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第141回 OCD体験者座談会2015 Vol.2(全2回)
確認強迫への理解と治療の体験


確認のOCDを抱えている女性3名に、体験を語っていただいた座談会の後半です。
さまざまな場面で生じる確認の悩み、職場の強迫症状への理解、カミングアウトの問題、治療の体験について語り合いました。参加者同士、共感が得られ、参考になることもあったようです。


目次
§1 病気への理解とカミングアウト
§2 こんなときにも確認してしまう
§3 治療の体験
§4 座談会に出席して……
§5 解説


§1 病気への理解とカミングアウト

有園
仕事についてですが、職場で困っていることはないですか。

おすし
デスクが片付かない。書類を郵送するのにとても時間がかかってしまう。どんなに忙しくても、慎重にやってしまうから、仕事がなかなか片付かない。ミスをして迷惑かけたり、失礼があったりしたらいけないと思って、念入りに確認しちゃうんです。それと遅刻をしてしまう! ダメですね。


あずき
私は、職場で一部の人に病気についてカミングアウトしているし、確認に時間がかかることは、皆さんに周知されているので、「また、やってるな」くらいです。ただ、仕事に行くときは絶対遅刻しないようにしています。会社に行く時間になると「遅刻するから」と、気になることがあっても切り上げられます。


うどん
職場で一番苦手なのが戸締りです。自分がカギをかけ忘れたことによって、変な人が侵入してきて職場が荒らされたらと思うと、戸締りの確認が1回じゃ終わらないんです。みんなは5分で終わるのに、私は15分もかかっているから、さぼっていると思われているかもしれない。職場では仲のよい人にしか、病気のことを話していないので。


おすし
会社の人は病気のことを知っていて、「遅刻した分は残業してくれたらいい」といわれています。

あずき
うちの会社では遅刻は許されません。

有園
病気の改善のためにはあずきさんの会社のほうがいいかもしれないですね。OCDがある程度改善されると徐々にコントロールできるものが増えてくるのですが、症状が重いときは、なかなかそうはいかないので、遅刻してもいいといわれると、かえって症状への歯止めがなくなってしまう。職場の人には、「強迫性障害」という病名も伝えていますか。

おすし
直属の上司には伝えていますが、ほかの人たちには話していません。私としては、病気のことをいわないで治せたら一番よかったと思います。

あずき
私は仕事でペアを組んでいる人に話したら、強迫性障害のことをよくわかってくれました。上司には、定期面談のときに1回伝えたきりです。書類を片付けるときも、確認に時間がかかってしまいます。そんなとき、私に頼みたい仕事があっても、確認が終わるまで待っていてくれるので、病気については理解してもらっているみたいです。

うどん
職場では心を許せる人、あとは家族と高校時代からの親友くらいです。自分からはいいたくないという気持ちがどこかにあります。病気について話しても、身近にOCDの人がいない人には、理解してもらえないと思います。マイナスに思われるのが嫌で、いわないのですが、きっと行動から、変な人と思われていると思います。

有園
病気のカミングアウトはデリケートな問題ですね。伝える相手にもよりますし、病気への理解や配慮もケースによって異なるため、判断が難しいと思います。皆さんの場合はどうですか。

おすし
私、結構友だちには話しています。みんなに「私、すごく火の元が気になって、外出できないんだけど、そういうことないですか?」って聞くと、「全然そんなことない」という人と、「病気ではないんだけど、旅行に行くときとか何度も何度も見ちゃうよね、心配だよね」といってくれる人といます。



§2 こんなときにも確認してしまう

有園
外出先でトイレに行ったとき、個室からすんなり出られますか。

うどん
すんなりとは出られないかもしれない。

あずき
今は平気になりましたが、水を流すときに詰まらせるようなものを流したのではないかと心配しました。最近、自動で水が流れるトイレが多いじゃないですか。自分で流そうと決心する前に流れちゃったりして……。

おすし
私は確認をしてしまいます。棚に置いた瞬間に鞄からぽろっと何かが落ちていないかと考えちゃうんです。

うどん
同じです。

有園
不潔恐怖の人とは別の理由で時間がかかることがありますね。トイレは個室だから自分のペースで確認をしがちです。トイレ以外で、たとえば、鞄から物を出し入れするときなどはどうですか?

おすし
財布を出すときはすごく気になります。仕事では、得意先で打ち合わせをして帰るときに、鞄から何か落としていないかと気になるんです。私の落とし物のせいで会社に迷惑かけてしまったらどうしようと思って。

有園
落とし物が心配だからと、鞄をずっと締めておくとかファスナーのない鞄は使わないのも強迫行為になります。

おすし
症状がひどいとき、部屋のなかの紙類がすごく怖くて全部持ち歩いていました。だから、鞄がいつもパンパンで。ほかにはポケットが怖かったんです。ポケットのついた服を着た翌朝は、ポケットに手を突っ込んで確認するのですが、それでも不安が治まらないときは、前日の服をもって会社に行きました。

有園
外出する前の確認で大変なことはありますか。

おすし
以前は、戸締りや火の元の確認のために携帯電話で写真を撮っていましたが、今はやめました。

あずき
どうやってやめたんですか。

おすし
毎日必ず同じ場所を撮らないと不安だったんですが、なかでも、IH調理器(以降、IH)と給湯器が怖かったんです。休みの日にちょっと出かける場合、写真に撮るのは一番怖いIHと給湯器だけにしてみたら、意外に大丈夫だったので、平日に仕事へ行くときもやってみるようにしました。(★1)私も体調とか気持ちの変化によって、ちょっとだけ撮っちゃうときはありますが。

有園
旅行などに出かけた後も、家のことが気になりますか。

おすし
もう全然気になりません。旅行から帰ってきて、自宅が無事だったと思ったら、その後1週間くらいは、強迫症状が軽くなっていました。

うどん
帰省するとき、家を出るまでは大変ですが、戻ってきて1週間くらいは気持ちが和らいでいます。環境に変化があるといいのかなと思ったりします。

有園
強迫行為をしない期間があると、強迫行為への衝動もいくらか減ることがあります。ただ、それは根本的な解決にはならず、元の環境に戻ると、以前と同じ強迫行為をしたいという衝動が次第によみがえってきます。
あと、旅行先から患者さんが、不安を打ち消すために家族に電話をかけて、保証を求めることがありますが、家族がそれに応えると、それは強迫症状への巻き込みになります。一度、このような強迫行為を行っても、安心は一時的なもので、しばらくすると繰り返したくなることがあります。この点は注意が必要ですね。
ところで、症状が体調によって影響されることはありますか。また、女性の場合は生理の前後で症状に変化があることもありますが、いかがですか。(★2)

あずき
生理のリズムとかは全然関係ありませんが、疲れているときはなんかツボにはまって、確認が長くなりやすいです。会社に行くわけではなくプレッシャーもないはずなのに、朝よりも夕方出かけるときは確認しちゃいます。

おすし
前日にすごく怒られたとか嫌なことがあったときには、すごく慎重になります。天気によっても関係するのかな、晴れている日の確認は簡単なんです。

うどん
嫌なことやストレスがあるときは確認が多い気がします。睡眠不足や疲れているときも調子が悪いです。確認に時間がとられて、寝る時間が少なくなると「つらいな」と思います。



§3 治療の体験

有園
それでは、治療の体験について教えてください。初めて精神科にいったときは、どんな感じでしたか。

うどん
戸締りの確認に時間がかかるのは性格ではなくて、病気だということがわかったので、受診しようと思い、インターネットで探して、最初に出てきた病院に行きました。初めて精神科のクリニックに行ったとき、先生に話をよく聞いてもらいましたが、私、ここでは自分の症状は治らないって思ってしまって、2、3回で通院を止めました。

おすし
朝の6時に起きて、戸締りを始めても、まったく出かけられないという時期があって、これは限界だと思いました。前々から友だちに、強迫性障害じゃないかといわれていたんですが、初めは「自分で治そう」「気合で治そう」と思っていました。2か月くらい頑張ったんですが、限界が来てしまい、インターネットで調べて、いまの病院に通うことになりました。

あずき
私は病院へ行こうと思っていたときに、偶然知り合った方がトラウマの治療をしていて、その方から精神科の総合病院を紹介してもらいました。精神科に対する偏見はなくて、「治るんだったら病院へ行こう」と思ったんですが、薬は飲みたくなかったんです。対応してくださった先生はとても感じのよい方で、病気の説明をしてくれて、私が薬を飲みたくないといったら、薬のメリットとデメリットを丁寧に説明してくれました。カウンセリングが受けられるところを探していたら、患者の会に行ってみるといいよ、と教えてくれ、「あなたは治療をすれば、必ず治る人だから頑張ってね」といってくれました。

有園
カウンセリングとか、今までどのような治療を受けましたか。

うどん
カウンセリングに行きましたが、家から遠くて。あの頃、時間に追われていて、ちょうど家族の病気もあり途中でやめてしまったんです。

おすし
病院へ通ってすごくよくなったんですが、またダメになってきたんです。そのとき強い薬に替えるという話になったんですが、それは嫌だったので、カウンセリングも受けて、その方法を少しずつ生活に持ち込んでいます。ちょっとずつよくなってきているかなという感じです。

あずき
薬は飲まずに認知行動療法を受けています。認知行動療法でよくなったところと、まだ残っているところがありますが、だいぶ楽になったと思います。
あと、治療とは全然関係ないことをやっています。自然農法の農家さんに行って、お手伝いをしていると、楽しくて強迫のことを忘れてしまいます。トートバックの口が開いたまま畑のとんでもないところに置いていても、そんなことはどうでもいいやと思えました。
また、IHで調理するのが怖くて、料理ができないときもありましたが、すてきな食器をいただいたので、せっかくだから何か作ろうと思って、料理もできるようになりました。まだ症状は残っていますが。そんなきっかけでよくなることもあります。



§4 座談会に出席して……

有園
座談会に出席してみて、いかがでしたか。

うどん
このような会に参加させていただいてありがとうございました。ふだん、同じ病気の人にお会いすることがないのですが、お二人の気持ちがすごくわかるので、お互い励まし合いながら、いい方向に向かって、少しでも症状が軽くなったらいいと思います。


おすし
私も同じ症状の人は、インターネットの悩み相談でしか見たことがなかったんです。実際にお会いして話を聞くことで、共感できるというか、強迫性障害という病気にどう向き合っているのかを聞いて、勉強になったし、自分もできるかもしれないと思うこともあってためになったと思います。ありがとうございました。

あずき
いっぱい話して、皆さんのお話も聞いたので、まだ感想がまとまらないのですが、私は外出のときに写メで確認することをやめたいと思っているものですから、実際に同じ行為をしていた人が、止められたというお話が聞けてありがたかったです。

うどん
同じ症状で治った人の意見とか、そういう人の存在が現在治療中の人の参考になるのではないでしょうか。私も一番励みになります。実際の体験談って気持ちがわかるし、頑張ったら先がみえるとか感じられるので、治った方の体験談を聞きたいと思います。
強迫性障害という病気ですが、病名に「障害」とついているじゃないですか。病気と障害の違いってなんだろうと考えてしまいます。「病気」は治るけど、「障害」って治らないような印象があって、強迫性障害は治りにくいのかと思ってしまいます。インターネットのブログをみても、「治りました」といっている人をみたことがないです。

一同
ない!

有園
病気が治ると、病気のときにはできなかったことができるようになって、新しい生活に忙しいのかもしれません。また、苦しかったときのことはなかったように暮らしたいという気持ちもあるように思います。

あずき
その気持ちわかります。

有園
「障害」という言葉の話が出ましたが、障害というと一生涯抱えていくものをイメージしやすいのですが、精神疾患の病名の「○○障害」という場合、日常生活や学んだり働いたりすることに支障があるものをいっています。障害というと誤解されやすいこともあるため、最近、強迫症という病名に変わりました。
強迫性障害も「障害」がつきますが、ずっと続くわけではありません。OCDのような精神疾患で、ひきこもっていても、治療が奏して復学、復職する人はいます。強迫性障害は、今では、ちゃんと治療法があるので、症状が改善する可能性が十分あります。ただ、すべての人が治るというわけではなく、なかには難治性の人もいます。

うどん
最後は本人の気合なんですかね。

有園
気合というよりも、本人が、自分の状態、現実を受け入れて、治療に向き合うことが大事になってきます。症状が改善した人に話を聞くと、治療に取り組む意識や治療にかける時間の優先順位が高いことがわかります。そして、自己流の判断をせずに、治療者と一緒に取り組むことが重要で、治療者といい関係を築くことが必要だと思います。

おすし
もともと料理を作るのが好きだったのですが、今、まったくできていません。IHを使うのが怖いというのもあるし、料理を作る過程で除菌とか気を遣って、すごく疲れちゃうのです。そういうことを気にせずに、ご飯を作れるようになって、楽になりたいと思います。あと、掃除もすごく疲れるので、部屋が汚いままでも平気で外出できることにあこがれています。

あずき
現在も治療をしていますが、もともと神経質というか心配性で、自分らしい治療のゴールが見えないのが不安な部分です。強迫症状がちょっと残っていてもいいけど、精神も体も健康になっていきたいと思います。同じ病気の方へ伝えたいことは、症状の重い軽いもあると思いますが、できるだけ外に出ていって、いろんな人と接したほうがいいと思います。「みんな、もっと適当なんだ」とわかったり、人とコミュニケーションをとることによって、病気にフォーカスしすぎていることがわかって、緩和されることがあります。

有園
私は、OCDを29歳で発症し、症状がほとんどなくなってから15年以上たちます。発症前から、緊張しやすくて、神経が細かい性格だったのですが、そのような性格は症状が治ってもそのままです。しかし、精神療法を体験したおかげで発症前に比べ対処がしやすくなりました。また、私が病気の頃は今のような治療法が確立していなかったので、何年もかけて、徐々に症状を改善し、社会復帰していきました。最初にアルバイトとして復帰した頃は、まだ皆さんのような確認の症状がいくらか残っていたので、OCDを抱えつつ、仕事をしていく大変さはよくわかります。
ただ、「大切なものをなくさないか」「火事恐怖」のような強迫観念への確認は、OCDとしてはよくあるタイプで、現代では治療法もあるのですから、症状の改善をあきらめずに、治療に取り組んでいただければと思います。
今日は、皆さんと話をして、体験談を共有できて、よかったです。参加していただき、ありがとうございました。



§5 解説

★1 休みの日から始めてみる―――戸締りや火の元の確認に時間がかかる人は、平日の出勤前より、休日に短時間、外出するときの方が、強迫行為を省くことへの難易度が低いものです。そのため、取り組みやすい曜日や時間から、行動療法を始めて、徐々にそのほかの日や時間帯でも同じようにしていくほうが実行しやすいです。
★2 生理と精神症状―――女性では、生理、妊娠、出産、更年期など性ホルモンの変化によって、精神症状に影響を受ける人がいます。
参考:OCDコラム第132回「女性ならではのOCDの悩みと苦労」