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第156回 インターネットとうまく付き合う


現代では、パソコンだけではなく、携帯電話やスマートフォンからでも手軽にインターネットを利用できるようになり、インターネットによって得られる情報やサービスが増えました。インターネットを使って、強迫症/強迫性障害(OCD)に関する情報を調べている人も多いことでしょう。一方で、インターネットには不確かな情報もあり、信頼できる情報かどうかの判断が難しいことがあります。また、過剰な使い方をして、かえってOCDに影響してしまう場合もあります。OCDの患者さんがインターネットとうまく付き合うにはどのようなところに注意が必要なのかをまとめました。


目次
§1 インターネットで検索して知る強迫症
§2 不安にかられて調べすぎてしまうのも強迫行為
§3 コミュニケーションの難しさ
§4 インターネットをする時間は日課の後



§1 インターネットで検索して知る強迫症

OCDの患者さんのなかには、この病気にかかるまで、強迫症、強迫性障害、OCDという病名を知らなかったという人が、少なくありません。
OCDがもたらす苦痛の正体を調べようと、「確認 何度も」や「汚れ 不安」のような言葉で検索して、「強迫症」もしくは「強迫性障害」「OCD」という病名にたどりついた人もいるでしょう。さらに、OCDの治療法や患者さんの体験記、医療機関など、さまざまな情報をインターネットから得た人もいることでしょう。

しかし、インターネット上には、信頼に値しない情報もあります。このような情報は、一般の人にとっては、正しい情報かどうかの判断が難しく、そこが問題です。
インターネットで知り得た情報を、すべて鵜呑みにするのは危険です。
情報の正誤性を判断することが大切ですが、そのとき基準となるのが、事実や科学的な根拠に基づいているかどうかです。そのような情報を、一般の人が判断するためには、次のような点を参考にしてください。

・精神医学の医師や心理学の専門家・団体が執筆している、もしくは監修している。
・精神医学や心理学の論文や専門書の内容を引用していたり、それらを参考にしている。

OCDの治療として、現在、科学的な根拠が確認されているものは、薬物療法と認知行動療法です。
しかし、インターネット上には、それ以外の治療で効果があったという記述もみられます。科学的な根拠が確認されていない治療法や民間療法は、特定の人に効果があったからといって、他の患者さんにも効果はもたらすかは疑問です。
また、患者さんの体験をつづったブログは、事実を客観的に書いてある部分もあり参考になりますし、同じような悩みを抱えた人の書いたものには共感することが多いでしょう。しかし、OCDをはじめとする精神疾患では同じ病気であっても、印象、想像、感覚も、その人を取り巻く状況も、人それぞれ異なるということを認識して、読むとよいと思います。

医療機関を探すときに、そこに通っている人たちの口コミ情報を参考にされる人もいますが、OCDの専門的な治療を行っている医療機関は少なく、そのため全国から多くの患者さんが通っています。
ですから、すでに通院している患者さんたちは、口コミによって、さらに患者さんが増え、予約が取りづらくなると困ると考え、あまり情報を書かないようです。したがって、インターネットだけの情報で医療機関を探すことは難しく、実際には、多くの人がいくつもの医療機関に受診しているようです。

§2 不安にかられて調べすぎてしまうのも強迫行為

インターネットを使って、OCDやそれ以外の病気、有害物質のように恐ろしいと感じているものを、調べることがあります。強迫観念から逃れて、安心したいために調べ始めると、一つの情報を得ることで、「本当にこれで大丈夫なのか」という新たな疑いが浮かび、さらに別の情報を調べたくなってしまうことがあります。このような疑念が繰り返し思い浮かぶことも強迫観念となります。その結果、調べることが過剰となり、それ自体が強迫行為になってしまうことがあります。

また、OCDの患者さんのなかには、ある言葉を見たときに、恐ろしいと感じてしまうと、その印象が強く記憶に残り、恐怖心から過剰に警戒してしまうことがあります。たとえば、OCDによって食品添加物が気になる人が、食品添加物の危険性についてインターネットを使って調べているうちに、恐怖の対象が増えてしまうことがあります。
同じように、治療を受ける前に、治療で使われる薬について調べて、副作用に恐怖心をもつこともあります。認知行動療法についても、とてもつらい体験をさせられると、恐怖などから生じる誤解をしてしまう人もいます。いずれの治療も、患者さんへの説明と同意の元で行われますし、多くの患者さんが利用しているものです。

また、インターネットを利用したことで情報漏えいが起こるのではないか(⇒第146回OCDコラム)、不正な請求がきたらと、心配する声をOCDの方からしばしば聞きますが、心配のあまり、パソコン等の使用を過剰に避けたり、インターネットの操作を何度も確認したりすると、それが強迫行為となって、ますます恐怖に敏感になるという悪循環に陥ることがあります。いずれの場合でも、OCDの人は、不安を打ち消すために、パソコンやスマートフォン・携帯電話を操作していると、それが強迫行為になりかねないため、注意してください。

§3 コミュニケーションの難しさ

ツイッターやフェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用すると、直接、会ったことがない人とも、メッセージを交換し、コミュニケーションを築くことができます。
これらを利用することで、家に居ながらも他者と交流することができ、孤独を和らげてくれることがあります。
OCDは、病気の悩みを理解してもらうことが難しいので、同じような悩みを抱えた人とインターネットを通して知り合えたらと考えるのも自然なことだと思います。

しかし、このとき注意してほしいのは、「病気についてのアドバイスはしない」ということです。医師は、直接、患者さんと対面し、現在の病気の状態とともに、その患者さんを取り巻くさまざまな状況などを聞きとり、それらから総合的に判断し、患者さんに適した治療法を探っていきます。OCDは、ひと言ふた言のアドバイスで改善が期待できるような病気ではないのです。したがって、病気や治療に関するアドバイスを求められた場合は、「私には答えるのが難しいです」「専門家に相談できませんか」と返事をしてみてはいかがでしょうか。

また、ツイッター、Webサイトなどの掲示板、メールなどは、短い文で交流を楽しむことができますが、その分、相手の背景が見えず、真意がわかりにくい点があります。そのため、誤解が生じやすくなります。
OCDの人のなかには、他の精神疾患を併せ持っていたり、対人関係が苦手という人もいますし、インターネットでのコミュニケーションが、直接、会って話すよりも難しい場合があります。

これはインターネットを利用する場合の一般的な注意ですが、インターネットで知り合った人に、ご自分の本名や住所、電話番号のような個人情報を教えることは慎重にするべきです。

§4 インターネットをする時間は日課の後

OCDによって、仕事や学業の継続が困難な場合、まず治療を第一優先にします。治療や療養をするために休職、休学をしているにもかかわらず、インターネットなどに夢中になり、治療がおろそかになるケースがときどきありますが、それは問題です。
スマートフォンやタブレットの普及もあり、場所や時間の制限なく、インターネットを長時間利用できる環境が整ってきました。そのため、インターネットへの依存傾向にある人も増えています。

インターネットは、始めてしまうと適当な時間で終えることが難しい面があります。インターネットに依存しないためには、インターネットを開始する時間をコントロールするようにしましょう。

学生や会社員は、学校や会社にいる時間帯は、自由にインターネットを使えません。ですから、自宅で療養中の人も、インターネットをする前に行動療法の課題や日課の家事を行うことを優先しましょう。やるべきことが済み、自由時間にインターネットをすると決めることで、生活にメリハリがつきます。また、このように生活にメリハリをつけることは、精神的にも生活のリズムの面でも望ましいのです。

たとえば、いくつかの家事のうち、ゴミ捨て、買い物、食器洗いなど、その人の状態に応じて、できそうなことを日課とします。家族と暮らしている人でしたら、自分ができそうなことがあれば、家族と相談して自分の役割に変えます。

OCDの人は、制約のない自由な時間が増えると、その分、症状に時間を奪われてしまう傾向があるため、このような日課を設けるのは有効です。そして、就寝時間が深夜になりがちな人は、翌朝の起床時間も決めておくといいでしょう。自分が決めた約束が守れることで、自己肯定感も増していきます。

インターネットは、家に居ながらさまざまなことを知ることができ、実際には会ったことがない人ともコミュニケーションができる便利な道具ですが、その使い方には注意が必要です。まずは、現実の活動を大事にして、依存的な使い方にならないことが望ましいと思われます。