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第142回 わかりやすいOCDへの対処のポイント


OCDの患者さんでは、洗浄や確認などの強迫行為に時間がかかって、苦しい思いをする方がいます。どうやってやめればいいのかわからず、困っている人も少なくありません。このコラムをお読みの方のなかにも、強迫行為への衝動に逆らって、行為をやめようとするときに、「やめどき」の基準があればいいのにと思ったことはありませんか。
今回のコラムでは「どこからが強迫行為なのかがわからない」といったOCDの患者さんが抱きやすい問題に答えます。強迫症状が悪化しないようにする対処のポイントをまとめました。


目次
§1 どこからが過剰なのかわからない
§2 OCDは人をだますのがうまい
§3 省けそうな強迫行為を探す


§1 どこからが過剰なのかわからない

汚物や火事、交通事故などは、誰にとっても嫌なものです。しかし、OCDの人は、それらを警戒したり心配したりする範囲が広く、心配が過剰となって、繰り返し思い浮かんでくるため、苦しくなってしまいます。それが強迫観念です。



強迫観念にかられると、過剰に洗う、過剰に確認する、ぶつからないように必要以上に人との距離をとるなどの強迫行為をしてしまいます。強迫行為の頻度が増え、時間も長くなるほど、症状は強化され、ますます強迫観念が浮かびやすくなり、嫌な感情にも敏感になるという悪循環になります。
参考 ⇒ OCDの心理教育

しかし、OCDの人にとって、悩ましいのは次のような点です。


過剰なOCDとの境界がはっきりすれば、強迫行為を減らせると考え、周囲の人に「これは大丈夫?」と聞く人がいます。しかし、この質問は、自分でも強迫観念のような気がしているが、その判断に自信がもてないために、他人に保障してもらうことで、安心を得たいという動機によるものであることが多く、その場合、強迫行為になりかねません。その結果、判断に迷うたびに、その境界の範囲に当てはまるかどうか周囲の人に聞いたり、頭のなかで境界の範囲かどうかに時間をかけて確認するという異なるタイプの強迫行為に置き換わってしまうことがあります。


OCDの人は、境界の範囲についての判断がわかりにくくなっています。きちんと判断できる感覚は、適切な治療を何ヶ月も行うことで徐々に取り戻せるものです。「境界をはっきりさせたい」「もやもやをすっきりさせたい」という衝動から、強迫行為を続けてしまうと、OCDは悪化します。境界の判断がわからなくても、いったん、現実を受け入れましょう。

§2 OCDは人をだますのがうまい


強迫観念は、大丈夫ではない、不完全であるという疑念を、さまざまな場面で思い起こさせます。OCDの症状が強く出ているときには、嫌だという感情が強く、緊張のために体の感覚も敏感になるため、本当に悪いことが起こるように思えてしまうのです。


OCDではない人は、強迫行為をしなくても、問題や不都合は起こっていないという点を常に意識して、自分だけを特別扱いしないでください。

OCDの人は、ほかの人と同じように手洗いや外出前の確認をしようとしても、あっさりと終えてはいけないように思えるのです。このような感覚も強迫観念で、つまり脳による誤った信号ということになります。OCDは、ほかの人は気にしないことでも、あなたには重要な問題のように思わせます。まるで詐欺師のようです。そして、OCDという詐欺師はあなたの生活を支配しようとするので、だまされないようにしてください。



§3 省けそうな強迫行為を探す

洗浄でも確認でも、いったん、強迫行為を繰り返すというパターンに陥ってしまうと、コントロールが難しくなります。アルコール依存症で断酒していた人が一杯でも飲酒すると、再びやめられなくなるのと似ています。アルコール依存症の場合、飲酒量を減らすより、完全な禁酒のほうが実行しやすいのです。OCDの場合も同様で、5回していた確認を3回に減らすという目標より、強迫行為をしないという選択のほうが実行しやすいのです。
しかし、強迫行為をやめていた人が、少しの強迫行為でも許してしまうと、ほどほどという加減がわからないので、以前と同じような強迫行為をしなければいられないようになってしまいがちです。




強迫観念が思い浮かんで、それを打ち消そうとしたり、境界をはっきりさせようとすることも、過剰な強迫行為になります。そのため、OCDの行動療法では、その境界が不明瞭で、安心が得られないままであっても、強迫行為ではない行動へと踏み切っていくようにします。これが認知行動療法の反応妨害という技法です。しかし、「電源プラグを抜かない」といった強迫行為を省くことに1回成功しても、次の外出のときには、かつての強迫行為に戻ってしまうようでは定着しません。
また、強迫行為にかかる時間を短くしようとして、急ぐとよけいに緊張したり焦ったりして、手間取って時間がかかってしまうことがあります。


ポイント4で紹介した反応妨害を単独で実行しようとしても難しい場合もあるので、薬物療法を併用したり、認知行動療法の曝露療法(エクスポージャー)など他の技法と組み合わせたりすることがあります。自分一人では実行が困難な場合、その現実を受け止めて、OCDにくわしい専門家を探して、専門的な治療を受けられるとよいでしょう。