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摂食障害とOCD



摂食障害は、精神的な要因で食事へのコントロールが困難となってしまう疾患で、栄養の摂取が低下する「神経性やせ症」、食べ過ぎてしまうことへのコントロールが難しい「神経性過食症」などがあります。摂食障害は、本人が食事に関連した問題行動を止めたいと思っても、強迫的に繰り返されてしまいます。また、摂食障害の患者さんが、強迫症/強迫性障害(OCD)を経験する割合は少なくありません。摂食障害がどのような病気なのか、また、OCDとの関連性についても紹介します。

目次
§1 栄養の摂取が恐怖となる神経性やせ症
§2 食べ過ぎてしまう過食の障害
§3 摂食障害の特性とOCDの併存
§4 相談先と摂食障害治療支援センター



§1 栄養の摂取が恐怖となる神経性やせ症

神経性やせ症は、以前、神経性無食欲症と呼ばれていましたが、必ずしも食欲がないわけではなく、過食し排出する行動を伴う人もいるため、新しい診断基準DSM-5[1]では神経性やせ症と呼ばれるようになりました。拒食症と呼ばれることもありますが、これは正式な病名ではありません。
診断基準の一部A~Cを、わかりやすい言葉で紹介します。

A 精神症状によって、その人にとって必要とされるカロリーの摂取が制限されてしまうために、健康を維持したり年齢に応じた成長ができる体重の下限を明らかに下回ります。
B 体重の低下が問題になるほどであっても、体重増加への強い恐怖があり、カロリー摂取を妨げる行動が繰り返されます。
C 体重や体型に関する自己認識(ボディイメージ)に障害があり、それが自己評価にも影響することもあります。また、低体重になっても、その深刻さに気づかないままでいることがあります。

体重増加への強い恐怖があり、それを打ち消すために、食物の消化・吸収を避けるための行動が繰り返される点は、強迫的でOCDと似ています。[2]この恐怖は、体重が減っても根本的には解消されず、行動が繰り返されるほど、恐怖に敏感になってしまうのも、OCDでの不快な感情と強迫行為との関係に似ています。

体重の低下だけで神経性やせ症か判断できるものではなく、体重にはそれほど問題がなくても、栄養不良があったり、健康的に問題となる方法で体重コントロールが行われている場合があります。[3]栄養不良や不健康な体重コントロールが続くと、身体的にもさまざまな兆候や症状が生じ、生命に危険を及ぼす場合もあります。しかし、その重大さをどの程度、自覚しているかは個人差があります。患者さん自身が、病態を認めず、栄養を取り戻す治療を受けたがらない場合があります。そのような場合、診療を受容できるよう心理的な支援、動機づけが求められます。



§2 食べ過ぎてしまう過食の障害

過食とは、明らかに多い量を食べ、その衝動のコントロールが困難となる症状です。不適切な排出行為を行うかどうかで、次の疾患に区別されます。

神経性過食症/神経性大食症
過食しても、体重が増えないよう排出行為が伴います。自分で吐いたり、下剤などの薬品を用いる人もいます。排出行動は、体に負担がかかり、身体的な疾患になることがあります。また、体重、体型が自己評価に過大な影響を与えます。

過食性障害
過食をしても、排出行為を行いません。食べるのが速い、満腹で苦痛になるまで食べてしまう、空腹でなくても大量に食べる、他の人に見られると恥ずかしいため一人で食べる、食後に自己嫌悪、抑うつ、罪責感を抱くなど、食事に関した明らかな苦痛があります。苦痛があるのに、食べる方を抑えることが難しくなってしまいます。

過食の症状のために、食品にかかる費用が膨大となれば、それも生活への支障をもたらします。しかし、OCDの強迫行為も、摂食障害の過食、排出行為でも「自分でも止めたいと思う気持ちがあっても、行為をしたい衝動が強くなり、コントロールが難しくなること」、「行為が繰り返されること」が共通しています。[2]

§3 摂食障害の特性とOCDの併存

摂食障害の発症は、青年期から成人期早期で、患者さんの男女比は、概ね1:10で女性が多いです。

神経性やせ症、神経性過食症の人は、自分の体重や体型に注意が向き過ぎてしまうのですが、OCDでも、自分の外見や体の特定のところにとらわれ過ぎてしまうタイプの人がいます。とらわれることに、どのくらい違和感を感じているかは個人差がありますが、いずれも不安など嫌な感情を打ち消そうとする行為を繰り返すと、かえって気になるという悪循環になってしまう点が似ています。
また、神経性やせ症、神経性過食症の特徴は、体重や体型が自己評価に大きな影響をもたらし、体重の管理が少しでもうまくいかないということが、自分にとって受け入れがたく、不快な感情が生じます。しかし、OCDでは、とらわれていることが、自己評価に大きく関連するとは限りません

このように摂食障害には、OCDと特性が似ている面があります。診断基準によると、このようなとらわれが、食事、体型、体重に関連したものに限られる場合は摂食障害とみなされ、それ以外のことへの強迫観念、強迫行為がある場合は、OCDの併存が考慮されます。
食物に関したことでも、食中毒のような健康被害を恐れて、過剰に食物や調理器具を洗浄したり除菌したりする強迫行為をするような場合はOCDが疑われます。

摂食障害の患者さんがOCDを併存する割合を調べた研究は複数ありますが、調査が行われた国、時期、方法によって結果が異なります。2001年スイスとイタリアで行われた研究では、摂食障害の患者さん237名のうち29.5%がOCDを併存していました。[4]2006年アメリカで行われた研究では、摂食障害をもつ入院中の女性患者さんのうち22%がOCDを併存していました。[5]

また、うつ症状がある人でも、食欲が低下したり、つい食べ過ぎてしまう症状が出ることがあります。食事に関連した精神症状があっても、それだけでは摂食障害とは限りません。診断は、医師が、患者さんの状態を総合的に調べて行われます。

§4 相談先と摂食障害治療支援センター

摂食障害は精神疾患ですので、まず精神科、心療内科の医師に相談することが必要となります。
しかし、進行すると身体的な症状をもたらすため、身体も含め総合的な診療が必要とされることがあります。そのような場合、主治医を通じて、他科の医療機関と連携して診療を受けられるといいと思われます。




また、摂食障害について専門的な診療ができる医療機関は十分ではないのが現状です。そのため、摂食障害の専門家と地域の医療機関とが連携するための拠点として、2014年度から摂食障害治療支援センターが設置されるようになりました。[6]摂食障害の患者さんやご家族が相談できる摂食障害治療支援センターは、現在、宮城県の東北大学病院、千葉県の国府台病院、静岡県の浜松医科大学医学部附属病院、福岡県の九州大学病院に設置されています。
これらのセンターでは、患者さんに治療を直接、行うのではなく、受診希望の方には、地域で適切と思われる医療機関を紹介するような相談を行っています。

摂食障害もOCDも、患者さんと医療機関とを取り巻く状況には、まだ多くの課題がありますが、適切な診療につながりやすい医療体制になっていくことが期待されます。


*リンク
摂食障害 情報ポータルサイト(一般の方)
摂食障害治療支援センター設置運営事業による、一般の方への情報を提供するサイトです。
全国の摂食障害治療支援センターのホームページにもリンクしています。
http://www.edportal.jp/index.html


*参考
[1] American Psychiatric Association[著]日本精神神経学会[日本語版用語監修] (2014)「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院
[2] 吉村知穂、山田恒、松永寿人(2018)「摂食障害における強迫性と衝動性」精神科治療学 Vol.33 No.11 Nov.星和書店
[3]日本摂食障害学会(2016)「AED レポート第3版<日本語版>摂食障害 医学的ケアのためのガイド」
[4]Milos G, Spindler A, Ruggiero G, Klaghofer R, Schnyder U. (2002)Comorbidity of obsessive-compulsive disorders and duration of eating disorders. Int J Eat Disord. Apr;31(3):284-9.
[5]Blinder BJ, Cumella EJ, Sanathara VA. (2006)Psychiatric comorbidities of female inpatients with eating disorders. Psychosom Med. May-Jun;68(3):454-62.
[6]安藤哲也(2018)「摂食障害と地域連携―その現状と課題」精神科治療学 Vol.33 No.12 Dec.星和書店