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OCDコラム

OCDコラム

OCDはこころの病気のひとつです。
ためらわないで受診をしましょう!


このサイトのメルマガを購読してくださっている読者の方々は、もうご存知のことと思いますが、ある日、こんなお便りがありました。

■お便りから■

私は中学生のころから神経質で、公衆電話・公衆トイレ・ドアの取っ手などに触ることを恐れていました。最近では、あることが頭から追い払えず、何度も手を洗ったり、何度もお風呂やシャワーを浴びたり、同じことばかりして一日が終わってしまいます。

一時は治っていたのですが、今は中学生のころよりひどくなっています。毎日この症状が繰り返すので、集中して他のことをすることができません。好きだったことも、以前のように楽しめなくなりました。

今、すごくつらいです。病院に行きたいのですが、家族に相談したら、「行っても治らないよ。自分の気の持ちようだから、頑張りなさい」と言われてしまいました。
でも私は、早く病院に行って、このつらさから逃がれたい気持ちです。

日本ではまだまだ〈OCD(強迫性障害)は、こころの病気のひとつである〉ということが、きちんと認識されていないため、この方のように、周囲の人から「気の持ちようでなんとかなるもの」と思われている例もあるようです。あるいは「癖のひどいもの」と思われていたり、「大人になれば治るもの」と思われていたりする場合もあるようです。


●「これが病気だったら、どんなにいいだろう」

第19回のコラムでご紹介した花木葉子さんによるOCD闘病記『不潔が怖い』でも、花木さんは、自分のやっていることが、病気のせいだとは知らなかったということです。発行元である星和書店のご理解とご了承のもと、今回も、一部を引用させていただきます。

■花木葉子さんの手記『不潔が怖い』から■

生活の質が落ちているし、こんなことでは自分がダメになってしまうと分かっていました。でも、私は強迫性障害という病気があることを知らず、それどころか、よもや自分が病気だなんて想像もできなかったのです。精神科の病気であることを認めたくないのではなく、本当に思いもよらなかったのです。
私は作業にぐったりして、よく思いました。
「あーあ、これが病気だったらいいのに。もし病気だったら、お医者さんがいて、薬があって、楽になれるのに。でも、世の中そう甘くない。病気なんかじゃないんだ、自分が悪いんだ、自分でなんとかするしかないんだ。……でも、どうにもできない。(中略)」
と、この繰り返しでした。

もちろん花木さんは、私たちと同じ時代に生きている方です。でも、症状が出始めたころ、自分が病気であるとは思いもよらなかったというのです。

インターネットの利用者が増えている現在では、以前よりもずっと手軽に、OCDという病気についての知識を得ることができるようになりました。それでもやはり、こころのなかから追い払うことのできない強迫観念に襲われたとき、それが「病気のひとつかもしれない」と、すぐに結び付けられる人は、少ないのではないでしょうか。


●OCDは、人格(パーソナリティ)や性格とは関係がない。

しかし、OCDは、現在の精神医学の診断基準で認定されている、こころの病気のひとつなのです。⇒(第17回OCDコラム:「強迫神経症」が「強迫性障害」になったのはいつから?)第17回のコラムで紹介した診断基準「DSM-・-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル・-TR版)」によれば、「強迫性」と名のつく病気は、OCDのほかに、「強迫性人格障害(強迫性パーソナリティ障害とも言う。略称:OCPD)」があります。

OCPDは、人格障害(Personality Disorder:パーソナリティの疾患)のひとつで、完全主義、過剰な秩序正しさや厳格さに悩まされる人に当てはまります。たとえば、あることを行うのに、その行動の目的自体が見失われるほどに規則や順序、予定表にとらわれる。また、厳密な基準があり、それが満たされないと行動が完成できないなどが症状とされます。

OCPDの症状は、ある面ではOCDと似ていますが、大きな違いは、OCPDは、たとえば厳密なとらわれ行為を行うことが、「自分にとって望ましいこと」であること。それに反して、OCDの場合は、「自分は望んでいないし、苦痛なのだが、強迫観念を打ち消すために行わざるを得ない」のです。⇒(第19回OCDコラム:好きでやってるわけじゃない……)


●OCDになるのは、恥ずかしいことじゃない。

もうひとつ、こころの病気に特徴的なこととして、患者本人が、「病気になったのは自分が悪いせいではないか」と、自分を責めてしまいがちになることがあります。上記の花木葉子さんもそうですね。しかし、これまで述べてきたように、現代の精神医学では、本人の人柄や性格などは、OCDの発症にまったく関係がない、とされています。親の教育など、育った環境にも関係がありません。

ではなぜ、人はOCDになるのか? については、このサイトの「OCDとは?」 「OCDの治療法」をお読みください。

人間には、いろいろな病気があります。どんなに健康を誇る人でも、ときには風邪をひいたり、季節が来れば花粉症になったりもします。高齢になれば、高血圧などの生活習慣病にもかかりやすくなります。OCDも、広い意味ではそうした、<人間がかかる病気>のひとつ。だからこそ、医師や専門家によって、治療法が研究されているのです。

さて、ここで考えてみてください。OCD発症のメカニズムは、少しずつ解明されつつありますが、残念ながら、生活習慣病のように、「本人の努力で予防できるもの」とはされていません。お酒の飲みすぎなどの不摂生のために生活習慣病になるのなら、本人の責任も多少はあります。それに比べて、OCDになるのは本人の責任ではありません。だから、恥じることなく、現在わかっている最良の方法で治療をしてくれる病医院を受診することが、最良の選択なのです。


参考文献:
スチュアート・モンゴメリー、ジョセフ・ゾハー著 OCD研究会訳『強迫性障害』
高橋三郎、大野 裕、染矢俊幸・訳『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引き』(医学書院)
花木葉子『不潔が怖い』(星和書店)