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野間利昌先生インタビュー(全2回) Vol.2
~不安に慣れていく



セレーナメンタルクリニック
院長 野間利昌 先生


野間利昌(のま としまさ)先生は、精神科医として強迫症/強迫性障害(OCD)の専門外来を担当されています。前回に引き続き、野間先生にOCDの診療についてお話をうかがったインタビューの後半をご紹介します。
OCDの症状が現れる場面では、チェックポイントが多くなっているそうです。これは戸締りや忘れ物がないかを何度も確認する患者さんだけではなく、汚染/洗浄、加害、縁起などさまざまなタイプのOCDの人に当てはまるそうです。今回のコラムでは、それを行動療法でどう改善していくかなどのお話を中心に伺いました。


目次
§1 チェックポイントを減らす
§2 治療の期間と寛解について
§3 不安に慣れていくための治療



§1 チェックポイントを減らす

OCDの症状について、時代とともに変わった点はありますか?

野間:OCDの根本的な部分は変わっていないと思います。しかし、社会の変化が症状の現れ方に影響している部分はあると思います。インターネットのSNSでメッセージを送信する前のチェックなどは、以前は見られない行動でした。また、除菌や洗浄商品のCMが多く流れるようになったことが症状の形成に影響を及ぼしている気がします。

強迫行為を減らすために大切なことや考え方はありますか。

チェックポイントを減らすことが有効です。確認が過剰な患者さんが、鍵を閉めたけれど、閉まっている気がしないということがありますが、それは、見たという記憶が不確かになるためです。記憶力は問題がないのに、覚えられなくなってしまうのです。
その理由を説明するための例として、アメリカ、ロシア、イギリスと国名を覚える場合を考えます。「国の数が3個ならば覚えられても、30個になったら覚えられますか?」と聞くと「覚えられません」と答えますよね。つまり、覚える数が多くなると、覚えられなくなるということです。
この例を、外出前の戸締りの確認に当てはめると、チェックポイントが2個なら覚えられます。しかし、OCDの人の場合のチェックポイントは、
 1.(カギを)持った
 2.回した
 3.かんぬきが入るのが見えた
 4.カチャッと音が聞こえた
 5.手を放した
 6.鍵穴が横になっている
さらに7、8、9、10……とたくさんあります。すると、「3つ目のポイントを見たっけ?」と疑問が思い浮かび、不安になり「もう1回見ておこう」と強迫行為をしてしまいます。ですから、行ったことを覚えておきたければ、確認するポイントを減らしましょう、減らしたほうが実は覚えられると伝えています。
このような説明により、病気の特性を理解してもらった上で、行動療法(*1)の課題に実際に取り組んでもらいます。


では、具体的に治療はどのように進めていくのでしょうか。

野間:患者さんに、まず自分の症状(強迫行為の詳細)を紙に書き出してもらいます。そして、先程のチェックポイントのように病気の特性を説明して、行動療法の課題をどのような目標にするかを決め、できたかどうかを評価・記録していきます。また、患者さんはできないことに目を向けがちで、できないことばかりに目が向いてしまう傾向があります。そうすると課題に取り組む気が損なわれてしまうので、「私はこれをできた」「今日も~をやらずに我慢できた」「1週間これを頑張った」とできたことを書いて、毎回、見せてもらうことで、患者さんの自信につながるようにします。記録をきちんと書いていくことで、自分でも課題をできたのかがよく分かり、課題をクリアすることで達成感が持てて良いという人が多いです。

不潔恐怖、縁起恐怖、加害恐怖のようなほかのタイプでも、基本的な方法は同じなのでしょうか。

野間:そうですね。不潔恐怖で手洗いが強迫行為の人では、「ここを洗ったら、次はここを」「水しぶきや泡が飛んでないかな」というように洗い方や警戒するポイントが多すぎますし、加害恐怖で人にぶつかったかどうかが気になる人は、「あそこにぶつかってないよな」「ここも大丈夫」というようにチェックポイントが多すぎることを説明します。

§2 治療の期間と寛解について


治療期間は、どのくらいなのですか?

野間:治療期間は早い人だと3カ月くらいですが、6カ月から1年ぐらいという人が多いと思います。しかし、長引く人も多いです。治療期間が長くても、通院して治したいという動機が続いているのでいいと思う面もあれば、5~8年も通院していると、このままでいいのかなと思うこともあります。長く通院していると、どうしてもマンネリになりますので、そこは課題だと思っています。

症状がどのくらい改善すると寛解といえるのでしょうか。

野間:OCDのような病気は、自分が困っていたり、苦しかったり、あるいは、人に迷惑をかけてしまうから苦しくなるものなので、それらが、それほど問題にならなくなれば、通院の必要はなくなります。症状をゼロにするのを目標にするのでなく、症状をできるだけ減らして生活に支障がなくなるのを目標にすると良いと思います。また、OCDが重過ぎて、学校や仕事に行けない人は別ですが、症状があっても、仕事や学校には行くように勧めています。そのように社会に関わった方が改善しやすくなります。

家族への巻き込みが多い場合はどうでしょう?

野間:家族との関係がプラスになったり、マイナスになったりすることがあります。あまりにも家族が心配しすぎて、いろいろと手伝ってあげると本人の症状にとって良くないので、そういう場合は、家族と一緒にいる時間を減らすなどして物理的にも心理的にも一定の距離を置くようにアドバイスすることがあります。

§3 不安に慣れていくための治療

貴院でのOCDへの治療は保険で受けられるのでしょうか?

野間:保険診療で受けられます。保険診療の範囲内なので、一人の患者さんを10分ぐらいしか診られません。ただ、診察時間が長いと、先ほどの「でも、だって、どうしても」と話が長くなってしまう傾向もあるため、短い診療時間で、大事なことだけに絞って進めていく治療を心がけています。

OCDが改善して、診療に来なくなった患者さんが、OCDの再発に気づいたときに、行動療法の技術を身に付けることで、自分で立て直すことはできるのでしょうか?

野間:それを目指して治療をしています。実際、診療を終えた後、何年か経ってから症状が悪くなり受診する人もたまにはいます。そのときは、また治療に取り組んでくれれば改善の可能性があります。
1回目の治療をある程度覚えていれば、再発後の治療は、その部分を省略して行うことがあります。中には1回目の行動療法であまり苦労せずにOCDが改善して、再発する人もいます。その場合、患者さん自身も、再発した後のOCDへの対処法がわからずに、困ってしまうことがあります。
そのため、私としては、治療で苦労しながらも、頑張って取り組んで、よくなったという経験をした方が、OCDへの対処法が身につき、再発の防止につながると思います。
私は、患者さんに「この治療は不安に慣れるためのものだから、不安になってください。安心感を求めては駄目ですよ」とよく言います。ある程度の不安を持ちつつ、それに慣れていくようにしてもらっています。

たくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


*注釈
*1 行動療法―――行動療法もしくは認知行動療法については、当サイトのOCDの治療法>OCDの認知行動療法のページにも掲載していますので参考にしてください。
http://ocd-net.jp/cure/03.html