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OCDコラム

OCDコラム

OCDでよく見られる症状をわかりやすく
①汚染/洗浄


強迫症/強迫性障害(OCD)というのは、どのような症状なのか、よく見られる例を紹介しながら解説していきます。OCDは、他人に理解してもらうことが難しい場合があり、今後、症状のタイプごとにわかりやすく、OCD以外の人にもOCDとはどのような病気なのか伝わるように紹介していきます。今回は、OCDの中でも経験する人が多い、汚れ・汚染についての強迫観念にとらわれ、洗浄の強迫行為をしてしまう「汚染/洗浄」のタイプです。

目次
§1 OCDの症状の現れ方は多様
§2 汚れが過剰に気になる例
§3 汚染や被害を防ぎたい
§4 繰り返しが増えてしまう
§5 まとめ



§1 OCDの症状の現れ方は多様

OCDの症状は、次の2つです。

強迫観念―――嫌な考えにとらわれて、コントロールが難しい。

強迫行為―――強迫観念を打ち消すために、しないではいられない行為。

これらの症状の具体的な現れ方は、個々の患者さんによって異なります。不潔や汚染についての強迫観念が生じて、洗浄の強迫行為をしてしまうタイプ(いわゆる不潔恐怖)でも、症状の細かい内容は多様です。そのような「汚染/洗浄」タイプの症状の現れ方として、よく見られる例を紹介していきます。


§2 汚れが過剰に気になる例

「汚れ」と思う範囲と気になる度合いが過剰、他の人には汚れとは思えないようなものまで、汚れと思い、なくしたい衝動に駆られるタイプです。よく見られるケースを紹介します。
例1は、他の人が触った物には、どんな汚れが付いているかわからないため、とても汚く思えてしまう場合です。

例1 不特定多数の人が使うもの

強迫観念―――多くの人が触れるものは汚いので、それを触った手で、自分のものに触ると、その汚れがついて、汚れが広がってしまうと思う。

強迫行為―――電車のつり革や公衆トイレなどの使用を避ける。汚いと思う物に手が触れたら、必ず洗うか、ウェットティッシュで拭きとる。


例2は、自宅の外の汚れを警戒していて、外で身につけていた衣類や持ち物、外の物に少しでも触れたと疑われるものまで、OCDの症状が現れてしまうケースです。患者さんによって警戒する場所は、地面、トイレなどと異なりますが、症状の現れ方は似ています。

例2 外の汚れ

強迫観念―――外の物、外で過ごした自分や家族の体は汚いと思うため、帰宅後、自宅の中に、その汚れが広まってしまうことを避けたいと思う。

強迫行為―――帰宅すると、衣服を着替え、手洗いや入浴を必ず行う。
買ってきたもの、外で使ったカバンや携帯電話、郵便物などを、自宅にできるだけ持ち込まない。持ち込む場合は、拭いたり、洗浄する。
これらの行為を家族にも求めることがある。
家族以外の人が、自宅に入ることを拒む。


■解説
子どもが、砂場やグラウンドで遊んで、衣服に砂や土がたくさんついたまま帰宅すれば、家族が玄関で着替えさせたり、手足を洗ってもらうのは多くの家庭で見られると思われます。しかし、OCDで、このような汚れが過剰に気になるという症状を抱えている人は、外見では何の汚れもなく、多くの人が気にも留めない場合でも、「外出したから汚れが付いている」と思い込んでいたり、帰宅したときには洗浄するということがルールになったりしているため、洗浄などの強迫行為をしないではいられなくなってしまいます。例1のような不特定ではなく、特定の人が触った物が苦手という人もいます。また、自分の体や自宅の物が汚く思え、それを外の人、物に触れさせたくないというタイプの人もいます。


§3 汚染や被害を防ぎたい

人体に被害をもたらす汚染物質、生命に関わる病原菌やウイルスは、誰もが避けたいと思いますし、社会的にも研究され対策が行われています。しかし、汚染に対して過剰に反応するタイプのOCDでは、警戒する範囲と度合いが過剰で、科学的に危険ではないレベルや、その物質を連想させるものまで恐れ、強迫行為で除去したくなります。

例3 血液のように見えるものが恐ろしい

強迫観念―――HIV(ヒト免疫不全ウイルス)のように血液による感染(経路)を拡大解釈して、点のようなわずかな赤いシミ・汚れが、テーブルや洗面所、紙などについているのを見たり、絆創膏を貼っている人に出会っただけで警戒し、その人が触れたものまで、科学的には感染の可能性がないのに、感染を恐れて警戒してしまう。

強迫行為―――血液を連想させるものに触れないようにする。汚染していると思うものに対して、ティッシュや手袋を使って、直接、触れないようにすることもある。もし触れた場合は、洗浄や除菌を行う。

■解説
血液に限らず感染症の恐れがある菌・ウイルス、カビ・害虫による不衛生な環境、公害物質・放射線・紫外線は、健康などへの被害をもたらすレベルであれば、誰もが避けたいものです。しかし、これらの物質の中には、もともと、日常の生活空間に存在しているものが多く、警戒すべき感染経路や定められた環境基準などの範囲を超えなければ、科学的には問題はなく、多くの人は気にも留めないものもあります。しかし、OCDの人では、それらの物質への恐怖や不安感が高じて、「微量であっても除去したい」という衝動が強まり、強迫行為をしてしまいます。


§4 繰り返しが増えてしまう

強迫行為に関しては、「手洗いは3回」というように自分が決めたルール通りに行えば、強迫行為を終了できる人もいます。しかし、そうはいかずに、強迫行為の時間が長くなってしまう人もいます。


例4 入浴や手洗いなどの場面でのやり直しが多い

強迫観念―――浴室で体を洗うときは、目には見えない汚れを、わずかでも残さないように注意する。洗っている最中に、少しでも注意がそれたり、洗った記憶に自信がないと、ちゃんと洗えていたか自信がなくなり、やり直したくなる。
注意がそれるのは、家族が声をかけたり、本人が他のことを考えたりした場合などに起こる。

強迫行為―――納得がいくまで、洗い直す。
患者さんの中には、自分で決めたルールがあまりにも複雑となり、理想通りに行うことが難しいために、やり直してしまう人もいる。
ルールの例としては、次のようなものがある。
・石けんが、タオルで十分に泡立っている。
・洗う順序が、細かく決まっている
・1カ所をタオルでこする回数が10回などと決めている人は、ルール通りにいかないと、また最初から10回行うので、やり直すほどに時間がかかり、本人も非常に疲れてしまう。

■解説
OCDでは、症状が重くなるほど、強迫行為を中断することが難しくなります。不完全なまま終えると、その後も、それがきっかけで、汚染が広がりそうな気がして、気が気でないためです。
そして、重症な人ほど、OCDに費やす時間も長く、非常に疲れるため、「もっと簡単に済ませたい」「強迫行為にかける時間を自分がやりたいことに使いたい」と思っているものです。

§5 まとめ


汚れや汚染の被害を恐れるのは自分に被害が及ぶということに限ったことではなく、家族や他の人にまで及んでしまうのではないかと気になるタイプの人もいます。
同じ「汚染/洗浄」のタイプでも、症状と現れ方の詳細は患者さんによって異なるものです。しかし、OCDの患者さんが、今回のコラムであげた例を読むと、部分的には似たような経験があると思う人も、案外多いのではないでしょうか。また、OCDの患者さんの家族や周囲の人は、手洗いの時間が長いというような場面を見ることがあっても、患者さんが浴室の中で何をしているのか、体を洗いながら、どのようなことを考えているのかはわからないことが多いと思いますので、今回の記事が参考になれば幸いです。


*汚染/洗浄、不潔恐怖のOCDについて、さらに知りたい人は、以下のコラムもお読みください。

第110回 これって強迫性障害? それとも、きれい好き? ③不潔・汚染
第121回 不潔恐怖・汚染/洗浄にまつわる悩み
第167回 潔癖性と強迫症(OCD)

**次回の「OCDでよく見られる症状をわかりやすく」のコラムは2019年4月、「被害/確認」のタイプを掲載する予定です。