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OCDコラム

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精神科でのカウンセリングとは



強迫症/強迫性障害(OCD)の治療として有効な認知行動療法は、医師だけではなく心理士、看護師などが担当することがあります。精神科の医療機関では、医師の通常の診療とは別に、心理士によるカウンセリングを設けているところが増えています。今回のコラムでは、一般的には精神科でのカウンセリングとはどのようなものなのかを紹介します。


目次
§1 医療機関でのカウンセリングの位置づけ
§2 OCDの治療ができる心理士を探そう
§3 カウンセリングでの認知行動療法の進め方
§4 今後の期待



§1 医療機関でのカウンセリングの位置づけ

精神疾患の診断は、医師しかできないため、カウンセリングを受ける場合も精神科医による診療を受けることが必要です。
精神科におけるカウンセリングとはどのように行われるのか、一般的な診療の流れを紹介します。


OCDの治療として効果が確認されているのは、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)*1(SSRIも含みます)を用いた薬物療法認知行動療法(行動療法も含みます)です。[1]
認知行動療法は、通常、1回の面談に50分前後かかります。通常の診療では、医師は、1日に多くの患者さんを担当するので、1人の患者さんにそれだけの時間を費やすことが難しいため、心理士のような医師以外の医療スタッフが担当するカウンセリングというシステムを設けています。認知行動療法は、専門的な研修を受けた看護師、作業療法士が行っている機関もあります。

医師が看護師に血液検査の実施を指示するように、カウンセリングの場合でも、心理士に医師がどのような精神療法(心理療法)心理検査を行うかを指示します。ただし、指示の内容がどの程度なのかは、医療機関によって異なります。

また、本人の受診の意思が固まっておらず、家族だけが先に相談に訪れたい場合もあります。そのような家族相談を、医師もしくは心理士が対応できるかどうかは医療機関によって異なりますので、医療機関にお問い合わせください。


§2 OCDの治療ができる心理士を探そう

現在、心理士の資格は、1つに限定されていません。国家資格である公認心理師は、2018年に試験が始まったばかりで、今年の春から資格の登録を済ませ、公認心理師の名称を用いる人が現れる見込みです。
また、公認心理師の資格がなくても、心理カウンセリングはできます。民間団体が認定した資格として臨床心理士という資格があり、現状では臨床心理士が医療機関でカウンセリングを担当することが多いようです。
ただし、精神療法には、さまざまな治療法があり、公認心理師、臨床心理士という資格を持った人のすべてが、認知行動療法ができるわけではありません。また、認知行動療法は、うつ病、双極性障害、パニック症、社交不安症などさまざまな精神疾患の治療で用いられるため、認知行動療法を行っている心理士のなかにも、OCDへの治療が苦手な人はいます。
そのため、OCDの患者さんにとって大事なことは、OCDに対し認知行動療法ができる技術をもった専門家を探すことです。
カウンセリングを導入している医療機関では、ホームページにその内容を紹介していることがありますので、そのようなページを参考にして、情報を得てください。


§3 カウンセリングでの認知行動療法の進め方

1.医師の指示を受ける
医療機関では、心理士もカルテを書きます。そして、医師や心理士との間で、患者さんの情報を共有します。心理士は、医師からカウンセリングの指示があると、カルテに書かれた患者さんの情報を把握します。

2.心理士との初回のカウンセリング
初回のカウンセリングで、心理士は、患者さんにカウンセリングで扱ってほしい問題(主訴)を確認します。OCDの患者さんであれば、「OCDを改善して、働けるようになりたい」というような本人の意思を聞き、その目標に向かって、心理士は、一緒に治療を進めていきます。
認知行動療法は、心理士が患者さんに一方的に指示するのではなく、共同で行っていく治療法だからです。

3.アセスメント~心理教育
アセスメントとは、患者さんから治療に必要な情報をさらに詳しく聞き、症状の状況を把握していく作業です。そして、その症状が、どのようなメカニズムで生じているかを調べるケースフォーミュレーション*2などと呼ばれる作業を行います。
これらの作業は、患者さんと一緒に行っていくことが基本です。症状についてわかった情報、メカニズムを、心理士が患者さんに教え、共有していく作業を心理教育といいます。

4.課題
アセスメントを分析した結果、どのような課題から始めるかを、患者さんと一緒に考え、実行していきます。一般にOCDの患者さんでしたら、曝露反応妨害(詳しくはOCDの治療法「OCDの認知行動療法 ocd-net.jp/cure/03.html」をご参照ください)の課題を行うことが中心となります。
OCD以外にも、抑うつ、対人不安、睡眠障害など、さまざまな心身の症状を併せ持つ場合があるので、患者さんのそのときの状態に合わせた介入を行っていきます。


現在かかっている医療機関で認知行動療法を行っていない場合、他の医療機関やカウンセリングルームで、認知行動療法を行う場合もあります。その場合、薬物療法は主治医のいる医療機関で継続しつつ、認知行動療法のみ外部の施設で受ける場合もあれば、転院して薬物療法も認知行動療法も受ける場合もあります。いずれにせよ、通常は主治医に「診療情報提供書」を書いてもらい、外部の施設を受診しますが、受診後に行うカウンセリングの流れは概ね同様です。


§4 今後の期待

OCDへの認知行動療法は、健康保険で認められるようになりましたが、心理士が行うカウンセリングは、まだその対象となっていません。公認心理師という国家資格ができたため、将来、公認心理師が行った認知行動療法も、保険の対象となることが期待されます。
保険の対象になれば、より多くの患者さんが受けやすくなり、社会的にも認知行動療法を行うことができる専門家を養成する研修体制が充実し、そのような技術を持った人材が増えていくことが期待できます。

注釈
*1 セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)―――セロトニン再取り込み阻害薬は、神経伝達物質のセロトニンに働きかける抗うつ薬です。SSRIは、SRIの一種で、セロトニンを選択して働きかける選択的セロトニン再取り込み阻害薬です。SSRIについてはOCDの治療法「OCDの薬物療法 ocd-net.jp/cure/02.html」をご参照ください

*2 ケースフォーミュレーション―――アセスメントで観察した情報から、どのような場面で、思考、行動、感情、身体症状、自分以外の環境がどのような関係になって、症状が引き起こされているかというメカニズムを調べていき、どこから治療として働きかけていくかを判断していくことです。

参考
[1]American Psychiatric Association.(2010)「PRACTICE GUIDELINE FOR THE Treatment of Patients With Obsessive-Compulsive Disorder」p11