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第162回 注意欠如・多動症(ADHD)とOCD


注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)は、発達障害の一つで、比較的患者さんが多いといわれています。ADHDの人が、二次的に強迫症/強迫性障害(OCD)を発症することは少なくありません。今回のコラムでは、ADHDとOCDの二つの症状を併せもつ場合にみられる特徴とその対処についてまとめました。


目次
§1 発達障害とADHD
§2 OCDとの関連
§3 ものが多くて片付かない
§4 ADHDの診療



§1 発達障害とADHD

発達障害は、主に脳神経の先天的な要因によって、他の人が問題なくできることが困難になってしまう障害です。代表的なものには、自閉スペクトラム症とADHDがあります。
ADHDの症状は、主に次のような特徴をもっています。

じっとしていることが苦手な子どもはたくさんいますし、多少のうっかりミスや忘れものはするでしょう。だからといって、皆さんがADHDというわけではありません。
ADHDと診断されるのは、12歳になる前から、このような特徴が同年齢の人に比べて、極端に目立ってみられる場合です。

ADHDにみられる特徴は、本人の知識や理解力の問題ではなく、反抗心によって意図的に行われているものでもありません。また、特定の1つの場所になじめず集中力が続かなくても、他の場所で問題がなければ対象となりません。「家庭と学校」「家庭と職場と趣味の集まり」など複数の場所で、このような気質の特徴によって、活動に支障をきたしている場合にADHDが疑われます。


§2 OCDとの関連

ADHDの有病率は、子どもの約5%、成人の2.5%といわれています。また、ADHDの約半数の人が、他の発達障害の症状である自閉スペクトラム症を併存しているともいわれています。

ADHDによって、うっかりミスや忘れ物が多かったり、他の人がスムーズにできる作業ができなかったり、自分には難しいと感じてどうしたらいいか戸惑うことが多いと、不安を抱きやすくなり自信も失いがちです。
また、何度もミスをしている自分を他人はどう思っているのかが気になったり、注意されても改善できないため、先生や上司から何度も怒られてしまうことがあります。これらのケースでは、対応に困ったあげく、2次的に抑うつや社交不安(対人恐怖)の症状が現れる人もいます。

OCDの人がADHDをもつ人の割合は、海外では18歳以下の子どもを対象にした報告が非常に多くありますが、調査方法が一貫しておらず0~60%の範囲でさまざまな値がみられます。また、18歳以上の成人の調査は、子どもの場合ほど多くはありませんが、0~23%の範囲で値がばらついています。ADHDの人がOCDを発症するには、次のようなことが影響を与えると考えられます。


§3 ものが多くて片付かない

自宅にものが多く、片付けられなくて困っているADHDの人は少なくありません。




このような状態に加え、OCDを発症すると、散らかった部屋のどこかに、大切なものが紛れていて失くしてしまわないかという不安が生じ、ものを捨てるときに確認を過剰に行うようになります。また、片付けを人に任せることができなくなります。




§4 ADHDの診療

ADHDのような発達障害の診断や治療は、発達障害を専門的に行っている機関を探して受診する必要があります。

◆診断
診断には、ADHDの症状が12歳以前にみられたかを確認する必要があるため、親(もしくは当時の養育者)との面接を行います。
専門的な心理検査の一つとして、知能検査を行う医療機関も多く、それによって言語理解、知覚情報の統合、作動記憶、処理速度などの傾向を調べることができます。
そのような検査の結果から、患者さんは自分の精神的な特性を知り、困ったときの対処法についても教えてもらうといいでしょう。

◆治療~薬物療法
ADHDは、脳の神経伝達物質であるアドレナリンとノルアドレナリンが関係していると考えられているため、治療には、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるアトモキセチンが用いられることがあります。アトモキセチンは、注意力の欠如、多動や衝動性の改善効果が期待できます。また、精神刺激薬であるメチルフェニデートもADHDの治療薬として認められています。

◆治療~認知行動療法
2次的なOCDについては、曝露反応妨害という技法が中心となります。
ADHDの症状に対しても、認知行動療法が行われますが、ADHDの症状である集中力や作動記憶を根本的に高めることは困難です。むしろ、問題が起きている状況を分析して、コントロールできる部分を探していきます。ADHDの特性を踏まえ、問題が起きにくい仕組みづくりを考えていきます。ただ、強迫行為によって過剰な動作が多い人は、そのような動作を認知行動療法によって減らしていくことで、その動作に伴う作動記憶も減っていくため、作業全体では記憶がスムーズになることがあります。

例1 問題:スケジュール管理が苦手で、約束の日時を守れないことが度々ある人
対処:スケジュールは、必ず1カ所(手帳、カレンダー、携帯電話・スマートフォンなどの電子機器)に記録します。
それ以外のところに「とりあえずメモする」ようなことはしません。
そして、毎日、必ず1回は、スケジュールを見ることを習慣とします。
例2 問題:集中力が続かない人
対処:注意の持続時間を測定し、それに合った作業スケジュールを立てられないかを検討します。
例3 問題:整理整頓が苦手で、室内が散らかっている人
対処:患者さんにあった分類方法を考え、それぞれのものの置き場所を決めます。
普段よく使うもの、大事なものを使い終わったら、必ず決めた場所に戻すようにします。
さらに、使わないものは、保管するのか、処分するのかを判断する基準を一緒に考えます。

◆就労支援
本人の職業適性を調べ、職場での精神的な負担ができるだけ少なくできないかを医師や心理士などと相談します。
たとえば、ADHDの人のなかには、業務内容が多岐にわたり忙しい職場や、多くの客やスタッフへの対応を求められる職場では、ミスが頻発することがあり、精神的な負担が大きくなる人がいます。一方で、工場や倉庫のような変化の少ない職場で、単調な作業を地道に続けることが苦手な人もいます。
患者さん一人ひとりの特性を踏まえ、職種選びや環境の調整を行います。


*発達障害についてのこれまでのOCDコラム
第135回 OCDとの併存が多い発達障害②
http://ocd-net.jp/column/c_135.html
第82回 OCDとの併存が多い発達障害
http://ocd-net.jp/column/c_82.html

*参考文献
[1] American Psychiatric Association[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修] 、2014年、「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院
[2] Amitai Abramovitch, Reuven Dar, Andrew Mittelman, Sabine Wilhelm: Comorbidity Between Attention Deficit/Hyperactivity Disorder and Obsessive-Compulsive Disorder Across the Lifespan: A Systematic and Critical Review,Harvard Review of Psychiatry. 2015 Jul; 23(4): p245–262.
[3]齊藤万比古、樋口 輝彦[監修] 、2013年「成人期ADHD診療ガイドブック」じほう