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OCDコラム

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不潔恐怖の患者さんに質問しました


OCDサポート、ももこころの診療所 有園正俊

強迫症/強迫性障害(OCD)によって、不潔や汚染が気になるタイプの症状を「不潔恐怖」と呼ぶことがあります。そのような患者さんに、どのような汚染物質が気になるのか、どのような強迫行為を行っているのか、家族関係への影響などについて、OCDサポート代表で、ももこころの診療所でカウンセラーとして活躍している有園正俊さんが調査しました。調査の結果を当サイトで発表することは、調査にご協力いただいた患者さん方には了承いただいております。



目次
§1 調査の目的
§2 回答者と調査方法
§3 汚染源として気になるもの
§4 不潔恐怖での強迫行為の状況
§5 家族関係への影響
§6 治療状況と今回の調査のまとめ



§1 調査の目的

OCDで、とらわれる対象となるものには、不潔・汚染、被害・加害、病気、宗教・縁起、数字、対称性など多岐にわたっており、不潔・汚染に対して強迫観念をもついわゆる不潔恐怖のタイプの患者さんは、OCDの中でも割合が多くなります。しかし、不潔恐怖の患者さんでも、どのようなものが過剰に気になり、どのような強迫行為をしているかは人によって異なります。そのようなOCDの現れ方は、国や地域によっても異なると思われますが、日本ではそのような調査がほとんど行われていません。そこで、不潔恐怖の患者さんの実状を数値で表せないかと思い、今回、調査を行いました。

§2 回答者と調査方法

回答者―――医療機関でOCDと診断され、現在、不潔、汚染に対して症状が現れている患者さんで、調査者が直接、面会した人たちです。家族のみの相談や、診断が定かでない人、治療によってそのような症状がほぼ消失した人は除きました。
回答を得られた人は15名(男性5名、女性10名)、年齢は17歳から64歳、平均43歳でした。
調査期間―――2018年9月16日-10月13日
方法―――回答者が質問票に記入。回答者のプライバシーに配慮し、同意のもとで行いました。

§3 汚染源として気になるもの

質問1 OCDのために他の人と比べ、汚い、もしくは危険だと過剰に思う項目に〇をつけてもらいました。汚い、危険だと思う度合いが、一般的だと本人が判断したものは除き、過剰に気にかかる項目すべてに〇をつけてもらいました。

結果1 その結果を図1に示します。回答が比較的多かった項目は「排泄物」、それ以外の人体から出る「分泌物・体液(汗、鼻水、つば、血液など)」でした。その他の回答として、特定の人や場所を挙げた人もいました。
排泄物やゴミは誰しも汚いと思いますが、不潔恐怖の患者さんの多くは、それが間接的に触れて、目に見えないレベルのものまで汚染されたように思えます。たとえば、誰かがトイレの後、きちんと手を洗わないで触れたドアノブやスイッチにも、トイレの汚れがついていると思うことがあります。地面の土が苦手な人なら、それと接触する靴、下駄箱、玄関の床もOCDの症状を引き起こすものになります。
不潔・汚染の対象となるものと患者数

§4 不潔恐怖での強迫行為の状況

質問2 不潔恐怖の患者さんに、強迫行為によって、日常生活で過剰に時間がかかる、もしくは頻繁に行ってしまう場面をうかがいました。

結果2 強迫行為は、質問1で答えた汚染物質によって、きれいにしておきたいものが汚染されないように洗浄や掃除などをすることです。それを行う場面についての回答を図2に示します。強迫行為として手洗いに時間がかかる、頻回であると回答した人が最も多く、15名中12名でした。次いで、洗濯、外出の前後の場面で強迫行為を行う人が7名でした。
強迫行為で時間がかかる、もしくは頻繁な場面と患者数


質問3 強迫行為によって、過剰に消費する日用品をうかがいました。

結果3 その結果を図3に示します。質問2の結果では、強迫行為として手洗いが多かったことに関連して、その際に使う石けんを過剰に消費するという人が最も多く15名中12名でした。ボディソープは、石けんとは別の項目にしています。次にティッシュペーパー、除菌ペーパーを強迫行為で過剰に使う人が8名と、比較的多かったです。
強迫行為で過剰に消費するものと患者数


質問4 その他に不潔恐怖によって、困っていることがあれば、それを100字以内で記述してもらいました。

結果4 主な回答に、「外出で気を使うので疲れる」「不潔なものに出合わないよう行動範囲が狭くなっている」「掃除、洗濯、買い物に神経を使い、気が休まらない」「外出しても家族と同じ行動ができない」「自宅に人を招けない」などがありました。文章は主旨を損ねない範囲で一部修正しています。

§5 家族関係への影響

質問5 OCDによって、家族関係に問題が生じているかを聞きました。

結果5 その結果を図4に示します。15名中、「問題ない」と回答した人は1名、「それほど問題ではない」が7名、「かなり問題になっている」が7名でした。家族への影響は、患者さんのOCDの重症度によって異なると考えられますが、今回の調査では重症度は聞いていません。精神科関係の通院期間もさまざまで、受診して間もない人から、ある程度治療が進んだ人まで含まれています。もし治療を受ける前の患者さんや、未受診の人に質問したら、回答の割合は変わっていたかもしれません。
OCDによる家族関係の影響[人数]


§6 治療状況と今回の調査のまとめ

今回の調査では、回答者全員(15名)が、現在、治療を受けていました。治療の内容は、薬物療法と認知行動療法の併用が9名、薬物療法のみが3名、認知行動療法のみが3名でした。治療がある程度進んだ人のなかには、質問1のOCDの症状を引き起こすものや質問2の強迫行為をする場面が、以前に比べ減った人もいましたが、その場合、現在でも残っているもののみを回答してもらいました。
また、OCDが寛解し、認知行動療法が終了に近づいた段階の人や、認知行動療法が終了し薬物療法のみを再発防止のために続けている人は、今回の調査対象から除いています。
OCDは、適切な治療を受ければ、改善が可能な病気ですので、調査結果と同様の症状を抱えている人でも、その希望を失わないでほしいと思います。

今回、調査に協力していただいた皆さんに、心から感謝いたします。


*不潔恐怖での症状の具体的な内容は、次のコラムをよろしければ参考にしてください。
第127回「OCD体験者座談会2014(前編) Vol.1不潔恐怖で意気投合」
第128回「OCD体験者座談会2014(後編) Vol.2不潔恐怖と社会生活の両立」
第83回「OCDの患者さんの日常―こんなこともあるよね!」§2 お風呂も、つらい!