストの名前が挙げられていますが、事実かどうかは定かではありません。

このコラムでも紹介したアメリカの大富豪ハワード・ヒューズ⇒(OCDコラム第14回)がそうであったように、完璧さを追求するベッカム選手がOCDであることは興味深いことですね。なお、ベッカム選手がOCDの治療を受けているかどうかは報じられていません。もうすぐ開幕するワールドカップは、ベッカム選手にとって3度目の出場。どんな活躍を見せてくれるか楽しみです。


★参考にしたサイトのなかからいくつかをご紹介します(すべて英語です)。

●ITV1のサイトでは、番組の内容をサマリーで紹介しています。(4月3日付)
http://www.itv.com/news/1789077.html

●イギリスの大衆紙『サンデーミラー』紙の続報(4月2日付)
http://www.sundaymirror.co.uk/archive/archive/tm_objectid=16892441&
method=full&siteid=62484-name_page.html


●イギリスの新聞『デイリーメール』紙の続報(5月10日付)
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/showbiz/showbiznews.html?
in_article_id=381802&in_page_id=1773


●イギリスのOCD支援団体「OCDアクション」でも、ニュース記事を紹介しています。
上から2行目をクリックしてください。
http://www.ocdaction.org.uk/ocdaction/index.asp?id=503

●シカゴのOCD支援財団「OCFシカゴ」でも特集記事を掲載しています。
http://www.ocfchicago.org/