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【私のOCD体験記】第15回 チェリーさん
感染・不潔恐怖の発症から寛解まで


2014年、OCDコラム第127、128回「OCD体験者座談会2014」に参加していただいたチェリーさん(40代女性)の体験記です。チェリーさんは、血液を連想させる赤いものや外の汚れが苦手なOCDを抱えていた女性で、そのくわしい内容を座談会で話してくれました。今回の体験記では、発症の頃から、診療を受け、症状が改善していくまでの過程を寄稿してくださいました。

目次
§1 不潔恐怖を発症したきっかけ
§2 受診に踏み切ったきっかけ
§3 治療を受けていた頃の体験
§4 これまでの感想や今後の抱負




40代主婦。血液を連想させる赤いものが苦手なOCDを抱えていました。


§1 不潔恐怖を発症したきっかけ

私が19歳くらいの頃、自宅に泥棒が何回か入ったことがあり、それが不潔恐怖、確認行動の始まりだった気がします。
泥棒が最後に入った時にタンスを荒らされて洋服が散乱しているのを見て、他人に家を汚されることをすごく汚いと感じました。それから自分のお気に入りの服や物は持ち歩くようになりました。
また、泥棒が家に入った時期と同じころに家に無言電話が何回もかかってくるようになりました。泥棒がまた家に入ってくるのではないかと恐怖を感じ、鍵がかかっているかドアノブを何度も回して確認しました。
この事件で精神的にかなりダメージを受け、それまでは比較的おおざっぱな性格だったのが、急に細かいことが気になるようになってしまった気がします。

それから少し経ったある日、ふとHIVに関するテレビ番組を見て「HIVって死んじゃうんだ、血液を介して感染してしまう怖い病気なんだ」と思い始めました。細かいことが気になるスイッチが急に入り、血液そのものと、血液を連想させる赤いものが駄目という症状に移行していきました。


§2 受診に踏み切ったきっかけ

20代の頃は、手にとった物に赤いものがついていたりするとたまに気になり、手を洗っていました。トイレの洋式便座も汚れていると気になり、拭いて、その後念入りに手を洗ったりしていました。少し潔癖症かなぐらいに思っていました。

しかし、20代の終わり頃から様子が変化していったと思います。当時、編集の仕事をしていました。主に病院と原稿のやりとりをしていたのですが、校正をしている時、原稿に赤や茶色に見えるシミや汚れを見つけると気になるようになりました。なるべく触らないようにしたり、触ってしまったらすぐに手を洗いに行きました。
汚れが気になり、作業のスピードが落ちていった気がしました。仕事なので仕方がないのですが、原稿を触ることが嫌になっていきました。そんな時、会社の先輩に「よく手洗いに行くよね」「なんか変だよね」と言われました。他の人にも変に思われていたことに気づき、このままではいけないと病院に行くことを決めました。


§3 治療を受けていた頃の体験

まず、赤いものが気になって触れなかったり、触ったら手を洗ってしまうことを電話で伝えて、診てもらえる病院を探しました。
色々な病院に行きました。お薬など何も出ず不安に感じたり、お薬を出してもらってもお薬が合わなかったり、お薬を服用してもお薬だけでは変化を感じられず、病院に行くことに疑問を感じてやめてしまったりしました。

治療をやめて1年ぐらい経ってから、症状がだんだんひどくなりました。主人から「病院へ行ったほうがいいんじゃない」と言われ、もう一度治療を始めることにしました。インターネットで調べて、精神科の診療所に行くことにしました。その診療所では、お薬の種類は最小限で処方され、認知行動療法という治療をスタートしました。
認知行動療法では、資料を用意していただき、強迫性障害のしくみなどを勉強しました。また、日常生活で何ができなくて困るのかを表にまとめて、恐怖の度合いを数値化しました。恐怖の度合いが低いものから、曝露反応妨害法の課題を進めていきました。

課題はまず、カウンセラーの先生と一緒に行い、その後、宿題として自分だけで行動していきました。私は不潔恐怖なので例えば、電車の手すりやつり革に何回もつかまってみたり、外が汚いと感じてしまうので、外から持ってきた物や外で使った所有物を自分が綺麗だと思っている物や場所に持ち込み、綺麗と汚いの垣根を崩していき、諦めるという感覚を何となくつかみました。

雑念は浮かんだままにして、今に注意を向けるために「マインドフルネス」という手法を教えていただきました。体や物質の感覚(手をあててお腹が動いている触覚、空が青い、マンションの壁が白いという視覚など)をあるがまま観察する。善し悪しや白黒の判断はつけないで、灰色のままにしておくものです。

三歩進んで二歩下がるくらいの自分に焦りやいらだち、落ち込みを感じましたが、カウンセリングに行ってお話をして、波があっても当たり前、他人とは比べないとお言葉をいただき、自分を何とか奮い立たせて、次第にハードルの高い課題にもチャレンジしていきました。
強迫的に気になっていたことが、だんだんどうでもよくなる感覚を覚えていきました。長い時間を要しましたが、卒業というお墨付きをいただきました。


§4 これまでの感想や今後の抱負

長い間強迫観念に支配され、何度も生きることに疲れ、涙し、消えてなくなりたいと思いました。ものすごい労力と時間を費やしてきました。本当に辛く苦しい日々でした。しかし、先生や周囲の支えと自分の日々の積み重ねでようやく自分を受け入れるようになりました。今の自分と歩き始めた感じです。

これからは家族や友人、ペットとの時間を大切に生きていきたいです。最近は懸賞に応募することにハマり、たまに届く当選通知や商品に喜びを感じています。夢は懸賞で海外に行くことです。
また今までの経験を活かしつつ、新しい趣味や仕事を見つけて、残りの人生を新しい自分と共に楽しんでいきたいです。

チェリーさんの体験が載っているOCDコラム
OCD体験者座談会2014(全2回)
第127回 Vol.1 不潔恐怖で意気投合 2014.10.20
http://ocd-net.jp/column/c_127.html
第128回 Vol.2 不潔恐怖と社会生活の両立 2014.11.20
http://ocd-net.jp/column/c_128.html