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OCDへの認知行動療法Q&A②



強迫症/強迫性障害(OCD)への精神療法である認知行動療法について、患者さんやご家族が抱きやすい疑問に答えるQ&Aの2回目です。
OCDへの認知行動療法については、前回のOCDコラム第186回でも解説していますので、合わせてお読みいただければ幸いです。


目次
Q1 私はゲームやスポーツをしているときには、強迫行為をしません。その場合、ゲームやスポーツをすることは反応妨害になるのでしょうか?
Q2 強迫観念が主な症状で、確認や手洗いのような身体を動かす強迫行為をしない患者さんにも認知行動療法は有効でしょうか?
Q3 OCDへの認知行動療法に、健康保険は適用されますか?
Q4 認知行動療法にかかる期間はどのくらいでしょうか?
まとめ



Q1 私はゲームやスポーツをしているときには、強迫行為をしません。その場合、ゲームやスポーツをすることは反応妨害になるのでしょうか?

A1 反応妨害とは、認知行動療法の技法の一つで、OCDの治療では、通常、曝露療法と組み合わせて曝露反応妨害として行います。反応妨害は、強迫行為をしたい衝動に駆られているときに、強迫行為という反応をできるだけ行わなくても、その衝動が減っていくことを体験するものです。
たとえば、外の汚れが気になって自宅に帰ると、持ち物の表面を拭いたり、衣服を着替えたりする強迫行為をしていた患者さんが、できるだけ強迫行為をしないようにするのが反応妨害です。ただ、強迫行為をしないように我慢するだけでは慣れていくことが難しいので、曝露療法の課題(前回のコラム参照)を組み合わせて行います。

一般にOCDの患者さんは、暇な時間があると、OCDに関連したことが気になりやすい傾向があるので、仕事、学業、スポーツのような課題をすることが、OCDの悪化の防止に役立つことはあります。しかし、仕事、学業、スポーツをしている最中は、OCDが気にならなくても、それが終われば、やがてOCDにとらわれることを繰り返してしまうため、これだけでは根本的なOCDの改善にはなりにくいのです。そして、ゲームなどの趣味は、仕事、学業、OCDの治療などの本来取り組むべき課題を避けていると、そのような課題に取り組むことへの苦手意識が増すという悪循環になってしまうので、本来行うべき課題をしてからゲームや趣味をすることをお勧めします。

Q2 強迫観念が主な症状で、確認や手洗いのような身体を動かす強迫行為をしない患者さんにも認知行動療法は有効でしょうか?



A2 強迫観念が主な症状の患者さんでも、認知行動療法を用いることがあります。その場合も、他のタイプのOCDと同様に、医師の診断によって、認知行動療法が適当と判断されれば、認知行動療法を行う担当者(医師、心理士、看護師など)は、症状についてアセスメント(観察・評価)を行い、介入方法を考えます。

強迫観念が主訴の患者さんの思考をアセスメントすると、自分が望まないのに自動的に思いが浮かぶ考え(侵入思考)と、それを解消しようとして、意図的に行っている思考とがあります。侵入思考は誰でも経験するもので、通常は一過性で済むのですが、それが長期間続き、強迫観念という症状になっている場合は、不快な感情が生じ、侵入思考を見過ごせない脅威として解釈してしまい、それを打ち消そうと何か意図的な思考(頭の中の強迫行為を含む)を行っていると考えられます。[1]

そのような思考と感情との関係を分析して、介入の方法を考えていくものをケースフォーミュレーションもしくは行動分析といいます。分析した後、具体的な介入を行いますが、その方法は、患者さんの症状や治療者によってさまざまです。

Q3 OCDへの認知行動療法に、健康保険は適用されますか?

A3 OCDへの認知行動療法が健康保険として認められる医療機関は、現状では非常に限られています。医療機関によっては、OCDへの認知行動療法が、健康保険として認められるための条件を満たすことが難しいためです。そのため、外来での医師による診療や処方薬の購入は保険が効いても、認知行動療法は自費診療という医療機関も多いのが現状です。
また、医師や看護師が認知行動療法を行い、その他の条件を満たした場合、保険として認められますが、2019年10月の時点では心理士が行った場合は、保険の対象となりません。2018年から公認心理師という国家資格が誕生したので、今後、公認心理師による認知行動療法が保険の対象となることが期待されます。

Q4 認知行動療法にかかる期間はどのくらいでしょうか?

A4 厚生労働省によるOCDへの認知行動療法の治療者向けマニュアル[2]では、面接の回数は16回とされています。ただし、必ず16回行わなければならないというわけではなく、症状の改善次第では、最終の2回を前倒してもよいと書かれています。

面接をどれくらいの間隔で行うかは、患者さんや医療機関の事情にもよるかと思います。ただし、初回以降、心理教育や行動分析を行い、5回目の面接で具体的な介入に入りますが、この間は面接の間隔をあまりあけない方がいいと書かれています。
治療期間や間隔が長引くと、患者さんの治療動機も持続させることが難しくなります。また、薬物療法を併用している場合、その効果が現れる時期も考慮に入れるといいので、それらを踏まえつつ、診療が進むといいと考えられます。
また、健康保険の対象となる認知行動療法は、この厚労省のマニュアルに沿って行われるのですが、保険の対象とならない自費診療の認知行動療法では、この回数に限らず、さまざまな面接回数で行われています。
いずれの方法であれ、認知行動療法が終了した時点で社会復帰につながり、再発の可能性が少ないレベルにまで改善できていれば理想的です。

まとめ



OCDの症状の表れ方は、患者さんによって千差万別で、認知行動療法では、個々の患者さんの症状に合わせて、技法をどのように当てはめていくかを考えていきます。
コラム記事で回答できるのは一般論にとどまりますので、読者の方にとってはイメージしづらいと思います。しかし、手品の種があらかじめわかってしまっては、手品のスリルを味わえないように、曝露反応妨害も具体的な方法が事前にわかってしまっては、不快感に反応した症状が改善されていきません。また、患者さんの症状に合った具体的な方法は、実際に治療を体験して初めて実感できるものなので、ご理解いただければと思います。

当OCDコラムでの体験記・座談会でも、認知行動療法の体験が語られている記事があるので、よろしければご参照ください。


*参考
[1] Freeston MH, Ladouceur R, Gagnon F, et al.Cognitive-Behavioral Treatment of Obsessive Thoughts:A Controlled Study, J Consult Clin Psychol. 1997 Jun;65(3):405-13.
[2]厚生労働省>心の健康>強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル (治療者用)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html