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子どもの強迫(OCD)友の会講演会
第7回OCD研究会レポート「子どものOCDについて」


●<子どもの強迫(OCD)友の会>主催の講演会が盛況に

さる11月23日、京都で活動する「子どもの強迫(OCD)友の会」が、行動療法の臨床研究で知られる久留米大学教授の山上敏子先生を講師に迎えて講演会を開催しました。同会ではインターネットサイトでも申し込みを受け付けましたが、当日までの申し込み者は全国から260名。会場となった京都市のひと・まち交流館ホールは、熱気に包まれました。

同会は、OCDの幼児期・児童・思春期・青年期の子どもたちをもつ家族による自助グループです。OCDという病気自体がまだ社会に広く知られていない中で、悩んで孤立しがちな家族のために、定期的に交流会を開くなどの活動を続けています。専門職による支援や、医療体制の充実、学校・職場の理解や教育・福祉の充実などを求めています。

当日のプログラムは、まず京都市児童福祉・児童療育センターの幸田有史先生(児童精神科医)より、OCDについての概説的なお話がありました。次に、山上敏子教授より、OCDの行動療法について、豊富な治療経験に基づいたお話がありました。最後に会場からの質問を受け付け、2人の先生が回答をしました。質問は、症状についての相談から、治療法、家庭での対処法までと多岐にわたり、時間いっぱいかけて、熱心な質疑応答が行われました。

会に参加したのは、OCDに限らず、強迫症状のあるお子さんをもつご家族の方々です。質疑応答での質問にも、自閉症やアスペルガー症候群、チックなどの症状をもつお子さんについての相談が相次ぎました。遠く関東地方や九州からも参加者があったことを思うと、全国にはまだまだ、子どもの強迫症状で悩み、地域に相談先がなくて困っているご家族の方が多いのではないかと想像されました。

同会の活動については、<子どもの強迫(OCD)友の会>ホームページをご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/reno/


●OCD研究会でも、子どもの強迫がテーマに

この会に先立つ11月5日には、大阪市で第7回のOCD研究会が開かれましたが、そこでも「子どもの強迫」はテーマのひとつとなりました。「発達障害に伴うOCD」と題された特別講演で、あいち小児保健医療センター心療内科の杉山登志郎先生が、「子どもの強迫」という演題でお話をされました。

杉山先生によれば、かつてOCDは、子どもや青年には少ないと思われていましたが、最近の調査により、患者の80%は18歳以下で発症しているということがわかっているそうです。一方、現在の日本では、広い意味での強迫症状が認められる病気は多く、多様な症状が現れているとのことです。“広い意味での強迫症状”とは、OCDという診断名ではない場合も含むという意味です。

児童精神科医として長い経験をもつ杉山先生によれば、よく見られる子どものこころの病気は、時代とともに変わってきました。一昔前、思春期の子どもには、対人恐怖や自己臭妄想(自分の体が臭いと思い込み、対人関係や行動に制限が起こる)などが多かったそうです。ところが、現在では、そうした症状はあまり見られなくなりました。

そのかわり現在は、広汎性発達障害や、それを背景にした強迫症状を診る機会が多いといいます。強迫症状をもつ子どもは、OCDと診断される子どもだけではないのです。広汎性発達障害のほか、チック障害や、神経症的な症状に伴う強迫症状をもつ子どもも多いそうです。

広汎性発達障害(Pervasive Development Disorders)とは、心身の機能がうまく働かず、治療や支援を要する状態をいいます。軽度で、成長とともになくなるものから、重度で一生続く、先天的なものまでがあります。DSM-IVでは、自閉性障害(自閉症)、アスペルガー障害(アスペルガー症候群)が発達障害として定義されています。(表1参照)

こうした合併症を伴う場合では、症状は一人ひとり異なる様相を呈するうえに、大人の場合と異なり、子ども特有の精神の発達段階も影響するため、診断は難しくなります。健康な子どもでも、幼児期には儀式行為がみられたり、物や場所へのこだわりがあったり、男児には特有の収集癖がみられたりと、病的な強迫行為との判別が難しい場合もあるそうです。

子どもの強迫には、診断にも治療にも、大人の場合とはまた違う、高度な知識と経験が求められるようです。今回のOCD研究会でも、そうした症例の研究報告が多数あり、ベテランと新人の医師・精神医学者・臨床心理士などの専門家たちが意見を交換しました。

【表1】子どもにみられるこころの病気
*DSM-IVの分類より抜粋。
DSM-IV ⇒(OCDコラム第17回:「強迫神経症」が「強迫性障害」になったのはいつから?)
広汎性発達障害 自閉性障害
レット障害
小児期崩壊性障害
アスペルガー障害
特定不能の広汎性発達障害
注意欠陥および
破壊的行動障害
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
特定不能の注意欠陥/多動性障害
行為障害
反抗挑戦性障害
特定不能の破壊的行動障害
チック障害 トゥレット障害(トゥレット症候群)
慢性運動性または音声チック障害
一過性チック障害
特定不能のチック障害


●子どもの強迫をめぐる現状の課題

子どもの数が少なく、核家族が多い現状では、子どもがこころの病気になると、お母さんが子どもと一対一で対応しなくてはいけないことが多いようです。一方、患者数が少ない病気であるがゆえに、地域のなかに専門医がいなかったり、行政の相談窓口でも適切なアドバイスができない場合があります。まだまだ病気自体が、社会一般に知られていないからでしょう。

子どもの強迫(OCD)友の会のホームページに載っている代表者の挨拶を読むと、そのために、親たちがどんな状態に置かれてしまうかが垣間見えます。親が子どもの病気を理解して、適切な治療を始められるようになるまでに、最初は途方にくれ、専門書を読んで勉強し、病院を探し……。

また、日常生活のなかで、不安に襲われ、あるいは繰り返し確認を求めて、片時も母親のそばを離れることができないような子どもの場合、母親は外に買い物に出ることもできません。今回の講演会で、そんな悩みをもつ親からの質問がありました。

質問に答えて、幸田有史先生は、「なんらかの手段で、まず1時間でも、お母さんを子どものそばから離せる状況をつくることが必要ですね」と話していました。高齢者介護の場合と同様に、親もまいってしまわないような環境づくりも必要とされているようです。

会場からは、「関西で行動療法を行ってくれる病院を教えてほしい」との質問もありました。子どもの強迫症状に悩むご家族さんたちに、まず必要なのは、適切な治療と支援の情報を得られる環境なのかもしれません。

★参考図書紹介★

■こころの病気をもつ子どもの養育について
『お母さんの学習室―発達障害児を育てる人のための親訓練プログラム』
山上敏子 二瓶社 1998 ¥2,940

■発達障害について
『発達障害の豊かな世界』 杉山登志郎 日本評論社 ¥1,995
『アスペルガー症候群と高機能自閉症―青年期の社会性のために 学研のヒューマンケアブックス』 杉山登志郎 学習研究社 ¥1,890

■行動療法について
『行動療法』 山上敏子 岩崎学術出版社 1990 ¥4,200
『こころの科学 121』 特別企画・認知行動療法 日本評論社 2005 ¥1,333

参考:第7回OCD研究会抄録集(OCD研究会)