トップOCDコラム > 第25回
OCDコラム

OCDコラム

若い女性に多い心の病、摂食障害はOCDに関連がある?


ファッションモデルのようにやせているのが美しい女性だと、みんなが思うようになったのは、いつ頃からなのでしょうか? 日本では、20代、30代の若い女性の間で、医学的にみれば「やせすぎ」の人の割合は、20年前に比べて2倍にもなるそうです(平成14年国民栄養調査の結果より)。それでも毎年春になれば、ダイエットの特集が雑誌やテレビで報じられています。そんななかで、増加傾向にあるといわれるのが若い女性の摂食障害。この摂食障害とOCDに、なんらかの関連があるということですが……?


●摂食障害は心の問題から起こります

摂食障害は若い女性に多い心の病気です。体重が増えることを嫌って食事を極端に制限する拒食症(神経性無食欲症)と、通常では考えられないような量を一度に食べる過食症(神経性大食症)がおもな症状です。過食症だけで太りすぎてしまうような例もありますが、若い女性に多いのは、拒食と過食を繰り返す症状です。食事制限の反動で衝動的にむちゃ食いをしてしまい、そのあとには、吐いたり下剤を使って食べたものを出し、やせたままの体型を保ち続けるようなケースです。

最近では、ダイエットが誘引になって発症する危険があることが指摘されています。しかし、ダイエットの習慣がある人が誰でも摂食障害になりやすいというわけではありません。その原因には、深い心の問題があるといわれています。たとえば、思春期の女性が、大人になることや性的に成熟した女性になることを拒否する心理からではないかという説があります。また、自分自身に対する根強い否定的な感情が根底にあるともいわれています。

拒食症の症状が進んでいくと、他人から見るとどう見てもやせすぎているのに、本人は「自分は太っている、もっとやせなければいけない」と思い込んでいるなど、自己のイメージと客観的なイメージとのずれが起きていきます。重くなると、栄養障害からさまざまな身体症状が現れ、体力も落ち、最終的には生命にもかかわってきます。

治療はおもにカウンセリングや認知行動療法などの精神療法が行なわれ、症状によっては薬を使ったり、家族への指導や、自助グループでの活動などによって、じっくりと本人の自己認識を修正し、正しい食行動ができるように導いていきます。


●OCDとも共通する強迫的な心の動き

摂食障害の人は、やせることに対する強迫的ともいえる思い込みがあり、その点で、OCDの心のメカニズムと通ずるところもあります。これについて、精神医学の世界ではさまざまに検討がなされています。たとえば、徹底した食事制限を行い、体重計に乗ってはやせた自分を確認することの繰り返し行為。これは、強迫観念と確認強迫(⇒OCDとは?)に近い行動ともいえます。

また、「太ることは醜くなること」という強い観念は、「食べること自体が醜い行為であり、不浄な行為である」という思い込みにもつながる場合があります。そのような場合、食べ物を吐くことは、醜い食欲によって汚れた自分をきれいにし、浄化する行為という意味を持つのではないかとも考えられます。これなどは、ある意味でOCDの不潔恐怖や洗浄強迫とも通じる心の動きといえます。

最近の研究では、OCD自体が拒食症の一因になっているとする説もあるそうです。実際に、摂食障害の人のなかには、OCDやうつ病を併発するケースが少なからずあります。また、摂食障害が治療によって治ったら、その後にOCDの洗浄強迫の症状が現れたり、子供の頃に強迫症状があった人が、大人になってから摂食障害になるような場合もあるといいます。


●OCDと摂食障害が合併する率は?

では、OCDと摂食障害に両方かかってしまう人の割合は多いのでしょうか? これについては研究者によって意見が分かれています。OCD研究会の成田善弘先生は、その著書『強迫性障害 病態と治療』(2002年)でこの問題について触れていますが、合併率は15~30%であるとする日本の研究者の報告を紹介したうえで、自分は200例以上のOCD患者を診たが、摂食障害の患者は1割程度であったと書いています。

ただし、それは摂食障害の人が強迫症状をもっていたとしても、摂食障害の専門家のもとで治療を受けていたためかもしれない、とも成田先生は書いています。海外の研究では、摂食障害の人がOCDを合併する率は、うつ病に次いで高いという報告があります(Rothenburg 1990)。また、OCDと診断された患者では摂食障害を併発する頻度が高く、拒食症で10~17%、過食症で最大20%であるとする研究もあります(Rubinsteinら 1992)。

合併症状がある場合、治療の現場では、どちらの治療を優先させるかが問われるわけですが、OCD研究会においても、OCD に対する行動療法(⇒OCDの治療法 行動療法)が摂食症状の改善につながった例や、拒食症に対する認知行動療法がOCDの症状改善に有効だった例が報告されています。(⇒第13回コラム)


参考文献:
『強迫性障害』 スチュアート・モンゴメリー、ジョゼフ・ゾハー/著 OCD研究会/訳
『強迫性障害 病態と治療』 成田善弘/著 医学書院
第6回OCD研究会 セッション1-3 「強迫性障害と摂食障害のcomorbidity」 宗 未来、大野 裕