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体験記『とらわれからの自由』~病気に立ち向かう勇気をもらう


実は50人に1人はかかっているというありふれた病気なのに、うつ病などに比べると、まだまだ世の中に知られていない感のあるOCD。全国には、不安を抱えながら一人で悩んでいる方がたくさんいらっしゃることでしょう。

その心に湧き上がる強迫観念は、一人ひとり違っています。ある人は、ばい菌の感染が怖い。ある人は、数字の4と9が怖い。ある人は自分が人を傷つけるのではないかと不安でならない。それはその人の心の中に起こる固有の観念なので、OCDの人は、自分の症状は「絶対に他の人にはわかってもらえないだろう」と思い込みがちです。

そのことが悩みを一層深くし、治療を始めるのをためらわせたり、将来を悲観することにつながる場合もあるでしょう。そんなOCDの人たちにとって、同じような悩みをもつのは自分だけではないと知ることは、とても大きな励みになるようです。


●治った仲間がいることを知って

そこで、OCDの治療にグループ療法を導入して成果を上げているのが、熊本県にある独立行政法人 国立病院機構 菊池病院です。同院では、OCDの患者同士が話し合う時間をもっています。そこで知り合った患者さんたちのなかかから、OCDのサポートグループ「OCDの会」が生まれました。⇒(OCDコラム第10回第11回)会長の児玉政美さんは、グループ療法の体験について、会のホームページにこんなふうに書いています。

「同じ立場で、同じ悩みを持つ者同志で、お互いの考えや気持ちを話し合えたことが、私の中で<ここなら頑張れるかも!>という気持ちを持つことが出来て、通院するようになりました。」
なによりも、自分よりも先に回復した人が、はればれとした表情でいるのを見たことが、自分も治そう、という意欲をもつことにつながったといいます。

OCDの会では、菊池病院の一室を拠点に、患者同士の交流と情報交換、OCDの啓発活動をすすめてきました。そのサイトの掲示板には、全国の強迫症状に悩む人や、そのご家族がたくさん書き込みをしています。そんな活動のなかで生まれた仲間の生の声を、同会では昨年末、文集にまとめたそうです。

文集のタイトルは『とらわれからの自由 ~不確かな未来から確かな今へ~』。とても力強いタイトルですね。最初のページを開くと、編集委員会から、こんなメッセージが書かれています。
「本当に役に立つのは、自分と同じ境遇にあり、自分と同じ悩みをもち、そして自分よりも一歩先に行っている人たちの体験談です」



●前向きな闘いの記録

そういう意味で、この文集に書かれている体験談は、OCDに悩む患者さんやご家族に、ぜひ一度は読んでいただきたいものばかりです。加害恐怖と確認強迫のあった30代女性は、こう書いています。

――最近、同じ会のメンバーの劇的な変化を目にして、とても勇気をもらいました。私も頑張らなくては!と思い、それから確認がとても短く回数も減りました。

不潔恐怖のある30代女性の方の手記から、一部をご紹介させていただきましょう。

――この病気はつらい病気であり、それを周りの人に理解してもらうことは難しい。しかし、この病気を治す治療法はある。私はその治療を受けてとてもよくなった。

この方は、ERP(エクスポージャーと儀式妨害)という行動療法⇒(OCDの治療法)を受けました。それを受けるのはつらく、大変な治療だったそうです。しかし、ERPに成功したときの気持ちを、この方は「本当の自分が、今まで支配していた別の自分を追い払った」という感じだったと書いています。同じ方の言葉です。

――みんな「治りたい」と思っているが、思っているだけでは変わらない。本当に「治りたい!」と思うのなら、自分の意思で自ら動かなければならない。

「治そう」という意思が、どういう体験から生まれるのか、そしてその意思が、人をどう変えるのか。その意思は、どういう人たちによって支えられるのか。この文集には、OCDのみならず、ほかの病気の方にも参考になりそうなヒントが、宝の山のように散りばめられています。


●自分のなかの壁との闘いに勝てた喜び。

薬の助けや行動療法などの治療があり、主治医の先生や心理療法士の方、グループ療法で知り合った仲間の支えがあったとしても、最終的に、治そうと決意して取り組むのは本人です。そこで立ち向かう壁は、自分のなかの恐怖感や不安感です。そんな壁に、1人ひとりの方はどんなふうに立ち向かい、乗り越えていったのでしょうか。生の声だからこそ、どんな人にも参考になる言葉がいっぱいです。

最後に、治療が効果を表わした方の感想の言葉から、いくつかご紹介しましょう。

――今では子供とお風呂にも入れるようになったし、家事がはかどり時間が有効に使え、気持ちにも余裕が出てきました。今までは何をやるにも不安が先行しがちでしたが、やらなければわからない、やってみようという気持ちも生まれました。
(菌・不潔恐怖 30代女性)


――治したいという気持ちと先生の治るという言葉を頭の中において生活をしていくと本当に気持ちが楽になり、少しずつだが治っているのがわかるので、多くの人に伝えたいと思う。
(疾病恐怖 70代男性)


――今の私は、これから先の輝かしい生活を夢見て希望でいっぱいです。(中略)強迫のせいでつぶしてしまった私の青春時代を、これから取り戻したいと思います。
(不潔恐怖 20代女性)


残りは、ぜひ文集を読んでみてください。誰でもこの方たちのように壁を乗り越え、輝くことが可能性なのです。そう思うと、きっと、治療に立ち向かう勇気が湧いてきます。


●文集『とらわれからの自由』は定価200円です。入手方法は、OCDの会ホームページに掲載されています。
http://ocd-2004.hp.infoseek.co.jp/PCindex.htm