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野間利昌先生インタビュー(全2回) Vol.1
~OCD専門外来での治療



セレーナメンタルクリニック
院長 野間利昌 先生


野間利昌(のま としまさ)先生は、クリニックの強迫性障害専門外来で診療されています。強迫症/強迫性障害(OCD)の患者さんに、長年、向き合ってこられたご経験を通してOCDに関する野間先生のお考えをインタビューさせていただきました。外来での行動療法など、読者の方々が参考になりそうなお話を、今月と来月の2回に分けてご紹介します。


目次
§1 強迫性障害専門外来を担当した経緯
§2 患者さん自身が治療動機をもつ
§3 薬物療法と行動療法



§1 強迫性障害専門外来を担当した経緯

野間先生がOCDの患者さんの診療にかかわるようになったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

野間:2001年、千葉大学医学部附属病院で研修医をしていた頃、初めて受け持った患者さんの中にOCDの方がいました。その患者さんの治療に行動療法を行いました。当時、千葉大には、アメリカで行動療法を学んできた心理士の先生がいらっしゃって、その先生に教えてもらいながら行動療法を行いました。その患者さんの症状が改善し、退院していったことで、自分でも非常にやりがいを感じました。その後、OCDの患者さんを診る機会が増えていきました。

OCDの治療を始められて約18年になられるのですね。その患者さんは、どのようなOCDだったのでしょうか?

野間:強迫性緩慢(かんまん)*1のために、入院していた中学生の患者さんでした。緩慢の症状のために、歯を磨く、ご飯を食べるなどの行為にも非常に時間がかかっていました。

強迫性緩慢の治療というのは、難しいのでしょうか?

野間:難しかったのですが、曝露反応妨害法にトークンエコノミー法を組み合わせるなどして、治療を進めました。トークンエコノミー法とは簡単に言うと、ご褒美を設定して、治療意欲を高める方法の一つです。試行錯誤をしつつ治療を進める過程にやりがいを感じて、OCDの治療に興味を持つようになりました。その後千葉大学医学部附属病院で、強迫性障害の専門外来を担当することになりました。大学病院を辞めた後は、現在のクリニックで強迫性障害専門外来をしています。

長い間強迫性障害専門外来を続けていらっしゃる要因は何なのでしょうか。

野間:OCDでは、行動療法などを患者さんが頑張ってやってくれれば、症状が改善することが多いところが非常にいいですね。他の精神疾患では、症状の改善は薬物療法や別の要因が主となる場合がありますが、OCDの治療では、患者さんが行動療法の課題をきちんと行うことで改善が期待できますので分かりやすいと思います。

§2 患者さん自身が治療動機をもつ

OCDの治療を行っていくなかで、難しいと思われることはありますか。

野間:OCDに限ったことではないですが、「治療への動機」がない人を診るのは大変だと思います。当院での強迫性障害専門外来の予約では、患者さん自身が直接、申し込まないと受け付けないことにしています。家族から電話がかかってきても、本人に治療を受けたいという気持ちがなければ、80%以上の場合で治療が進みません。そのため、家族から予約の電話があっても、本人に代わってもらって、本人が行動療法など治療を望む意思を確認できたら、予約を受け付けます。もちろん、当院でも、強迫性障害専門外来以外の予約は、そういうシステムではありません。

インターネットで検索して、問い合わせてくる方が多いのでしょうか?

野間:そうですね。

こちらで診ていらっしゃるOCDの患者さんの中には、子どもさんも含まれているのですか。

野間:当クリニックの外来では中学生以上を対象としています。

仕事や学校に通いながら治療をしている人はいますか?

野間:そういう方もたくさん来院しています。初回の診療は平日の日中に限っているため、来づらいと思うのですが、治療をしたいという気持ちから何とか融通して来てくださいます。

こちらにいらっしゃる患者さんは、女性の方が多いのでしょうか?

野間:どちらかと言うと女性が多いです。男性の方は仕事で忙しいため通院が難しいということもあるのかもしれせん。OCDは、自由な時間が多いと強迫症状にとらわれて悪化しやすいため、仕事をしていることで、悪化を防いでいるということもあると思います。そのため、仕事に就いていないなどで自由な時間が多い人には、何でもいいから別のことをやりなさいとお話しています。症状のとらわれから脱するために病気以外のことに興味を持ってもらうことが大切です。

§3 薬物療法と行動療法


薬物療法に抵抗感を持つ患者さんはいますか?

野間:私の外来の患者さんで、薬物療法をしている人は、半数ぐらいだと思います。
基本的には薬について本人の考えを聞いて、飲みたくないのであれば、薬物療法なしで行動療法を行います。しかし、薬を使わずに行動療法を始めても、不安が大きすぎて課題がまったくできない場合は、薬物療法を併用することがあります。また、抑うつの症状が強い患者さんには、薬で気分を和らげてから、行動療法を始めることもあります。

行動療法での課題は、ホームワークが中心なのでしょうか?

野間:クリニックで課題を行うことはほとんどなく、ホームワークが中心です。
ホームワークでは、課題設定が一番重要です。課題のハードルをクリアできそうな高さにして、課題を行う期限を、2週間とか4週間と決めます。というのは、同じ課題を延々と続ける人がいて、そうすると、だんだんと課題に取り組む意欲も落ちてきてしまうからです。それを防ぐために、たとえ同じ課題を続けるにしても本人が今週は3日間できそうだと思えば、その日数を目標にして頑張ってもらい、それが達成できたら、「次の週は4日、5日間できるように頑張ってみましょうか」と提案し、漫然と課題に取り組まないようにしてもらいます。

外来での1人当たりの診療時間は、どれくらいでしょうか。

野間:診療時間は10分、多くても15分です。
行動療法は日常の生活の中で行うホームワークが重要です。患者さんには、ホームワークはピアノのレッスンと同じだと言っています。ピアノのレッスンで先生に注意されたら、家で練習し、またそれを先生の前で弾いて、さらに「ここをきちんとやりなさい」と言われたら、練習を重ねるようなものです。一番大事なのは、家での練習で、医師からのアドバイスを受けて、毎日課題に取り組んでいけば、症状がよくなります。
しかし、行動療法も医師など専門家の診療を受けないで1人で頑張ろうとしても、ほとんどの人は、途中で止めてしまうのです。「ピアノの先生とのレッスンがあるから、練習をきちんとやらなくちゃと思うように、しっかりと次回の診療までホームワークに取り組んでください」と話しています。

患者さんは月に何回くらい通院しているのですか?

野間:最初の1、2カ月は、できれば毎週来てもらいます。その間、OCDや行動療法について学習し、きちんと課題を行い、行動療法のコツがつかめたら、2週間に1回、そのうち3週間に1回、4週間に1回と間隔をあけていきます。最初から2週に1回だと、コツをつかみづらいので、毎週をお勧めしています。また受診当初のほうが治療への動機が高いということもあります。「鉄は熱いうちに打て」と同じですね。

患者さんが治療を続けていくためには、何が大事なのでしょうか。
野間:言い訳をしないで治療に素直に取り組むことが一番大事だと思います。OCDの治療では、患者さんが、課題ができないときに「だって、こうだからできません」というように言い訳を話したがることがあります。「でも」「だって」「どうしても」という言葉を用いて話すと、治療の妨げとなるので、このような言葉は自分にも他人にも使わない方がいいと説明しています。
「でも……」と言って強迫行為をしていたら症状が改善しないので、症状を改善するためには、そういう言葉を使わないで、「課題をするしかない」と思って、取り組んでくださいと伝えています。
素直に課題に取り組む人の方が早く改善していきます。

*次回は、野間利昌先生へのインタビューの後半です。OCDの治療について、より具体的な内容を話していただいたので、ご期待ください。


*注釈
*1強迫性緩慢(かんまん)―――緩慢とは、他人には動作が非常にゆっくり、もしくは止まっている時間が多く見える状態です。しかし、動作が止まっているときでも、患者さんの頭の中では、強迫観念や強迫行為が行われていて、それらが済むまでは次の動作に進むのが困難なタイプのOCDです。
OCDコラム第149回「動作がゆっくりな強迫性緩慢」で解説しています。
http://ocd-net.jp/column/c_149.html