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第145回 障害者自立支援制度~医療費と就労・生活への支援


強迫症/強迫性障害(OCD)のような精神疾患を抱えていると、生活や仕事に支障をきたすことが多く、生活などへの支障が甚だしい場合には、精神障害者向けの福祉制度を利用することを検討してみてはいかがでしょうか。精神疾患の治療では、症状をできるだけ軽減し、安定させることを目指しますが、そのための治療にかかる医療費の自己負担額を減らしてくれる「自立支援医療」という制度があります。そのほかに、障害者自立支援法による生活や就労を支援するための福祉サービスには、どのようなものがあるかを紹介します。


目次
§1 障害者自立支援法の目的
§2 精神科医療費の自己負担を減らす
§3 就労と生活への支援
§4 OCDと福祉利用での注意点


§1 障害者自立支援法の目的

身体や精神のさまざまな障害を抱えた人を支援するために、障害者自立支援法という法律に基づいた福祉制度があります。

この法律の目的は、「障害者及び障害児がその有する能力および適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い」(第一条)と書かれています。

つまり、OCDのような精神疾患によって、生活で困難なことがあっても、その人が本来もっていた能力に応じて自立した生活ができるように支援するための制度なのです。自立というのは、親元から独立したり仕事で収入を得たりするだけではありません。食事で使った食器を片づけたり、朝、目覚ましをかけて一人で起きたりすることも自立です。このような日常生活における行為の一つひとつが、症状から解放されて、自分一人で自由にできるようになることが大切なのです。

§2 精神科医療費の自己負担を減らす

精神疾患をもつ人への自立支援医療(精神通院医療)は、精神科外来で症状を改善するための医療費や薬局で支払う薬代の自己負担額を軽減できるという制度です。制度の対象となるのは、精神科へ継続的に通院することが必要な状況にあり、健康保険に加入している人です。世帯の所得によって、自己負担の割合が異なります。

申請は市区町村の保健福祉課などで行いますが、担当窓口は市区町村によって異なりますので確認をお願いします。18歳以上は本人が申請者となり、18歳未満は保護者が申請者となります。また、2016(平成28)年からは、申請する書面にマイナンバーの記入が必要となりました。また、申請する際には、精神科医による自立支援医療診断書が必要ですので、主治医に相談してください。

有効期間は1年で翌年には更新の手続きをします。ただし、その間に症状が改善し、社会復帰をしたり、より自立した生活が送れるようになった場合には更新しなければいいのです。

§3 就労と生活への支援

障害者自立支援法による相談・支援で、OCDの人が利用することができるものを紹介します。利用者の症状による支障の状態に応じて、個別支援計画を立て、それにそってサービスを利用できます。事業所には、精神障害を専門にしているところがある一方、身体、知的など精神障害以外の皆さんが一緒に参加しているところもあります。地域によって、どのような事業が行われているかが異なるので、市区町村の保健福祉の担当にご相談ください。

就労支援
障害を抱えているために、独力では一般の企業などで働くことが難しい人へ行う支援です。支援を受ける人の障害や能力に応じて、次の事業があります。

就労移行支援……一般企業での就労(アルバイトも含む)が、ある程度の支援・相談によって可能だと思われる人向けの事業です。履歴書の書き方、面接の練習、ビジネスマナーなどの講座、職業体験などの支援を行っています。対象は65歳未満です。
就労継続支援A型、B型……一般就労が困難な人が、事業所に通い仕事や作業活動を通して、能力の向上を目指す事業です。
A型は、雇用契約を結び、最低賃金が保障されます。対象は65歳未満です。
B型は、雇用契約ではなく、作業をした分の工賃(最低賃金を下回ることがある)が支払われます。年齢制限はありません。

精神障害者向けの就労支援については、第126回コラム「OCDを抱えながら社会参加・仕事復帰を目指す」を参考にしてください。

居宅・地域での生活支援
自宅や地域での生活援助・相談ができます。このようなサービスを利用して、家族以外の人と関わることも大切です。

居宅介護(ホームヘルプ)……このサービスを利用する人の居宅にホームヘルパーが訪問し、食事や身の回りのケアなどの支援を行います。
共同生活援助(グループホーム)……グループホームとは、家族から離れ、5~10人程度の人たちと共同生活を送りながら、日常生活や社会生活を円滑に行えるよう訓練するための住居施設です。専門の職員が、生活の支援や相談を行います。利用期間が決まっているタイプと、決まっていないタイプとがあります。
地域活動支援センター……市区町村から運営を委託された団体が、障害を抱えた人が集う場を提供し、余暇活動や交流をすることで社会との交流を促進します。専門の職員が、生活などで困っていることの相談にも応じてくれます。

§4 OCDと福祉利用での注意点

自立支援医療は、比較的OCDの患者さんも多く利用している制度です。
しかし、就労や生活支援の事業では、OCD以外の精神疾患を抱えた人の利用が多く、OCDの患者さんは比較的少数です。そのため、スタッフがOCDについてあまり詳しくないことがあります。また、ほかの精神疾患を抱えた利用者さんたちとの交流が難しい場合もあります。たとえば、過剰な手洗いなど強迫行為のコントロールが難しいときに、スタッフが、ただ「止めなさい」とアドバイスしてしまうことがあります。逆に、患者さんが手間取っていることを手伝い過ぎて、結果的に強迫行為への巻き込まれになることもあります。

また、これらの支援制度は、精神疾患を抱える人たちの自立を応援するためのものなので、さまざまな生活が楽になったからといって、現状のままでもいいと、治療に取り組む意欲が下がっては本末転倒です。

OCDだけではありませんが、患者さん自身が、症状にかなり困って、「このままではダメだ、治療するしかない」と強く思った人ほど治療意欲が高まるものです。ですから、支援によって生活が送りやすくなったとしても、それは治療をしっかりと受けるためのものと考え、医師や専門家の指導の下、治療を継続してください。

今回ご紹介した公的な支援を受けることによって、家族の負担が軽減することがありますし、患者さん自身もつらい症状から解放されることがあります。「自分でできた」という満足感を得ることを目指していただきたいと思います。