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OCDへの認知行動療法Q&A①



強迫症/強迫性障害(OCD)の治療として、効果が確認されているのは薬物療法と認知行動療法(行動療法を含む)です。認知行動療法については、当サイトの「OCDの治療法」のページや過去のコラムでも、取り上げています。しかし、インターネットや書籍には、さまざまな人が発信した情報があり、読む人が誤解してしまうことがあります。今回のコラムでは、OCDへの認知行動療法について、患者さんやご家族が抱きやすい疑問にお答えします。


目次
Q1 OCDへの認知行動療法とはどのようなものですか?
Q2 OCDへの認知行動療法は、どこで行われますか?
Q3 曝露反応妨害を本やインターネットで調べていたら、怖くなってしまいました。この治療をしないと、OCDは治らないのでしょうか?
Q4 汚染/洗浄、被害/確認、縁起恐怖などOCDのタイプによって、認知行動療法が難しいことはあるのでしょうか?
Q5 患者本人が認知行動療法を受けたがらないとき、家族はどうしたらいいのでしょうか?



Q1 OCDへの認知行動療法とはどのようなものですか?



A1 認知行動療法とは、心理学を用いた精神療法、カウンセリングの方法の1つで、OCDのほかにもさまざまな精神疾患の治療や心理的な問題への対応に用いられています。
OCDへの認知行動療法のあらましは、当サイトのOCDの認知行動療法のページにまとめてありますので、お読みください。

OCDの症状の表れ方は、患者さんによってさまざまですので、治療者は最初にその状態を詳しく調べます(アセスメント)。その結果を治療者と患者さんは共同で分析し、認知行動療法をどのように用いていくのかを考えます。認知行動療法には、曝露反応妨害(ERP)などいろいろな技法がありますが、どの技法を用いてどのような課題を行うかは、個々の患者さんの状態によって異なります。そして、実際に課題を体験することで、症状や問題の改善をめざしていきます。

Q2 OCDへの認知行動療法は、どこで行われますか?

A2 OCDは精神疾患ですので、その診療を受けるには、精神科医がいる精神科の病院、クリニックに受診することが必要です。しかし、精神科の医療機関で、OCDへの認知行動療法を行っているところは、それほど多くはありません。
OCDへの認知行動療法は、1回の診療時間が通常50分前後かかりますし、治療者が専門の技術を学ぶ必要があります。そのため、認知行動療法を行っている医療機関では、通常の外来診療とは別に、精神療法、カウンセリングの枠を設定し、専門の技術を学んだ医師、心理士などが担当するシステムをとっています。
かかりつけの医療機関で、認知行動療法を行っていない場合、主治医と相談し、OCDへの認知行動療法を行っている専門家を探す方法が考えられます。専門家が見つかれば、主治医に診療情報提供書(紹介状)を書いてもらうと、専門家同士の診療の連携に役立ちます。

Q3 曝露反応妨害を本やインターネットで調べていたら、怖くなってしまいました。この治療をしないと、OCDは治らないのでしょうか?

A3 OCDへの認知行動療法の技法である曝露反応妨害(ERP)は、海外では40年以上行われていて、多くの患者さんの症状を改善させています。しかし、日本では、普及がそれほど進んでいませんし、インターネットなどでいろいろな情報を目にする機会があるため、このような心配をされる人もいます。

インターネットの情報で参考になるのは、厚生労働省の「心の健康」というWebページからダウンロードできる「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル (治療者用)」です。後半に「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法(患者さんための資料)」も掲載されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html

これは平成27年度に厚生労働省の研究費助成を受けて作成されたもので、OCDへの認知行動療法としては標準的な内容が書かれています。患者さんにとっては、このマニュアルを読んだだけでは、具体的にどのような課題を行うのか想像しにくいかもしれません。しかし、具体的な課題は、認知行動療法の中で、患者さんの症状を詳しく調べ、その結果に合わせて考えていくのが基本です。曝露療法(エクスポージャー)とは、患者さんにとって事前に100%安心を予測できない課題に取り組み、実際とは異なることを体験していく治療法です。そのため、受診前はあまり具体的な情報は求めない方がいいかもしれません。未知の部分や不安感があっても、それを抱えたまま診療を受けることからすでに認知行動療法は始まっていると考えてよいでしょう。

先述した当サイトの「OCDの認知行動療法」のページも参考になりますのでご覧ください。

Q4 汚染/洗浄、被害/確認、縁起恐怖などOCDのタイプによって、認知行動療法が難しいことはあるのでしょうか?

A4 認知行動療法は、強迫症状の表れ方がどのようなタイプであれ、用いることができます。ただ、OCDへの認知行動療法で用いる曝露反応妨害は、強迫行為をただ我慢するような方法とは異なる面があります。

通常、患者さんは、治療を受ける前から、強迫行為を我慢しようと何度も試みた経験があります。自分ひとりの努力ではうまく行かなかったため、治療を受けようと思うケースが多いのが現状です。そのため、認知行動療法では、できれば治療の初期に、曝露反応妨害はどのようなものなのかを治療者と一緒にカウンセリングルームで体験することが望ましいです。
患者さんによっては、外の汚れを自宅に持ち込む場面や、自動車の運転中などにOCDの症状が現われることもあるため、カウンセリングルームでの課題の設定が難しいことがあります。
しかし、そのような症状の改善につながっていくような課題を設定し、カウンセリングルーム、もしくは別の場所で治療者と一緒に取り組めるといいのです。
認知行動療法は、治療者の技量によっても治療の効果は異なりますので、過去に体験して、うまく行かなかった人でも、あきらめずに専門の施設を探してみることも一つの方法です。

Q5 患者本人が認知行動療法を受けたがらないとき、家族はどうしたらいいのでしょうか?



A5 認知行動療法を受けるためには、本人が心理的な困りごとや苦痛を改善したいという気持ちがいくらかでもあることが必要です。本人が治療に抵抗している場合、家族が無理に説得してもうまく行かないことがあります。このような場合、家族が困っていることをテーマにして、家族の側が認知行動療法や家族療法を受けるという方法が考えられます。
たとえば、家族が患者さんのOCDに巻き込まれたり、生活費や家事を依存されているなどの問題に対し、状況を客観的に把握し、家族はどう対処すればいいかを治療者と一緒に考えていきます。


認知行動療法を行う医療機関は増えてきていますが、OCDの行動療法を熟知した治療者は、いまだ十分な人数ではないのが現状です。主治医に相談して、場合によっては紹介を受けましょう。