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OCDコラム

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対人関係とOCD


強迫症/強迫性障害(OCD)の人は、強迫行為をしているところを、できることなら人に見られたくないと思います。OCDの症状が重くなり、自宅にひきこもるようになると、他人に見られるという制約がなくなるため、かえって強迫行為に費やす時間が増えてしまうという悪循環になることがあります。一方で、対人関係はOCDに影響することもあります。人との交流や注目を浴びる場面が苦手なことから、社交不安症を併存することもあります。今回のコラムでは、このような対人関係がOCDに与える好影響と弊害についてまとめました。


目次
§1 強迫行為は人目を避けて行いたくなる
§2 不安があっても人との交流を
§3 対人関係もOCDも嫌なことが気になる



§1 強迫行為は人目を避けて行いたくなる

OCDが発症するときには、何らかのきっかけによって、次にあげるような嫌な考え、感情がなかなか治まりにくいという体験をします。


このような感情や考えが頭に浮かんだときに、自分なりの方法で何とか解決しようと考えることがあります。自分なりの方法で解決して、それが一過性で済めばいいのですが、OCDを発症すると、警戒感を完全になくすことが難しいため、再び自分なりの方法で解決したくなるのです。そのようなことを繰り返していくうちに強迫行為となっていきます。

強迫行為は、本来は自分だけでこっそり行うものです。強迫行為をしている姿を他人に見られたら、奇妙に思われると考え、通常、人目を避けて一人で行います。自分一人で対応しきれないときには、家族を巻き込むことはありますが、一般的な強迫行為は、多くの人に見られる場所では行いにくいものです。

そして、OCDは、重度になるほど、強迫観念や強迫行為に逆らうことが難しくなり、学校や職場に遅刻することが増え、休みたくなることがあります。だからといって、時間通りに予定をこなすことをあきらめて、強迫行為をやりたいだけやってしまうと、OCDをさらに悪化させるということになります。一人で自宅にいる時間が長くなれば、OCDを悪化させることにもなりかねません。だからこそ、OCDになってもできるだけ学校や職場に通い、他者との関わりを保てるといいのです。

§2 不安があっても人との交流を

OCDの人は、通常、汚れがつかないか、大事な物をなくさないか、自分や周囲に危害が及ばないかなどを警戒します。さらに、学校や職場、買い物など他人と関わる場面では、もともとの警戒に加え、強迫行為をしているところを他人に見られるのではないか、途中で妨害されるのではないかという警戒をする人もいます。

なぜ、このようなことにこだわってしまうのかということを、周囲の人に説明するのが難しいのもOCDの特徴です。たとえ話したとしても、理解されないのではと心配すると多くのOCDの患者さんがいいます。そのような理由もあり、他人との関わりを避けたくなることもあるかと思いますが、OCDの悪化を防ぐためにも、できるだけ避けないでほしいのです。

友人など人との関わりが、症状の改善に役立つことがあります。
学校や職場に通えなくなっても、友人が「様子はどう?」、「治療を頑張れ!」と折々に連絡をくれたことが、治療を続けていくモチベーションにつながったという人もいます。家族との会話がうまくいかなくなっていても、友人となら建設的な話し合いができる場合もあります。
また、子どもの場合は、成長の時期に応じて交友関係や社会性を学習していくことが大切です。そのためには、自宅にこもらずに、学校や地域で、できるだけ同級生や先生と関われる機会を保つといいでしょう。

§3 対人関係もOCDも嫌なことが気になる

対人関係で嫌なことがあると、普段よりも強迫行為をコントロールすることが難しくなるという人がいます。また、嫌いな人がさわったものが汚く思えて、洗浄の強迫行為をしてしまうという人もいます。このように、対人関係は、日々の強迫行為に影響することがあるのです。

また、OCDの症状が重いときは、強迫行為にとどまらず、友人との会話や買い物で商品を選ぶときなど、ささいな行動でも自分の行為に自信がなくなることがあります。そのため、会話やメールの後に、相手から言われたことや、自分の言葉で相手に嫌な思いをさせなかったかとずっと気になってしまうのです。相手がどう思ったかを想像するうちに、いろいろな可能性が考えられるようになります。悪い方向で想像していくと、否定的な感情も強くなり、ますます気になるという悪循環にはまります。

他人がどう思うかは、自分の頭の中でいくら考えても解決できるものではありません。そのような考えは、そのままにして、ほかのことに注意を向けるようにしていけるといいでしょう。
OCDの患者さんのなかには、元々、緊張や不安感を抱きやすい人がいます。そのような人は、学校や職場で、多くの人を前に発言するなど注目される場面では、緊張が強くなります。人前で話すことが苦手ということが高じて、対人場面での緊張や不安が強くなり、学校や職場での生活に支障が繰り返し生じると社交不安症(*1)と診断されることがあります。OCDで、社交不安症を経験する人は、ある一定の割合でいます。

OCDも社交不安症も、嫌なこと、苦手な場面に敏感となり、回避や自分なりの方法で対処行動が繰り返されてしまう病気です。そのため、基本的な治療方針は似ていて、いずれも基本の治療法は、薬物療法(SSRIが使われることが多い)と認知行動療法です。そして、OCDも社交不安症も適切な治療によって改善が可能です。


*注釈
*1 社交不安症―――社交的な場面、人からの注目を浴びそうな場面で、緊張や不安が過剰となり、支障をきたす精神疾患。社交不安障害(SAD)とも呼ばれています。第68回OCDコラム「OCDと社交不安障害(SAD)」で取り上げています。