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石﨑優子先生インタビュー(全2回)
Vol.2 ~家庭や学校での対応

関西医科大学
総合医療センター
小児科診療部長 教授
石﨑 優子先生


OCDのお子さんは、几帳面な性質がほかのお子さんよりも強く出ているだけ、と語る石﨑優子先生。几帳面さを長所として伸ばし、将来につなげるためには、家庭での接し方や、学校側と協力関係を築くことが大切です。今回は、そのためのポイントをうかがいました。


目次
§1 巻き込まれないために、上手にやり過ごすことも大切
§2 学校生活において周囲の理解を得るために
§3 一人で悩まないで相談を



§1 巻き込まれないために、上手にやり過ごすことも大切

●家庭でOCDのお子さんに接するとき、気をつけることがありましたら教えてください。


石﨑:前回お話しした通り、子どものOCDは強い症状が何年も続くことは、あまりありませんから、抑えつけないでいただきたいと思います。強い症状は長く続かないということを理解し、見て見ぬ振りもしながら上手にやり過ごすようにします。
ただ、几帳面な性格は遺伝することが多く、OCDのお子さんのお母さんやお父さんも強迫の傾向がみられるため、お母さん自身、お父さん自身が、子どもに「やめなさい」といわずにいられないということもあります。
子どもの強迫行為が気になって仕方がないというときは、そのことに集中しないように、保護者自身が、気晴らしや別のことに気をそらす行動を取るように心がけましょう。周囲が巻き込まれてしまうと、改善に時間がかかる傾向があります。
保護者にも強迫の傾向があって自分自身がつらい場合は、できれば子どもと一緒に治療を受けるようにしましょう。

●強迫行為のために、登校の準備などに時間がかかってしまうことに頭を抱えている保護者が多いようです。


石﨑:そのような悩みはよく聞きますが、保護者の方には時間に余裕をもって行動させるようにと、お伝えしています。たとえば、登校前にランドセルの中身を何度も確認して、なかなか出かけられないという場合、「早くしなさい」というのではなく、確認に10分かかるなら20分前から準備を始めるように促してみましょう。保護者も一緒に、楽しみながら確認するのも有効です。
時間に余裕をもつことであせる気持ちがおさまり、子ども自身も保護者も楽になれます。




§2 学校生活において周囲の理解を得るために

●お子さんの強迫症状について、学校にはどのように伝えればよいでしょうか。


石﨑:意外に思われるかもしれませんが、学校では強迫行為を我慢しているお子さんが少なくありません。そのような場合、学校の先生は強迫行為に気づいていないため、保護者が相談しても、「学校では問題ありません。大丈夫ですよ」と取り合ってもらえないこともあるようです。
そのようなケースのお子さんでは、学校で我慢している分、家で症状が強く出てしまうこともあります。
しかし、学校で症状が出なくても、登校前、強迫行為のために確認に時間がかかり、遅刻をしてしまうなど学校生活に支障が出ることもあります。先生には、その子にどのような症状があり、家でどのようなことに困っているのかを具体的に伝えましょう。
その上で、学校生活を円滑に送るための配慮をしてもらいましょう。たとえば、登校前の確認で時間がかかってしまうことを先生が理解していれば、「ちょっと遅れても後ろの扉から静かに入ってくればいいよ」と、子どもにいってもらえるかもしれません。

●OCDという病気に対する学校側の理解は進んでいるのでしょうか。


石﨑:現状では、OCDという病気があることを知らない先生が大半だと思います。学校の先生に、子どもの症状について話す際には、OCDとはどのような病気かというところから説明する必要があるでしょう。
OCDのお子さんのなかには、学校で強迫行為が出てしまうことを恐れ、不登校になってしまう子もいます。その背景にOCDという病気があることを理解してもらえないと、単なる不登校として扱われてしまい、適切なサポートを受けにくくなります。そのようなことを避けるためにも、学校にはOCDについてよく理解してもらう必要があります。

●学校の環境がOCDに影響することもあるのでしょうか。



石﨑:物事をきちんとする几帳面な性格の子は、目標に向かって真面目に取り組みます。
頑張って目標を達成したら、また次の目標を与えられて、さらに頑張らなくてはいけないというようなサイクルのある環境、たとえば、進学校や強豪の運動部などでは、志望校合格や県大会優勝などの目標を達成するために先生たちも一生懸命です。子どものほうも先生を含めた周囲の目を気にするため、OCDに拍車をかけやすくなるといえるかもしれません。

§3 一人で悩まないで医師に相談を

●最後に、OCDのお子さんや保護者に向けてメッセージをお願いします。


石﨑:このサイトを読んでいるお子さんたちのなかには、「自分は変なのではないか」と感じ、自分自身を責めている人もいるかもしれません。もしそうなら一人で悩まず、私たち医師に相談してください。
そして、「お母さんが明日、虫になっていたらどうしよう」「宇宙人の子どもを生んでしまったらどうしよう」などの考えが頭から離れず困っていると、ありのままを話してください。

なぜそんなふうに考え、小さなことが気になってしまうのか、子どものOCDについて正しく理解すれば、自分は変ではないということがわかり、不安がやわらぎます。
症状が強いときは、一時的にお薬の力を借りて落ち着かせることもできます。

OCDは、「不安障害」という病気と近い病気です。保護者の方には、患者である子どもさんは、強迫的な考えにとらわれている自分を「変な子」だと思い込んで、誰にもいえず悩んでいることがあるということをわかっていただきたいと思います。
子どものOCDは、物事をきちんとするという能力が育ってくるときにあらわれる一時的なものが多いので、過度に押さえつけず、適切に方向付けしてあげれば、将来、几帳面で間違いのない仕事をして、人から信頼される大人に成長します。成長期のいま、たまたま几帳面さが強く出ているだけだと理解して、うまく導いてあげましょう。

OCDはASD(自閉症スペクトラム)に伴って発症することもありますが、その場合も上手にコントロールすれば社会生活を問題なく送ることは可能です。
「几帳面な性格は人生の“宝物”」、OCDのお子さんと保護者の方に、私がいちばん伝えたいのはこの言葉です。