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第160回 OCD体験者座談会2017 Vol.2 (全2回)
子どもの治療体験と学校生活


強迫症/強迫性障害(OCD)のお子さんがいらっしゃるお母様3名に参加していただいた座談会の後編です。
今回は、お子さんが強迫症状を抱えながら学校生活にどう対応していったのか、どのような治療体験をしたのか、といったお話を中心に伺いました。参加された皆さんは、それぞれ大変な思いをされた時期もありました。座談会にご参加いただいた3名のお母様と同じような思いをされているご家族は全国にいらっしゃると思います。体験を分かち合うことで、参考になることがあればと思います。


目次
§1 病気をかかえて、通院と学校生活
§2 交友関係の長所と悩み
§3 認知行動療法を受けて
§4 親としての思い
§5 座談会を終えて


§1 病気をかかえて、通院と学校生活

有園

有園正俊さん
OCDお話会世話人
認定行動療法士・精神保健福祉士
前回のコラムでは、精神科に受診をするきっかけについて伺いましたが、実際に精神科の病院・クリニックに通院してからはいかがでしたか。

うさぎ

3つの精神科の病院に行きましたが、何となく親が納得できなかったので、いろいろ探しました。スクールカウンセラーの先生にも相談しましたが、OCDに関する知識はあまりなかったです。結局、インターネットで探した自助グループに本人と一緒に参加させてもらい、当事者の方のお話を聞きました。OCDの人とお会いして、私たちだけじゃないんだという印象を受けました。

フクロウ

うちもスクールカウンセラーに相談に行きましたが、OCDの知識はあまりないように見受けられました。2つめに通うことになった大学病院の精神科は、症状を聞いて、ただ薬を出すみたいな感じで、息子もそこへ通うのがつらそうでした。大学病院のカウンセリングは予約がいっぱいのため、いろいろインターネットで検索して、現在のカウンセラーの先生に出会いました。

パンダ

うちの子が最初に通っていた病院の先生は、私の相談にも息子の相談にも途中で打ち切らずに最後まで聞いてくださいました。ただ、処方された薬が合わなくて、ボーッとしてしまったりイライラ怒りっぽくなったり、受診するたびに薬を変えていました。小児の思春期外来がある病院の予約も取りましたが、予約から受診まで半年かかるといわれたので、その間は、最初の病院に通いながら、少しでも症状の改善に役に立つのではと、藁をも掴むつもりで、鍼や整体にも連れていきましたが、まったくよくならず、そのうちまた学校へまったく行けなくなりました。
小児の思春期外来から連絡がきて受診できて、そこの先生は「入院するほどじゃない」とのことでしたが、本人の様子を見ていると日に日に悪くなっていましたし、私も精神的につらくなり、主人から「ちょっとママもおかしいから、精神科行こうか」と言われるほど不安定になっていました。
そこで、家での快方は望めない状態だったので、息子を入院させてもらうようお願いしたのですが、いざ入院が決まると、愛する自分の息子を精神病院に入院させてしまう罪悪感が大きくなってしまい、息子が入院病棟に引っ張られるように連れて行かれるときは、もう涙、涙でした。

有園
精神科の病気のなかには、興奮が治まらずに暴れてしまう人、自傷行為がとても心配される人などいます。精神科の病院では、そのような患者さんの入院が優先されます。しかし、OCDの患者さんでも、深刻なケースはあるので、何とかしてほしいとご家族が思うのは無理ないと思います。

パンダ
学校へ行けなくなってしまって、お風呂にも入らなくなって、頭も洗わなくなって、歯磨きもしなくなって……。もう食べて寝るだけの状態になってしまいました。
本人は、きっとそんな自分が嫌だったんでしょうね。自分でもわかっているけれど、どうしようもなくて、たまに怒りをこっちに向けて、ソファをひっくり返したこともありました。でも、もともとは優しい子なので、ひっくり返すにしても最後はそっと置くようにするんです。
普通の高校に通うのは難しいかと思い、通信制の学校を見学にも行きました。

有園
頭を洗ったりお風呂に入ったりできなくなったとのことでしたが、たまにお風呂に入ると、どんな感じでしたか。

パンダ
いったんお風呂に入ると出てこなくなりました。それに対して怒っちゃいけないと思い、声をかけずにうたた寝してしまったことがありました。3時間後に起きてみると、まだ水がジャージャー流れていました。また洗っては流し、まだ汚い気がしてずっと水を止められないんです。その止まらない水の音を聞いて、「やめてー!」と泣きながら怒鳴ってしまいました。

有園
入浴にそれだけ時間がかかると、家族にとっても自宅がリラックスできる場ではなくなってしまいます。これは本人が悪いわけじゃなく、症状がそうさせてしまうと思われます。



§2 交友関係の長所と悩み

パンダ
6月に退院してから、病院のデイケアに通うことになり、市の不登校のクラスにも入りました。学校の不登校の教室へも行ける日には行っていました。学年主任の先生からは、特別支援学校へ転校したらと言われて、なんてひどいことを言うのだと、落ち込みました。
そんなときに、友だちが夏休みの宿題を持ってきてくれたんです。そうしたら、急に宿題をやり始めて、「9月からは学校に行くよ」と言うんです。そして、本当に夏休み明けから学校に行き始めたんです。
小学校時代から人望が厚い子で、学校を休むようになってからも、友だちがときどき勉強しようとか、一緒に学校に行こうとか誘ってくれていました。ただ、学校の不登校の教室に通っている間は、そんな自分を友だちに見せたくなくて会わないようにしていたようです。

有園
友だちの存在が大きいですね。その頃、症状はどうなりましたか。

パンダ
友だちはありがたかったです。2年生の夏休み以降ですが、見違えるように普通の生活を始めました。
勉強をまったくしていなかったのに、塾の先生のお力もあり、奇跡的に定期テストの成績が悪くなかったので、これなら高校に普通に行けるのかなと思って、私も落ち着いてきました。
しかし、高校受験が近づいてくると、自分を大きくみせたいのか難関校を目指すと言うんですよね。頑張ると言っていたけれど、受験が近くなると、気持ちが逃げてしまって学校へは行ってもうちでは勉強しないで寝てしまう。「夏季講習に行かせてくれたら勉強する」と言うので行かせてみましたが、そこでも寝ていたようです。結局、成績も落ちてしまい、当初希望した学校は断念しましたが、ほかの高校に推薦で受かりました。今はもう学校へ楽しく通ってくれるだけで、よかったなと思います。


有園
学力だけではなく、子どもにはさまざまな能力があります。友だちと付き合うのが得意、嘘をつかなくて信頼がおける、愛嬌があってにくめないなども能力です。学校でこういう能力を活かして、友人と関わることで、精神的に支えられている面があります。一方、精神の病気のために学校での適応が難しくなり、孤立することで、よけい精神的に不安定になるという悪循環が生じることもあります。
そのため、症状の治療だけではなく、広い意味で、学校や社会との適応を考えてくことが大事です。うさぎさんのお子さんは、OCDが発症した頃、学校の状況はどうでしたか。

うさぎ
うちの子は「場面緘黙」もあるので、友だちに話しかけられません。友だちのほうも気を遣って話してこないので、もう本当に1人でした。でも、学校は、なぜか1日も休まずに行っていました。

有園
本人は学校でのストレスなどをお家で話すことはありましたか。

うさぎ
クラスの子たちがこそこそと自分のことを言っているとかは、しょっちゅう。先生には、極力、話しかけてほしいとお願いしていました。苦手な子とは、近くの席にしないようにお願いもしましたし、先生と私とで話し合うようにしていました。

有園
小学校高学年ぐらいから、他人と自分との違いが気になるようになります。それがいじめにもつながることがあるし、他人の欠点を見つけると、ちょっといじわるをしてしまう時期でもあります。

うさぎ
うちは、いじめで大変な時期があって。今思えば、その頃からOCDもひどくなったような気がします。学校に相談したのですが、対応は十分ではなく、結局、いじめていた子はわからないままでした。しかし、親子で頑張りました。また、なかには優しい子もいて「大丈夫?」と話しかけてくれていたので、それがよかったと思います。
授業でプリントなどを配るときも、うちの子はプリントに書いてあることを確認してから次の子へ配るようで、一番前の席だと配布に時間がかかってしまうので、後ろの席が多かったです。また、常に行動が遅いので、周囲からは変わった子と思われたり、「とろい子」と言われたりしたことがありました。

フクロウ
うちの子は、中学生の最初のころはよかったのですが、部活で、何かうまくいかないことがあったようです。そのとき私が無理やり続けさせてしまって、あとから「お母さんが部活を続けなさいっていったからやめなかったけど、人間関係がうまくいかなくてつらかった」と言われました。
高校では、友だちもできましたけど、そんなに多いほうではありません。人間関係のストレスは、本人には相当大きいようで、友だちと楽しくやっているときは、家でもすごく元気でいられるという感じはあります。
あと不器用なので、家庭科や美術などの技能教科、パソコンの授業なども居残りさせられてしまい行動も遅いです。本人もそういうところに劣等感をもっていたようです。

有園
勉強、スポーツ、交友関係などのさまざまな分野で適応できる範囲は、人によって異なります。どこの学校へ行っても器用に立ち回れる子もいれば、適応できる範囲が限られる子もいます。
小学校、中学校、高校と時期に応じて、クラスメートとの付き合い方も変わっていきますが、そこで適応が難しくて居づらくなってしまうこともあります。そのようなケースを考えれば、学校以外に、塾や習い事、趣味のサークル、なんでもいいので、本人が関わっていけるところがあればいいと思います。


§3 認知行動療法を受けて

有園
3人ともお子さんは認知行動療法を受けたことがあるそうですが、いかがでしたか。

うさぎ
認知行動療法は、どんなことをやるのか調べても想像がつきませんでしたが、実際に受けてみると、課題を一生懸命頑張ってやっていて、うちの子には合っているように思いました。お薬だけではなく、認知行動療法も受けてよかったと思います。まだ少し症状は残っていますが、それまでとは全然違います。
4月から高校生になって、今まで友だちがいなかったぶん、友だちをつくろうと頑張りすぎているところがあります。私は「自然でいいんじゃない?」と言っていますが、本人は真面目で、友だちをつくるためのマニュアルを読んでいます。今日も新しくできた友だちと遊びに行っているんですが、出かける前に長い時間うがいをしたり、お風呂も2時間ぐらい入ったりしていたので、再発しないかちょっと心配に思っています。
場面緘黙も心理士の先生に診ていただいて、高校に入って少し変わりました。お弁当の時間は先生が誘ってくれて、先生と食べながら友だちとも少しずつ話しているらしいです。たぶん、ぽつりぽつりだとは思うんですけど。

有園
フクロウさんの息子さんは、どうですか。

フクロウ
最初、心配でしたが、うれしそうに認知行動療法にも通っているので、専門家に話を聞いてもらうことで、気持ちが楽になっているようです。
うちの子は進級進学の時期にうまくいかないことがあるので、心配していたのですが、今は以前から仲の良い友だちと一緒のクラスになり、一緒にお弁当を食べたり、話をしたりできるので、学校はちゃんと通っています。
最近、受験のために塾に通いだし、睡眠時間が少なくなっているのが心配ではあります。
本人も大学受験のことがすごく気になるらしく、通っている高校の大学進学実績を気にしています。「学校の実績とあなたが受かるかどうかとは関係ない」と説得しても、ぐるぐる頭の中で回っているようです。本人によると、暇だとまたいろいろ考えて、強迫の症状が出てしまうので、塾に通うことで、ぼおーっとしている時間がなくていいそうです。

有園
強迫症状が残っているときに、自由になる時間が多いと症状に引っ張られやすいことはありますね。

パンダ
認知行動療法を受けて、自分も治るかもしれないと明るい未来が開けてきたような感じです。良くも悪くもいいかげんになってきたみたいで、以前のように人によく見られたいとか、一生懸命頑張ろうとかはしていません。
この頃、私の言うことを素直に受け入れないところがあるんです。以前とはそこが違うところで、親に反抗する。でも、それはよくなったからなのかと考えています。

有園
10代半ばだと、親に反抗的になるのは自然なことではあるのですが、親としては、子どものためにと思ってしてあげていることが、否定されると報われない思いをしますね。


§4 親としての思い

有園
親としてどのようなことに心配したり悩んだりしましたか。

うさぎ
今はほとんどよくなってきていますが、症状が復活したらどうしようという心配はいつもあります。4月に高校に入学したので、こんなに頑張っちゃって大丈夫かな、いつ、またどうなるのかなという不安があります。

フクロウ
学校を長期間休むにあたって、私が気になったのは、出席日数や単位が足りなくなったらどうしようということです。試験のときは教室に入るのが怖いからと、1人面談室で受けていました。遅刻や早退が多かったのですが、保健室の先生など学校の協力もあり、私も頑張って送ってどうにかそこもクリアしました。先生を困らせましたが、理解のある学校でよかったと思います。単位制の高校に転校させたほうがよいかと悩んだ時期もありましたが、どうにか上の学年に上がれてほっとしています。

パンダ
うちの子は、いまはだいぶ心持ちが強くなったんですけど、まだ強迫行為はやっています。何度もウエットティッシュで拭いたりしています。あとはお金に対してすごくきっちりしていて、親から借りたお金でも返さないと嫌みたいです。「取ったと思われたくない」「ズルしたと思われたくない」と、すぐに清算しようとします。そういうところがあるので、またぶり返さないのかなと心配です。

有園
今後も、進学、就職と転機があります。そういうときになるべく自分に合った進路を選んでいくことも大切です。また、そういうときにストレスを感じて精神的な症状がいくらか出たとしても、一過性で済んで、「なんとかなった」という経験を積んでいけるといいですよね。
認知行動療法のよいところは、症状のメカニズムを知って、本人自身がどう対処すればいいか学んでいくので、それが再発を防ぐことにも役立ちます。
ご家族としても、本人の症状が改善して、落ち着くまでは心配なこともあると思います。しかし、強迫症は、そういう心配を想像し過ぎて、それにとらわれてしまう病気なので、ご家族も、あまり悪いことは想像しないで、今を大事にしていくとよいと思いました。
皆さん、本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


§5 座談会を終えて

フクロウ
強迫症はあまり知られていないので、症状がありながら悩んでいる子どもと理解できない親が世の中に沢山いるのではないかと思います。
もっと知られ、困っている親子が救われるようになって欲しいです。気軽にカウンセラーに相談する環境ができることを願っています。


うさぎ
今回、初めて同じ立場のOCD の子どもの保護者の方々にお会いしたのですが、悩みの共通点が多く、同じ考えの人がいるんだという安心感がありました。
うちの子どもは、症状が緩和してきて、ほっとしたのもつかの間、進学のストレスからか、最近、症状が少し出始めています。しかし、認知行動療法が身についたのか、「まずい!」と途中で止めています。本人も頑張っているので、見守っていきたいと思います。


パンダ
三年前、息子が突然の強迫障害になって、本人はもちろん家族一同、驚きと悲しみと不安の大きな暗闇に入りこみ、とても辛い日々が続きました。座談会のお話を頂いて、その時の事を皆様にお話するのは辛い日々を思い出すことになりますし、上手く話せるか不安でお断りしようかと思いましたが、私ども家族のように困っていらっしゃる方々の少しでも参考になればとお引き受けさせて頂きました。