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第161回 子どもとOCD


強迫症/強迫性障害(OCD)は、子どもの頃に発症する人が少なくありません。子どもの場合、成長の過程で脳と精神の発達の度合いがOCDという病気に影響することがあります。今回のコラムでは、子どもとOCDについて、その特徴と診療についてまとめました。コラムの最後に、過去のOCDコラムで、子どものOCDについてまとめたものをリンクしていますので、併せて読んでいただければと思います。


目次
§1 子どもの頃から発症する人が少なくない
§2 発達段階による影響
§3 発達の問題が影響することもある
§4 OCDの診療と生活
§5 子どもに関連した過去のOCDコラム



§1 子どもの頃から発症する人が少なくない

OCDは、10代から20代で発症する人が多い病気です。しかし、それよりも早く、小学生くらいから強迫症状をもつ人もいます。発症後、短期間でOCDが悪化し、診療が必要になる人がいる一方、症状が現れたり、自然に軽減したりを繰り返しながら成人する人もいます。そのため、成人の患者さんに、OCDの発症年齢を聞くと、「今から思えば、小学校の頃、手をよく洗っていた時期があった」というように、後になって気づくことがあります。

OCDは、子ども専用の特別な診断基準があるわけではありません。症状は強迫観念と強迫行為です。症状のあらわれ方は、大人とよく似たタイプの子どももいます。


しかし、子どもの場合は、年齢によって、語彙数、表現力、考え方の発達状況が異なり、どのくらい成長しているかによって、症状のあらわれ方にも違いがみられます。
つまり、幼い子どもほど、表現の方法が少ないため、それがOCDにも反映します。そのため、強迫観念の内容が漠然として、不安を感じる範囲が広がってしまうことがあるのです。


§2 発達段階による影響

言葉による表現や考え方は、脳による能力(精神機能)によるもので、年齢とともに発達していきます。そのほかにも、年齢とともに発達する精神機能には、着替えや入浴のような生活の動作、運動、読み書き・計算などの知的な学習、他人と関わること、欲望や感情のコントロールなど、さまざまなものがあります。

精神機能の発達は、大きく次の3つの段階に分けられます。


年齢を重ねるごとに、それぞれの時期に応じた能力を身につけながら、学校や集団生活に適応できるようになります。しかし、うまく適応できないこともあり、そのようなことがOCDのような精神の症状にも関連すると考えられます。
児童期から思春期に移ると、次のことが、OCDの発症に影響することがあります。

1.思春期では、友だちとの関わりや学校生活が児童期と変わるが、その変化にうまく適応できず、孤独感や劣等感に悩まされる。
2.思春期になると、自分と他人との違いが気になるため、体型への劣等感、毛深い、傷跡がある、ニキビ、体臭など身体のささいな違いにとらわれやすくなる。 それらが気になり、何度も確認したり、過剰に洗浄したり、自分独自の解決法を行ううちに強迫行為へと移行することがある。
3.いじめによって、緊張や警戒心が強い状態が続いてしまい、いじめっ子を連想させるものを過剰に避けたり、強い嫌悪感から過剰に手洗いなどをするなど、OCDに影響する場合がある。
4.思春期は、自分らしさに気づき、思考が論理的になり、自分の内面と外の世界との関わりが変化していくが、「自己」が発達途上であるこの時期にOCDを発症すると、強迫観念の内容が現実のことなのか、非現実なのかと混同しやすいことがある。

子どもの頃に、精神の病気を発症した場合、大人ほど症状の特徴が明確でなく、他の病気との区別が難しいことがあります。また、子どもの場合、家族や医師に、頭に浮かぶ強迫症状をうまく言葉で伝えることができないこともあります。

§3 発達の問題が影響することもある

OCDの発症年齢が低いほど、発達障害や発達障害と診断されるほどではなくてもそのような傾向を部分的にもっていないかが、疑われることがあります。
調査によってばらつきがありますが、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などの発達障害をかかえている人のうち二次的にOCDを発症する人は、ある一定の割合でいます。
自閉スペクトラム症でのこだわり、嫌な感覚に対する敏感性、物事を白か黒かの極端にとらえやすいなどの特性は、OCDにつながりやすい面といえます。

また、注意欠如多動症の人では、ほかの人が問題なくできることでもうっかりミスしやすいという特性があり、そのため不安を抱きやすかったり、確認が過剰になってしまったりと、OCDにつながることがあります。

そのような症状は、発達障害による症状かOCDによる症状か、区別が非常に難しい場合があります。

発達障害のお子さんは、学校への適応や友だち付き合いなどが苦手で悩みをかかえやすい傾向があります。発達障害の正確な診断には、専門的な検査を行っている施設への受診が必要となります。検査によって、発達障害かどうかという診断を知るだけでなく、言葉を使う能力、視覚的な判断、処理スピード、作業記憶などの精神的な特性で、どこが得意で、どこが不得意かを知り、その対処法を具体的に教えていただき、学校や将来の社会生活を送るなかで役立てていけるといいのです。

§4 OCDの診療と生活

精神科には、児童や思春期を対象としている診療科や専門外来があります。そのような医療機関の医師は子どもの精神疾患の治療経験が豊富です。また、発達と適応の問題をかかえた患者さんも多いため、発達障害の専門検査を行っている機関もあります。

現状では、子ども専門の精神科では、OCDに対しては薬物療法が治療の中心になっています。

子どもを対象にした認知行動療法などの精神療法を行っている施設はまだまだ少ないのが現実です。子どもに認知行動療法を受けさせたいと思う保護者は、一般向けの精神科のなかからOCDに対し専門的な治療ができる医療機関やOCDへの認知行動療法ができる心理士を医師に紹介していただくか、自分で探すかの方法が考えられます。

子どもは、体も精神も成長し続けています。ですから、病気を抱えていても、できるだけ学業や運動、交友関係を継続させていくことが大事です。
OCDが重くても、不登校という事態はできるだけ避けましょう。学校に行けない場合も塾やフリースペースなどに通い、家族以外の人たちとの接点をもてるといいでしょう。

§5 子どもに関連した過去のOCDコラム
これまでのOCDコラムの中から、子どもに関連したものをご紹介します。参考にしていただけたらと思います。

第118~120回
「OCD金生由紀子先生インタビュー」(2014年1月、2月、3月)
子どもとOCDについて、くわしく紹介しています。
http://ocd-net.jp/column/c_118.html
http://ocd-net.jp/column/c_119.html
http://ocd-net.jp/column/c_120.html

第138、139回(2015年8月、9月)
「齊藤万比古先生インタビュー」
ひきこもりに至るまでの思春期、青年期の心理が書かれています。
http://ocd-net.jp/column/c_138.html
http://ocd-net.jp/column/c_139.html

第116回(2013年11月)
「OCDの子をもった母として、悩みと願い」
http://ocd-net.jp/column/c_116.html

第81回(2010年12月)
「思春期の子どものOCD―臨床心理士からのアドバイス―」
http://ocd-net.jp/column/c_81.html

第79回(2010年10月)
「OCDのために不登校になったら―スクールカウンセラーからのアドバイス―」
http://ocd-net.jp/column/c_79.html

第66回(2009年9月)
「スクールカウンセラーに相談するには」
http://ocd-net.jp/column/c_66.html