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OCDコラム

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OCDとの併存が多い発達障害②

もともと発達障害を抱えていた人が、二次的にOCDを発症するというケースは少なくありません。2014年に、精神疾患の診断基準が改訂された(DSM-5)ことで、発達障害の診断基準も一部変わりました。発達障害については第82回コラムでも紹介していますが、今回のコラムでは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)のような発達障害の特性と、発達障害とOCDとの関連、また、発達障害を併発しているOCDに対して、どのような診療や支援が行われているのかをお伝えします。


目次
§1 自閉スペクトラム症(ASD)とは
§2 ASDの感覚過敏・こだわりとOCDの病識
§3 言葉とコミュニケーションの認識
§4 注意欠如・多動症(ADHD)とOCD
§5 医療機関での診療
§6 発達障害への支援とOCDへの支援


§1 自閉スペクトラム症(ASD)とは

これまで広汎性発達障害、自閉性障害、アスペルガー障害と呼ばれていた障害は、精神疾患の国際的診断基準の改訂(DSM-5[1])にともなって、自閉スペクトラム症自閉症スペクトラム障害、ASDとも呼ぶ)という診断名に統一されました。DSM-5で示されたASDの診断基準の基本的な特徴として、次のAとBがあります。





スペクトラムには、連続しているという意味があり、ASDでも病気かどうかの境界が明瞭ではありません。そのため、もしかしたら自分もASDではないかと気になる人もいるかもしれません。しかし、ここで挙げた項目のどれか一つに当てはまるからといって、ASDというわけではなく、診断は専門医によって総合的に行われます。

精神疾患では「症」、「障害」(英語ではいずれもdisorder)という診断名がありますが、これは社会生活や職業の重要な部分で支障をきたすレベルであることを意味します。ASDの重症度はレベル1~3に分類され、比較的軽いレベル1でも、支援を要するとされています。したがって、友達作りや会話の輪に加わるのが苦手というだけでは該当しません。

また、大人になってから発達障害と診断される人も少なくありませんが、その場合もこれらの特性を幼少時から抱えていることが診断基準に含まれます。ただし、年齢とともに、こだわりの対象や交友関係が変わるため、その特性の内容や支障の程度も変化します。

ASDの有病率は、人口の約1~2%です。また、ASDの人が他の精神疾患を併存する割合は、約70%の人が1つ以上の精神疾患を、約40%の人が2つ以上の精神疾患を併存すると推測されています。[1] [2]ASDのうち二次的にOCDを抱える人は、24~37%という報告があります。[3]

§2 ASDの感覚過敏・こだわりとOCDの病識

ASDの特徴の一つに、においや味、触覚など特定の感覚に非常に敏感な人がいます。一般的には、成長するにつれ、子どもの頃に嫌いだった食べ物も食べられるようになったり、初めは嫌なにおいが気になっていた部屋でも、しばらくいるうちに慣れて気にならなくなるという体験をします。そのような体験をできればいいのですが、ASDの人では、嫌な感覚に慣れていくことや、自分で克服することが極端に苦手なところがあります。

たとえば、新しい靴下のゴムが皮膚にあたる感覚、ねばねばしたものが体につくといった感覚を極端に嫌う人では、そのような感覚が始終気になり、除去したくなります。さらに、OCDを発症すると、実際に体験したときだけではなく、その予防のために強迫行為を行うようになります。

また、物をまっすぐに並べて保管しないと気が済まないとか、自宅では床の木目に合わせてイスを置くとか、他の人からみれば意味がないと思われることにこだわる場合があります。幼少時からこのような傾向があった人が、OCDを発症すると、こだわりの範囲がさらに広がったり、独自のルールや繰り返し行為が増えることで、日常生活に支障がきたすことがあります。

このようなタイプは、OCDなのか自閉スペクトラム症なのか、区別が難しいところがあります。本人にとっては、今まで性格だと思っていたものが、だんだん厄介に思われてきたものの、病識を抱きにくく、受診したがらない場合があります。



§3 言葉とコミュニケーションの認識

ASDの人が、社会的コミュニケーションが苦手であることの背景には、以下の①から⑤のように、言葉や他者への認識における特性があります。

  • ①習得している語彙の数に問題はないが、会話や文章から、相手の意図や本質的なことがらを理解することが苦手である。
  • ②言葉を字義通りに解釈しすぎたり、必要以上に一言一句の正確さにこだわる。
    例:「服薬は寝る前」という注意書きに対して、通常は、「寝る前」という言葉に対し、就寝の少し前の時間と解釈するが、寝る前ならば何時でもいいと字義通りに受け取り、昼でも朝でも「寝る前だから構わない」と解釈してしまう。
  • 反響言語(オウム返し)といって、相手の発言をそのまま繰り返したり、意味があまりわかっていないことに対して、「そうですね」と、相槌を過剰に繰り返す。
  • ④接する相手によって、言葉遣いを変えることができなかったり、相手の気持ちやその場の状況に応じてコミュニケーションをとることが困難。目上の人でも親しい友人にでも同じような態度をとる。
  • ⑤複数の人が同時に話していると混乱してしまったり、ほかに気になることがあると、相手の話した内容が理解できなくなる。

このような特性は、単に言語の学力によって説明できるものではありません。周囲の人に理解されにくく、対人関係で誤解やトラブルがひんぱんに起きて、学校や職場などでの活動に適応するのが難しくなります。進学や就職など人生の転機で行きづまったり、いじめなど精神的につらい経験をする人も少なくありません。

相手の話を聞いたり、文章を読んでいても、誰しもが完璧に意味を理解することはないでしょう。まして、コミュニケーションなどの面で、具体的にどのような点が苦手なのかを自分では気がつかないものです。そのため、ASDの人は、自らの抱える問題の本質がよくわからないまま、一人だけでつらい状況と格闘していた経験を経て、二次的にOCDや社交不安症(対人恐怖)などの精神症状に至ることがあります。

DSM-5では、ASDの診断基準には当てはまらないが、社会的コミュニケーションに著しい障害を抱えているものを社会的(語用論的)コミュニケーション症/障害と分類することが提案されています。

§4 注意欠如・多動症(ADHD)とOCD

ADHDは、かつては注意欠陥・多動性障害と呼ばれていましたが、DSM-5 からは注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。注意欠如・多動症は、次の特性のいずれかもしくは両方によって、社会生活に支障をきたしている発達障害です。[1]





ADHDの有病率は、DSM-5によると子どもで人口の5%、成人では2.5%です。注意欠如や多動性は、自閉スペクトラム症の人でもよくみられます。DSM-5では、双方の症状を併存する場合は、両方の診断名をつけるようにと書かれています。[1]

ADHDやASDの人にみられる特性は、周囲の人からは怠けているとか、だらしないと誤解されやすいのですが、本人の努力だけでは改善が難しく、ミスや忘れ物を減らそうと努力すれば、確認が増えることになり、プレッシャーや不安が高じた結果、OCDに影響を及ぼしたと考えられるケースもあります。また、ASDやADHDのために、対人関係や社会参加がうまく行かず、二次的に抑うつや社交不安などの精神症状を呈する場合もあります。ADHDの人の約半数が、OCDや不安症(社交不安症など)を経験するという報告があります。

また、ADHDの人は、スケジュール管理が苦手だったり、外出前の準備に時間がかかったりするため、せっかく病院を受診しても予約時間を守って通院できない場合もあります。時間管理ができず物事の達成がうまくできないことで、実行を先延ばしにするという特性もみられ、家族が受診を勧めても本人は受診をいやがるケースもあります。

§5 医療機関での診療

発達障害の診断は精神科で行われます。18歳未満の患者さんでは、小児や思春期を専門にする精神科もあります。近年では、発達障害の専門外来をもつ医療機関も徐々に増えてきましたが、まだ数が少なく、予約を取るのが大変だという話をよく聞きます。

発達障害の診断のために、心理テストや知能検査を行うことがあります。年齢にもよりますが、知能検査では、全体的なIQの高低よりも、得意な項目と不得意な項目とのばらつきを、発達障害の傾向の参考とします。[4]診断には学力やIQよりも、社会生活への適応の度合いのほうが重要と考えられています。それは学歴が高い人でも、発達障害によって社会生活や対人関係で支障をきたしている人がいるためです。

OCDの人では、知能検査中に、何度も答えを書き直したり、何らかの強迫観念によって問題に集中できないなど、OCDが知能検査の結果に影響することがあるので、事前に検査の担当者に事情を伝えるといいでしょう。ただし、知能検査などは、健康保険の対象とならないことがあるので、あらかじめ医療機関に問い合わせてください。

発達障害を併存していても、OCDに対して有効な治療は、薬物療法と認知行動療法が基本となります。認知行動療法は、発達障害を抱えていても可能ですが、一般的なOCDの治療に比べ、面談の回数や時間がかかることがあります。また、治療者の技量と経験に左右されやすい面もあります。

§6 発達障害への支援とOCDへの支援

OCDを発症すると、以前は問題なくできていたことができなくなったり、強迫行為によって、行動に時間がかかってしまうなど、後天的にある時期から問題が生じます。一方、発達障害は、たとえばADHDのために、物を片づけるのが苦手で忘れ物をしやすい、時間を守れないという特性から、外出の準備に時間がかかるといった、元々の要因を幼少期から抱えています。ただし、そのような人においても、小学校、中学校、高校と進級するうちに障害の現れ方は変化し、自らの外見や友達の反応を気にするようになったり、学校生活へうまく適応できずに、ある時期から急に遅刻が増えるということは起り得ます。

そのような発達障害に対する支障としては、病気の治療というより、本人が社会生活へ適応しやすくなるしくみを、専門家とともに考えていく支援を行ったほうがよい場合があります。たとえば、先述の外出の準備に時間がかかる人の場合、当日の外出間際に慌てるよりも、前日にできるだけ準備は済ませておくようなしくみを考えます。また、不登校や引きこもりによって、社会との接点がなくなってしまうと、よけい自分流の生活スタイルが強まり、社会復帰が難しくなってしまうので、できるだけ学校、職場、福祉施設などに通い、家族以外の人と関わる場を保つことが望まれます。

発達障害に関する相談は、発達障害の専門家、発達障害にくわしい医療機関、発達障害支援センターなどの福祉相談、臨床心理学科のある大学院の臨床心理相談センターなどで行います。本やテレビなどで取り上げられることも増えたおかげで、発達障害の認知度は高まりましたが、実際の支援体制が追いついていない現状があります。

二次的に発症したOCDに対しては、家族を含めた他者による支援が強迫行為への巻き込みになってしまわないか、本人の自立を阻んでいないかということへの注意が必要です。家族であっても、症状への理解が難しいケースや、本人との話し合いがうまく行かずにこじれてしまうケースもよくみられます。そのような場合、家族だけで解決しようとするのではなく、親戚や専門家などにも相談して、改善策を探していく方法も考えられます。OCDの自助グループ・患者会にも、発達障害とともにOCDを抱えた患者さん、家族が参加されることは少なくないので、そのような会に参加すると参考になる話が聞けるかもしれません。



*文献
[1] American Psychiatric Association[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修] 、2014年、「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院
[2]杉山登志郎「神経発達障害とは何か」こころの科学増刊2014年9月日本評論社p14-19
[3]渡部京太「神経発達症群/神経発達障害群」の鑑別診断と併存障害」、発達障害ベストプラクティス―子どもから大人まで―精神科治療学Vol.29増刊号2014年、p14-19
[4]大島郁葉、清水栄司「成人のASD」こころの科学増刊2014年9月日本評論社p61-66