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OCDコラム

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わかりやすいOCD講座 4
「もしもの不安」の特徴を知る


事故や病気など「もしも」の事態に備えて、用心しようと考えることは誰にでもあります。しかし、強迫症/強迫性障害(OCD)の患者さんは、「もしも」に対する心配が過剰になり、それにとらわれてしまうことがあります。どこまでなら通常の用心で、どこからがOCDなのか、患者さんにはわかりにくいことがあります。今回のコラムでは、OCDの人が抱きがちな「もしもの不安」の特徴について解説し、それに気づくポイントを紹介します。


目次
§1 OCDは明らかに過剰
§2 感情と実際とがかけ離れる
§3 疑念が浮かんで安心が得られない
§4 あせって情報を検索すると逆効果



§1 OCDは明らかに過剰

強迫症/強迫性障害(OCD)の患者さんが、「もしも」の場合を想像して気にしていることを、OCDではない人は、どのように思っているのか、それぞれ例を挙げて考えてみましょう。
ただし、ここで取り上げた例は、それぞれのタイプの一例であって、すべての人が同じように考えるわけではありません。また、OCDでも、事故は気になるが、汚れは気にならないというように、人によって気になる場面が異なるため、ここではそれぞれの事柄に対してOCDの症状が生じるかどうかで区別しました。

例1 「重い病気」に対して
がんや心臓病、脳卒中のような重い病気になることは、誰しも恐ろしく避けたいものですが……

【ポイント1】
OCDの患者さんが行う「もしも」の事態を防ぐための手段は、現実的には意味がなかったり、想定される不安に対して過剰という面がありますが、本人はどうして意味がないのか、どこからが過剰なのか、わかりにくい場合があります。
しかし、OCDと既に診断がついている人でしたら、「この考えはOCDなのかどうか?」と迷っていることは、たいていOCDの症状だと思って、その考えにとらわれないようにするといいのです。

§2 感情と実際とがかけ離れる

例2 「電車のつり革や手すり」に対して
誰もが明らかに汚いものには触れたくないと思いますし、汚れは遠ざけておきたいと考えるものですが……

★解説
強迫観念として気になる「汚れ」は、実際にあるものというよりも頭の中で思うこと(考え)です。頭の中で「汚れ」のレッテルを貼って、それが広がることを想像し、頭の中に嫌な感情を生みだします。
一方、同じ状況でも強迫症状が生じない人は、視覚、触覚などをはじめとする五感で確認し、特に「汚れ」を感じなければ、それ以上は意識しません。その場合、つり革や手すりは、いかなる感情も生じさせるものでなく警戒する必要がないものです。
強迫症状が生じる患者さんにとっては、頭の中で嫌だ、不安、苦痛といった感情が強いため、強迫行為をして、そのような感情を打ち消したくなってしまうのです。

【ポイント2】
OCDの患者さんとそうでない人との違いは、不安に代表される感情の強さです。しかし、感情によって判断したことと、実際の状況とはかけ離れていることが多いのです。つり革や手すりそのものは、汚れに敏感に反応する人が使ってもそうでない人が使っても、そのときの状態に変わりはありません。

§3 疑念が浮かんで安心が得られない

例3 「戸締り」に対して
誰もが泥棒や火事などの被害には遭いたくないと思っていますが……

【ポイント3】
不安や恐怖、不確かでモヤモヤするなどの嫌な感情が強いと、「これで大丈夫か」という疑念が生じやすくなります。ここで、100%確かな感覚を求めると、強迫行為になってしまうので、あいまいな感覚のままを受け入れられるといいのです。

§4 あせって情報を検索すると逆効果
「もしも」のときの不安は誰にでもあります。だからこそ「もしも」が現実に起こらないために防止したり、安心をもたらすための商品やサービスは数多くあり、それらに関連する情報や宣伝を目にする機会もたくさんあります。

しかし、OCDの患者さんが、「もしも」の不安を解消するために情報を探した結果、逆効果になることがあります。患者さんの危機感を増長させる情報に出合ったり、情報を真に受けて悲観的に考えてしまうなどの悪影響が起こることがあるからです。すると、否定的な感情が生じて客観的な判断が難しくなります。

OCD患者さんの「もしも悪いことが起きたら」という心配は、他の人から見れば、心配するほどの明らかな根拠がないことも多く、「実際に明らかになってから、心配したら」といわれることもあります。しかし、OCDの患者さんは「それでは手遅れになってしまう」とつい反論してしまうようです。
つまり、OCDが重い患者さんほど、それだけ精神的に追い詰められていて、余裕がないことがわかります。これも、OCDの特性の1つで、脳の中の病気がもたらしているのです。

嫌な出来事は起こってほしくはありませんが、OCDという病気も、それらに負けず劣らず厄介なものです。OCDかどうかの判断に迷ったときは、自分だけで心配事を抱えずに、他の人に話してみてください。

一般的にOCDの患者さんは、【ポイント1】【ポイント2】【ポイント3】を意識して、強迫行為を減らそうとしても、なかなか実行は難しいかと思います。しかし、最初からうまく行かなくても、少しでもOCDの誘惑に逆らうことを試みてください。それが悪化を防ぐことにつながります。また、独力での改善が難しいと思ったら、その現実も受け入れて、根本的に改善を目指し、症状に合った医療機関を探していただければと思います。