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OCDコラム

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潔癖性と強迫症(OCD)


過剰に汚れを気にする人、非常に掃除や洗浄のやり方が細かい人を、一般的に、潔癖性(症)ということがありますが、この呼び名は病名ではありません。しかし、潔癖性と自覚している人のなかには、強迫症/強迫性障害(OCD)と診断される人も含まれると考えられます。今回のコラムでは、潔癖性とOCDとの違いと、どのような場合に診療が必要となるのかについて、まとめました。


目次
§1 潔癖とOCDとの違い
§2 診断基準から考えるOCDの特性
§3 不潔が気になるOCDのその他の特徴
§4 早期受診が必要かどうか



§1 潔癖とOCDとの違い

潔癖という言葉から、皆さんはどのようなことをイメージしますか。


これらのイメージのなかには、OCDの人でも当てはまることが多いと思われるものと、そうではないものとがあります。
潔癖の意味として、三省堂の大辞林では、「わずかな不潔でも許さない性質。きれい好き。」とあります。潔癖とはそのような様子や性格を表す言葉です。潔癖の度合いが高じて病的なものになると、潔癖症とか不潔恐怖と呼ばれることになりますが、これらは医学的な名前ではありません。そのため、潔癖に対する定義も定かではありません。

OCDは、性格ではなく人生のある時点から発症した病気です。したがって、国際的な診断基準(*1)によって、どのような症状がどのくらいあればOCDという病気であるかが定義されています。

また、元々の性格が、潔癖、几帳面、強迫的、完璧主義である人もいます。周囲の人との関係や学業、仕事に支障がなければいいのですが、ときに問題が著しくトラブルをもたらすことがあります。その場合、強迫性パーソナリティ障害発達障害が疑われることがあります。

§2 診断基準から考えるOCDの特性

どのような症状がみられるとOCDなのか、「DSM」という診断基準に沿って解説します。

1.強迫観念による精神的な苦痛が生じる
OCDでは、汚れを見つけてしまうと、嫌な考えが何度も頭をよぎるという強迫観念が生じます。そんな嫌な考えを取り除くため、掃除や洗浄という強迫行為をやらざるをえない心境に追い込まれます。
きれいにすることが好きで、自分の意思で時間をかけて掃除を行っている人は、OCDとはいえません。






2.コントロールが困難
OCDでは、症状が重いほど、強迫行為を回避することが難しくなります。後回しにするなど、融通をつけられなくなるのです。
時間がないなどの理由で、いつものように掃除ができないことで、不快と感じる人はいます。しかし、「できるときにすればいい」と考え、苦もなく後回しにすることができたら問題ありません。
OCDの人では、強迫行為を後回しにしたことで、汚れを拡散してしまわないかという強迫観念にかられやすくなります。

3.日常生活、社会生活に支障をきたす
掃除や洗浄にかける時間を確保するため、自らの意思で、ほかのことをする時間を減らすということは、OCDの人に限らずあることでしょう。このことで、生活全体としては支障がなく、誰にも迷惑をかけていなければ、問題ありません。しかし、OCDでは、日常の動作、学業、職業、家事で、本来の自分の能力を発揮できず、どこか不本意な感じがすることがあります。

4.行為にかかる時間だけでは判断できない
OCDの診断基準では、「強迫観念や、強迫行為によって浪費される時間の1日の合計が、1時間以上である」ことが目安となります。入浴や掃除に1時間以上かけても、その間ずっとOCDに襲われているわけでなければ、この基準には当てはまりません。入浴が好きな人、仕事で清掃をしている人が、1時間以上かけることがあるためです。OCDかどうかは、このような行為に、上記の1~3がどのように関係しているかが判断のポイントになります。
また、ほかの精神や身体の疾患が影響して、行為に時間がかかる場合もあるので、医師が総合的に診て判断します。

§3 不潔が気になるOCDのその他の特徴

1.特定の場所だけ気になる
OCDに限らず、潔癖な人では、トイレの汚れなど特定の汚れは気になるが、それ以外の場所の汚れに対しては、さほど気にならないことがあります。
しかし、OCDが重症になると、その度合いが極端で、汚れが気になる場所の洗浄や入浴やトイレに費やす時間とエネルギーが増す分、ほかのことをする余裕がなくなり、かえって片付かない場所ができてしまうことがあります。また、強迫行為によって非常に疲れてしまうので、入浴やトイレもできるだけ避けるようになり、家事や社会参加をしないで過ごしてしまう場合もあります。




2.汚れにさわっただけで移ると思ってしまう
OCDで、目に見えない汚れや汚染物質が気になる人では、手や物がふれただけで、そこから汚れが移り、手を洗わないまま、別の物にさわると、また汚れを拡散してしまうと思うことがあります。その結果、汚れた場所を放置できずに、警戒感をもつという特徴があります。

過去のコラムでも、この話題を取り上げていますので、参考にしてください。
第110回「これって強迫性障害? それとも、きれい好き? ③不潔・汚染」





§4 早期受診が必要かどうか

潔癖性の人もOCDの人も、自らの掃除などの行動に対して、おかしいと思っているかどうかは、人によって異なり、個人差が大きいものです。元々、潔癖な性格の人は、自分の掃除のやり方が人とは違うと気づいていても、おかしいと思わずに自分のやり方こそが正しく丁寧だと思う人もいます。
だからといって、潔癖な性格が高じて、OCDに至る割合はそれほど高くありません。したがって、潔癖だと自覚するすべての人が、OCDの予防のために早期受診をする必要はありません。そもそも、自分の行為を問題と思っていない人に、周囲が受診を求めても、それは難しいと思われます。

治療を受けるかどうかは、洗浄行為や掃除などに時間をかけ、過剰に行っているかだけではなく、その行為をする動機やしているときの心境によります。
受診や相談の対象となるのは、本人に精神的な苦痛があり、日常生活や学業、仕事、家事への支障もあり、そのことについて、本人もしくは周囲の人が問題だと思っている場合となります。


*注釈
*1 診断基準―――精神疾患は、その症状から国際的な診断基準に沿って、診断、分類されます。主に、アメリカ精神医学会によるDSMと、国連の世界保健機構(WHO)によるICDが用いられます。診断基準については、第115回「OCDの診断基準が変わった?!」をご覧ください。